転異世界のアウトサイダー 神達が仲間なので、最強です

びーぜろ

文字の大きさ
392 / 486
第十章 冒険者ギルド編

第438話 グランドマスター来訪③

しおりを挟む
「君が佐藤悠斗君に賠償請求をした結果、どのような事がこの国に起こったのか……まず佐藤悠斗君が冒険者ギルドを脱退。それに伴い、ユートピア商会に属する高ランク冒険者全員が脱退してしまった」

「い、いえ、しかしそれはっ……ま、まだ戻って来るかもしれません! それに脱退届も受理していない! だ、脱退しただなんてそんな事は……」

 脱退届を受理していないとか、そんな話はどうでもいい。実際に冒険者が脱退した事は事実なのだから。

「そんな話はどうでもいい。まずはワシの話を聞きなさい。それで……佐藤悠斗君はな、冒険者ギルドを脱退すると共に、シェトランド陛下からフェロー王国内における迷宮内での活動許可を得て、それを商業ギルドに公布した。勿論、商人連合国アキンドの評議会で決定した上での行動だろう」

 ワシは真剣な眼差しを向けながら、モルトバにも理解し易いよう話を進めていく。

「なぁ、まさかそんなっ! それではまるで、私が事の発端となってしまったかの様ではありませんか……」

 いや、どう考えてもそうだろう。
 しかし、今更気付いだ所でもう遅い。
 事は取り返しのつかない所まできてしまっている。

「その通りだ。モルトバ君、君の行動が、評議員である佐藤悠斗君を動かし、フェロー王国中の冒険者ギルドを巻き込んだ。聖モンテ教会の教皇まで動き出しており、もう取り返しのつかない所まで話が進んでしまっている」

「で、では、私はどうしたらいいのです……私はまだ謝罪すら済ませていないのです! このままでは、このままでは、私の一生は……私は一生借金奴隷として生きる事に……」

 全くこの男は……冒険者ギルドに多大な被害をもたらし、多くの冒険者を借金奴隷に堕としておいて、まだ我が身が大事とは……。

「モルトバ君、君はそれ程大変な事をしでかしてしまったのだよ。残念ではあるが、借金奴隷になる事はほぼ確定事項として間違いないだろう……いや、勝手な判断で冒険者達を借金奴隷に堕としていた様だし、犯罪奴隷として奴隷商人に身柄を引き渡す事になるかもしれん。諦めるんだな」

 ワシがそう言うと、モルトバはガックリ項垂れる。

「何、安心しなさい。君が借金奴隷に堕とした冒険者はできる限りギルドで買い上げる。本来貰うべきではない者が白金貨を使い込んでしまったんだ。白金貨を渡さなければ、借金奴隷に堕ちる事もなかっただろう……まあ、時間の問題ではあったかも知れないがな……」

「で、では、私の事も冒険者ギルドで買い上げて下さい! だ、誰とも知れない奴の元で、奴隷になるなんて、そんなの……そんなのあんまりだ」
「……君がそれを言えた義理ではないだろうが、話はわかった。ワシがグランドマスター職を退くまでの間に検討しよう」

 ワシの言葉に、モルトバが涙ぐむ。
 しかし、これは個人的な検討に過ぎない。

 モルトバが冒険者ギルドに与えた損害を考えれば、その検討すら通らない可能性高い。しかし、ここでその話をするのは余り実にならない。

「グランドマスター、ありがとうございます……」
「ああ、それで白金貨はいくら位集まったんだ?」

「じ、実は、白金貨二十万枚しか集まらなくてですね……」
「たったそれだけか……」

 それだけの白金貨では話にならない。
 しかも、日を追うごとに状況はどんどん悪くなっていく。

「……仕方がない。ユートピア商会への謝罪はワシが行う。とはいえ、そう簡単に許してくれるとは思えないがな……」

 相手は商人連合国アキンドの評議員半分の席を持つ大商会。しかも、百を超えるAランク冒険者を育て上げた実績を持っている。
 フェロー王国限定とはいえ、商業ギルド内に討伐・護衛部門を作った事から、悠斗君は冒険者ギルドを本気でフェロー王国内から追い出そうとしていると見て間違いない。

 加えて白金貨二千万枚の賠償金を冒険者ギルドに請求している。
 万が一、支払いに応じなかった場合、それが元となり、商人連合国アキンドが素材の買取をしてくれなくなる可能性もある。その場合のダメージは計り知れない。

 最悪、フェロー王国中に点在する冒険者ギルドを商業ギルドに買い取って貰うか、フェロー王国内でのみ、冒険者ギルドと商業ギルドを統合させた新しい組織の立ち上げを提案してみるか……。

 不足分は冒険者ギルド本部の予算から捻出するしかない。だが白金貨二千万枚はとても……。

 それに荒くれ者達を野放しにすれば、一般市民にも被害が出るかもしれない。やはり、冒険者ギルドという受け皿は必要だ。

「まずは話し合いからだな……モルトバ君。君の事は一時的に拘束させて貰う。ないとは思うが、万が一逃げられた場合、大変な事になるからな……それに外では君の事を狙っている者達が多くいる。ワシの庇護下に入る事で一時的に、危害を加える者もいなくなるだろう」
「……あ、ありがとうございます」
「うむ。それでは、これからの事について話し合おう。冒険者達を売った奴隷商人についても話して貰うぞ」
「は、はい」

 ワシはそう言うと悠斗君との話し合いに備え、モルトバと打ち合わせをする事にした。
しおりを挟む
感想 3,253

あなたにおすすめの小説

異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~

夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。 しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。 とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。 エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。 スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。 *小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。