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第88話 部下の意識改変訓練(強制)②
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「カ、カケル君……これで満足かい……」
『命名神の嘆き』を何度となく身に受けたであろう『ああああ』が地に伏しながらそう呟く。
部下達も皆揃ってボロボロだ。皆、死んだ目をしている。
「ど、どうしたんだ? 皆、ボロボロじゃないか……」
物理・魔法攻撃を受けても無傷で済むよう装備を揃えてやり、モンスターを一撃で屠る事のできる自爆武器まで揃えて上げた。
しかも、ここは推奨レベル三十の初級ダンジョン。
レベル百五十オーバーの部下達がここまで苦戦すると誰が思うだろうか。
白々しくそう言うと、『ああああ』が力なく顔を上げた。
「だ、誰のせいだと……」
「ふむ。俺のせいだな。いや、しかし、よくやってくれた。今日の所はここまでにしておこう。撤収するぞー」
そう言うと、死んだ目をした部下達に研修手当金を手渡し、一人づつ転移門を潜らせていく。
うーん。ちょっと、やり過ぎたかな?
初級ダンジョンとはいえ、忍耐の欠片もない部下達を九回も周回させるのはきつかったのかも知れない。
しかし、無理矢理にでも環境を変えてやらねば、こいつ等はいつまで経っても変わらない。ぬるま湯に浸かった子供のままだ。
うん。俺は間違っていない筈だ。
『ああああ』は俺の事を、鬼や悪魔と称していた。
ならば、鬼や悪魔に相応しい厳しめの訓練を課してやろう。
研修終了後、ちょっとやそっとのストレスがストレスと感じなくなる位にな。
三日目の訓練を終えた俺は、慰労の為、ボロボロになった『ああああ』を連れて冒険者協会の酒場に来ていた。
「お姉さんっ! エールお代わり!」
「はーい。すぐにお持ちしますね!」
エレメンタルがピカピカ光りながら『ペロペロザウルスのTKG』を食べている傍らで、俺達は豪快にエールを呷っていた。
「さあ、『ああああ』。今日はよくやってくれた。これはお前に対する俺からの謝礼だ。好きなだけ飲んで食ってくれ」
「う、うん。ありがとう。でも、カケル君の奢りで飲み食いするの、なんだか怖いんだけど……」
感のいい奴だ。まあいい。
「そんな事はないさ。俺も鬼じゃない……。お世話になった人に対してお礼をするのは当然の事じゃないか。さあ、飲んだ飲んだ! 美人のウエイトレスさんがエールを持ってきてくれたぞ」
「はーい。お待たせ致しました! こちら注文のエールとなりますっ!」
「ほいっ、ありがとうございますっと、ほら『ああああ』」
ウエイトレスさんからエールを受け取ると、そのエールを『ああああ』の目の前に置く。すると『ああああ』はエールの入ったグラスを片手にして、一気に口に流し込んだ。
「いやー、いい飲みっぷりだな! 『ああああ』。今日は一日ありがとう! ああ、明日も同じ時間に集合な? 金は俺が払っておくから安心してくれ、明日は中級ダンジョンを周回する予定だから、飲み過ぎんなよ!」
「う、うん。わかったよ」
そう言うと、俺はエレメンタル達がペロペロザウルスのTKGを食べ尽くした事を確認してから席を立つ。
流石に、俺がいては『ああああ』も気軽に飲み食いできないだろうからね。
今日は自由にしてあげよう。
『ああああ』を残し俺の経営する宿に帰ると支配人が俺に声をかけてくる。
「カケル様。少々、お話が……」
「うん? どうした?」
珍しいな。支配人が俺に声をかけてくるなんて……。
神妙な表情を浮かべ、そう尋ねると支配人は意気消沈とした声色で呟く。
「……実は、カケル様のお客様の件で」
「うん? あいつ等が何かやらかしたのか?」
それなら、すぐにでも追い出してやる所だ。
「い、いえ、何かしらの問題行動を起こした訳ではないのですが……実際に確認頂けると……」
歯切れが悪いな。
あいつ等、一体何をしたんだ?
「確認? わかった。すぐに向かう。案内してくれ」
「ありがとうございます……」
そういって向かった宿備え付けのレストラン。
そこでは、飲んだくれ悲しみに暮れる部下達の姿があった。
皆揃って、酒瓶片手に涙を流し、「お家帰りたい」と嘆いている。
「えー、見ての通りのご様子でして……」
「う、うん。本当だね……」
ち、ちょっと、訓練が厳しすぎただろうか?
それとも慣れない環境に置きすぎた?
つーか、大きなお友達が皆揃ってホームシックってどいう事っ!?
まあ、ゲーム世界に閉じ込められて家族や友達と会えなくなってしまった気持ちはわかるけれども……。
ホームシックに罹った部下達を前に、唖然とした表情を浮かべていると部下の一人が呟いた。
「ううっ、焼きそばが食べたい。寿司が食べたい。味噌汁が飲みたい……」
その呟きはこの場にいる部下全員に広がりを見せ、悲しみの大合唱が巻き起こる。
「カレーが食べたい」
「天ぷらが食べたい」
「とんかつが食べたい」
「ピザが食べたい」
「お好み焼きが食べたい」
「牛丼が食べたい」
「ハンバーガーが食べたい」
うーん。面倒臭ぇなこいつ等……。
何、勝手な事をほざいていやがるんだ?
とはいえ、こいつ等が使い物にならないままというのは困る。
仕方がない……。支配人も困っているようだし、俺の我儘でこいつ等の面倒を見て貰っている今、流石にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない。
食べ物で解決できるならこの際、なんでもしてやろう。
「事情はわかった……。あいつ等の故郷の料理を持ってきてやるから引き止めておいてくれ……」
「畏まりました」
「それじゃあ、俺は料理を仕入れてくる」
まあ、飲んだくれているようだし、一時間位、放置しても問題ないだろう。
早速、ゲーム世界をログアウトすると、俺は、パソコン画面から出前館とUberEatsにアクセスし、手当たり次第、料理を注文していく。
春の絶品グルメクォーターにピザーラスペシャルクォーター、よくばりクォーターに、牛めし(並盛)。豚天にやきそば、天丼や寿司の特上セット、ハンバーガーセットを注文すると、決済画面に移り顔を顰めた。
「う、うーん。二十五万円か……」
結構良い値段するな……。まあいいか。
これからのこいつ等が稼いでくれるお金の事を考えれば安いものだ……。
暫くすると、ホテルに続々と注文した品が届き始めた。
デリバリーサービスを利用し料理を注文した俺は、届いた料理をアイテムストレージにしまい、ゲーム世界に転移してすぐ、厨房へと向かった。
「すまないが、ここに出した料理をすべて器に移し替え、今いるお客様へ提供してくれ!」
「えっ? これ、すべてですかっ!?」
「ああ、そうだよ。シェフからの特別料理という感じであいつ等に提供してやってくれ。早くっ!」
そう声を上げると、厨房が慌ただしくなる。
「俺は、インスタント味噌汁を作るからお湯を沸かしてくれっ! あっ、その寿司、形を崩すなよっ!」
「は、はい!」
「それじゃあ、皿を移し替えたものから順番に運べっ」
日本から直輸入した料理をこちらの皿に移し替え提供していく。
すると、十分も経たず、レストランから歓声が聞こえてきた。
「こ、これはピザッ!?」
「み、味噌汁。味噌汁がこの世界に……」
「こ、これはまさか寿司っ!? なんで、寿司がこの世界にっ!?」
ふっ、そんな難しい事考えるなよ。
なんで、寿司がこの世界に?
そんなの時空を飛び越え持ってきたからに決まっているだろ?
つーか、お前等のホームシック。超軽いな。
えっ? そんなんでいいのっ?
故郷のご飯食べた位で解消される。そんなもんなのっ!?
まあ、いいけど……。
「さあ、どんどん運べっ! 美味しい料理は心を満たしてくれる。あいつ等の心を料理で一杯にしてやるんだっ! 酒も惜しみなくだしてやれっ!」
くははははっ、その上で、この宿に釘づけにしてやる。
ほらほら、お前達、この宿を出たらもう日本食を食べる事ができなくなっちゃうぞ?
もう定住するしかないだろ。
悪い笑みを浮かべながら、日本に転移して注文してきた料理を提供し続ける俺。
すべてのデリバリー料理を提供した俺がレストランに向かうと、そこには満足そうな笑みを浮かべ酔い潰れた部下達の姿がそこにあった。
「この程度で酔い潰れるとは……」
レストランで働く従業員の気持ちになってほしい。
誰が好き好んで酔い潰れたお客様の介抱をしなきゃいけないというのだろうか。
しかし、ここにいる部下共とは全員『契約書』を交わしている。
「『命令』だ。全員、立ち上がり、自室へ、戻りやがれっ!」
そう命令すると、酔い潰れていた筈の部下共が立ち上がり、自分達にあてがわれた部屋へと帰っていく。
皆、フラフラしているが、まあ多分大丈夫だろう。大丈夫だよね?
「ふう。それじゃあ、後片付けは頼んだ。ちゃんと、割増手当を弾むからさ」
「はい。ありがとうございます。カケル様」
片手を上げ、『よろしく頼む』と口にすると、そのまま部屋へと戻っていく。
それにしても、人を育てるというのは難しいものだ。
ゲームの様に中々、上手く育てる事ができない。
ゲームであれば、簡単にレベリングできる事も、この世界が現実になった今、それも難しい。
モンスターに攻撃すれば、当然のごとく反撃される。
ゲーム世界では痛みが伴わなかった攻撃も、現実世界ではそのまま傷跡として身体に残る。
ゲーム世界では、体感することのなかった痛み。
その痛みが、元DWプレイヤーのやる気を削いでいく。
まあ、そうさせない為の命名神シリーズだったんだけど。
「これで、あいつ等の甘えも消えてくれればいいんだけどな……」
この世界を生き抜く為には、『元の世界に戻れない。この世界で生きていく』という気概を持つ必要がある。
しかし、あいつ等にはそれがまるでない。
まあ、現実世界に戻ることのできる俺に言えた義理じゃないけどね。
今回、俺はあいつ等の退路をあえて断ち。強制的に、この世界で生きていく事を意識させたが、奴等の中には、それに耐えられない奴もいる筈。
しかし、これは慈善事業じゃない。
俺自身、恵まれた環境にあるからと言って、誰かを助ける必要性があるとも思わない。
所詮、他人は他人。そういった事は、やりたい人がやればいいのだ。
そもそも、そういった慈善事業は強制されてやるものじゃない。
義憤に駆られた時、自分にできる事が何かないか思い至った時、行うものだ。
「訓練開始から三日目か……」
訓練は思いの外、順調に進んでいる。
後はあいつ等の意識次第かな?
部屋に入りベッドに寝そべると、軽く目を閉じる。
「明日はどう扱いてやろうかな……」
そう呟くと、俺はそのまま眠りに落ちた。
『命名神の嘆き』を何度となく身に受けたであろう『ああああ』が地に伏しながらそう呟く。
部下達も皆揃ってボロボロだ。皆、死んだ目をしている。
「ど、どうしたんだ? 皆、ボロボロじゃないか……」
物理・魔法攻撃を受けても無傷で済むよう装備を揃えてやり、モンスターを一撃で屠る事のできる自爆武器まで揃えて上げた。
しかも、ここは推奨レベル三十の初級ダンジョン。
レベル百五十オーバーの部下達がここまで苦戦すると誰が思うだろうか。
白々しくそう言うと、『ああああ』が力なく顔を上げた。
「だ、誰のせいだと……」
「ふむ。俺のせいだな。いや、しかし、よくやってくれた。今日の所はここまでにしておこう。撤収するぞー」
そう言うと、死んだ目をした部下達に研修手当金を手渡し、一人づつ転移門を潜らせていく。
うーん。ちょっと、やり過ぎたかな?
初級ダンジョンとはいえ、忍耐の欠片もない部下達を九回も周回させるのはきつかったのかも知れない。
しかし、無理矢理にでも環境を変えてやらねば、こいつ等はいつまで経っても変わらない。ぬるま湯に浸かった子供のままだ。
うん。俺は間違っていない筈だ。
『ああああ』は俺の事を、鬼や悪魔と称していた。
ならば、鬼や悪魔に相応しい厳しめの訓練を課してやろう。
研修終了後、ちょっとやそっとのストレスがストレスと感じなくなる位にな。
三日目の訓練を終えた俺は、慰労の為、ボロボロになった『ああああ』を連れて冒険者協会の酒場に来ていた。
「お姉さんっ! エールお代わり!」
「はーい。すぐにお持ちしますね!」
エレメンタルがピカピカ光りながら『ペロペロザウルスのTKG』を食べている傍らで、俺達は豪快にエールを呷っていた。
「さあ、『ああああ』。今日はよくやってくれた。これはお前に対する俺からの謝礼だ。好きなだけ飲んで食ってくれ」
「う、うん。ありがとう。でも、カケル君の奢りで飲み食いするの、なんだか怖いんだけど……」
感のいい奴だ。まあいい。
「そんな事はないさ。俺も鬼じゃない……。お世話になった人に対してお礼をするのは当然の事じゃないか。さあ、飲んだ飲んだ! 美人のウエイトレスさんがエールを持ってきてくれたぞ」
「はーい。お待たせ致しました! こちら注文のエールとなりますっ!」
「ほいっ、ありがとうございますっと、ほら『ああああ』」
ウエイトレスさんからエールを受け取ると、そのエールを『ああああ』の目の前に置く。すると『ああああ』はエールの入ったグラスを片手にして、一気に口に流し込んだ。
「いやー、いい飲みっぷりだな! 『ああああ』。今日は一日ありがとう! ああ、明日も同じ時間に集合な? 金は俺が払っておくから安心してくれ、明日は中級ダンジョンを周回する予定だから、飲み過ぎんなよ!」
「う、うん。わかったよ」
そう言うと、俺はエレメンタル達がペロペロザウルスのTKGを食べ尽くした事を確認してから席を立つ。
流石に、俺がいては『ああああ』も気軽に飲み食いできないだろうからね。
今日は自由にしてあげよう。
『ああああ』を残し俺の経営する宿に帰ると支配人が俺に声をかけてくる。
「カケル様。少々、お話が……」
「うん? どうした?」
珍しいな。支配人が俺に声をかけてくるなんて……。
神妙な表情を浮かべ、そう尋ねると支配人は意気消沈とした声色で呟く。
「……実は、カケル様のお客様の件で」
「うん? あいつ等が何かやらかしたのか?」
それなら、すぐにでも追い出してやる所だ。
「い、いえ、何かしらの問題行動を起こした訳ではないのですが……実際に確認頂けると……」
歯切れが悪いな。
あいつ等、一体何をしたんだ?
「確認? わかった。すぐに向かう。案内してくれ」
「ありがとうございます……」
そういって向かった宿備え付けのレストラン。
そこでは、飲んだくれ悲しみに暮れる部下達の姿があった。
皆揃って、酒瓶片手に涙を流し、「お家帰りたい」と嘆いている。
「えー、見ての通りのご様子でして……」
「う、うん。本当だね……」
ち、ちょっと、訓練が厳しすぎただろうか?
それとも慣れない環境に置きすぎた?
つーか、大きなお友達が皆揃ってホームシックってどいう事っ!?
まあ、ゲーム世界に閉じ込められて家族や友達と会えなくなってしまった気持ちはわかるけれども……。
ホームシックに罹った部下達を前に、唖然とした表情を浮かべていると部下の一人が呟いた。
「ううっ、焼きそばが食べたい。寿司が食べたい。味噌汁が飲みたい……」
その呟きはこの場にいる部下全員に広がりを見せ、悲しみの大合唱が巻き起こる。
「カレーが食べたい」
「天ぷらが食べたい」
「とんかつが食べたい」
「ピザが食べたい」
「お好み焼きが食べたい」
「牛丼が食べたい」
「ハンバーガーが食べたい」
うーん。面倒臭ぇなこいつ等……。
何、勝手な事をほざいていやがるんだ?
とはいえ、こいつ等が使い物にならないままというのは困る。
仕方がない……。支配人も困っているようだし、俺の我儘でこいつ等の面倒を見て貰っている今、流石にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない。
食べ物で解決できるならこの際、なんでもしてやろう。
「事情はわかった……。あいつ等の故郷の料理を持ってきてやるから引き止めておいてくれ……」
「畏まりました」
「それじゃあ、俺は料理を仕入れてくる」
まあ、飲んだくれているようだし、一時間位、放置しても問題ないだろう。
早速、ゲーム世界をログアウトすると、俺は、パソコン画面から出前館とUberEatsにアクセスし、手当たり次第、料理を注文していく。
春の絶品グルメクォーターにピザーラスペシャルクォーター、よくばりクォーターに、牛めし(並盛)。豚天にやきそば、天丼や寿司の特上セット、ハンバーガーセットを注文すると、決済画面に移り顔を顰めた。
「う、うーん。二十五万円か……」
結構良い値段するな……。まあいいか。
これからのこいつ等が稼いでくれるお金の事を考えれば安いものだ……。
暫くすると、ホテルに続々と注文した品が届き始めた。
デリバリーサービスを利用し料理を注文した俺は、届いた料理をアイテムストレージにしまい、ゲーム世界に転移してすぐ、厨房へと向かった。
「すまないが、ここに出した料理をすべて器に移し替え、今いるお客様へ提供してくれ!」
「えっ? これ、すべてですかっ!?」
「ああ、そうだよ。シェフからの特別料理という感じであいつ等に提供してやってくれ。早くっ!」
そう声を上げると、厨房が慌ただしくなる。
「俺は、インスタント味噌汁を作るからお湯を沸かしてくれっ! あっ、その寿司、形を崩すなよっ!」
「は、はい!」
「それじゃあ、皿を移し替えたものから順番に運べっ」
日本から直輸入した料理をこちらの皿に移し替え提供していく。
すると、十分も経たず、レストランから歓声が聞こえてきた。
「こ、これはピザッ!?」
「み、味噌汁。味噌汁がこの世界に……」
「こ、これはまさか寿司っ!? なんで、寿司がこの世界にっ!?」
ふっ、そんな難しい事考えるなよ。
なんで、寿司がこの世界に?
そんなの時空を飛び越え持ってきたからに決まっているだろ?
つーか、お前等のホームシック。超軽いな。
えっ? そんなんでいいのっ?
故郷のご飯食べた位で解消される。そんなもんなのっ!?
まあ、いいけど……。
「さあ、どんどん運べっ! 美味しい料理は心を満たしてくれる。あいつ等の心を料理で一杯にしてやるんだっ! 酒も惜しみなくだしてやれっ!」
くははははっ、その上で、この宿に釘づけにしてやる。
ほらほら、お前達、この宿を出たらもう日本食を食べる事ができなくなっちゃうぞ?
もう定住するしかないだろ。
悪い笑みを浮かべながら、日本に転移して注文してきた料理を提供し続ける俺。
すべてのデリバリー料理を提供した俺がレストランに向かうと、そこには満足そうな笑みを浮かべ酔い潰れた部下達の姿がそこにあった。
「この程度で酔い潰れるとは……」
レストランで働く従業員の気持ちになってほしい。
誰が好き好んで酔い潰れたお客様の介抱をしなきゃいけないというのだろうか。
しかし、ここにいる部下共とは全員『契約書』を交わしている。
「『命令』だ。全員、立ち上がり、自室へ、戻りやがれっ!」
そう命令すると、酔い潰れていた筈の部下共が立ち上がり、自分達にあてがわれた部屋へと帰っていく。
皆、フラフラしているが、まあ多分大丈夫だろう。大丈夫だよね?
「ふう。それじゃあ、後片付けは頼んだ。ちゃんと、割増手当を弾むからさ」
「はい。ありがとうございます。カケル様」
片手を上げ、『よろしく頼む』と口にすると、そのまま部屋へと戻っていく。
それにしても、人を育てるというのは難しいものだ。
ゲームの様に中々、上手く育てる事ができない。
ゲームであれば、簡単にレベリングできる事も、この世界が現実になった今、それも難しい。
モンスターに攻撃すれば、当然のごとく反撃される。
ゲーム世界では痛みが伴わなかった攻撃も、現実世界ではそのまま傷跡として身体に残る。
ゲーム世界では、体感することのなかった痛み。
その痛みが、元DWプレイヤーのやる気を削いでいく。
まあ、そうさせない為の命名神シリーズだったんだけど。
「これで、あいつ等の甘えも消えてくれればいいんだけどな……」
この世界を生き抜く為には、『元の世界に戻れない。この世界で生きていく』という気概を持つ必要がある。
しかし、あいつ等にはそれがまるでない。
まあ、現実世界に戻ることのできる俺に言えた義理じゃないけどね。
今回、俺はあいつ等の退路をあえて断ち。強制的に、この世界で生きていく事を意識させたが、奴等の中には、それに耐えられない奴もいる筈。
しかし、これは慈善事業じゃない。
俺自身、恵まれた環境にあるからと言って、誰かを助ける必要性があるとも思わない。
所詮、他人は他人。そういった事は、やりたい人がやればいいのだ。
そもそも、そういった慈善事業は強制されてやるものじゃない。
義憤に駆られた時、自分にできる事が何かないか思い至った時、行うものだ。
「訓練開始から三日目か……」
訓練は思いの外、順調に進んでいる。
後はあいつ等の意識次第かな?
部屋に入りベッドに寝そべると、軽く目を閉じる。
「明日はどう扱いてやろうかな……」
そう呟くと、俺はそのまま眠りに落ちた。
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