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第192話 ゴミ捨て場の状況③
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一方、王城では――
「コンデ公爵。少々よろしいでしょうか?」
国王、そして宰相との話し合いをしている最中、食糧の調理を命じていた貴族の男が王の間へと入ってくる。
「どうしたのです? 下級貴族が見つかったのですか?」
コンデ公爵の問いかけに、男は首を横に振って答える。
「いえ、実は……下級貴族の捜索に向かったフロンド伯爵達が未だ戻って来ていないのです……」
「なんですって? 下級貴族の捜索に当たらせていたフロンド伯爵達が帰って来ない?」
今の時刻は午後六時。
既に捜索を命じてから八時間近く経過している。
「何をやって……それでは、食事はどうするのですか?」
食糧庫に残されていたのは、パスタと小麦粉のみ。
しかも、それを調理するのは、料理経験のない上級貴族。
マトモな食事が出るとは思えない
「現状、お出しできるのは、パスタのオリーブオイル漬け位で……」
「パ、パスタのオリーブオイル漬け……?」
食糧庫にあったパスタは乾麺だった筈。
それをオリーブオイルに漬けてどうしようというのだろうか?
不可解な回答にコンデ公爵は困惑する。
「……まあ、いいでしょう。食事はあるのですね?」
「は、はいっ! お持ち致しますか?」
「ええ、陛下と宰相。部屋に閉じ込めてある王妃と殿下にも同じものを……」
「わ、わかりましたっ!」
そう言うと、男は頭を下げ王の間から去っていく。
一抹の不安を抱えながら、国王に向き合うと、コンデ公爵は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「……さて、話に戻りましょうか。先日、我々に何の相談も無く出された御布令、今後あの様な事があっては困ります。今後、二度とこの様な事が起こされぬよう、陛下を初めとした王族の皆様方には、『契約書』による制約をお願いしたいと考えているのですが、いかがでしょうか?」
そう提案すると、国王は「う、うむ。しかし……」と言って難色を示す。
「陛下……状況をわかっておいでですか? 現在、この王城は私達により占拠されております。また城壁の外には、私達が連れて来た領軍もいるのです。昨日もお話させて頂きましたが、もし万が一、断るようであれば、我々も相応の……」
これから、国王に重圧を掛けようという時、コンコンッと扉を叩く音が聞こえてくる。
「……入りなさい」
少し苛立ちながらそう呟くと、先ほどの男が配膳台に食事を乗せてやってきた。
しかし、どこか表情がおかしい。
一体、どうしたというのだろうか?
「……し、食事をお持ち致しました」
「ええ、それではまず、陛下と宰相に配膳して……」
そこまで言って絶句する。
国王と宰相も男が持ってきた食事を見て言葉も出ない様だ。
絶対零度の空気の中、男は国王と宰相、そしてコンデ公爵の前に食事を配膳すると、申し訳なさそうな表情を浮かべ頭を下げた。
「……パ、パスタのオリーブオイル漬けとなります」
「パ、パスタのオリーブオイル漬け……」
思わずそう呟くと、コンデ公爵は恐る恐るフォークでパスタのオリーブオイル漬けを突く。
見た目、突いた感触からするにこれはただ、パスタ(乾麺)をオリーブオイルに浸しただけの代物……。もはや食べ物でも何でもない。
配膳台と共に男が出て行くと、王の間は居た堪れない空気に包まれる。
「……公爵。あなたは、私達にこれを食べろと言うのですか?」
宰相はコンデ公爵に非難するような視線を送った。
そんな目で見られても困る。こちらも同じものを出されているのだ。
まさかこんなものを出されると思わず、こちらも困惑している。
とはいえ、一度出してしまった以上、強気で行く他ない。
「……ええ、その通りです。実は今朝、賊に食糧庫を荒らされましてね。こんなものしか残っていないのですよ。別に食べなくても構いませんよ? 私は頂きますけどね」
コンデ公爵は、オリーブオイルに浸されたパスタ(乾麺)を器用にフォークで掬うとそれを口に入れる。
ゴリゴリとした歯ごたえにオリーブオイルの味。
壊滅的な味と食感だ。
こんな物、食べ物でも何でもない。
何だか、顎まで痛くなってきた。歯が欠けそうだ。
――と、言うより食べて大丈夫なのだろうか?
油と乾麺……明らかに消化に悪そうだ。
しかし、食べる言った手前食べるしかない。
何せ、今はこれしか食べ物が無いのだ。
しかし、失敗したな……。
昨晩は、それなりに美味い料理が出てきたから大丈夫だと思っていたが、あれは男爵が作ったものだったか……。
今回、厨房に立っているのは伯爵。
誰も料理なんてした事が無かったのだろう。
カチャカチャと、フォークが食器に触れる音が鳴り、ようやく、パスタのオリーブオイル漬けを食べ終えたコンデ公爵は口を抑える。
胃が痛い。喉が渇く。
やはり、乾麺状態のパスタを口にするのは駄目だったか……。
「……そ、それでは、話し合いを続けましょう。『契約書』による制約を受け入れて頂けますね?」
そう尋ねると、国王は条件付きで頷いた。
「……仕方があるまい。条件付きで良ければ受け入れよう」
「へ、陛下っ!?」
まさか、受け入れると思っていなかったのだろう。
宰相が唖然とした表情を浮かべた。
意外と今、出した食事が決め手となったのかも知れない。
そんな事を思いながらコンデ公爵は条件を尋ねる。
「ほう。条件ですか……それでは、伺わせて頂きましょう」
「……返済期限十五年。無利子・無利息でゴミ・汚物処理場を立て直す為のお金を貸して欲しい。また、我々の身分そして身柄の保障。私から出す条件はそれだけだ……」
「ほう。我々から資金を借り入れたいと、そういう事ですか……」
中々、殊勝な事を言う。
「……いいでしょう。ただし、返済期限は十年とさせて頂きます。それでよろしいですね?」
「ああ、それで構わぬ」
国王の返事を聞くと、コンデ公爵は笑みを浮かべた。
「……二言はありませんね? それでは契約を結びましょう」
王の間に待機している貴族に目で合図すると、男が契約書を持ってくる。
そして自ら条件を書き足すと、国王へサインを求めた。
「さて、こちらにサインして頂きましょう……」
「うむ」
そう言うと、国王は契約書に署名する。
契約書を確認し、副本を手渡すと、コンデ公爵はそれを懐にしまう。
契約書の甲欄には、セントラル王国中の貴族の署名がしてあった。
さて、残る問題はいつ領軍が外にいる平民を制圧してくれるのか……。
まあ所詮は平民。領軍の力があれば、二日もしない内に制圧し、我々を解放してくれるだろう。
「それでは、皆様にはもう少々、この窮屈な生活を送って頂きます。何、安心して下さい。そう長くなりませんよ。あと二日の辛抱です」
それまで、辛抱強く待てばいい。
「……では、見張りは任せましたよ」
「は、はい!」
自分より下位の貴族に見張りを任せ、王の間を出た。
◇◆◇
王の間を出たコンデ公爵を見て、カティ宰相は声を上げる。
「あの様な条件を飲んでよろしかったのですか!?」
「――ああ、仕方があるまい。それに、こんな生活もうこりごりだ……」
窓の外を見れば、悪臭漂うゴミの山。
そして、目の前には、配膳されたオリーブオイルに浸されただけのパスタが置いてある。
「それに、コンデ公爵の思い通りにはならぬだろうよ。先日の放送を聞いただろう……どこかで聞いた声だとは思わなかったか?」
「――声……ですか?」
ガルズ王にそう問いかけられるも、カティ宰相は気付かない。
その声がモブ・フェンリルスーツを身に纏った翔の声であった事に……。
「――そうか。ならよい。それでは、明日の十時……いや、もっと早い時間がいいか。我々も外に出るぞ」
奴等の要求は『身分制に基づく不公平な課税制度の廃止』及び『十年間の国民に対する税金の免除』。国が貴族に課税する分には何をしても構わないのだから、セントラル王国の国王であるガルズ王には何の影響もない。
何せ、外に出る為には、この条件に従わなくてはならぬのだ。
先ほど、課税する際には貴族達と話し合いを持つ旨、契約を結んでしまったが、ここを出る貴族が契約を結ぶ以上、『身分制に基づく不公平な課税制度の廃止』の項目により税収は勝手に増えるし、『十年間の国民に対する税金の免除』をした所で、貴族や冒険者協会からの税収があるのだから余裕で賄う事ができる。
それに、十年間。貴族達から金を借り入れる事ができるのだ。
そして、我々の身分・身柄は貴族によって保障されている。
『契約書』の効力は絶対。貴族全員の署名がある以上、それを違える事はできない。代替わりした所で、それは同じだ。結局、先代が生きている以上、次代にもある程度の影響力を齎すのが世の常だから。
この場所からの脱出も……まあ、問題はない。
何せ、契約により貴族は我々に危害を加える事ができなくなった……。
何より、ガルズ王には、翔とのホットラインがある。
ガルズ王は、メニューバーからメール機能を立ち上げると、一通のメールを翔に向けて送る。
内容は、すべての条件を受け入れるので明日、明朝五時。我々を密かに王城の外に連れ出して欲しいというもの。
セントラル王国の国王であるガルズ・セントラル自らが送るメールだ。
無碍にはされないだろう。
メールを送ると、ガルズ王は静かに目を瞑った。
◇◆◇
午後八時。翔が新橋大学付属病院の特別室で寛いでいると、『ピコン!』という電子音が頭の中に鳴り響く。
「うん? なんだ……?」
メール機能を立ち上げると、ガルズ・セントラルという奴から一通のメールが届いていた。
「ガルズ・セントラル……誰だコイツ?」
メールを開くと、そこには偉そうな文章が書かれている。
要約すると、『すべての条件を受け入れるので明日、明朝五時。我々を密かに王城の外に連れ出して欲しい』というものだ。
阿保らしい。何で明朝五時に起きて、態々、そんな事をしてやらなければならないというのだろうか?
俺が十時と指定したからには十時なの……。
条件を受け入れてやるから、朝五時に迎えに来いとか馬鹿じゃないか?
よし。決めた。明日は休みにしよう。
何か、上から目線で命令されてムカついた。
いや、この際だ。やっぱり、次は三日後にしよう。
人は何も食べなくても、一週間位なら生きていられると聞いた事がある。
「よし。そうと決まれば……」
そう呟くと、俺はメール機能を立ち上げ、その旨を書いて関係各所にメールをする。そして、テーブルに置いてあったビールを手に取ると、柿ピーを摘みながら動画配信サイトで独占配信中のアニメを見ながら高笑いを上げた。
---------------------------------------------------------------
2022年12月13日AM7時更新となります。
「コンデ公爵。少々よろしいでしょうか?」
国王、そして宰相との話し合いをしている最中、食糧の調理を命じていた貴族の男が王の間へと入ってくる。
「どうしたのです? 下級貴族が見つかったのですか?」
コンデ公爵の問いかけに、男は首を横に振って答える。
「いえ、実は……下級貴族の捜索に向かったフロンド伯爵達が未だ戻って来ていないのです……」
「なんですって? 下級貴族の捜索に当たらせていたフロンド伯爵達が帰って来ない?」
今の時刻は午後六時。
既に捜索を命じてから八時間近く経過している。
「何をやって……それでは、食事はどうするのですか?」
食糧庫に残されていたのは、パスタと小麦粉のみ。
しかも、それを調理するのは、料理経験のない上級貴族。
マトモな食事が出るとは思えない
「現状、お出しできるのは、パスタのオリーブオイル漬け位で……」
「パ、パスタのオリーブオイル漬け……?」
食糧庫にあったパスタは乾麺だった筈。
それをオリーブオイルに漬けてどうしようというのだろうか?
不可解な回答にコンデ公爵は困惑する。
「……まあ、いいでしょう。食事はあるのですね?」
「は、はいっ! お持ち致しますか?」
「ええ、陛下と宰相。部屋に閉じ込めてある王妃と殿下にも同じものを……」
「わ、わかりましたっ!」
そう言うと、男は頭を下げ王の間から去っていく。
一抹の不安を抱えながら、国王に向き合うと、コンデ公爵は嗜虐的な笑みを浮かべた。
「……さて、話に戻りましょうか。先日、我々に何の相談も無く出された御布令、今後あの様な事があっては困ります。今後、二度とこの様な事が起こされぬよう、陛下を初めとした王族の皆様方には、『契約書』による制約をお願いしたいと考えているのですが、いかがでしょうか?」
そう提案すると、国王は「う、うむ。しかし……」と言って難色を示す。
「陛下……状況をわかっておいでですか? 現在、この王城は私達により占拠されております。また城壁の外には、私達が連れて来た領軍もいるのです。昨日もお話させて頂きましたが、もし万が一、断るようであれば、我々も相応の……」
これから、国王に重圧を掛けようという時、コンコンッと扉を叩く音が聞こえてくる。
「……入りなさい」
少し苛立ちながらそう呟くと、先ほどの男が配膳台に食事を乗せてやってきた。
しかし、どこか表情がおかしい。
一体、どうしたというのだろうか?
「……し、食事をお持ち致しました」
「ええ、それではまず、陛下と宰相に配膳して……」
そこまで言って絶句する。
国王と宰相も男が持ってきた食事を見て言葉も出ない様だ。
絶対零度の空気の中、男は国王と宰相、そしてコンデ公爵の前に食事を配膳すると、申し訳なさそうな表情を浮かべ頭を下げた。
「……パ、パスタのオリーブオイル漬けとなります」
「パ、パスタのオリーブオイル漬け……」
思わずそう呟くと、コンデ公爵は恐る恐るフォークでパスタのオリーブオイル漬けを突く。
見た目、突いた感触からするにこれはただ、パスタ(乾麺)をオリーブオイルに浸しただけの代物……。もはや食べ物でも何でもない。
配膳台と共に男が出て行くと、王の間は居た堪れない空気に包まれる。
「……公爵。あなたは、私達にこれを食べろと言うのですか?」
宰相はコンデ公爵に非難するような視線を送った。
そんな目で見られても困る。こちらも同じものを出されているのだ。
まさかこんなものを出されると思わず、こちらも困惑している。
とはいえ、一度出してしまった以上、強気で行く他ない。
「……ええ、その通りです。実は今朝、賊に食糧庫を荒らされましてね。こんなものしか残っていないのですよ。別に食べなくても構いませんよ? 私は頂きますけどね」
コンデ公爵は、オリーブオイルに浸されたパスタ(乾麺)を器用にフォークで掬うとそれを口に入れる。
ゴリゴリとした歯ごたえにオリーブオイルの味。
壊滅的な味と食感だ。
こんな物、食べ物でも何でもない。
何だか、顎まで痛くなってきた。歯が欠けそうだ。
――と、言うより食べて大丈夫なのだろうか?
油と乾麺……明らかに消化に悪そうだ。
しかし、食べる言った手前食べるしかない。
何せ、今はこれしか食べ物が無いのだ。
しかし、失敗したな……。
昨晩は、それなりに美味い料理が出てきたから大丈夫だと思っていたが、あれは男爵が作ったものだったか……。
今回、厨房に立っているのは伯爵。
誰も料理なんてした事が無かったのだろう。
カチャカチャと、フォークが食器に触れる音が鳴り、ようやく、パスタのオリーブオイル漬けを食べ終えたコンデ公爵は口を抑える。
胃が痛い。喉が渇く。
やはり、乾麺状態のパスタを口にするのは駄目だったか……。
「……そ、それでは、話し合いを続けましょう。『契約書』による制約を受け入れて頂けますね?」
そう尋ねると、国王は条件付きで頷いた。
「……仕方があるまい。条件付きで良ければ受け入れよう」
「へ、陛下っ!?」
まさか、受け入れると思っていなかったのだろう。
宰相が唖然とした表情を浮かべた。
意外と今、出した食事が決め手となったのかも知れない。
そんな事を思いながらコンデ公爵は条件を尋ねる。
「ほう。条件ですか……それでは、伺わせて頂きましょう」
「……返済期限十五年。無利子・無利息でゴミ・汚物処理場を立て直す為のお金を貸して欲しい。また、我々の身分そして身柄の保障。私から出す条件はそれだけだ……」
「ほう。我々から資金を借り入れたいと、そういう事ですか……」
中々、殊勝な事を言う。
「……いいでしょう。ただし、返済期限は十年とさせて頂きます。それでよろしいですね?」
「ああ、それで構わぬ」
国王の返事を聞くと、コンデ公爵は笑みを浮かべた。
「……二言はありませんね? それでは契約を結びましょう」
王の間に待機している貴族に目で合図すると、男が契約書を持ってくる。
そして自ら条件を書き足すと、国王へサインを求めた。
「さて、こちらにサインして頂きましょう……」
「うむ」
そう言うと、国王は契約書に署名する。
契約書を確認し、副本を手渡すと、コンデ公爵はそれを懐にしまう。
契約書の甲欄には、セントラル王国中の貴族の署名がしてあった。
さて、残る問題はいつ領軍が外にいる平民を制圧してくれるのか……。
まあ所詮は平民。領軍の力があれば、二日もしない内に制圧し、我々を解放してくれるだろう。
「それでは、皆様にはもう少々、この窮屈な生活を送って頂きます。何、安心して下さい。そう長くなりませんよ。あと二日の辛抱です」
それまで、辛抱強く待てばいい。
「……では、見張りは任せましたよ」
「は、はい!」
自分より下位の貴族に見張りを任せ、王の間を出た。
◇◆◇
王の間を出たコンデ公爵を見て、カティ宰相は声を上げる。
「あの様な条件を飲んでよろしかったのですか!?」
「――ああ、仕方があるまい。それに、こんな生活もうこりごりだ……」
窓の外を見れば、悪臭漂うゴミの山。
そして、目の前には、配膳されたオリーブオイルに浸されただけのパスタが置いてある。
「それに、コンデ公爵の思い通りにはならぬだろうよ。先日の放送を聞いただろう……どこかで聞いた声だとは思わなかったか?」
「――声……ですか?」
ガルズ王にそう問いかけられるも、カティ宰相は気付かない。
その声がモブ・フェンリルスーツを身に纏った翔の声であった事に……。
「――そうか。ならよい。それでは、明日の十時……いや、もっと早い時間がいいか。我々も外に出るぞ」
奴等の要求は『身分制に基づく不公平な課税制度の廃止』及び『十年間の国民に対する税金の免除』。国が貴族に課税する分には何をしても構わないのだから、セントラル王国の国王であるガルズ王には何の影響もない。
何せ、外に出る為には、この条件に従わなくてはならぬのだ。
先ほど、課税する際には貴族達と話し合いを持つ旨、契約を結んでしまったが、ここを出る貴族が契約を結ぶ以上、『身分制に基づく不公平な課税制度の廃止』の項目により税収は勝手に増えるし、『十年間の国民に対する税金の免除』をした所で、貴族や冒険者協会からの税収があるのだから余裕で賄う事ができる。
それに、十年間。貴族達から金を借り入れる事ができるのだ。
そして、我々の身分・身柄は貴族によって保障されている。
『契約書』の効力は絶対。貴族全員の署名がある以上、それを違える事はできない。代替わりした所で、それは同じだ。結局、先代が生きている以上、次代にもある程度の影響力を齎すのが世の常だから。
この場所からの脱出も……まあ、問題はない。
何せ、契約により貴族は我々に危害を加える事ができなくなった……。
何より、ガルズ王には、翔とのホットラインがある。
ガルズ王は、メニューバーからメール機能を立ち上げると、一通のメールを翔に向けて送る。
内容は、すべての条件を受け入れるので明日、明朝五時。我々を密かに王城の外に連れ出して欲しいというもの。
セントラル王国の国王であるガルズ・セントラル自らが送るメールだ。
無碍にはされないだろう。
メールを送ると、ガルズ王は静かに目を瞑った。
◇◆◇
午後八時。翔が新橋大学付属病院の特別室で寛いでいると、『ピコン!』という電子音が頭の中に鳴り響く。
「うん? なんだ……?」
メール機能を立ち上げると、ガルズ・セントラルという奴から一通のメールが届いていた。
「ガルズ・セントラル……誰だコイツ?」
メールを開くと、そこには偉そうな文章が書かれている。
要約すると、『すべての条件を受け入れるので明日、明朝五時。我々を密かに王城の外に連れ出して欲しい』というものだ。
阿保らしい。何で明朝五時に起きて、態々、そんな事をしてやらなければならないというのだろうか?
俺が十時と指定したからには十時なの……。
条件を受け入れてやるから、朝五時に迎えに来いとか馬鹿じゃないか?
よし。決めた。明日は休みにしよう。
何か、上から目線で命令されてムカついた。
いや、この際だ。やっぱり、次は三日後にしよう。
人は何も食べなくても、一週間位なら生きていられると聞いた事がある。
「よし。そうと決まれば……」
そう呟くと、俺はメール機能を立ち上げ、その旨を書いて関係各所にメールをする。そして、テーブルに置いてあったビールを手に取ると、柿ピーを摘みながら動画配信サイトで独占配信中のアニメを見ながら高笑いを上げた。
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2022年12月13日AM7時更新となります。
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