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第195話 準暴力団・万秋会②
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「なっ……」
な、何だコイツ……まさか俺の事を威嚇しているのか……?
矢田牧夫は、リブロースにフォークを突き立てると、手慣れた様子で赤身と脂身を切り分け、肉汁滴るナイフを舌で舐める。
特に切れ味が上がるわけでもなく寧ろ舌が切れる可能性あるのになんでそんな事ができるんだ……意味がわからない。
っていうか、マナーめっちゃ悪いな……。
つーか、ナイフ舐めんな。そんなに舐めたきゃアイスのヘラかカップアイスの蓋の裏でも舐めていてほしい。
脳内一人ノリツッコミをして目の前に座る準暴力団・矢田牧夫の奇行から目を逸らすと『コホンッ』と咳を吐く。
まあ、こいつは仮にも準暴力団……。他人に舐められない様、必死なのだろう。
舐められたくないと思う人ほどナイーブなのだと聞いた事がある。
自分の価値を自分で低く見積もっている割に、自分の価値を高く見せようとする事に必死になっている。それが、自己肯定感の低い人の傾向だ。
自己肯定感が低いから、すぐ人に舐められていると感じるし、そんな自分を高く見せようとするから因縁を付けて喧嘩する。
そして、暴力で相手を屈服し、自分の方が強いという謎の理由で自己肯定感を高めるのだ。
矢田牧夫の奇行はまさにそんな感じ。
高く積み上がり、今にも崩れそうなジェンガに接する様な気持ちで対応するとしよう。
「……それでどうかな、サイゼリヤのリブロースは美味しい?」
特に会話内容も無かったので、ありきたりな一言をそう呟くと、矢田牧夫は脂身と赤身のバランスの良いリブロースを口に運び、その脂を生ビールで流し込んだ。
しかし、くちゃくちゃと音を立てて食べるだけで返事がない。
一心不乱にリブロースを口に放り込みクチャラ―してる。
――うん。何と言うか、こいつ……俺の話、全然聞いてねぇな……。
何だコイツ。仮にも俺は、宝くじ研究会・ピースメーカーの名誉会長だぞ?
あれ、名誉顧問だったかな?
いや、そんな事はどうでもいい。
俺が言いたいのは、俺の話を聞けという事だ。
確かに言ったよ?
『食べながら話をしようか』とか、何とか……。
でも、ガン無視しながらリブロースを食べるのは違くない?
もしかして、舐められてる?
舐められてるよね?
舐められてるな、これは??
「――ちょっと、フォークとナイフを置いて話を……」
そう呟くと、矢田牧夫はナイフを持ったまま手を挙げた。
――何だ?
フォークとナイフを置けと言ったのに、何故、ナイフを持ったまま手を挙げる。
無言の抵抗か?
それとも、俺に対して圧力をかけているのか?
言っておくが、俺はこれでもかなりの修羅場を潜っている。
準暴力団の強面の顔圧になんか負けないぞ?
鋭い視線を送ると、矢田牧夫は声を上げる。
「――すいません。生ビールもう一杯お願いします!」
「生ビールのお代わりかいぃぃぃぃ!」
止めろぉぉぉぉ!
サイゼリヤはそんなシステムじゃないから。手を挙げて頼みたい料理名や飲み物を言えば出してくれるシステムじゃなくなったからっ!
周囲に視線を向けると、皆の視線が集中する。
そして、矢田牧夫の強面を見て皆一斉に目を逸らした。
つーか、お前は俺の何を見ていたんだっ!
目の前で注文しただろ。目の前で注文したよな? したよな、俺?
そう言う時は、こうするんだよ!
俺は無言でメニュー表に生ビールのメニュー番号を記入すると呼び出しボタンで店員さんを呼ぶ。
「――すいません。生ビール三杯お願いします」
「はい。生ビール三杯ですね。少々、お待ち下さい」
一連のやり取りを終えると、矢田牧夫はミラノ風ドリアとマルゲリータピザに手を付け始めた。
矢田牧夫はピザカッターが用意されているにも係わらず、ナイフとフォークを巧みに使いピザをカット。
ピザの尖っている先端部分を内側に少し折り込むと、折り込んだ部分を軸にして耳の方までくるくると巻き付けフォークに差して口にする。
うん。中々、スマートだ。
つーか、何で、サイゼリヤの注文の仕方がわからなかった奴が、本場イタリアのピザを食べる時の正式なマナーを知ってんの?
何だか、色々とおかしいだろ。
――いや、落ち着け、俺……。
準暴力団の組員がピザを食べる時のマナーを知っていたっていいじゃない。
大事なのはそこじゃない。
コイツをどう退会に導くかが重要なのだ。
俺はナイフとフォークを使い、ミラノ風ドリアを巧みに食べる矢田牧夫に再度話しかける。
「……確か、矢田牧夫さんだったよね? 食べながらで良いから聞いてくれるかな?」
しかし、矢田牧夫はミラノ風ドリアを食べるのに必死だ。
ナイフの腹にドリアを乗せ、器用にミラノ風ドリアを食べている。
簡単に言えば、俺の話を聞く気が全然ない。
そう認識した俺はもう勝手に喋る事にした。
「……矢田牧夫さんは、暴力団排除条例って知ってる?」
暴力団排除条例の事を尋ねると、矢田牧夫の手が止まる。
仮にも準暴力団。当然知っている筈だ。
「知っているよね? 俺も知っているよ。君が準暴力団・万秋会の組員だって事をさ……」
――ガチャン
すると今度は、矢田牧夫の手がビールジョッキに当たり、テーブルの下に落下してジョッキが割れる。
どうやら、相当ショックを受けているみたいだ。
もしかして、バレていないとでも思っていたのだろうか?
「……残念だよ。君が準暴力団・万秋会の組員だなんてね」
俺がそう呟くと、エレメンタル達が矢田牧夫に視線を向ける。
すると、矢田牧夫は慌てた表情を浮かべる。
「――い、いや、違う。俺はもう準暴力団・万秋会の組員じゃないっ!」
いや、声がデケェよ。
矢田君。君ね。ここをどこだと思っているんだい?
カラオケボックスじゃないんだよ?
大声出していいのは、カラオケボックスか音楽室位のもんだから。
お願いだから、こんな所で『準暴力団』という言葉を出さないでっ!?
よしんば出したとしても、大声で言わないでっ!?
お蔭でジョッキが割れてしまったというのに店員さんが怖がって寄り付かなくなっちゃったからっ!
つーか、もうここ来れねーよ!
俺はテーブルに置かれた紙ナプキンで床を拭くと、割れた破片を一カ所に集める。
そして、眉間に皺を寄せると、ため息を吐きながら諭すように言った。
「……ちょっと、声がデカいかな? って言うか、矢田君。ここがどこだかわかってる? イタリアンファミリーレストラン『サイゼリヤ』だよ? 準暴力団なんてパワーワードを大声で言っちゃ駄目でしょ?」
「だ、だがよ。俺は本当に三日前にバッくれてきて……」
「はっ?」
今、何て言った?
もしかして、バッくれたとか言わなかった?
聞き間違いかもしれないので、もう一度、聞いて見る。
「……えっと、聞き間違いだったらごめんね? 今、準暴力団をバッくれたとか言わなかった?」
『勿論、聞き間違いだよね?』と、そんなニュアンスで尋ねると、矢田牧夫は不貞腐れたかの様に呟く。
「ああ、俺は万秋会をバッくれて来たんだよ……」
その瞬間、俺はテーブルに頭を打ち付けた。
ぜ、全然、辞めてねーっ!?
バッくれたって何だよ。バッくれたってっ!?
もしかして、準暴力団の事をバイト感覚でやってたのっ!?
バッくれた位じゃ全然、辞められないからっ!
辞められる訳ないからっ!
「……だ、大丈夫か?」
俺、突然の奇行に矢田牧夫が危ない奴を見る様な視線で声をかける。
「――いや……」
全然大丈夫じゃないから……。
大丈夫所か、危険度がより増した気がする。
と、兎に角、何でバッくれたのか理由を聞かないと……。
「……矢田君。矢田君。君、準暴力団をバッくれたんだよね? 何でバッくれたのか理由を教えてくれない? 出来れば、準暴力団に入門した理由なんかも……」
すると、矢田牧夫は思いの外、簡単に喋ってくれた。
「あ、ああ、実は簡単に稼げると思って準暴力団・万秋会に入門したんだけどよ。全然、稼げなくって……それ所か、入門して暫くしたら、銀行の預金口座を勝手に解約されるし、家を借りる事もできないし……挙句の果てには、会費として毎月一万円も持ってかれるんだぜ? まだ入門したばかりだから稼ぎも何にも無いのによぉ……」
「お、おう……」
思った以上に、浅はかな理由で準暴力団に入門したようだ。
暴力団排除条例が施行されている今、何でそんな簡単に金が稼げると思ったのだろうか?
準暴力団に入門する事で銀行口座を強制解約させられ、家を借りれなくなる位なら普通に働いた方がまだ稼げる気がする。
「――そ、それでバッくれたと……」
「ああ……」
そう呟きながら、ミラノ風ドリアを食べる矢田牧夫。
そんな矢田牧夫を見て、俺は頭を抱える。
準暴力団とはいえ、暴力団である事に変わりはない。
一度、入門した以上、バッくれただけでは、警察に脱退したと認められないだろう。暴力団を抜ける為には、それなりの手続きがいる。
確か、脱退届的なものが必要だった筈だ。
そんな情報をニュース的な何かで見たような気がする。
しかし、それはそれとして……
「……宝くじ研究会にはどうやって入会したの?」
宝くじ研究会・ピースメーカーの事を知るのは、会田さん達のグループだけの筈だ。
何となく予想がつくがとりあえず聞いておかねば……。
「ああ、それは有名な区議会議員の息子が纏めていたネットワークビジネスグループに入会していて……」
「なるほど……」
やはりか……何となくそんな気はしていた。
と、いう事は……。
「……もしかして、矢田君の他にも暴力団関係者が紛れ込んでいたりする?」
「えっ? ああ……まあ……」
何とも歯切れの悪い回答。
しかし、思っていた通り、宝くじ研究会・ピースメーカー内に最低でもあと一人暴力団関係者が紛れ込んでいる様だ。
「そいつ等は、矢田君と同じく準暴力団からバッくれた人なの?」
すると、矢田牧夫は苦い表情を浮かべる。
「い、いや、あいつ等は別に……」
なる程、『あいつ等』ね……。
「それじゃあ、最後に一つだけ……」
俺は、電話番号を検索すると、スマホ片手に立ち上がる。
「準暴力団の万秋会に君の居場所をバラされるのと、俺の言う通りに行動するのどっちがいい?」
「えっ……?」
そう尋ねると、矢田牧夫はスプーンからミラノ風ドリアをポロリと落とし、唖然とした表情を浮かべた。
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2022年12月18日AM7時更新となります。
な、何だコイツ……まさか俺の事を威嚇しているのか……?
矢田牧夫は、リブロースにフォークを突き立てると、手慣れた様子で赤身と脂身を切り分け、肉汁滴るナイフを舌で舐める。
特に切れ味が上がるわけでもなく寧ろ舌が切れる可能性あるのになんでそんな事ができるんだ……意味がわからない。
っていうか、マナーめっちゃ悪いな……。
つーか、ナイフ舐めんな。そんなに舐めたきゃアイスのヘラかカップアイスの蓋の裏でも舐めていてほしい。
脳内一人ノリツッコミをして目の前に座る準暴力団・矢田牧夫の奇行から目を逸らすと『コホンッ』と咳を吐く。
まあ、こいつは仮にも準暴力団……。他人に舐められない様、必死なのだろう。
舐められたくないと思う人ほどナイーブなのだと聞いた事がある。
自分の価値を自分で低く見積もっている割に、自分の価値を高く見せようとする事に必死になっている。それが、自己肯定感の低い人の傾向だ。
自己肯定感が低いから、すぐ人に舐められていると感じるし、そんな自分を高く見せようとするから因縁を付けて喧嘩する。
そして、暴力で相手を屈服し、自分の方が強いという謎の理由で自己肯定感を高めるのだ。
矢田牧夫の奇行はまさにそんな感じ。
高く積み上がり、今にも崩れそうなジェンガに接する様な気持ちで対応するとしよう。
「……それでどうかな、サイゼリヤのリブロースは美味しい?」
特に会話内容も無かったので、ありきたりな一言をそう呟くと、矢田牧夫は脂身と赤身のバランスの良いリブロースを口に運び、その脂を生ビールで流し込んだ。
しかし、くちゃくちゃと音を立てて食べるだけで返事がない。
一心不乱にリブロースを口に放り込みクチャラ―してる。
――うん。何と言うか、こいつ……俺の話、全然聞いてねぇな……。
何だコイツ。仮にも俺は、宝くじ研究会・ピースメーカーの名誉会長だぞ?
あれ、名誉顧問だったかな?
いや、そんな事はどうでもいい。
俺が言いたいのは、俺の話を聞けという事だ。
確かに言ったよ?
『食べながら話をしようか』とか、何とか……。
でも、ガン無視しながらリブロースを食べるのは違くない?
もしかして、舐められてる?
舐められてるよね?
舐められてるな、これは??
「――ちょっと、フォークとナイフを置いて話を……」
そう呟くと、矢田牧夫はナイフを持ったまま手を挙げた。
――何だ?
フォークとナイフを置けと言ったのに、何故、ナイフを持ったまま手を挙げる。
無言の抵抗か?
それとも、俺に対して圧力をかけているのか?
言っておくが、俺はこれでもかなりの修羅場を潜っている。
準暴力団の強面の顔圧になんか負けないぞ?
鋭い視線を送ると、矢田牧夫は声を上げる。
「――すいません。生ビールもう一杯お願いします!」
「生ビールのお代わりかいぃぃぃぃ!」
止めろぉぉぉぉ!
サイゼリヤはそんなシステムじゃないから。手を挙げて頼みたい料理名や飲み物を言えば出してくれるシステムじゃなくなったからっ!
周囲に視線を向けると、皆の視線が集中する。
そして、矢田牧夫の強面を見て皆一斉に目を逸らした。
つーか、お前は俺の何を見ていたんだっ!
目の前で注文しただろ。目の前で注文したよな? したよな、俺?
そう言う時は、こうするんだよ!
俺は無言でメニュー表に生ビールのメニュー番号を記入すると呼び出しボタンで店員さんを呼ぶ。
「――すいません。生ビール三杯お願いします」
「はい。生ビール三杯ですね。少々、お待ち下さい」
一連のやり取りを終えると、矢田牧夫はミラノ風ドリアとマルゲリータピザに手を付け始めた。
矢田牧夫はピザカッターが用意されているにも係わらず、ナイフとフォークを巧みに使いピザをカット。
ピザの尖っている先端部分を内側に少し折り込むと、折り込んだ部分を軸にして耳の方までくるくると巻き付けフォークに差して口にする。
うん。中々、スマートだ。
つーか、何で、サイゼリヤの注文の仕方がわからなかった奴が、本場イタリアのピザを食べる時の正式なマナーを知ってんの?
何だか、色々とおかしいだろ。
――いや、落ち着け、俺……。
準暴力団の組員がピザを食べる時のマナーを知っていたっていいじゃない。
大事なのはそこじゃない。
コイツをどう退会に導くかが重要なのだ。
俺はナイフとフォークを使い、ミラノ風ドリアを巧みに食べる矢田牧夫に再度話しかける。
「……確か、矢田牧夫さんだったよね? 食べながらで良いから聞いてくれるかな?」
しかし、矢田牧夫はミラノ風ドリアを食べるのに必死だ。
ナイフの腹にドリアを乗せ、器用にミラノ風ドリアを食べている。
簡単に言えば、俺の話を聞く気が全然ない。
そう認識した俺はもう勝手に喋る事にした。
「……矢田牧夫さんは、暴力団排除条例って知ってる?」
暴力団排除条例の事を尋ねると、矢田牧夫の手が止まる。
仮にも準暴力団。当然知っている筈だ。
「知っているよね? 俺も知っているよ。君が準暴力団・万秋会の組員だって事をさ……」
――ガチャン
すると今度は、矢田牧夫の手がビールジョッキに当たり、テーブルの下に落下してジョッキが割れる。
どうやら、相当ショックを受けているみたいだ。
もしかして、バレていないとでも思っていたのだろうか?
「……残念だよ。君が準暴力団・万秋会の組員だなんてね」
俺がそう呟くと、エレメンタル達が矢田牧夫に視線を向ける。
すると、矢田牧夫は慌てた表情を浮かべる。
「――い、いや、違う。俺はもう準暴力団・万秋会の組員じゃないっ!」
いや、声がデケェよ。
矢田君。君ね。ここをどこだと思っているんだい?
カラオケボックスじゃないんだよ?
大声出していいのは、カラオケボックスか音楽室位のもんだから。
お願いだから、こんな所で『準暴力団』という言葉を出さないでっ!?
よしんば出したとしても、大声で言わないでっ!?
お蔭でジョッキが割れてしまったというのに店員さんが怖がって寄り付かなくなっちゃったからっ!
つーか、もうここ来れねーよ!
俺はテーブルに置かれた紙ナプキンで床を拭くと、割れた破片を一カ所に集める。
そして、眉間に皺を寄せると、ため息を吐きながら諭すように言った。
「……ちょっと、声がデカいかな? って言うか、矢田君。ここがどこだかわかってる? イタリアンファミリーレストラン『サイゼリヤ』だよ? 準暴力団なんてパワーワードを大声で言っちゃ駄目でしょ?」
「だ、だがよ。俺は本当に三日前にバッくれてきて……」
「はっ?」
今、何て言った?
もしかして、バッくれたとか言わなかった?
聞き間違いかもしれないので、もう一度、聞いて見る。
「……えっと、聞き間違いだったらごめんね? 今、準暴力団をバッくれたとか言わなかった?」
『勿論、聞き間違いだよね?』と、そんなニュアンスで尋ねると、矢田牧夫は不貞腐れたかの様に呟く。
「ああ、俺は万秋会をバッくれて来たんだよ……」
その瞬間、俺はテーブルに頭を打ち付けた。
ぜ、全然、辞めてねーっ!?
バッくれたって何だよ。バッくれたってっ!?
もしかして、準暴力団の事をバイト感覚でやってたのっ!?
バッくれた位じゃ全然、辞められないからっ!
辞められる訳ないからっ!
「……だ、大丈夫か?」
俺、突然の奇行に矢田牧夫が危ない奴を見る様な視線で声をかける。
「――いや……」
全然大丈夫じゃないから……。
大丈夫所か、危険度がより増した気がする。
と、兎に角、何でバッくれたのか理由を聞かないと……。
「……矢田君。矢田君。君、準暴力団をバッくれたんだよね? 何でバッくれたのか理由を教えてくれない? 出来れば、準暴力団に入門した理由なんかも……」
すると、矢田牧夫は思いの外、簡単に喋ってくれた。
「あ、ああ、実は簡単に稼げると思って準暴力団・万秋会に入門したんだけどよ。全然、稼げなくって……それ所か、入門して暫くしたら、銀行の預金口座を勝手に解約されるし、家を借りる事もできないし……挙句の果てには、会費として毎月一万円も持ってかれるんだぜ? まだ入門したばかりだから稼ぎも何にも無いのによぉ……」
「お、おう……」
思った以上に、浅はかな理由で準暴力団に入門したようだ。
暴力団排除条例が施行されている今、何でそんな簡単に金が稼げると思ったのだろうか?
準暴力団に入門する事で銀行口座を強制解約させられ、家を借りれなくなる位なら普通に働いた方がまだ稼げる気がする。
「――そ、それでバッくれたと……」
「ああ……」
そう呟きながら、ミラノ風ドリアを食べる矢田牧夫。
そんな矢田牧夫を見て、俺は頭を抱える。
準暴力団とはいえ、暴力団である事に変わりはない。
一度、入門した以上、バッくれただけでは、警察に脱退したと認められないだろう。暴力団を抜ける為には、それなりの手続きがいる。
確か、脱退届的なものが必要だった筈だ。
そんな情報をニュース的な何かで見たような気がする。
しかし、それはそれとして……
「……宝くじ研究会にはどうやって入会したの?」
宝くじ研究会・ピースメーカーの事を知るのは、会田さん達のグループだけの筈だ。
何となく予想がつくがとりあえず聞いておかねば……。
「ああ、それは有名な区議会議員の息子が纏めていたネットワークビジネスグループに入会していて……」
「なるほど……」
やはりか……何となくそんな気はしていた。
と、いう事は……。
「……もしかして、矢田君の他にも暴力団関係者が紛れ込んでいたりする?」
「えっ? ああ……まあ……」
何とも歯切れの悪い回答。
しかし、思っていた通り、宝くじ研究会・ピースメーカー内に最低でもあと一人暴力団関係者が紛れ込んでいる様だ。
「そいつ等は、矢田君と同じく準暴力団からバッくれた人なの?」
すると、矢田牧夫は苦い表情を浮かべる。
「い、いや、あいつ等は別に……」
なる程、『あいつ等』ね……。
「それじゃあ、最後に一つだけ……」
俺は、電話番号を検索すると、スマホ片手に立ち上がる。
「準暴力団の万秋会に君の居場所をバラされるのと、俺の言う通りに行動するのどっちがいい?」
「えっ……?」
そう尋ねると、矢田牧夫はスプーンからミラノ風ドリアをポロリと落とし、唖然とした表情を浮かべた。
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2022年12月18日AM7時更新となります。
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