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第261話 爆発は芸術だ!②
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「――な、なんだっ! 一体、何が起こっているっ!?」
花火が筒から打ち上げられ、花開くまでに奏でる『ヒュ~』という花火玉に付けられた『笛』の音。その音と共に『銀笛』が光ると、特大の火花が世界樹の根、そして、国中に降り注ぐ。
――ドーン! パチパチパチッ……
――ヒュ~~~~ドーンッ!! バチバチバチッ!
世界樹の根近くに築かれたダークエルフの国。
世界樹の根と調和する形で作られたダークエルフの国の空は今、花火玉の爆発により散った火花により紅い炎で彩られていた。
「なっ――これは……!」
城から火種が世界樹の根に落ちていく様子を目の当たりにしたダークエルフの国王、ルモンドは慌てふためき、部下に消火を命じる。
「……だ、誰かっ! 誰かぁぁぁぁ! このままでは、世界樹が燃えてしまう。すぐに、すぐに火の手を止めるのだっ! 世界樹に火の手が伸びる事だけは、絶対にあってはならん!」
「――で、ですが、元凶を叩かぬ事には……それに国民は……」
「ええいっ! 国民の事など、どうでもいい! 今は世界樹だ! あれが……あれが燃えてしまえば私は……私は……!!」
ダークエルフの王、ルモンドは世界樹の恩恵によりダークエルフの王として祭り上げられている。その事を深く理解しているからこそ、必死になって世界樹を守ろうとしていた。
「もうよい! お前らに世界樹は任せておけん。私も出るっ! お前達もぐだぐだ言ってないで、敵を探せ! 私の立場が揺らげば、お前達の立場も危ういのだぞ! 早く行けっ! 貴様らの命を賭してでも世界樹の根を守れ! 敵をぶち殺すのだ!」
「「は、はいっ!」」
叱責された臣下達は、言われた言葉の意味を考える事なく盲目的にその指示に従い世界樹を攻撃する謎の敵を探す為、駆けていく。
ルモンドは、上空から聞こえてくる轟音と降り注ぐ火の粉を忌々しげに視線を向けると、窓から手を伸ばし、手の平に魔力を込めた。
「火の精霊、フェニックス。風の精霊・ジンよ。我に大いなる火と風の力を齎らし給え!」
火の上位精霊・フェニックスにそう願い、火の球を目の前に浮かべると、風の上位精霊・ジンの力を借りて矢を形成し、花火玉に向かって照準を付ける。
あれが何かはわからない。
しかし、燃やし尽くしてしまえば結果は同じ事。
「――世界樹には指一本触れさせん。ファイヤーアロー!」
花火玉に向け周囲に浮かべた火の矢を射出すると、世界樹の根に向かって一直線に向かっていた花火玉に命中し、その場で大爆発を引き起こす。
バラバラと火種が国中に落下していくのを見てルモンドは笑みを浮かべた。
「――ふ、ふははははっ! 私にかかればこんなものだ。私はこの国の王にして世界樹の守り人。これ以上、世界樹には指一本触れさせん!」
――スドドドドドドドドドドッ!
――ドカーンッ! ドカーンッ!
花火玉の迎撃に成功したルモンドは、火の矢を周囲に浮かべると、世界樹の根に向かって放たれる花火玉をひたすら迎撃していく。
「ふん。無駄な事を! 精霊様の力をお借りしている今、私の魔力は無尽蔵。誰だか知らんが、これが終わったらケリを付けて……」
そう口にしようとすると、それを止めるかの様に、私の魔法に魔法をぶつけてくる愚か者が現れた。私のファイヤーアローが相殺された事で、敵の放った攻撃(花火玉)が世界樹の根に当たり延焼していく。
それを見た私は即座に愚かな行為をした者の首を絞め上げる。
「……なっ!? 何してくれるんだ、貴様はぁぁぁぁ!」
「――お、おやめください……こ、このままでは、国が……国が焦土と化してしまいます!」
「なにぃ?」
聞けば、国が焦土化してしまう等と荒唐無稽な戯言を言い出す始末。
外を見れば、ファイヤーアローで撃ち落とした爆発物が国中に落下し、建物が燃え盛っている。
しかし、そんな事はどうだっていい。
「――それがどうしたぁぁぁぁ! 今は世界樹の根だ。世界樹の根はこの世界に一つだけ。国が焦土化しようが、何人のダークエルフが焼け死のうがそんな事はどうでもいい! 世界樹があり私が統治する場所こそ国だ。そこが国家なのだ! そこに世界樹がなければ国は無いも同然! 何故、それが分からない!」
ダークエルフの王族が独占している、世界樹の枝を薄く削ぎ作り出す契約書。
これには、書かれた内容を強制する力があり、王族を除くダークエルフの民達は、皆、生まれてすぐ、王族に忠誠を誓うよう契約書を書かされる。
つまり、ルモンド達、ダークエルフの王族が曲がりなりにもこの国を統治できているのはすべて世界樹の力あってこそ。
現王族に不満を持っていても革命なくここまでこれたのはすべて世界樹のお陰なのだ。
しかし、今、その世界樹が燃えて無くなろうとしている。
これでは、次代を担うダークエルフ達を契約書で縛る事ができなくなってしまう。
まさに国家存亡の危機。
世界樹無くしては、数代で王族が滅ぶ。
これまで権力を傘に無茶苦茶してきたんだ。それ位の自覚はある。
「地の精霊・ベヒモスよ。我に大いなる大地の力を齎らし給え! この愚か者を捕らえよ。アース・バインド!」
「は、陛下っ!? 何をっ!! ぎゃああああっ!」
「風の精霊・ジンよ。我に大いなる風の力を齎し給え! フライ!」
自分に反抗する者を地面に縛り付けると、ルモンドは風の精霊・ジンの力を借りフライの魔法で空を飛ぶ。
「火の精霊、フェニックスよ――」
そして、敵の集中砲火を一身に受ける世界樹の根の前に立つと、その身に宿るすべての魔力を開放し、世界樹の根の周囲を覆う様に炎の壁を作り上げた。
「――我に大いなる火の力を齎らし給え! ファイヤーウォール!」
世界樹を守るように現れた炎の壁。
敵の砲撃すべてが炎の壁に消えていく。
これでもう大丈夫だ。後は、敵を倒せばすべてが終わる。
そう思い、敵のいる方向に視線を向けたその瞬間、急に冷たい風が流れてきた。
「――うん? この風は……」
風の精霊・ジンの力をお借りした時、発せられる微量の魔力を感じる。
「……ま、まさかっ――!?」
そう考えた時には遅かった。
びゅううううううううう――と、突風が吹き荒れ、世界樹の根を囲う様に作り出した炎の壁が突風にあおられ世界樹を四方から焼いていく。
「――な、なにぃぃぃぃ! せ、世界樹が……私の世界樹の根がぁぁぁぁ!」
自ら作り上げた炎の壁により焼かれていく世界樹の根を見てルモンドは絶叫を上げる。
しかし、今更、ファイヤーウォールを解く訳にはいかない。ファイヤーウォールを解けば、敵の攻撃に晒されてしまう。敵からの攻撃を受けるよりはまだマシとルモンドは目を充血させ、頬を噛んで耐え忍ぶ。
「うぐぐぐっ……おのれぇぇぇぇ!! 他の連中は何をやっておるのだ! このままでは……このままでは世界樹の根が燃えてしまう……!」
そもそも、何故、火に対する耐性のない世界樹をファイヤーウォールで覆い守った気になっていたのかという問題もあるがそれは、ルモンドと親和性のある精霊が火の上級精霊・フェニックスだったからに他ならない。
敵からの大規模攻撃をガードする為には、この方法しかなかったのだ。
ダークエルフの王で居続ける為に必要な世界樹の根。それを敵からの攻撃から守る為に自らの魔法が燃やすという二律背反状態に置かれたルモンドが、気が狂いそうになるほど顔を歪めていると、娘、アルフォードが捕らえた人間を引き連れやってきた。
「――お父様っ!」
「おお、おおっ! アルフォード! アルフォードよ。よく来てくれた!」
「お父様! 臣下達はどこにっ!」
他のダークエルフ達は、ルモンドの命令に従い敵の捜索及び討伐に向かっている。
「皆は敵の迎撃に向かわせた」
「そ、そんな……」
ルモンドからの返答にアルフォードは苦い表情を浮かべた。
確かに、ルモンドの力は強大だ。
たった一人で世界樹の根の四方を囲む様にファイヤーウォールを展開できるダークエルフは父であるルモンドをおいて他にいないだろう。事実、この数百年もの間、ルモンドが世界樹の根を守り、他のダークエルフが攻勢に打って出る事でドワーフからの逆侵攻を防いできた。
しかし、今回ばかりは相手が悪い。
何故なら、今回の相手はあのカケルとかいう頭のおかしな人間なのだから。
人間の中でも特殊個体として認識されているのだろう。捕らえた人間共が揃ってそう口にするのだから間違いない。
人間共が言うには、私の目の前で影に溶ける様に消えていったドワーフ達もカケルという人間の男の仕業だと言う。
推察するに、人質を救出しに来たのだろう。
この私がその場にいなければ、この人間共も取り戻されていたかもしれない。
信じられぬ事だが、カケルという人間はダークエルフと同じく精霊の力を借りる事ができるらしい。以前、酷い目に遭った時、何となくそうではないかと感じていたが、人質のドワーフを奪い返され、それは確信に変わった。それに解った事もある。それは、カケルという人間にも、情があるという事。
世界樹の根への攻撃は、ドワーフ救出とほぼ同時に行われた。精霊の力を持ってすれば容易い事だ。恐らく、その際、人間共の救出も一緒に行おうとしたのだろう。
まだ、あちらこちらに精霊の気配を感じる。
これはつまり、カケルという人間はまだこの人間共の救出を諦めていないという事。しかし、そこに僅かながらのチャンスがある。
「――人間共っ! ファイヤーウォールの前に立てっ!」
花火玉の集中砲火を浴びているファイヤーウォールの前に立つのは明らかに自殺行為。しかし、この人間共に人質としての価値があり、カケルという人間に人の心があれば、攻撃を止める筈だ。
「――待て、人間共をファイヤーウォールの前に立たせてどうするつもりだ!」
「お父様は黙っていて下さい! この者共は、この攻撃を仕掛けているカケルという人間の仲間です。この者共に人質としての価値があれば……」
「――ひ、ひいいいいっ!?」
及び腰の人間共のケツを蹴り、ファイヤーウォールの前に横並びにさせると、数分して攻撃の手が止む。
「――お、おお……攻撃が……攻撃が止んで……よし。それでは、アルフォードよ。ファイヤーウォールを解除するので、今の内に消火活動を……」
攻撃が止んだ事を確認すると、ファイヤーウォールを一度解き、絶賛炎上中の世界樹を消火する為、アルフォードにそう声をかける。
――ヒュ~~~~ドォォォォォォォォオンッ!! バチバチバチッ!
すると、止んでいた攻撃が突如として再開し、花火の四十号玉数十発が世界樹の前で爆発した。
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次回は2023年6月22日AM7時更新となります。
花火が筒から打ち上げられ、花開くまでに奏でる『ヒュ~』という花火玉に付けられた『笛』の音。その音と共に『銀笛』が光ると、特大の火花が世界樹の根、そして、国中に降り注ぐ。
――ドーン! パチパチパチッ……
――ヒュ~~~~ドーンッ!! バチバチバチッ!
世界樹の根近くに築かれたダークエルフの国。
世界樹の根と調和する形で作られたダークエルフの国の空は今、花火玉の爆発により散った火花により紅い炎で彩られていた。
「なっ――これは……!」
城から火種が世界樹の根に落ちていく様子を目の当たりにしたダークエルフの国王、ルモンドは慌てふためき、部下に消火を命じる。
「……だ、誰かっ! 誰かぁぁぁぁ! このままでは、世界樹が燃えてしまう。すぐに、すぐに火の手を止めるのだっ! 世界樹に火の手が伸びる事だけは、絶対にあってはならん!」
「――で、ですが、元凶を叩かぬ事には……それに国民は……」
「ええいっ! 国民の事など、どうでもいい! 今は世界樹だ! あれが……あれが燃えてしまえば私は……私は……!!」
ダークエルフの王、ルモンドは世界樹の恩恵によりダークエルフの王として祭り上げられている。その事を深く理解しているからこそ、必死になって世界樹を守ろうとしていた。
「もうよい! お前らに世界樹は任せておけん。私も出るっ! お前達もぐだぐだ言ってないで、敵を探せ! 私の立場が揺らげば、お前達の立場も危ういのだぞ! 早く行けっ! 貴様らの命を賭してでも世界樹の根を守れ! 敵をぶち殺すのだ!」
「「は、はいっ!」」
叱責された臣下達は、言われた言葉の意味を考える事なく盲目的にその指示に従い世界樹を攻撃する謎の敵を探す為、駆けていく。
ルモンドは、上空から聞こえてくる轟音と降り注ぐ火の粉を忌々しげに視線を向けると、窓から手を伸ばし、手の平に魔力を込めた。
「火の精霊、フェニックス。風の精霊・ジンよ。我に大いなる火と風の力を齎らし給え!」
火の上位精霊・フェニックスにそう願い、火の球を目の前に浮かべると、風の上位精霊・ジンの力を借りて矢を形成し、花火玉に向かって照準を付ける。
あれが何かはわからない。
しかし、燃やし尽くしてしまえば結果は同じ事。
「――世界樹には指一本触れさせん。ファイヤーアロー!」
花火玉に向け周囲に浮かべた火の矢を射出すると、世界樹の根に向かって一直線に向かっていた花火玉に命中し、その場で大爆発を引き起こす。
バラバラと火種が国中に落下していくのを見てルモンドは笑みを浮かべた。
「――ふ、ふははははっ! 私にかかればこんなものだ。私はこの国の王にして世界樹の守り人。これ以上、世界樹には指一本触れさせん!」
――スドドドドドドドドドドッ!
――ドカーンッ! ドカーンッ!
花火玉の迎撃に成功したルモンドは、火の矢を周囲に浮かべると、世界樹の根に向かって放たれる花火玉をひたすら迎撃していく。
「ふん。無駄な事を! 精霊様の力をお借りしている今、私の魔力は無尽蔵。誰だか知らんが、これが終わったらケリを付けて……」
そう口にしようとすると、それを止めるかの様に、私の魔法に魔法をぶつけてくる愚か者が現れた。私のファイヤーアローが相殺された事で、敵の放った攻撃(花火玉)が世界樹の根に当たり延焼していく。
それを見た私は即座に愚かな行為をした者の首を絞め上げる。
「……なっ!? 何してくれるんだ、貴様はぁぁぁぁ!」
「――お、おやめください……こ、このままでは、国が……国が焦土と化してしまいます!」
「なにぃ?」
聞けば、国が焦土化してしまう等と荒唐無稽な戯言を言い出す始末。
外を見れば、ファイヤーアローで撃ち落とした爆発物が国中に落下し、建物が燃え盛っている。
しかし、そんな事はどうだっていい。
「――それがどうしたぁぁぁぁ! 今は世界樹の根だ。世界樹の根はこの世界に一つだけ。国が焦土化しようが、何人のダークエルフが焼け死のうがそんな事はどうでもいい! 世界樹があり私が統治する場所こそ国だ。そこが国家なのだ! そこに世界樹がなければ国は無いも同然! 何故、それが分からない!」
ダークエルフの王族が独占している、世界樹の枝を薄く削ぎ作り出す契約書。
これには、書かれた内容を強制する力があり、王族を除くダークエルフの民達は、皆、生まれてすぐ、王族に忠誠を誓うよう契約書を書かされる。
つまり、ルモンド達、ダークエルフの王族が曲がりなりにもこの国を統治できているのはすべて世界樹の力あってこそ。
現王族に不満を持っていても革命なくここまでこれたのはすべて世界樹のお陰なのだ。
しかし、今、その世界樹が燃えて無くなろうとしている。
これでは、次代を担うダークエルフ達を契約書で縛る事ができなくなってしまう。
まさに国家存亡の危機。
世界樹無くしては、数代で王族が滅ぶ。
これまで権力を傘に無茶苦茶してきたんだ。それ位の自覚はある。
「地の精霊・ベヒモスよ。我に大いなる大地の力を齎らし給え! この愚か者を捕らえよ。アース・バインド!」
「は、陛下っ!? 何をっ!! ぎゃああああっ!」
「風の精霊・ジンよ。我に大いなる風の力を齎し給え! フライ!」
自分に反抗する者を地面に縛り付けると、ルモンドは風の精霊・ジンの力を借りフライの魔法で空を飛ぶ。
「火の精霊、フェニックスよ――」
そして、敵の集中砲火を一身に受ける世界樹の根の前に立つと、その身に宿るすべての魔力を開放し、世界樹の根の周囲を覆う様に炎の壁を作り上げた。
「――我に大いなる火の力を齎らし給え! ファイヤーウォール!」
世界樹を守るように現れた炎の壁。
敵の砲撃すべてが炎の壁に消えていく。
これでもう大丈夫だ。後は、敵を倒せばすべてが終わる。
そう思い、敵のいる方向に視線を向けたその瞬間、急に冷たい風が流れてきた。
「――うん? この風は……」
風の精霊・ジンの力をお借りした時、発せられる微量の魔力を感じる。
「……ま、まさかっ――!?」
そう考えた時には遅かった。
びゅううううううううう――と、突風が吹き荒れ、世界樹の根を囲う様に作り出した炎の壁が突風にあおられ世界樹を四方から焼いていく。
「――な、なにぃぃぃぃ! せ、世界樹が……私の世界樹の根がぁぁぁぁ!」
自ら作り上げた炎の壁により焼かれていく世界樹の根を見てルモンドは絶叫を上げる。
しかし、今更、ファイヤーウォールを解く訳にはいかない。ファイヤーウォールを解けば、敵の攻撃に晒されてしまう。敵からの攻撃を受けるよりはまだマシとルモンドは目を充血させ、頬を噛んで耐え忍ぶ。
「うぐぐぐっ……おのれぇぇぇぇ!! 他の連中は何をやっておるのだ! このままでは……このままでは世界樹の根が燃えてしまう……!」
そもそも、何故、火に対する耐性のない世界樹をファイヤーウォールで覆い守った気になっていたのかという問題もあるがそれは、ルモンドと親和性のある精霊が火の上級精霊・フェニックスだったからに他ならない。
敵からの大規模攻撃をガードする為には、この方法しかなかったのだ。
ダークエルフの王で居続ける為に必要な世界樹の根。それを敵からの攻撃から守る為に自らの魔法が燃やすという二律背反状態に置かれたルモンドが、気が狂いそうになるほど顔を歪めていると、娘、アルフォードが捕らえた人間を引き連れやってきた。
「――お父様っ!」
「おお、おおっ! アルフォード! アルフォードよ。よく来てくれた!」
「お父様! 臣下達はどこにっ!」
他のダークエルフ達は、ルモンドの命令に従い敵の捜索及び討伐に向かっている。
「皆は敵の迎撃に向かわせた」
「そ、そんな……」
ルモンドからの返答にアルフォードは苦い表情を浮かべた。
確かに、ルモンドの力は強大だ。
たった一人で世界樹の根の四方を囲む様にファイヤーウォールを展開できるダークエルフは父であるルモンドをおいて他にいないだろう。事実、この数百年もの間、ルモンドが世界樹の根を守り、他のダークエルフが攻勢に打って出る事でドワーフからの逆侵攻を防いできた。
しかし、今回ばかりは相手が悪い。
何故なら、今回の相手はあのカケルとかいう頭のおかしな人間なのだから。
人間の中でも特殊個体として認識されているのだろう。捕らえた人間共が揃ってそう口にするのだから間違いない。
人間共が言うには、私の目の前で影に溶ける様に消えていったドワーフ達もカケルという人間の男の仕業だと言う。
推察するに、人質を救出しに来たのだろう。
この私がその場にいなければ、この人間共も取り戻されていたかもしれない。
信じられぬ事だが、カケルという人間はダークエルフと同じく精霊の力を借りる事ができるらしい。以前、酷い目に遭った時、何となくそうではないかと感じていたが、人質のドワーフを奪い返され、それは確信に変わった。それに解った事もある。それは、カケルという人間にも、情があるという事。
世界樹の根への攻撃は、ドワーフ救出とほぼ同時に行われた。精霊の力を持ってすれば容易い事だ。恐らく、その際、人間共の救出も一緒に行おうとしたのだろう。
まだ、あちらこちらに精霊の気配を感じる。
これはつまり、カケルという人間はまだこの人間共の救出を諦めていないという事。しかし、そこに僅かながらのチャンスがある。
「――人間共っ! ファイヤーウォールの前に立てっ!」
花火玉の集中砲火を浴びているファイヤーウォールの前に立つのは明らかに自殺行為。しかし、この人間共に人質としての価値があり、カケルという人間に人の心があれば、攻撃を止める筈だ。
「――待て、人間共をファイヤーウォールの前に立たせてどうするつもりだ!」
「お父様は黙っていて下さい! この者共は、この攻撃を仕掛けているカケルという人間の仲間です。この者共に人質としての価値があれば……」
「――ひ、ひいいいいっ!?」
及び腰の人間共のケツを蹴り、ファイヤーウォールの前に横並びにさせると、数分して攻撃の手が止む。
「――お、おお……攻撃が……攻撃が止んで……よし。それでは、アルフォードよ。ファイヤーウォールを解除するので、今の内に消火活動を……」
攻撃が止んだ事を確認すると、ファイヤーウォールを一度解き、絶賛炎上中の世界樹を消火する為、アルフォードにそう声をかける。
――ヒュ~~~~ドォォォォォォォォオンッ!! バチバチバチッ!
すると、止んでいた攻撃が突如として再開し、花火の四十号玉数十発が世界樹の前で爆発した。
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