ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

文字の大きさ
88 / 411

第88話 部下の意識改変訓練(強制)②

しおりを挟む
「カ、カケル君……これで満足かい……」

『命名神の嘆き』を何度となく身に受けたであろう『ああああ』が地に伏しながらそう呟く。
 部下達も皆揃ってボロボロだ。皆、死んだ目をしている。

「ど、どうしたんだ? 皆、ボロボロじゃないか……」

 物理・魔法攻撃を受けても無傷で済むよう装備を揃えてやり、モンスターを一撃で屠る事のできる自爆武器まで揃えて上げた。
 しかも、ここは推奨レベル三十の初級ダンジョン。
 レベル百五十オーバーの部下達がここまで苦戦すると誰が思うだろうか。

 白々しくそう言うと、『ああああ』が力なく顔を上げた。

「だ、誰のせいだと……」
「ふむ。俺のせいだな。いや、しかし、よくやってくれた。今日の所はここまでにしておこう。撤収するぞー」

 そう言うと、死んだ目をした部下達に研修手当金を手渡し、一人づつ転移門を潜らせていく。

 うーん。ちょっと、やり過ぎたかな?
 初級ダンジョンとはいえ、忍耐の欠片もない部下達を九回も周回させるのはきつかったのかも知れない。
 しかし、無理矢理にでも環境を変えてやらねば、こいつ等はいつまで経っても変わらない。ぬるま湯に浸かった子供のままだ。

 うん。俺は間違っていない筈だ。
『ああああ』は俺の事を、鬼や悪魔と称していた。
 ならば、鬼や悪魔に相応しい厳しめの訓練を課してやろう。
 研修終了後、ちょっとやそっとのストレスがストレスと感じなくなる位にな。

 三日目の訓練を終えた俺は、慰労の為、ボロボロになった『ああああ』を連れて冒険者協会の酒場に来ていた。

「お姉さんっ! エールお代わり!」
「はーい。すぐにお持ちしますね!」

 エレメンタルがピカピカ光りながら『ペロペロザウルスのTKG』を食べている傍らで、俺達は豪快にエールを呷っていた。

「さあ、『ああああ』。今日はよくやってくれた。これはお前に対する俺からの謝礼だ。好きなだけ飲んで食ってくれ」
「う、うん。ありがとう。でも、カケル君の奢りで飲み食いするの、なんだか怖いんだけど……」

 感のいい奴だ。まあいい。

「そんな事はないさ。俺も鬼じゃない……。お世話になった人に対してお礼をするのは当然の事じゃないか。さあ、飲んだ飲んだ! 美人のウエイトレスさんがエールを持ってきてくれたぞ」
「はーい。お待たせ致しました! こちら注文のエールとなりますっ!」
「ほいっ、ありがとうございますっと、ほら『ああああ』」

 ウエイトレスさんからエールを受け取ると、そのエールを『ああああ』の目の前に置く。すると『ああああ』はエールの入ったグラスを片手にして、一気に口に流し込んだ。

「いやー、いい飲みっぷりだな! 『ああああ』。今日は一日ありがとう! ああ、明日も同じ時間に集合な? 金は俺が払っておくから安心してくれ、明日は中級ダンジョンを周回する予定だから、飲み過ぎんなよ!」
「う、うん。わかったよ」

 そう言うと、俺はエレメンタル達がペロペロザウルスのTKGを食べ尽くした事を確認してから席を立つ。
 流石に、俺がいては『ああああ』も気軽に飲み食いできないだろうからね。
 今日は自由にしてあげよう。

『ああああ』を残し俺の経営する宿に帰ると支配人が俺に声をかけてくる。

「カケル様。少々、お話が……」
「うん? どうした?」

 珍しいな。支配人が俺に声をかけてくるなんて……。
 神妙な表情を浮かべ、そう尋ねると支配人は意気消沈とした声色で呟く。

「……実は、カケル様のお客様の件で」
「うん? あいつ等が何かやらかしたのか?」

 それなら、すぐにでも追い出してやる所だ。

「い、いえ、何かしらの問題行動を起こした訳ではないのですが……実際に確認頂けると……」

 歯切れが悪いな。
 あいつ等、一体何をしたんだ?

「確認? わかった。すぐに向かう。案内してくれ」
「ありがとうございます……」

 そういって向かった宿備え付けのレストラン。
 そこでは、飲んだくれ悲しみに暮れる部下達の姿があった。

 皆揃って、酒瓶片手に涙を流し、「お家帰りたい」と嘆いている。

「えー、見ての通りのご様子でして……」
「う、うん。本当だね……」

 ち、ちょっと、訓練が厳しすぎただろうか?
 それとも慣れない環境に置きすぎた?

 つーか、大きなお友達が皆揃ってホームシックってどいう事っ!?
 まあ、ゲーム世界に閉じ込められて家族や友達と会えなくなってしまった気持ちはわかるけれども……。

 ホームシックに罹った部下達を前に、唖然とした表情を浮かべていると部下の一人が呟いた。

「ううっ、焼きそばが食べたい。寿司が食べたい。味噌汁が飲みたい……」

 その呟きはこの場にいる部下全員に広がりを見せ、悲しみの大合唱が巻き起こる。

「カレーが食べたい」
「天ぷらが食べたい」
「とんかつが食べたい」
「ピザが食べたい」
「お好み焼きが食べたい」
「牛丼が食べたい」
「ハンバーガーが食べたい」

 うーん。面倒臭ぇなこいつ等……。
 何、勝手な事をほざいていやがるんだ?

 とはいえ、こいつ等が使い物にならないままというのは困る。
 仕方がない……。支配人も困っているようだし、俺の我儘でこいつ等の面倒を見て貰っている今、流石にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない。

 食べ物で解決できるならこの際、なんでもしてやろう。

「事情はわかった……。あいつ等の故郷の料理を持ってきてやるから引き止めておいてくれ……」
「畏まりました」
「それじゃあ、俺は料理を仕入れてくる」

 まあ、飲んだくれているようだし、一時間位、放置しても問題ないだろう。
 早速、ゲーム世界をログアウトすると、俺は、パソコン画面から出前館とUberEatsにアクセスし、手当たり次第、料理を注文していく。

 春の絶品グルメクォーターにピザーラスペシャルクォーター、よくばりクォーターに、牛めし(並盛)。豚天にやきそば、天丼や寿司の特上セット、ハンバーガーセットを注文すると、決済画面に移り顔を顰めた。

「う、うーん。二十五万円か……」

 結構良い値段するな……。まあいいか。
 これからのこいつ等が稼いでくれるお金の事を考えれば安いものだ……。

 暫くすると、ホテルに続々と注文した品が届き始めた。

 デリバリーサービスを利用し料理を注文した俺は、届いた料理をアイテムストレージにしまい、ゲーム世界に転移してすぐ、厨房へと向かった。

「すまないが、ここに出した料理をすべて器に移し替え、今いるお客様へ提供してくれ!」
「えっ? これ、すべてですかっ!?」
「ああ、そうだよ。シェフからの特別料理という感じであいつ等に提供してやってくれ。早くっ!」

 そう声を上げると、厨房が慌ただしくなる。

「俺は、インスタント味噌汁を作るからお湯を沸かしてくれっ! あっ、その寿司、形を崩すなよっ!」
「は、はい!」
「それじゃあ、皿を移し替えたものから順番に運べっ」

 日本から直輸入した料理をこちらの皿に移し替え提供していく。
 すると、十分も経たず、レストランから歓声が聞こえてきた。

「こ、これはピザッ!?」
「み、味噌汁。味噌汁がこの世界に……」
「こ、これはまさか寿司っ!? なんで、寿司がこの世界にっ!?」

 ふっ、そんな難しい事考えるなよ。
 なんで、寿司がこの世界に?
 そんなの時空を飛び越え持ってきたからに決まっているだろ?

 つーか、お前等のホームシック。超軽いな。
 えっ? そんなんでいいのっ?
 故郷のご飯食べた位で解消される。そんなもんなのっ!?

 まあ、いいけど……。

「さあ、どんどん運べっ! 美味しい料理は心を満たしてくれる。あいつ等の心を料理で一杯にしてやるんだっ! 酒も惜しみなくだしてやれっ!」

 くははははっ、その上で、この宿に釘づけにしてやる。
 ほらほら、お前達、この宿を出たらもう日本食を食べる事ができなくなっちゃうぞ?
 もう定住するしかないだろ。

 悪い笑みを浮かべながら、日本に転移して注文してきた料理を提供し続ける俺。

 すべてのデリバリー料理を提供した俺がレストランに向かうと、そこには満足そうな笑みを浮かべ酔い潰れた部下達の姿がそこにあった。

「この程度で酔い潰れるとは……」

 レストランで働く従業員の気持ちになってほしい。
 誰が好き好んで酔い潰れたお客様の介抱をしなきゃいけないというのだろうか。
 しかし、ここにいる部下共とは全員『契約書』を交わしている。

「『命令』だ。全員、立ち上がり、自室へ、戻りやがれっ!」

 そう命令すると、酔い潰れていた筈の部下共が立ち上がり、自分達にあてがわれた部屋へと帰っていく。

 皆、フラフラしているが、まあ多分大丈夫だろう。大丈夫だよね?

「ふう。それじゃあ、後片付けは頼んだ。ちゃんと、割増手当を弾むからさ」
「はい。ありがとうございます。カケル様」

 片手を上げ、『よろしく頼む』と口にすると、そのまま部屋へと戻っていく。

 それにしても、人を育てるというのは難しいものだ。
 ゲームの様に中々、上手く育てる事ができない。
 ゲームであれば、簡単にレベリングできる事も、この世界が現実になった今、それも難しい。
 モンスターに攻撃すれば、当然のごとく反撃される。
 ゲーム世界では痛みが伴わなかった攻撃も、現実世界ではそのまま傷跡として身体に残る。

 ゲーム世界では、体感することのなかった痛み。
 その痛みが、元DWプレイヤーのやる気を削いでいく。
 まあ、そうさせない為の命名神シリーズだったんだけど。

「これで、あいつ等の甘えも消えてくれればいいんだけどな……」

 この世界を生き抜く為には、『元の世界に戻れない。この世界で生きていく』という気概を持つ必要がある。
 しかし、あいつ等にはそれがまるでない。
 まあ、現実世界に戻ることのできる俺に言えた義理じゃないけどね。

 今回、俺はあいつ等の退路をあえて断ち。強制的に、この世界で生きていく事を意識させたが、奴等の中には、それに耐えられない奴もいる筈。

 しかし、これは慈善事業じゃない。
 俺自身、恵まれた環境にあるからと言って、誰かを助ける必要性があるとも思わない。
 所詮、他人は他人。そういった事は、やりたい人がやればいいのだ。
 そもそも、そういった慈善事業は強制されてやるものじゃない。
 義憤に駆られた時、自分にできる事が何かないか思い至った時、行うものだ。

「訓練開始から三日目か……」

 訓練は思いの外、順調に進んでいる。
 後はあいつ等の意識次第かな?

 部屋に入りベッドに寝そべると、軽く目を閉じる。

「明日はどう扱いてやろうかな……」

 そう呟くと、俺はそのまま眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 558

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!

くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作) 異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...