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第十章 冒険者ギルド編
第438話 グランドマスター来訪③
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「君が佐藤悠斗君に賠償請求をした結果、どのような事がこの国に起こったのか……まず佐藤悠斗君が冒険者ギルドを脱退。それに伴い、ユートピア商会に属する高ランク冒険者全員が脱退してしまった」
「い、いえ、しかしそれはっ……ま、まだ戻って来るかもしれません! それに脱退届も受理していない! だ、脱退しただなんてそんな事は……」
脱退届を受理していないとか、そんな話はどうでもいい。実際に冒険者が脱退した事は事実なのだから。
「そんな話はどうでもいい。まずはワシの話を聞きなさい。それで……佐藤悠斗君はな、冒険者ギルドを脱退すると共に、シェトランド陛下からフェロー王国内における迷宮内での活動許可を得て、それを商業ギルドに公布した。勿論、商人連合国アキンドの評議会で決定した上での行動だろう」
ワシは真剣な眼差しを向けながら、モルトバにも理解し易いよう話を進めていく。
「なぁ、まさかそんなっ! それではまるで、私が事の発端となってしまったかの様ではありませんか……」
いや、どう考えてもそうだろう。
しかし、今更気付いだ所でもう遅い。
事は取り返しのつかない所まできてしまっている。
「その通りだ。モルトバ君、君の行動が、評議員である佐藤悠斗君を動かし、フェロー王国中の冒険者ギルドを巻き込んだ。聖モンテ教会の教皇まで動き出しており、もう取り返しのつかない所まで話が進んでしまっている」
「で、では、私はどうしたらいいのです……私はまだ謝罪すら済ませていないのです! このままでは、このままでは、私の一生は……私は一生借金奴隷として生きる事に……」
全くこの男は……冒険者ギルドに多大な被害をもたらし、多くの冒険者を借金奴隷に堕としておいて、まだ我が身が大事とは……。
「モルトバ君、君はそれ程大変な事をしでかしてしまったのだよ。残念ではあるが、借金奴隷になる事はほぼ確定事項として間違いないだろう……いや、勝手な判断で冒険者達を借金奴隷に堕としていた様だし、犯罪奴隷として奴隷商人に身柄を引き渡す事になるかもしれん。諦めるんだな」
ワシがそう言うと、モルトバはガックリ項垂れる。
「何、安心しなさい。君が借金奴隷に堕とした冒険者はできる限りギルドで買い上げる。本来貰うべきではない者が白金貨を使い込んでしまったんだ。白金貨を渡さなければ、借金奴隷に堕ちる事もなかっただろう……まあ、時間の問題ではあったかも知れないがな……」
「で、では、私の事も冒険者ギルドで買い上げて下さい! だ、誰とも知れない奴の元で、奴隷になるなんて、そんなの……そんなのあんまりだ」
「……君がそれを言えた義理ではないだろうが、話はわかった。ワシがグランドマスター職を退くまでの間に検討しよう」
ワシの言葉に、モルトバが涙ぐむ。
しかし、これは個人的な検討に過ぎない。
モルトバが冒険者ギルドに与えた損害を考えれば、その検討すら通らない可能性高い。しかし、ここでその話をするのは余り実にならない。
「グランドマスター、ありがとうございます……」
「ああ、それで白金貨はいくら位集まったんだ?」
「じ、実は、白金貨二十万枚しか集まらなくてですね……」
「たったそれだけか……」
それだけの白金貨では話にならない。
しかも、日を追うごとに状況はどんどん悪くなっていく。
「……仕方がない。ユートピア商会への謝罪はワシが行う。とはいえ、そう簡単に許してくれるとは思えないがな……」
相手は商人連合国アキンドの評議員半分の席を持つ大商会。しかも、百を超えるAランク冒険者を育て上げた実績を持っている。
フェロー王国限定とはいえ、商業ギルド内に討伐・護衛部門を作った事から、悠斗君は冒険者ギルドを本気でフェロー王国内から追い出そうとしていると見て間違いない。
加えて白金貨二千万枚の賠償金を冒険者ギルドに請求している。
万が一、支払いに応じなかった場合、それが元となり、商人連合国アキンドが素材の買取をしてくれなくなる可能性もある。その場合のダメージは計り知れない。
最悪、フェロー王国中に点在する冒険者ギルドを商業ギルドに買い取って貰うか、フェロー王国内でのみ、冒険者ギルドと商業ギルドを統合させた新しい組織の立ち上げを提案してみるか……。
不足分は冒険者ギルド本部の予算から捻出するしかない。だが白金貨二千万枚はとても……。
それに荒くれ者達を野放しにすれば、一般市民にも被害が出るかもしれない。やはり、冒険者ギルドという受け皿は必要だ。
「まずは話し合いからだな……モルトバ君。君の事は一時的に拘束させて貰う。ないとは思うが、万が一逃げられた場合、大変な事になるからな……それに外では君の事を狙っている者達が多くいる。ワシの庇護下に入る事で一時的に、危害を加える者もいなくなるだろう」
「……あ、ありがとうございます」
「うむ。それでは、これからの事について話し合おう。冒険者達を売った奴隷商人についても話して貰うぞ」
「は、はい」
ワシはそう言うと悠斗君との話し合いに備え、モルトバと打ち合わせをする事にした。
「い、いえ、しかしそれはっ……ま、まだ戻って来るかもしれません! それに脱退届も受理していない! だ、脱退しただなんてそんな事は……」
脱退届を受理していないとか、そんな話はどうでもいい。実際に冒険者が脱退した事は事実なのだから。
「そんな話はどうでもいい。まずはワシの話を聞きなさい。それで……佐藤悠斗君はな、冒険者ギルドを脱退すると共に、シェトランド陛下からフェロー王国内における迷宮内での活動許可を得て、それを商業ギルドに公布した。勿論、商人連合国アキンドの評議会で決定した上での行動だろう」
ワシは真剣な眼差しを向けながら、モルトバにも理解し易いよう話を進めていく。
「なぁ、まさかそんなっ! それではまるで、私が事の発端となってしまったかの様ではありませんか……」
いや、どう考えてもそうだろう。
しかし、今更気付いだ所でもう遅い。
事は取り返しのつかない所まできてしまっている。
「その通りだ。モルトバ君、君の行動が、評議員である佐藤悠斗君を動かし、フェロー王国中の冒険者ギルドを巻き込んだ。聖モンテ教会の教皇まで動き出しており、もう取り返しのつかない所まで話が進んでしまっている」
「で、では、私はどうしたらいいのです……私はまだ謝罪すら済ませていないのです! このままでは、このままでは、私の一生は……私は一生借金奴隷として生きる事に……」
全くこの男は……冒険者ギルドに多大な被害をもたらし、多くの冒険者を借金奴隷に堕としておいて、まだ我が身が大事とは……。
「モルトバ君、君はそれ程大変な事をしでかしてしまったのだよ。残念ではあるが、借金奴隷になる事はほぼ確定事項として間違いないだろう……いや、勝手な判断で冒険者達を借金奴隷に堕としていた様だし、犯罪奴隷として奴隷商人に身柄を引き渡す事になるかもしれん。諦めるんだな」
ワシがそう言うと、モルトバはガックリ項垂れる。
「何、安心しなさい。君が借金奴隷に堕とした冒険者はできる限りギルドで買い上げる。本来貰うべきではない者が白金貨を使い込んでしまったんだ。白金貨を渡さなければ、借金奴隷に堕ちる事もなかっただろう……まあ、時間の問題ではあったかも知れないがな……」
「で、では、私の事も冒険者ギルドで買い上げて下さい! だ、誰とも知れない奴の元で、奴隷になるなんて、そんなの……そんなのあんまりだ」
「……君がそれを言えた義理ではないだろうが、話はわかった。ワシがグランドマスター職を退くまでの間に検討しよう」
ワシの言葉に、モルトバが涙ぐむ。
しかし、これは個人的な検討に過ぎない。
モルトバが冒険者ギルドに与えた損害を考えれば、その検討すら通らない可能性高い。しかし、ここでその話をするのは余り実にならない。
「グランドマスター、ありがとうございます……」
「ああ、それで白金貨はいくら位集まったんだ?」
「じ、実は、白金貨二十万枚しか集まらなくてですね……」
「たったそれだけか……」
それだけの白金貨では話にならない。
しかも、日を追うごとに状況はどんどん悪くなっていく。
「……仕方がない。ユートピア商会への謝罪はワシが行う。とはいえ、そう簡単に許してくれるとは思えないがな……」
相手は商人連合国アキンドの評議員半分の席を持つ大商会。しかも、百を超えるAランク冒険者を育て上げた実績を持っている。
フェロー王国限定とはいえ、商業ギルド内に討伐・護衛部門を作った事から、悠斗君は冒険者ギルドを本気でフェロー王国内から追い出そうとしていると見て間違いない。
加えて白金貨二千万枚の賠償金を冒険者ギルドに請求している。
万が一、支払いに応じなかった場合、それが元となり、商人連合国アキンドが素材の買取をしてくれなくなる可能性もある。その場合のダメージは計り知れない。
最悪、フェロー王国中に点在する冒険者ギルドを商業ギルドに買い取って貰うか、フェロー王国内でのみ、冒険者ギルドと商業ギルドを統合させた新しい組織の立ち上げを提案してみるか……。
不足分は冒険者ギルド本部の予算から捻出するしかない。だが白金貨二千万枚はとても……。
それに荒くれ者達を野放しにすれば、一般市民にも被害が出るかもしれない。やはり、冒険者ギルドという受け皿は必要だ。
「まずは話し合いからだな……モルトバ君。君の事は一時的に拘束させて貰う。ないとは思うが、万が一逃げられた場合、大変な事になるからな……それに外では君の事を狙っている者達が多くいる。ワシの庇護下に入る事で一時的に、危害を加える者もいなくなるだろう」
「……あ、ありがとうございます」
「うむ。それでは、これからの事について話し合おう。冒険者達を売った奴隷商人についても話して貰うぞ」
「は、はい」
ワシはそう言うと悠斗君との話し合いに備え、モルトバと打ち合わせをする事にした。
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