393 / 486
第十章 冒険者ギルド編
第439話 グランドマスターとの話し合い①
しおりを挟む
「ふう、結構時間がかかったな……」
なんだか久しぶりに王都に戻ってきた様な気がする。
トースハウン領、ネルソイ領、サンドイ領を巡り、スラム街の住民達のレベリングを済ませた俺は、屋敷神の『影分身』にその後の教育を任せると『影転移』を使い、王都に戻ってきていた。
ショッピングモールは今日も盛況だ。
王都に変わった事がないか、大通りを歩いていると、まるでストリートアートの様な落書きがされている建物を見つけた。
その建物の周囲には、剣呑な空気を纏った人々が屯し、建物を見つめている。
「あれは、冒険者ギルド?」
あんな感じ……だっただろうか?
この一ヶ月の間で冒険者ギルドに何があったのだろう?
そして、商業ギルドに視線を向けると、こちらは冒険者ギルドとは違い何も変わった様子はない。
強いていえば、冒険者ギルドで働いていた筈のギルド職員さんが、商業ギルド前の道を掃除している。
きっと落ち目の冒険者ギルドに見切りを付けて、転職したのだろう。
いい判断である。
王都の様子を一頻り見た俺が邸宅に戻ると、屋敷神が出迎えてくれた。
正直、屋敷神は事ある毎に呼び出していたから、久しぶり感がまるでない。
屋敷神が影精霊の力を借りて『影分身』できる事を知った時は、最初から屋敷神に全て任せればよかったと思った程だ。
「お帰りなさいませ」
「うん。ただいま、屋敷神。俺がいない間に、何か変わった事はなかった?」
「変わった事でございますか? そうですね……冒険者ギルド本部よりグランドマスターを名乗る男が邸宅を訪問してきました。しかし、悠斗様が不在である旨をお伝えすると、至急話したい事があるので、悠斗様が帰宅次第、すぐに連絡がほしいといって去って行きました」
冒険者ギルドのギルドマスターじゃなくて、冒険者ギルド本部のグランドマスターが?
なんだか大事になってきた気がする。
「えっ? それっていつ位の事?」
俺は一ヶ月かけて三つの領を回っていた訳だけど……。
「そうですね……二週間前でしょうか?」
「二週間前!?」
「はい。悠斗様は当分の間、戻らないとお伝えしたのですが、それでもいいと仰いますので」
「そ、そうなんだ……」
冒険者ギルド……だいぶ、様変わりしている様だったけど、大丈夫なのだろうか……。
多分、あの冒険者ギルドの中で俺の事を待っているんだよね??
「えっと、連絡ってどうしたらいいのかな? 取り敢えず、冒険者ギルドに向かえばいいの?」
「いえ、悠斗様は客間でお待ち下さい。私が冒険者ギルドに向かいグランドマスターを呼んで参ります」
「えっ?」
俺が直接向かわなくて大丈夫なのだろうか??
「相手は冒険者ギルドを束ねるグランドマスターなんだよね?」
「はい。つまりは格下の者という事になります。それに格上の存在である悠斗様をあのようなボロ屋に向かわせる訳には参りません」
冒険者ギルドのグランドマスターが格下!?
屋敷神の判断基準はどうなっているのだろうか?
でも、屋敷神が言うことだし……。
「そ、そう?」
「はい。そうでございます」
まあ、屋敷神がそう言うのだから、そうなのだろう。
言われてみれば、冒険者ギルドの建物もこの一月の間に随分と様変わりしていた。
「それじゃあ、グランドマスターを呼んできてくれる?」
「はい。わかりました。それでは、暫し、こちらでお待ち下さい」
屋敷神はそういうと、床に溶け込むかの様に俺の目の前から姿を消した。
フェロー王国は既に迷宮の支配下にある。
おそらく、グランドマスターを呼びに行ったのだろう。
「それじゃあ、グランドマスターが来るまでの間に、話し合いの準備を進めておこうかな……」
ロキさんと土地神の協力もあり、各領にユートピア商会の支部を建てる事ができた。
従業員達も、既にユートピア商会で働く傍ら、商業ギルドの新しく新設した討伐・護衛部門で、迷宮からモンスター素材を収穫する『収穫人』として活動を始めている。
まあ、ロキさん担当の領では色々あって、スラム街の住民の半分位が聖モンテ教会の修道士として第二の人生を歩む事になってしまった。
なんでそんな事になったのかについては、あまり語ってくれなかったけど、聖モンテ教会と太いパイプのあるロキさんの事だ。多分、教皇ソテルさんやその部下の方々を動かした結果、そんな感じになったのだろうと思っている。
「それにしても……話し合いの準備と自分で言ったものの、何をしたらいいのだろう?」
いつも屋敷神に任せっ放しだったから、何をすればいいのかわからない。
取り敢えず、キッチンに向かうと、キッチンのテーブルの上に茶菓子が置いてあるのが見えた。
元の世界で販売されていた切腹●中を丸パクリし、ユートピア商会でも売りに出した切腹饅頭である。
因みに切腹饅頭は、饅頭の腹から今にも零れ落ちそうな位餡子がはみ出しているのが特徴的な饅頭だ。
餡を包み込む様に閉じているのが当たり前の饅頭の腹をあえて掻っ捌き、餡子を追加し『切腹饅頭』と書かれた帯封で饅頭を包み込み、後ろでしっかり結ぶ。そんなデザインの饅頭となっている。
どうやら、屋敷神はこの『切腹饅頭』を茶菓子として客間に出すらしい。
屋敷神が客間に出す『切腹饅頭』……。
腹を割って話をするつもりなのか、はたまた……解釈が難しい所である。
なんだか久しぶりに王都に戻ってきた様な気がする。
トースハウン領、ネルソイ領、サンドイ領を巡り、スラム街の住民達のレベリングを済ませた俺は、屋敷神の『影分身』にその後の教育を任せると『影転移』を使い、王都に戻ってきていた。
ショッピングモールは今日も盛況だ。
王都に変わった事がないか、大通りを歩いていると、まるでストリートアートの様な落書きがされている建物を見つけた。
その建物の周囲には、剣呑な空気を纏った人々が屯し、建物を見つめている。
「あれは、冒険者ギルド?」
あんな感じ……だっただろうか?
この一ヶ月の間で冒険者ギルドに何があったのだろう?
そして、商業ギルドに視線を向けると、こちらは冒険者ギルドとは違い何も変わった様子はない。
強いていえば、冒険者ギルドで働いていた筈のギルド職員さんが、商業ギルド前の道を掃除している。
きっと落ち目の冒険者ギルドに見切りを付けて、転職したのだろう。
いい判断である。
王都の様子を一頻り見た俺が邸宅に戻ると、屋敷神が出迎えてくれた。
正直、屋敷神は事ある毎に呼び出していたから、久しぶり感がまるでない。
屋敷神が影精霊の力を借りて『影分身』できる事を知った時は、最初から屋敷神に全て任せればよかったと思った程だ。
「お帰りなさいませ」
「うん。ただいま、屋敷神。俺がいない間に、何か変わった事はなかった?」
「変わった事でございますか? そうですね……冒険者ギルド本部よりグランドマスターを名乗る男が邸宅を訪問してきました。しかし、悠斗様が不在である旨をお伝えすると、至急話したい事があるので、悠斗様が帰宅次第、すぐに連絡がほしいといって去って行きました」
冒険者ギルドのギルドマスターじゃなくて、冒険者ギルド本部のグランドマスターが?
なんだか大事になってきた気がする。
「えっ? それっていつ位の事?」
俺は一ヶ月かけて三つの領を回っていた訳だけど……。
「そうですね……二週間前でしょうか?」
「二週間前!?」
「はい。悠斗様は当分の間、戻らないとお伝えしたのですが、それでもいいと仰いますので」
「そ、そうなんだ……」
冒険者ギルド……だいぶ、様変わりしている様だったけど、大丈夫なのだろうか……。
多分、あの冒険者ギルドの中で俺の事を待っているんだよね??
「えっと、連絡ってどうしたらいいのかな? 取り敢えず、冒険者ギルドに向かえばいいの?」
「いえ、悠斗様は客間でお待ち下さい。私が冒険者ギルドに向かいグランドマスターを呼んで参ります」
「えっ?」
俺が直接向かわなくて大丈夫なのだろうか??
「相手は冒険者ギルドを束ねるグランドマスターなんだよね?」
「はい。つまりは格下の者という事になります。それに格上の存在である悠斗様をあのようなボロ屋に向かわせる訳には参りません」
冒険者ギルドのグランドマスターが格下!?
屋敷神の判断基準はどうなっているのだろうか?
でも、屋敷神が言うことだし……。
「そ、そう?」
「はい。そうでございます」
まあ、屋敷神がそう言うのだから、そうなのだろう。
言われてみれば、冒険者ギルドの建物もこの一月の間に随分と様変わりしていた。
「それじゃあ、グランドマスターを呼んできてくれる?」
「はい。わかりました。それでは、暫し、こちらでお待ち下さい」
屋敷神はそういうと、床に溶け込むかの様に俺の目の前から姿を消した。
フェロー王国は既に迷宮の支配下にある。
おそらく、グランドマスターを呼びに行ったのだろう。
「それじゃあ、グランドマスターが来るまでの間に、話し合いの準備を進めておこうかな……」
ロキさんと土地神の協力もあり、各領にユートピア商会の支部を建てる事ができた。
従業員達も、既にユートピア商会で働く傍ら、商業ギルドの新しく新設した討伐・護衛部門で、迷宮からモンスター素材を収穫する『収穫人』として活動を始めている。
まあ、ロキさん担当の領では色々あって、スラム街の住民の半分位が聖モンテ教会の修道士として第二の人生を歩む事になってしまった。
なんでそんな事になったのかについては、あまり語ってくれなかったけど、聖モンテ教会と太いパイプのあるロキさんの事だ。多分、教皇ソテルさんやその部下の方々を動かした結果、そんな感じになったのだろうと思っている。
「それにしても……話し合いの準備と自分で言ったものの、何をしたらいいのだろう?」
いつも屋敷神に任せっ放しだったから、何をすればいいのかわからない。
取り敢えず、キッチンに向かうと、キッチンのテーブルの上に茶菓子が置いてあるのが見えた。
元の世界で販売されていた切腹●中を丸パクリし、ユートピア商会でも売りに出した切腹饅頭である。
因みに切腹饅頭は、饅頭の腹から今にも零れ落ちそうな位餡子がはみ出しているのが特徴的な饅頭だ。
餡を包み込む様に閉じているのが当たり前の饅頭の腹をあえて掻っ捌き、餡子を追加し『切腹饅頭』と書かれた帯封で饅頭を包み込み、後ろでしっかり結ぶ。そんなデザインの饅頭となっている。
どうやら、屋敷神はこの『切腹饅頭』を茶菓子として客間に出すらしい。
屋敷神が客間に出す『切腹饅頭』……。
腹を割って話をするつもりなのか、はたまた……解釈が難しい所である。
9
あなたにおすすめの小説
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる
グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。
『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。
2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。
主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。