ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ

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第182話 その頃のゲーム世界①

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 私の名前は、江上政子。東南テレビの報道記者である。
 今回、私はつい最近失踪した区議会議員・更屋敷太一について取材している。

 更屋敷太一というのは、ここの所、スキャンダルを連発し失踪した区議会議員の事だ。
 今朝、局内に高橋翔という人物が更屋敷太一の保有していた土地を買い取ったという情報が入ってきた。
 しかし、高橋翔の事を詳しく調べて見たが、調べれば調べるほど、わからなくなった。わかった事と言えば、数ヶ月前まで普通の会社の社員として働いていた位のものだ。

 そんな平社員が更屋敷太一の持つ土地を購入したという事実。
 それを見た瞬間、私は察した。

 これは、絶対何か裏があると……。

 だからこそ、私は高橋翔に取材し、そして、高橋翔自身から重要な証言を得た。

 やはり、高橋翔は、区議会議員・更屋敷太一の失踪に関わっている様だ。
 そうでなければ、あんな発言は出てこない。

 だからこそ、カメラマンの不注意でカメラが壊れようとも、様々な機材が壊れようとも高橋翔が入っていった仮囲いの中。そこに注視して、スマホを回していた。
 しかし、全然出てくる気配がない。

 あいつが入っていったのは、午後三時。もう午後五時を迎えようとしている。
 一度、仮囲いに備え付けられたドアが開く音を聞いた気がしたが気のせいだった。
 チーフには、スクープを取ってくるまで帰ってくるなと言われている。
 だからこそ、懸命に仮囲いに備え付けられたドアを注視しているが、まったく開く素振りがない。

 もう午後十時だ。
 あれから数時間、いつまで出てこないつもりなのだろうか?
 こちらの都合も考えて欲しい。
 粘り強く仮囲いのドアに視線を向ける事、更に数時間。

「い、一体、いつになったら出てくるの……」

 目蓋が重い。まさかこんな過酷な取材になるとは思っても見なかった江上は呟く。
 気付けば朝になっていた。

 ◇◆◇

 報道記者である江上政子が、更屋敷邸跡地を張っている頃、高橋翔こと、俺は特別個室の窓から外の景色を見ながら珈琲を啜っていた。

「うん。美味い……」

 一泊二十万円の特別個室で飲む珈琲は格別だ。

「しかし、まさかマスコミに目を付けられるとは思いもしなかったな……」

 マスコミだけあって嗅覚が鋭い。
 とはいえ、証拠になる物は何もないので、俺に取材攻勢をかけた所で無意味だ。
 更屋敷太一の事を探したいのであれば、この辺り一帯を虱潰しに捜索した方がまだ早いと思う。

 まあ、そんな事よりビル建設も進めないと……。
 折角、格安で譲って貰った土地を遊ばせておくのは惜しい。
 とりあえず、複数のハウスメーカーに見積もりを出して貰ってから、コンシェルジュさんと打ち合わせをして建築会社を決めるか……。

 ネットで検索した複数の大手ハウスメーカーに見積もり依頼をメールで出すと、俺は背伸びをする。

「…さて、更屋敷太一の一件も片付いたし、一旦、ゲーム世界の様子でも見て来ようかな?」

 流石に、ゲーム世界がどうなっているのか心配になってきた。

 最後にログインしたのは、四日前か……。
 まあ、たった四日じゃ流石に何も変ってないだろう。多分……。

 しかし、最後に見た光景が光景だったからなぁ……。
 国民が本気で怒るとどうなるのか初めて理解できた気がする。
 やはり増税はいかんよ。増税は……。
 増税するならせめて自分達も身を切る思いをしなきゃ。
 襟を正さず、自身に与えられた特権を最大限享受したまま、短絡的に取れる所から税金を取ろうなんて考えて行動したら、痛い目を見る事位わかるだろうに……。
 失う物が何もなくなった国民ほど怖い者はいないよ。いや、本当。

 俺はヘッドギアの電源を入れ、頭にかぶるとベッドで横になる。
 ふと、このヘッドギアが無くなったら、ゲーム世界に行けなくなるのではないだろうかと一瞬考えるも、一旦、それを頭の隅に置き『Different World』の世界にログインした。

 ◇◆◇

 四日ぶりのゲーム世界。
 宿から外に出ると、そこには四日前と変わらない暮らしを送っている住民達の姿があった。

「うん。何も変わっていないみたいだな……」

 何だかホッとした。
 王城のある方向に視線を向けると、そこには相変わらずゴミが山の様に積み上がっている。
 分別されず積み上がっていくゴミの数々。
 見ているだけで恐ろしい。その内、公害が引き起こされそうな勢いだ。
 国中のゴミが王城に集積されて四日。
 そろそろ、何か対策を打たないと拙い気がする。

 公害が引き起こされたとして、その被害が王城に住む人達だけで収まればいいが、たった四日でゴミが王城と同じ高さになってしまう程の山を築き上げているのだ。マジでヤバイだろう。

 つーか、国王。お前、一体、何をやっているんだ?
 国民から税金をたかるだけの能無しかお前。命令する側から、作業する側に代わったんだからちゃんと働けよ。国民にできた事が何で国王であるお前にできないんだ。
 万が一、公害が国民を襲ったらマジで終わるぞこの国。

 まあ、そんな事はさせないけど……。

 俺は、冒険者協会に向かうと、協会長であるゲッテムハルトとの面会を申し出た。
 待つ事、十数分。受付嬢が、俺の名前を呼ぶ。

「カケル様。お待たせ致しました。協会長がお待ちです」
「ああ、ありがとう」

 受付嬢の案内で協会長のいる協会長室に通される。

「おお、カケルではないか。随分と大変な事になったなぁ。この国も……」
「まったくです。このままでは、王城を中心に公害問題が発生する恐れがあります。協会長の仰る通り今すぐに対処しなければ……」

 俺がそう言うと、ゲッテムハルトは目を丸くする。

「……お主は何を言っておるのだ?」

 どうやら協会長は、ゴミを放置する事の重大性を理解していないらしい。
 ゴミを処理せず、山の様に積み上げたまま放置していればどんなことが起こるかわかりそうなものだが、想像力があまりにも乏しい。
 まあ、冒険者は脳筋が多いと言うし、協会長も元は冒険者。脳の半分が筋肉で出来ているのだろう。
 だからこそ、俺は、脳の大半が筋肉で出来ている人にとっても解り易く解説する事にした。

「……何を言っているのか理解できないのであれば聞いて下さい。いいですか? 王城に積み上げられたゴミ。あれを放置したままにしておけば、必ず公害が起こります」
「こ、公害?」

 公害の意味も理解できないとは……。末期だな……まあいい。

「公害というのは、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染や悪臭などにより人の健康や生活環境に被害が生ずる事の総称です。現在、王城のある辺り一帯に国中のゴミが集められており、これを王城に住む国王が適切に処理できない場合、深刻な公害問題が発生する恐れがあります」
「な、何っ!?」

 そこまで言って、ようやく慌て始めるゲッテムハルト。
 そんなゲッテムハルトに俺は畳み掛ける様に言う。

「……いいですか? 今、王城には、ゴミが分別されないまま集められています。これをこのまま放置しては、害虫を呼び寄せる生ゴミに、アレルギーの原因となる害虫を呼び寄せる衣類ゴミ。時が経つにつれて、カビが生え深刻なアレルギー問題を引き起こす物体が空気を通してばら撒かれる可能性があるんです」
「な、何だってっ!?」

 驚いた表情を浮かべるゲッテムハルト。
 しかし、俺は説明を止めない。

「それだけではありません。ゴミの中には発酵する事で可燃性のガスを放出するゴミもあります。もし万が一、それが発火したら……大変な事になりますよ」

 燃えた灰は空に舞い、その塵を住民達が吸い込む。何が燃えて灰となったかもわからない塵を吸い込むのだ。
 場合によっては、死の危険性もある。

 俺がそう訴えると、ゲッテムハルトは苦い表情を浮かべながら言った。

「……それで、お主の目的は何だ? 何故、私に面会を申し出た?」
「それはですね……」

 俺は予め用意しておいた、回答を口にする

「実はこの依頼を受けたいのです。一点、確認したい事がありまして……」
「こ、この依頼は……!?」

 協会長が驚くのも無理はない。
 俺が手にしたのは、王城を囲う壁の改修依頼。

「い、意味がわからん。これと公害問題がどう繋がるのだ……まあいい。その話は置いておこう。それで、確認したい事とは何だ?」
「いえ、大した事ではないのですが、この依頼は壁を改修すればよろしいんですよね?」

 改修とは、悪い所を改め作り直す事をいう。
 言葉遊びかも知れないが、この言葉の意味の確認は依頼を受けるに当たりとても重要となる。

「あ、ああ、その通りだが……」
「修繕ではなく、改修で間違いありませんね? 王城を囲う様に改修すればいいと、そういう事ですよね? その解釈で合ってますよね?」
「う、うむ。その通りだ。その解釈で合っている……」
「……よし」

 協会長の言質は取った。
 俺は椅子に隠し置いていたボイスレコーダーをアイテムストレージに収めると、依頼票を持ち立ち上がる。

 本来、こんな依頼、冒険者がやる様なものではないが、きっと人が不足していて冒険者にも頼まざるをえなかったのだろう。
 依頼料も材料こちら持ちで工事を行う割にたった一億コルと滅茶苦茶低い。
 まあ、依頼料については置いておくか……。
 この依頼のお陰で、城壁の改修工事をする事ができるのだから。

 このままでは、王城に分類せず集められたゴミが原因となり公害が起こる可能性がある。その芽を摘む為には、王城をすっぽり取り囲む様に壁を建て、王城以外に公害が広がらない様にする必要があった。
 言わば臭い物に蓋の原理を物理的に行おうとしているのだ。

「し、しかし……」
「……何か問題でも?」

 俺が返答を待っていると、ゲッテムハルトは苦い表情を浮かべながら呟く。

「……やっぱり、少しだけ、考える時間を貰えないだろうか?」

 なるほど……協会長は時間稼ぎをする事で俺の狙いを把握する時間を稼ぐ気の様だ。しかし、そうは問屋が許さない。

「無理ですね。この依頼には、期日が決められています。今から始めなければ、到底、間に合いません。まあ、依頼失敗の責任をすべて協会長が負ってくれるというのであれば、やぶさかではありませんが……」

 まあ、俺がやりたい事自体は半日あれば終わらせる事できるが、それは敢えて言わない。
 何しろ、こちらにはエレメンタルが付いている。

「う、うむむむむっ……」

 俺がそう言うと、ゲッテムハルトは頭を抱える。
 しかし、そんな弱った態度を見せた所で無駄だ。
 俺には一切通じない。むしろ、時間の無駄だと言わんばかりに、テーブルを指で等間隔にコツコツ叩いてやる。
 すると、ゲッテムハルトは顔を真っ赤にしながら根を上げた。

「わ、わかった。しかし、一人でやる気か? どう考えても一人で改修できる様な規模の依頼ではないぞ?」

 愚問だ。俺だからできるのである。
 エレメンタル様の力を舐めるな。
 そう脅しかけてくるゲッテムハルトに俺は、笑みを浮かべた。

「まったく問題ありません。すぐにでも改修工事に移れます」
「そ、そうか……」

 ゲッテムハルトにそう言うと、心配そうな表情を浮かべた。

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 2022年11月23日AM7時更新となります。
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