239 / 486
第八章 フェロー王国動乱編
第292話 領主会議(ノルマン視点)①
しおりを挟む
「これはこれは、ノルマン陛下。内務大臣まで……。丁度、今、お呼びしようと思っていた所です」
「本日は領主会議の開催日、お忘れではないでしょう?」
「なっ、何故ッ……何故、貴公らがここに……」
内務大臣のスカーリが王の間に重要書類を忘れたというので、一緒に来てみればなんだこれは……。
まさかスカーリの奴、この私を裏切った訳じゃないだろうなっ!
王の間の扉を開け呆然としているスカーリを睨み付ける。
すると私の視線に気付いたスカーリは、ブンブンと首を振った。
この焦りよう、裏切った訳ではなさそうだな……。
だとすれば一体何がどうなっている。どうやって王城の中へ入った?
領主会議の開催日時を伸ばし、領主達の説得に大臣を向かわせたがそれはどうなった⁉
そもそも、フェリーの運航を停止していたにも関わらず、何故、王都に来る事ができる⁉
「いかが致しましたか、陛下? どうぞお座り下さい」
エストゥロイ領の領主、ロイ・エストゥロイが私に着席するよう求めてくる。
ぐっ……ここは覚悟を決めるしかないか。
「スカーリ、貴様は私の背後に立て」
「は、はいっ!」
この様子を見るに、領主達の説得は失敗したと見て間違いない。
愚鈍で惰弱な大臣共め……。
内頬を噛むと、私は仕方がなく椅子に着席する。
「それでは、ただいまから領主会議を始めさせて頂きます。今回の領主会議は領主の連名により要請されたものです。議題内容は国王陛下の罷免、そして新国王の任命について……通常であれば、陛下に議長を務めて頂く所ではありますが、本会議に限り、私、サクソンが議長を務めさせて頂きたいと思います」
私を裏切り、シェトランド陣営へと行った宰相サクソンが恭しくも頭を下げる。
シェトランドの背後には、財務大臣まで立っている。
くそっ! 裏切り者共が忌々しい。
しかし、こうなっては仕方がない。
まずはこの領主会議を乗り切る他、私に選択肢はない。
「それでは、早速、議案審議に入らせて頂きます。今回の審議内容は、国王陛下の罷免、そして新国王の任命についてです。それでは、第一号議案、国王陛下の罷免について、領主を代表し、ボルウォイ領の領主クラクス様。お願い致します」
議長の呼びかけによりボルウォイ領の領主クラクスが立ち上がる。
「はい。第一号議案、国王陛下の罷免に関しまして説明申し上げます。現在、王都ストレイモイの財政は破綻寸前といっても過言ではない状況に置かれております。また陛下がユートピア商会に行った土地接収の影響により、商業ギルドとの関係は悪化。土地接収を恐れ商人達の他領への拠点移動も加速しております。このままでは来年の税収も当てにする事ができない程です。
即位してから数ヶ月の期間でここまで王都の財政を悪化させた事から国王としての適性を欠くと判断致しました。よって第一号議案、国王陛下の罷免を提案致します」
「ありがとうございます。それでは、第一号議案について質疑応答を行います」
ふん。くだらぬ戯言を……。
宰相に向かって手を上げると、クラクスに視線を向ける。
「分からぬな。王都の財政は破綻寸前というが、それほどまで深刻な状況に置かれているだろうか?」
「どういう事でしょうか?」
はっ! そんな事も分からないとは、よくそれで領主が務まるものだ。
「税収で補う事ができぬなら商人連合国アキンドに借りればいい。それこそ、担保となる土地は幾らでもある」
「担保となる土地というのは、どの土地の事を指しているのですか?」
そんな事は決まっている。
「ユートピア商会から接収した土地だ。あの場所はその全てが更地になっている。フェロー王国の中心部といっても過言ではない場所にある土地だ。担保として十分ではないか」
「陛下の判断一つで、接収される危険性のある土地が担保になると、本当にそう思っているのですか?」
何だそんな事か……。
「確かにあの時の判断が間違っていた事は認めよう。ただ、あれは私一人の判断で決めた事ではない。正式な手続きを踏み、大臣達と決議を執り決めた事だ。それに土地を担保に商人連合国アキンドから金を借りるんだ。商人達は、商人連合国アキンドからその土地を借りればいい。接収される事がないと分かっている土地に商人達を誘致すれば何もかも元通りだ。たった一度の失敗を理由に国王を罷免する議題を提出する等正気ではない」
悔しいがあの時の判断が間違った事は認めよう。
しかし、その間違いは様々な要因が重なり合った事によるものだ。
それに正式な手続きは踏んでいる。決して独断で動いた訳ではない。
たった一度の失敗で国王を罷免される等、馬鹿げている。
「なる程……。確かに、たった一度の失敗かもしれません。しかし、そのたった一度の失敗により、ユートピア商会を初め、数多くの商人達が拠点を他領に移したのです。それだけではありません。ティンドホルマー魔法学園は王都から他領へ移転。フェリーの運航を停止した事により、食糧の価格は高騰。これではあまりに国民が可哀想です。国の将来の事を考えるのであれば、次代の国王に王位を委ねるべきなのではありませんか?」
うん? 何かがおかしいぞ。
ティンドホルマー魔法学園の移転話はスカーリが決着させた筈。
こいつ、その事を知らぬのか?
それに国民が暴動を起こした事に対する糾弾もない。
これならいけるか?
「確かに、クラクスの言う事も分かる。しかし、このタイミングで王位を譲ってはシェトランドが可哀相だ。安心してほしい。既に王都再建の道筋はついている。これからは襟を正し、国民の信頼回復に努める事を誓う。だからもう一度、私にチャンスをくれないだろうか」
「本日は領主会議の開催日、お忘れではないでしょう?」
「なっ、何故ッ……何故、貴公らがここに……」
内務大臣のスカーリが王の間に重要書類を忘れたというので、一緒に来てみればなんだこれは……。
まさかスカーリの奴、この私を裏切った訳じゃないだろうなっ!
王の間の扉を開け呆然としているスカーリを睨み付ける。
すると私の視線に気付いたスカーリは、ブンブンと首を振った。
この焦りよう、裏切った訳ではなさそうだな……。
だとすれば一体何がどうなっている。どうやって王城の中へ入った?
領主会議の開催日時を伸ばし、領主達の説得に大臣を向かわせたがそれはどうなった⁉
そもそも、フェリーの運航を停止していたにも関わらず、何故、王都に来る事ができる⁉
「いかが致しましたか、陛下? どうぞお座り下さい」
エストゥロイ領の領主、ロイ・エストゥロイが私に着席するよう求めてくる。
ぐっ……ここは覚悟を決めるしかないか。
「スカーリ、貴様は私の背後に立て」
「は、はいっ!」
この様子を見るに、領主達の説得は失敗したと見て間違いない。
愚鈍で惰弱な大臣共め……。
内頬を噛むと、私は仕方がなく椅子に着席する。
「それでは、ただいまから領主会議を始めさせて頂きます。今回の領主会議は領主の連名により要請されたものです。議題内容は国王陛下の罷免、そして新国王の任命について……通常であれば、陛下に議長を務めて頂く所ではありますが、本会議に限り、私、サクソンが議長を務めさせて頂きたいと思います」
私を裏切り、シェトランド陣営へと行った宰相サクソンが恭しくも頭を下げる。
シェトランドの背後には、財務大臣まで立っている。
くそっ! 裏切り者共が忌々しい。
しかし、こうなっては仕方がない。
まずはこの領主会議を乗り切る他、私に選択肢はない。
「それでは、早速、議案審議に入らせて頂きます。今回の審議内容は、国王陛下の罷免、そして新国王の任命についてです。それでは、第一号議案、国王陛下の罷免について、領主を代表し、ボルウォイ領の領主クラクス様。お願い致します」
議長の呼びかけによりボルウォイ領の領主クラクスが立ち上がる。
「はい。第一号議案、国王陛下の罷免に関しまして説明申し上げます。現在、王都ストレイモイの財政は破綻寸前といっても過言ではない状況に置かれております。また陛下がユートピア商会に行った土地接収の影響により、商業ギルドとの関係は悪化。土地接収を恐れ商人達の他領への拠点移動も加速しております。このままでは来年の税収も当てにする事ができない程です。
即位してから数ヶ月の期間でここまで王都の財政を悪化させた事から国王としての適性を欠くと判断致しました。よって第一号議案、国王陛下の罷免を提案致します」
「ありがとうございます。それでは、第一号議案について質疑応答を行います」
ふん。くだらぬ戯言を……。
宰相に向かって手を上げると、クラクスに視線を向ける。
「分からぬな。王都の財政は破綻寸前というが、それほどまで深刻な状況に置かれているだろうか?」
「どういう事でしょうか?」
はっ! そんな事も分からないとは、よくそれで領主が務まるものだ。
「税収で補う事ができぬなら商人連合国アキンドに借りればいい。それこそ、担保となる土地は幾らでもある」
「担保となる土地というのは、どの土地の事を指しているのですか?」
そんな事は決まっている。
「ユートピア商会から接収した土地だ。あの場所はその全てが更地になっている。フェロー王国の中心部といっても過言ではない場所にある土地だ。担保として十分ではないか」
「陛下の判断一つで、接収される危険性のある土地が担保になると、本当にそう思っているのですか?」
何だそんな事か……。
「確かにあの時の判断が間違っていた事は認めよう。ただ、あれは私一人の判断で決めた事ではない。正式な手続きを踏み、大臣達と決議を執り決めた事だ。それに土地を担保に商人連合国アキンドから金を借りるんだ。商人達は、商人連合国アキンドからその土地を借りればいい。接収される事がないと分かっている土地に商人達を誘致すれば何もかも元通りだ。たった一度の失敗を理由に国王を罷免する議題を提出する等正気ではない」
悔しいがあの時の判断が間違った事は認めよう。
しかし、その間違いは様々な要因が重なり合った事によるものだ。
それに正式な手続きは踏んでいる。決して独断で動いた訳ではない。
たった一度の失敗で国王を罷免される等、馬鹿げている。
「なる程……。確かに、たった一度の失敗かもしれません。しかし、そのたった一度の失敗により、ユートピア商会を初め、数多くの商人達が拠点を他領に移したのです。それだけではありません。ティンドホルマー魔法学園は王都から他領へ移転。フェリーの運航を停止した事により、食糧の価格は高騰。これではあまりに国民が可哀想です。国の将来の事を考えるのであれば、次代の国王に王位を委ねるべきなのではありませんか?」
うん? 何かがおかしいぞ。
ティンドホルマー魔法学園の移転話はスカーリが決着させた筈。
こいつ、その事を知らぬのか?
それに国民が暴動を起こした事に対する糾弾もない。
これならいけるか?
「確かに、クラクスの言う事も分かる。しかし、このタイミングで王位を譲ってはシェトランドが可哀相だ。安心してほしい。既に王都再建の道筋はついている。これからは襟を正し、国民の信頼回復に努める事を誓う。だからもう一度、私にチャンスをくれないだろうか」
20
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
【短編】追放された聖女は王都でちゃっかり暮らしてる「新聖女が王子の子を身ごもった?」結界を守るために元聖女たちが立ち上がる
みねバイヤーン
恋愛
「ジョセフィーヌ、聖なる力を失い、新聖女コレットの力を奪おうとした罪で、そなたを辺境の修道院に追放いたす」謁見の間にルーカス第三王子の声が朗々と響き渡る。
「異議あり!」ジョセフィーヌは間髪を入れず意義を唱え、証言を述べる。
「証言一、とある元聖女マデリーン。殿下は十代の聖女しか興味がない。証言二、とある元聖女ノエミ。殿下は背が高く、ほっそりしてるのに出るとこ出てるのが好き。証言三、とある元聖女オードリー。殿下は、手は出さない、見てるだけ」
「ええーい、やめーい。不敬罪で追放」
追放された元聖女ジョセフィーヌはさっさと王都に戻って、魚屋で働いてる。そんな中、聖女コレットがルーカス殿下の子を身ごもったという噂が。王国の結界を守るため、元聖女たちは立ち上がった。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。