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第七章 教会編

第197話 その後②

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これも皆様のお蔭です。感謝を込めて本日は2本公開します。
いつも評価やコメント、誤字脱字報告頂きありがとうございます!
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 私はロプト神様の使徒にして、聖モンテ教会の教皇ソテル。
 神託を誤って解釈してしまった事と、ロプト神様からの神託が降りてこなかった事で、ほんの少しだけ暴走してしまい、教会の権威や評判を著しく悪くしてしまいました。

 しかし、そんな私を赦してくれる所か、ロプト神様の第一使徒に任命して下さいましたロプト神様には祈りを捧げても祈りを捧げても足りません。

 ああ、ああっ! ロプト神様の神気がこの身から溢れてくる!
 今の私は、常時ロプト神様の腕の中にいるのと同義と言っても過言ではありません。

 ああ、ああっ! ロプト神様の愛を感じます!

「教皇様、教皇ソテル様」

 敬虔なるロプト神様に祈りを捧げていると後ろから私の名を呼ぶ不粋な無能の声がしてきます。
 ああ、ああっ、気持ちが悪い。なんて気持ちが悪い声なのでしょうか。

「ああ、元教皇ですか……。今日はなんの用です?」

 正直、欲に塗れた俗物の名前など覚えていません。
 こんな敬虔さのカケラも持ち合わせていないクズには元教皇という蔑称で十分です。

 とはいえ、今の私はそんな使えないクズを、使えるクズに変える様、ロプト神様よりお言葉を賜っています。

「私の部屋にあった金品の事ですが、どこに売りに出したらよろしいでしょうか?」

 そう、この屑ども信者からの喜捨を自分の部屋へと溜め込んでいました。それはもうたんまりと、それはもうたんまりと……。

 神に仕える者として信じられません。
 信仰を失った人間は塵芥にも劣ります。
 まだ着服しない分、塵芥の方がマシかもしれません。

「ユートピア商会は……フェロー王国にあるのでしたね。仕方がありません。私の商会に売り払いなさい。そして、そのお金で万能薬を買ってくるのです。万能薬は塵芥にも劣るあなたより価値が高い。決して落とさない様気をつけて下さい」

「畏まりました」

 全く、全く、全く、全く!
 神に祈る時間が塵芥によって害されてしまったではありませんか!

 どうせ死なない身体です。
 近い内、精神に恐怖を叩きつけて物言わぬ蝋人形にして差し上げましょうか……。

 いえいえ、それでは使えるクズにするというロプト神様の意に反してしまいます。
 困りました。困りました。

 そんな事を考えていると、ロプト神様より神託がありました。

「階層二ヶ月間立入禁止暫神託無」

 これは、どう解釈したらよろしいのでしょうか。
 ロプト神様の階層? に二ヶ月間立入禁止になってしまったその為、暫くの間は神託を控えると、そういう事なのでしょうか!?

 神託をそう解釈すると、私はガタリと音を立て崩れ落ち叫びました。

「ああ、ああっ! ロプト神様ぁぁぁぁぁぁ!」

 その後、二ヶ月間もの間、サンミニアート・アルモンテ聖国には、教皇ソテルの絶叫が木霊した。


 その頃、教皇ソテルに神託を降した張本人ロキはというと……。

「まったく~ソテルのせいでいい迷惑だよ。それに悠斗様も悠斗様だよ。カマエルよりも長い期間このボクに階層立入禁止処分を降すなんて。紙祖神カミーユもそう思うよね!」

 立入禁止になった自分の階層ではなく、紙祖神カミーユの階層に訪れていた。

 紙祖神カミーユの階層のコンセプトは紙との共存。
 まるで白神山地の様に、紙の原材料となる様々な種類の木々の原生林が広がり幻想的な空間を創り出している。

 紙祖神カミーユは紅茶を啜ると、ホッと息をついて口にする。

「ロキ様の自業自得ではありませんか? 悠斗様の事を思い先手を打って神託を降したにも拘わらず、信者が暴走して大変な目にあったというのは同情いたしますが、その後の対応があんまりです」

「う~。紙祖神カミーユだけはボクに優しくしてくれると思っていたのに~」

 ロキはテーブルに置かれたお菓子をパクパクと口に運ぶと、ため息をつく。

「なんでこんな事になっちゃったんだろ」

「ロキ様の場合、信者との距離が近いためそんな事になったのではありませんか? 信者の皆さんはロキ様ならこうするだろう。ロキ様ならこう動くだろうと想像して動く事が多いですから……」

「はぁっ」

 ロキのため息が深い。
 紙祖神カミーユはロキの頭を撫でると、ゆっくりとした口調で話をする。

「ロキ様、私は悠斗様の事を思い先手を打って神託を降ろした事はとても素晴らしい事だと思います。まあ、神が一人の人間に対して干渉し過ぎだとは思いますが、私も人の事を言えた義理ではありませんから。ただ、その後がいけません。事の成り行きを見て行動するなどあってはならない事です。何かあったら、事が起こる前にちゃんと悠斗様に報告、連絡、相談をしましょう。そうすれば、今回の件だってちゃんとわかってくれたはずです。多分……」

「ねえ。なんで最後に多分って付けたの?」

「まあそう細かい事は言うなロキよ。だから二ヶ月間も出禁を喰らうんだぞ。私を見習え私を。しっかり一ヶ月間謹慎していたらちゃんと出禁処分は解除されたぞ。」

 急に話に割って入ってきたカマエルに、ロキと紙祖神カミーユは驚きの表情を浮かべる。

「もう出禁処分が解けたのですか?」

「カマエル~♪ 久しぶりだね!」

「ああ久しぶりだな。いや、神界での肩身の狭さときたら参った参った。私も今回ばかりは本気で反省したよ。しかし、ロキ。お前もやるな~まさか聖モンテ教会に使徒を送り込むなんて、周りの神が絶句していたぞ。神界は間違いなく荒れるな。」

 当然である。聖モンテ教会は、多神教ではあるものの教皇の意向を強く受ける。
 当分の間、嫌でもロプト神に信仰を捧げる人間が増えるだろう。

「他の神たちも今回の件には危機感を覚えていたからな。もしかしたら使徒を送り込んでくるかもしれないから気を付けろよ。」

「おお~♪ そんな大事に! 分かった! ありがとうカマエル。まあソテルなら大丈夫だと思うけどね♪」

「まあお前は神界に戻ってしっかり謹慎してるんだな。たまには私の階層にも遊びに来いよ。」

 そう言うと、カマエルは自分の階層へと戻っていく。

「それではロキ様。私もこの階層を一人で使用したいので、申し訳ないのですが出て行って頂けますか?」

「えっ、二ヶ月間ここに居ちゃダメなの!?」

 紙祖神カミーユは何を馬鹿な事を……といった様に首を振る。

「それでは罰にならないではありませんか。今日より二ヶ月間、神界でゆっくり休養なさってはいかがですか?」

「ち、ちょっと待ってよ~。あんな所に居たらボク、他の神々にイビリ倒されちゃうよ! 紙祖神カミーユはそれでもいいの!?」

「半分以上自業自得ですし、仕方がありません。どうぞ反省して来て下さい。それでは……」

 紙祖神カミーユがそう言うと、ロキの足元に魔法陣が現れる。

「ち、ちょっと待って。まだ神界に行きたくな……」

「それではロキ様。また二ヶ月後にお会いしましょう」

紙祖神カミーユ~!」

 ロキはその言葉を最後に、迷宮から神界へと戻って行った。
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