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番外編・『五時の妖精』
一、
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学校からの帰り道。
そいつは空から降ってきた。
降ってきたといっても、雨や雪じゃない。それは、小さな小さな女の人だった――
***
俺が そいつと出会ったのは、二学期も終わりに近づいた十二月のある日のことだった。
日の短いこの時期、部活動は早目に終了し、午後五時までには校門を出ることになっている。自主練に夢中になっているうちに、気が付けば残っているのは俺だけになっていた。
――やばい、やばい。時間は絶対厳守なんだ。
急いで片付けを済ませ、荷物をまとめて とび出した。校門前の時計の針は、五時ちょうどを指している。ぎりぎりセーフだ。
その時だった。そいつは空から突然 降ってきたんだ。降ってきたといっても、雨や雪じゃない。それは、小さな小さな女の人だった。
「ハーイ、私、妖精なのっ♪ 」
小さな体の割に、はっきりとしたボリュームで、そいつは俺に話しかけてきた。
「何の妖精かっていうと……」
「まさか、五時の妖精っていうんじゃないだろうな。」
一瞬の戸惑いを隠そうと、そいつより先に言ってやった。冗談半分だったのに、そいつは目を丸くして
「すご~い! なんで分かったの? 」
なんて、本気で驚いてるふうだった。
男子のくせに、なんて思われそうで、大きな声じゃ言えないが、ファンタジーは大好きだ。明らかに不可思議なこの状況をすんなりと受け入れてしまった俺は、相当なものかもしれない。
そいつは空から降ってきた。
降ってきたといっても、雨や雪じゃない。それは、小さな小さな女の人だった――
***
俺が そいつと出会ったのは、二学期も終わりに近づいた十二月のある日のことだった。
日の短いこの時期、部活動は早目に終了し、午後五時までには校門を出ることになっている。自主練に夢中になっているうちに、気が付けば残っているのは俺だけになっていた。
――やばい、やばい。時間は絶対厳守なんだ。
急いで片付けを済ませ、荷物をまとめて とび出した。校門前の時計の針は、五時ちょうどを指している。ぎりぎりセーフだ。
その時だった。そいつは空から突然 降ってきたんだ。降ってきたといっても、雨や雪じゃない。それは、小さな小さな女の人だった。
「ハーイ、私、妖精なのっ♪ 」
小さな体の割に、はっきりとしたボリュームで、そいつは俺に話しかけてきた。
「何の妖精かっていうと……」
「まさか、五時の妖精っていうんじゃないだろうな。」
一瞬の戸惑いを隠そうと、そいつより先に言ってやった。冗談半分だったのに、そいつは目を丸くして
「すご~い! なんで分かったの? 」
なんて、本気で驚いてるふうだった。
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