14 / 47
第13話 第一の鍛練①
しおりを挟む
鍛練をするため、家の外に連れ出されたノアはブルーノに話かける。
「……あ、あれ? 外で鍛練をするんですか?」
「そりゃあ、そうじゃ……これから行う鍛練は建物の中では到底行えぬものじゃからのぅ。さて、ノアよ。お主の持つスキルは、『付与』。そして、『リセット』じゃったな?」
「は、はい。そうですけど……」
そう答えると、ブルーノは少し考え込む。
「ふむ。鑑定眼の通りじゃのぅ……それで、ノアよ。お主は『付与』についてどこまで知っている?」
「『付与』についてですか?」
「ああ、そうじゃ……」
ブルーノの言葉を聞き、ノアは考え込む。
(――知っていることと言えば、自分のステータス値やスキルをモノに付与することができるハズレと呼ばれる部類のスキルであること位だけだけど……)
「むっ? 少し難しい質問だったかのぅ。まあよい。『付与』のスキルは通常、十歳の誕生日を迎えたごく少数の者のみ授かることのできるスキルじゃ」
「えっ? 十歳の誕生日にですか?」
ブルーノの話を聞き、ノアは首を傾げる。
(おかしいな……俺の場合、十五歳の誕生日を迎えた時に授かったんだけど……)
「――ああ、十歳の誕生日じゃ。そして、『付与』のスキルを持つ者は十五歳の誕生日を迎える年に強力なスキルを授かる。そこに例外はない……はずだった。これまではのぅ……」
「えっと、それじゃあ俺は……」
『リセット』はその名の通り、レベルとステータスを1に初期化するただそれだけのスキル。そして、『付与』は、自分のステータス値やスキルをモノに移すことができるハズレスキルだ。
どちらも単体では役に立たないスキルといっても過言ではない。
ブルーノは髭を撫でながら告げる。
「ノアの場合は逆じゃな。なぜかはわからぬが、先に『リセット』を授かり、その後、『付与』のスキルを授かった。ある意味、『付与』スキル保持者の枠を外れた存在と言って過言ではないかも知れぬ……」
(か、過言ではないだろうか……)
ただ、他の人たちと違って先に最悪のスキルを授かっただけの、『付与』スキル保持者である点ではなにも変わらない。ただ、そのスキルの組み合わせが良かっただけだ。
「……しかし、そのお陰で助かったとも言える」
「えっ、助かった? どういうことですか? 一応、傭兵に襲われステータス値を奪われているんですけど……?」
そう首を傾げると、ブルーノは神妙な面持ちとなる。
「……それでもまだマシな方じゃ。十歳の誕生日に付与のスキルを授かった者の多くは、その日の内にステータス値を奪われ、次のスキルを授かる十五歳の誕生日まで生かされた後に殺される」
「へっ? 殺される?」
ノアの発した言葉に、ブルーノは神妙な表情を浮かべ頷いた。
「ああ、そうじゃ……『付与』スキル保持者の多くは十歳でステータス値を奪われ、十五歳でスキルと人生を奪われる。ノアの場合、十歳の誕生日でマークされていなかったため、ステータス値を奪われただけで済んだに過ぎん。それが今、この国の……『付与』のスキル保持者に対する現状じゃ……」
ブルーノの話を聞き、ノアはゴクリと喉を鳴らした。
「……だからこそ、ノアは強くならねばならん。『付与』のスキルを保有していると知られても駄目じゃ。弱い『付与』スキル保持者は蹂躙され奪われるのが世の常じゃからのぅ」
これまでのブルーノの経験からくる言葉なのだろう。
ブルーノの言葉に人生の重みを感じる。
「ちなみに、ワシと婆さんは別じゃ。『箱舟』に属する人間が偶々、近くに住んでいてのぅ。その人間に助けられた。その後、たゆまぬ努力の結果、到達者と呼ばれる程の力を手に入れたのじゃ……」
「そうなんですか……」
到達者は限られた者しか到達することのできない人の到達点。
相当辛い修練を積んで来たのだろうことが話の節々からわかる。
「……ノアよ。お主は強い。ステータス値だけを見れば、ワシや婆さんを遥かに凌駕する力を持っているだろう。しかし、それだけではダメじゃ。この世界で生き抜くためには、まだ足りぬ。だからこそ、これから行う三つの鍛練を乗り越え、己が力を魅せて見せよ」
ブルーノはそう言うと、手に持つ戦斧に魔力を込める。
すると、斧の中心に嵌められた魔石が黒く輝き、戦斧が人型に形を変えていく。
「――ブ、ブルーノさん。なにをっ!?」
「ワシの作る戦斧には、魂が宿る。その魂は魔力を込めることで実体を取り戻す……」
『おい。『付与』の固有スキルを賜わったガキはお前だな?』
目の前に現れたのは、ノアのステータス値を奪い取った傭兵風の大男・ガンツだった。
「こ、こいつは……」
ガンツを見た瞬間、ノアはステータス値を奪われた際、体に刻み付けられた恐怖で動けなくなる。
ガンツは剣を抜くと、ノアを威嚇するかのように振りかぶる。
『ぐははははっ! 俺の名はガンツ。この村の傭兵団に所属するガンツだっ!』
「……この魔物の名は、ドッペル・フィアー。ノアの中にある『恐れ』という感情を写し取り実体となった魔物じゃ。さて、ノアよ。ドッペル・フィアーを倒し、『恐怖』を克服して見せよ。それが、第一の鍛練じゃ」
ブルーノがそう言った瞬間、ガンツの姿となったドッペル・フィアーがノアに襲いかかった。
「……あ、あれ? 外で鍛練をするんですか?」
「そりゃあ、そうじゃ……これから行う鍛練は建物の中では到底行えぬものじゃからのぅ。さて、ノアよ。お主の持つスキルは、『付与』。そして、『リセット』じゃったな?」
「は、はい。そうですけど……」
そう答えると、ブルーノは少し考え込む。
「ふむ。鑑定眼の通りじゃのぅ……それで、ノアよ。お主は『付与』についてどこまで知っている?」
「『付与』についてですか?」
「ああ、そうじゃ……」
ブルーノの言葉を聞き、ノアは考え込む。
(――知っていることと言えば、自分のステータス値やスキルをモノに付与することができるハズレと呼ばれる部類のスキルであること位だけだけど……)
「むっ? 少し難しい質問だったかのぅ。まあよい。『付与』のスキルは通常、十歳の誕生日を迎えたごく少数の者のみ授かることのできるスキルじゃ」
「えっ? 十歳の誕生日にですか?」
ブルーノの話を聞き、ノアは首を傾げる。
(おかしいな……俺の場合、十五歳の誕生日を迎えた時に授かったんだけど……)
「――ああ、十歳の誕生日じゃ。そして、『付与』のスキルを持つ者は十五歳の誕生日を迎える年に強力なスキルを授かる。そこに例外はない……はずだった。これまではのぅ……」
「えっと、それじゃあ俺は……」
『リセット』はその名の通り、レベルとステータスを1に初期化するただそれだけのスキル。そして、『付与』は、自分のステータス値やスキルをモノに移すことができるハズレスキルだ。
どちらも単体では役に立たないスキルといっても過言ではない。
ブルーノは髭を撫でながら告げる。
「ノアの場合は逆じゃな。なぜかはわからぬが、先に『リセット』を授かり、その後、『付与』のスキルを授かった。ある意味、『付与』スキル保持者の枠を外れた存在と言って過言ではないかも知れぬ……」
(か、過言ではないだろうか……)
ただ、他の人たちと違って先に最悪のスキルを授かっただけの、『付与』スキル保持者である点ではなにも変わらない。ただ、そのスキルの組み合わせが良かっただけだ。
「……しかし、そのお陰で助かったとも言える」
「えっ、助かった? どういうことですか? 一応、傭兵に襲われステータス値を奪われているんですけど……?」
そう首を傾げると、ブルーノは神妙な面持ちとなる。
「……それでもまだマシな方じゃ。十歳の誕生日に付与のスキルを授かった者の多くは、その日の内にステータス値を奪われ、次のスキルを授かる十五歳の誕生日まで生かされた後に殺される」
「へっ? 殺される?」
ノアの発した言葉に、ブルーノは神妙な表情を浮かべ頷いた。
「ああ、そうじゃ……『付与』スキル保持者の多くは十歳でステータス値を奪われ、十五歳でスキルと人生を奪われる。ノアの場合、十歳の誕生日でマークされていなかったため、ステータス値を奪われただけで済んだに過ぎん。それが今、この国の……『付与』のスキル保持者に対する現状じゃ……」
ブルーノの話を聞き、ノアはゴクリと喉を鳴らした。
「……だからこそ、ノアは強くならねばならん。『付与』のスキルを保有していると知られても駄目じゃ。弱い『付与』スキル保持者は蹂躙され奪われるのが世の常じゃからのぅ」
これまでのブルーノの経験からくる言葉なのだろう。
ブルーノの言葉に人生の重みを感じる。
「ちなみに、ワシと婆さんは別じゃ。『箱舟』に属する人間が偶々、近くに住んでいてのぅ。その人間に助けられた。その後、たゆまぬ努力の結果、到達者と呼ばれる程の力を手に入れたのじゃ……」
「そうなんですか……」
到達者は限られた者しか到達することのできない人の到達点。
相当辛い修練を積んで来たのだろうことが話の節々からわかる。
「……ノアよ。お主は強い。ステータス値だけを見れば、ワシや婆さんを遥かに凌駕する力を持っているだろう。しかし、それだけではダメじゃ。この世界で生き抜くためには、まだ足りぬ。だからこそ、これから行う三つの鍛練を乗り越え、己が力を魅せて見せよ」
ブルーノはそう言うと、手に持つ戦斧に魔力を込める。
すると、斧の中心に嵌められた魔石が黒く輝き、戦斧が人型に形を変えていく。
「――ブ、ブルーノさん。なにをっ!?」
「ワシの作る戦斧には、魂が宿る。その魂は魔力を込めることで実体を取り戻す……」
『おい。『付与』の固有スキルを賜わったガキはお前だな?』
目の前に現れたのは、ノアのステータス値を奪い取った傭兵風の大男・ガンツだった。
「こ、こいつは……」
ガンツを見た瞬間、ノアはステータス値を奪われた際、体に刻み付けられた恐怖で動けなくなる。
ガンツは剣を抜くと、ノアを威嚇するかのように振りかぶる。
『ぐははははっ! 俺の名はガンツ。この村の傭兵団に所属するガンツだっ!』
「……この魔物の名は、ドッペル・フィアー。ノアの中にある『恐れ』という感情を写し取り実体となった魔物じゃ。さて、ノアよ。ドッペル・フィアーを倒し、『恐怖』を克服して見せよ。それが、第一の鍛練じゃ」
ブルーノがそう言った瞬間、ガンツの姿となったドッペル・フィアーがノアに襲いかかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
231
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる