207 / 411
第207話 セントラル王国②
しおりを挟む
「――ち、ちょっと、待ってくれっ!」
その場を後にしようとすると、カティ宰相が俺に向かってそう叫ぶ。
「……他に何か用でも?」
まだ何かあるのかと呆れつつ振り返ると、カティ宰相は傲慢にも唾を飛ばしながら値引き要求をしてきた。
「さ、流石に一千二百億コルは高過ぎる! い、いえ……高過ぎますっ……せめて、百億コルに……財政がひっ迫しているんです。このままでは経済が立ち行かなくなってしまいます!」
傲慢なんだか謙虚なんだかわからないが、いきなり十二分の一まで値切るとは……。しかも、財政がひっ迫していると訳の分からない言い訳をして……。
「はあ……そうですか。それなら別に支払わなくても問題ありませんよ? そのまま放置するだけなので……」
第一、財政がひっ迫しているのはお前等のせいだろうがと声を大にして言いたい。
まあ、こちらとしても無理にとは言わないので、それならゴミを放置するだけだ。
その場合、城壁内に対するゴミ振らしも継続となる。
「――で、ですがっ……」
「国側からの値引き要求は一切受け付けません。話しはお終いのようですね……今度こそ失礼します」
そう言って、今度こそ、その場から離れようとするとカティ宰相が呟く様に言う。
「……わ、私の事を恨んでいるのか?」
「えっ? 逆に恨まれてないとでも思っていたんですか?」
ええ、恨んでますよ。当然。それが何か?
俺は結構、根に持つタイプなんです。やられた事は、十倍以上にして返します。
むしろ、集めた税金を好き勝手使ってきた奴等に税金の用途なんて任せられないので、この機会に搾り取りまくってやろうとすら思っています。
ハッキリそう言ってやると、カティ宰相はへたり込む。
「――そ、そんなぁ……」
「いや、『そんなぁ』と言われても……」
権力を盾に好き勝手してきたんだ。恨まれて当然である。
むしろ、恨まれていないと思っていた事に驚きだ。称賛にも価する。
まあ、虐める側は虐めている事に気付かないというし、権力者側もそれは同じで、これ位なら増税してもいいだろうとか、これ位なら暴虐してもいいだろうとそう考えていたのかも知れない。
そう考えると、何だか可哀相になってきた。
権力を盾に好き勝手していた貴族や宰相達は、精神や道徳心が著しく欠けた状態にあったという事。つまり、国の上流階級にしか発症しない特殊な精神疾患を患っていたという事になる。
考えてみればそうかも知れない。
自分達の資産を増やす為、他人の生活を谷底に突き落とし、税金を搾取するなんて行為が平気でできる人間、存在するだろうか。
答えは否だ。断じて否である。
きっと、特権階級にズップリ使っている内に税金を搾取したくて堪らなくなる精神疾患を患ってしまったのだろう。
やったー! 特権階級にいれば、国民が血税で生活を潤わせてくれるぞ!
ああ、お金を借りちゃった。このままじゃ自分の借金になっちゃう。どうしよう困ったな……そうだ! 国民から血税を毟り盗ればいいんだ! わーい。これで返済できるぞ!
特権階級のお友達がもっとお金を欲しそうにしている。助けてあげたいな……。
よし! 今こそ国民から血税を毟り盗ろう!
国民がいれば、公金チューチューし放題だ! チューチュー! チューチュー!
――と、まあ、そんな精神疾患を抱えた人達が国政を担っているのだから、国が困窮し財政難に苦しむ事になるのは当たり前だ。
そして、今、国民と言う名の打ち出の小槌を失い顔を青褪めさせている。
これもまた当然だ。もう公金に群がれない。チューチューする事ができない。
自分達で作り上げた公金チューチュー機構がなくなってしまった。明日からどうやって贅沢な生活を送れば良いんだ。税金を搾取しないと力が出ない、と……。
ああ、やっぱり駄目だな。考えるだけで反吐が出る。
宰相には、ああ言ったが、王城をこのままにはしておけないわ。
それに、ここら辺の土地は、俺の経営する宿の支店長が投資目的で購入している。
勿論、原資は俺だ。
ゴミの山が王都の中心にあるのは景観が悪いからな。このままでは、地価に影響を及ぼしそうだ。
なので、俺は渋々ながら進言する事にした。
「……まあ、俺も鬼ではないので、アドバイスの一つ位はして差し上げますよ」
そう呟くと、カティ宰相は俺の顔を見上げる。
「ほ、本当ですかっ!?」
「ええ、本当です。いいですか? 今、財政がひっ迫しているのは、税金の無駄遣い。及び貴族が国民の血税を掠め取り自分の資産にしているのがすべての原因です。なので、取り敢えず、貴族が掠め取った税金を返還して貰いましょう」
片手を上げると、俺の経営する宿の支店長が帳簿を持って現れる。
そして、カティ宰相に帳簿を渡すと、会釈して後ろに下がった。
「――こ、これは……っ!?」
カティ宰相は帳簿に視線を向けると、目を見開く。
「はい。これは貴族の方々の財政状況を現す帳簿です。これがあれば、貴族個々人の資産の把握ができるだけではなく所得に応じた公平な課税をする事ができます」
カティ宰相は目を見開きながらページを捲っていく。
「こ、これをどこで……」
どうやら国では、貴族達の財政状況を把握していなかったようだ。嘆かわしい事である。
「なに、簡単な事ですよ。契約書に小さな文字で書いておいたんです。こういう時の為にね。貴族の方々も喜んで協力してくれました(支店長談)。なんでも、涙を流しながら提出してくれたとか……。鬼、悪魔という誉め言葉も頂きました。これから先、一年毎に財政状態及び経営成績の提出をしてくれるそうです。勿論、随時、その報告を提出させる事もできます。良かったですね。これがあれば、貴族の持つ余剰資金すべてを把握する事ができますよ?」
契約書の効果で随時、あるいは年に一度、無理矢理、資産と所得を報告させる。
そうする事により、国側は貴族の持つ所得や資産の把握が容易になる。
「……これで、貴族が持つ余剰資金を取り上げればいいんです。あなた方が国民にやったようにね? 簡単な事でしょう?」
ニヤニヤしながらそう言ってやると、カティ宰相は頬に一筋の汗を流した。
「し、しかし……」
「大丈夫……大丈夫ですよ。これまで余分に徴収していた税金を返して貰うだけです。その為に、彼等と契約書を結んだのですから……」
俺の言葉を聞き、カティ宰相は『ゴクリ』と息を飲む。
そんなカティ宰相の耳に向かって囁いた。
「これから十年間。国は貴族に対して好きなだけ税金を徴収する事ができます。貴族からお金を借りる事だって自由です。良かったですね。これで財政問題は解決しますよ。なに、先ほども言いましたが問題ありません。国は御布令を出すだけでいいんです。たった、それだけで、後は勝手に貴族が余分に徴収していた税金を返納してくれます。国民達もさぞ喜ぶ事でしょう。まあ、やり過ぎると、貴族が守護する領地を隣国に切り取られてしまうかも知れないので注意は必要ですがね……」
そう囁くと、俺は宰相の肩を叩く。
「ほら、これですべてが解決ですよ。良かったですね。宰相のヘマで倍額に跳ね上がった一千二百億コルも貴族から税金を徴収すれば補填可能。城壁内は綺麗になり、おまけにゴミが降り注ぐ事もなくなります。城壁を覆っている透明な壁も消えるかも知れませんし、城で働いていた方々も帰って来てくれるかも知れませんよ? まあ、この国の最低賃金をかなり引き上げてしまったので、相当お金を掛けなければ継続雇用は難しいかも知れませんが……」
「な、なにっ……!?」
俺がゲーム内通貨に糸目を付けず行った賃金改革により国民一人一人の所得は倍増している。悪評の代名詞ともなった王城ことゴミ捨て場で働いてくれる人がいるか疑問だ。
国王に使える金はマジでない。
あったら最初からそれを使ってゴミ処理場の再建工事を始めている筈だ。
国の運営をするに辺り、貴族に対する課税は急務。必ず行わなくてはならない。
「――まあ、国が国民に見捨てられないよう頑張って下さい」
そう言うと、宰相は真っ青な表情を浮かべた。
「そ、そんな……」
「まあ、こちらも協力できる所は協力させてもらいます。ああ、爆発したゴミ処理場の代わりをこちらの方で用意しておきました。もしよろしければ、ご利用下さい。適正料金でゴミの処理を承りますよ? 一千二百億コルも用意できましたら是非ご連絡を……。それでは、俺はこれで……」
国が復興できる土台は用意した。
後は、それを断行する事ができるのか。
それに係っている。
「――ま、待ってくれぇぇぇぇ!」
泣きながらそう叫ぶ宰相の声をBGM代わりに俺はその場を後にした。
◇◆◇
城門を後にした俺が真っ先に向かったのは、転移門『ユグドラシル』。
腕に付けているこの腕輪『ムーブ・ユグドラシル』があれば、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に転移する事ができる。
「――さて、面倒事はすべて宰相に押し付けたし、俺は俺で、そろそろ新しい世界に旅立とうかな……」
俺のレベルは三百オーバー。
新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に転移する為の条件を満たしている。
今の所、この条件を満たしているのは、俺と『ああああ』達のみ。
うん?
そういえば、最近、『ああああ』達の姿が見えないな……。
あいつ等、どこに行ったんだ?
『ああああ』達を見たのは、宰相が俺の経営する宿に徴税官を寄こして来たのが最後だ。
「……まさかね?」
まさか、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に行ってるなんて事はないよね?
最近全然、見ないけど、『スヴァルトアールヴヘイム』に行って帰ってこれなくなっちゃった。なんて事はないよね?
『ああああ』達に渡した『ムーブ・ユグドラシル』は回数制限のあるドロップ品。
既に上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』の離脱・攻略。そして、リージョン帝国からの帰還時と既に三回使っている為、後、一回か二回使えれば御の字状態にある。
下手したら帰ってこれなくなる可能性もあるし、流石のあいつ等もそんな状態の『ムーブ・ユグドラシル』で、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に向かおうとは考えもしないだろうと思っていたけど……。
流石に心配になってきた。
俺は転移門『ユグドラシル』前でメニューバーを開き、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』を選択すると、転移門の前で声を上げた。
「転移。スヴァルトアールヴヘイム」
声を上げると、俺の身体に蒼い光が宿り、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』へと転移した。
---------------------------------------------------------------
2022年1月11日AM7時更新となります。
その場を後にしようとすると、カティ宰相が俺に向かってそう叫ぶ。
「……他に何か用でも?」
まだ何かあるのかと呆れつつ振り返ると、カティ宰相は傲慢にも唾を飛ばしながら値引き要求をしてきた。
「さ、流石に一千二百億コルは高過ぎる! い、いえ……高過ぎますっ……せめて、百億コルに……財政がひっ迫しているんです。このままでは経済が立ち行かなくなってしまいます!」
傲慢なんだか謙虚なんだかわからないが、いきなり十二分の一まで値切るとは……。しかも、財政がひっ迫していると訳の分からない言い訳をして……。
「はあ……そうですか。それなら別に支払わなくても問題ありませんよ? そのまま放置するだけなので……」
第一、財政がひっ迫しているのはお前等のせいだろうがと声を大にして言いたい。
まあ、こちらとしても無理にとは言わないので、それならゴミを放置するだけだ。
その場合、城壁内に対するゴミ振らしも継続となる。
「――で、ですがっ……」
「国側からの値引き要求は一切受け付けません。話しはお終いのようですね……今度こそ失礼します」
そう言って、今度こそ、その場から離れようとするとカティ宰相が呟く様に言う。
「……わ、私の事を恨んでいるのか?」
「えっ? 逆に恨まれてないとでも思っていたんですか?」
ええ、恨んでますよ。当然。それが何か?
俺は結構、根に持つタイプなんです。やられた事は、十倍以上にして返します。
むしろ、集めた税金を好き勝手使ってきた奴等に税金の用途なんて任せられないので、この機会に搾り取りまくってやろうとすら思っています。
ハッキリそう言ってやると、カティ宰相はへたり込む。
「――そ、そんなぁ……」
「いや、『そんなぁ』と言われても……」
権力を盾に好き勝手してきたんだ。恨まれて当然である。
むしろ、恨まれていないと思っていた事に驚きだ。称賛にも価する。
まあ、虐める側は虐めている事に気付かないというし、権力者側もそれは同じで、これ位なら増税してもいいだろうとか、これ位なら暴虐してもいいだろうとそう考えていたのかも知れない。
そう考えると、何だか可哀相になってきた。
権力を盾に好き勝手していた貴族や宰相達は、精神や道徳心が著しく欠けた状態にあったという事。つまり、国の上流階級にしか発症しない特殊な精神疾患を患っていたという事になる。
考えてみればそうかも知れない。
自分達の資産を増やす為、他人の生活を谷底に突き落とし、税金を搾取するなんて行為が平気でできる人間、存在するだろうか。
答えは否だ。断じて否である。
きっと、特権階級にズップリ使っている内に税金を搾取したくて堪らなくなる精神疾患を患ってしまったのだろう。
やったー! 特権階級にいれば、国民が血税で生活を潤わせてくれるぞ!
ああ、お金を借りちゃった。このままじゃ自分の借金になっちゃう。どうしよう困ったな……そうだ! 国民から血税を毟り盗ればいいんだ! わーい。これで返済できるぞ!
特権階級のお友達がもっとお金を欲しそうにしている。助けてあげたいな……。
よし! 今こそ国民から血税を毟り盗ろう!
国民がいれば、公金チューチューし放題だ! チューチュー! チューチュー!
――と、まあ、そんな精神疾患を抱えた人達が国政を担っているのだから、国が困窮し財政難に苦しむ事になるのは当たり前だ。
そして、今、国民と言う名の打ち出の小槌を失い顔を青褪めさせている。
これもまた当然だ。もう公金に群がれない。チューチューする事ができない。
自分達で作り上げた公金チューチュー機構がなくなってしまった。明日からどうやって贅沢な生活を送れば良いんだ。税金を搾取しないと力が出ない、と……。
ああ、やっぱり駄目だな。考えるだけで反吐が出る。
宰相には、ああ言ったが、王城をこのままにはしておけないわ。
それに、ここら辺の土地は、俺の経営する宿の支店長が投資目的で購入している。
勿論、原資は俺だ。
ゴミの山が王都の中心にあるのは景観が悪いからな。このままでは、地価に影響を及ぼしそうだ。
なので、俺は渋々ながら進言する事にした。
「……まあ、俺も鬼ではないので、アドバイスの一つ位はして差し上げますよ」
そう呟くと、カティ宰相は俺の顔を見上げる。
「ほ、本当ですかっ!?」
「ええ、本当です。いいですか? 今、財政がひっ迫しているのは、税金の無駄遣い。及び貴族が国民の血税を掠め取り自分の資産にしているのがすべての原因です。なので、取り敢えず、貴族が掠め取った税金を返還して貰いましょう」
片手を上げると、俺の経営する宿の支店長が帳簿を持って現れる。
そして、カティ宰相に帳簿を渡すと、会釈して後ろに下がった。
「――こ、これは……っ!?」
カティ宰相は帳簿に視線を向けると、目を見開く。
「はい。これは貴族の方々の財政状況を現す帳簿です。これがあれば、貴族個々人の資産の把握ができるだけではなく所得に応じた公平な課税をする事ができます」
カティ宰相は目を見開きながらページを捲っていく。
「こ、これをどこで……」
どうやら国では、貴族達の財政状況を把握していなかったようだ。嘆かわしい事である。
「なに、簡単な事ですよ。契約書に小さな文字で書いておいたんです。こういう時の為にね。貴族の方々も喜んで協力してくれました(支店長談)。なんでも、涙を流しながら提出してくれたとか……。鬼、悪魔という誉め言葉も頂きました。これから先、一年毎に財政状態及び経営成績の提出をしてくれるそうです。勿論、随時、その報告を提出させる事もできます。良かったですね。これがあれば、貴族の持つ余剰資金すべてを把握する事ができますよ?」
契約書の効果で随時、あるいは年に一度、無理矢理、資産と所得を報告させる。
そうする事により、国側は貴族の持つ所得や資産の把握が容易になる。
「……これで、貴族が持つ余剰資金を取り上げればいいんです。あなた方が国民にやったようにね? 簡単な事でしょう?」
ニヤニヤしながらそう言ってやると、カティ宰相は頬に一筋の汗を流した。
「し、しかし……」
「大丈夫……大丈夫ですよ。これまで余分に徴収していた税金を返して貰うだけです。その為に、彼等と契約書を結んだのですから……」
俺の言葉を聞き、カティ宰相は『ゴクリ』と息を飲む。
そんなカティ宰相の耳に向かって囁いた。
「これから十年間。国は貴族に対して好きなだけ税金を徴収する事ができます。貴族からお金を借りる事だって自由です。良かったですね。これで財政問題は解決しますよ。なに、先ほども言いましたが問題ありません。国は御布令を出すだけでいいんです。たった、それだけで、後は勝手に貴族が余分に徴収していた税金を返納してくれます。国民達もさぞ喜ぶ事でしょう。まあ、やり過ぎると、貴族が守護する領地を隣国に切り取られてしまうかも知れないので注意は必要ですがね……」
そう囁くと、俺は宰相の肩を叩く。
「ほら、これですべてが解決ですよ。良かったですね。宰相のヘマで倍額に跳ね上がった一千二百億コルも貴族から税金を徴収すれば補填可能。城壁内は綺麗になり、おまけにゴミが降り注ぐ事もなくなります。城壁を覆っている透明な壁も消えるかも知れませんし、城で働いていた方々も帰って来てくれるかも知れませんよ? まあ、この国の最低賃金をかなり引き上げてしまったので、相当お金を掛けなければ継続雇用は難しいかも知れませんが……」
「な、なにっ……!?」
俺がゲーム内通貨に糸目を付けず行った賃金改革により国民一人一人の所得は倍増している。悪評の代名詞ともなった王城ことゴミ捨て場で働いてくれる人がいるか疑問だ。
国王に使える金はマジでない。
あったら最初からそれを使ってゴミ処理場の再建工事を始めている筈だ。
国の運営をするに辺り、貴族に対する課税は急務。必ず行わなくてはならない。
「――まあ、国が国民に見捨てられないよう頑張って下さい」
そう言うと、宰相は真っ青な表情を浮かべた。
「そ、そんな……」
「まあ、こちらも協力できる所は協力させてもらいます。ああ、爆発したゴミ処理場の代わりをこちらの方で用意しておきました。もしよろしければ、ご利用下さい。適正料金でゴミの処理を承りますよ? 一千二百億コルも用意できましたら是非ご連絡を……。それでは、俺はこれで……」
国が復興できる土台は用意した。
後は、それを断行する事ができるのか。
それに係っている。
「――ま、待ってくれぇぇぇぇ!」
泣きながらそう叫ぶ宰相の声をBGM代わりに俺はその場を後にした。
◇◆◇
城門を後にした俺が真っ先に向かったのは、転移門『ユグドラシル』。
腕に付けているこの腕輪『ムーブ・ユグドラシル』があれば、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に転移する事ができる。
「――さて、面倒事はすべて宰相に押し付けたし、俺は俺で、そろそろ新しい世界に旅立とうかな……」
俺のレベルは三百オーバー。
新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に転移する為の条件を満たしている。
今の所、この条件を満たしているのは、俺と『ああああ』達のみ。
うん?
そういえば、最近、『ああああ』達の姿が見えないな……。
あいつ等、どこに行ったんだ?
『ああああ』達を見たのは、宰相が俺の経営する宿に徴税官を寄こして来たのが最後だ。
「……まさかね?」
まさか、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に行ってるなんて事はないよね?
最近全然、見ないけど、『スヴァルトアールヴヘイム』に行って帰ってこれなくなっちゃった。なんて事はないよね?
『ああああ』達に渡した『ムーブ・ユグドラシル』は回数制限のあるドロップ品。
既に上級ダンジョン『ドラゴンクレイ』の離脱・攻略。そして、リージョン帝国からの帰還時と既に三回使っている為、後、一回か二回使えれば御の字状態にある。
下手したら帰ってこれなくなる可能性もあるし、流石のあいつ等もそんな状態の『ムーブ・ユグドラシル』で、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』に向かおうとは考えもしないだろうと思っていたけど……。
流石に心配になってきた。
俺は転移門『ユグドラシル』前でメニューバーを開き、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』を選択すると、転移門の前で声を上げた。
「転移。スヴァルトアールヴヘイム」
声を上げると、俺の身体に蒼い光が宿り、新しい世界『スヴァルトアールヴヘイム』へと転移した。
---------------------------------------------------------------
2022年1月11日AM7時更新となります。
64
あなたにおすすめの小説
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス
於田縫紀
ファンタジー
雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。
場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる