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第十一章 オーランド王国動乱編
第470話 神達による蹂躙(トール)
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ここはオーランド王国の近隣諸国の一つ、チャネル王国。チャネル王国では、今、オーランド王国からの宣戦布告を受け、戦争準備を行なっていた。
「オーランド王国に動きはあるか?」
「いえ、まだありません。しかし、気になる点が……」
「気になる点?」
「はい。オーランド王国側から、な、なんと言いますか……天候がおかしく……突如として積乱雲が……」
「まったく、何を言っている……んだ?」
空を見上げると、雷鳴を轟かせながら積乱雲がチャネル王国を覆っていく。
「一体何が……この時期に積乱雲など……」
風は常にオーランド王国側に流れている。
地形的にオーランド王国側から積乱雲が迫ってくる事はまずあり得ない。
言葉を詰まらせ、呆然とした表情を浮かべていると、兵士の一人が積乱雲を指さした。
「あ、あれはなんでしょうか……?」
視線を向けると、そこには雷鳴を轟かせながら飛行する物体が視界に入る。
それを捉えた瞬間、ドォーン! と音を立て、雷鳴と共に二匹の黒山羊と戦車に乗った一人の青年が現れた。
青年の姿を見ると蒼く帯電しており、その姿は到底普通の人間とは思えない。
その青年は乗り物から降りると、黒山羊の頭に手を乗せながら、こちらに視線を向けてきた。
「なあ? ここはチャネル王国で合ってるか?」
「…………」
突然の事に声を出す事もできず後退ると、隣にいた兵士に雷が落ちる。
「なっ、なにっ!?」
「なあ、もう一度だけ聞くぜ。ここはチャネル王国で合ってるか?」
訳がわからず、後退ると、兵士の一人が声を上げた。
「な、ななななっ、なんなんだよお前っ! どこから現れた! 今の雷はなんだっ!? もしかして、お前がロロを……ロロを殺ったのか!?」
「だったらどうした? 質問しているのは俺だ。何度も言わせるな。ここはチャネル王国で合ってるか?」
青年はうんざりといった風にそう呟く。
それを聞いた兵士は、剣を抜くと青年に向かって走り出した。
私は慌てて声を上げる。
「ま、待て! 早まるなっ!」
この青年は、ロロという兵士を雷で殺した。
その事については間違いない。
青年が目の前に現れる時も雷鳴と共に現れたし、身体を蒼く発光させるその姿。同じ人間とは思えない。
この青年はあまりに危険。
もしかしたら、冒険者ギルドでいう所のSランク冒険者並の力を……いや、それ以上の力を持っているのかもしれない。
「剣を下ろすんだ! お前では……」
「ロロはいい奴だった。それを殺したコイツを許す事はできません!」
私が懸命に声を掛けるも、仲間を殺され怒りに囚われた兵士には届かない。
「死ねっ!」
そういいながら兵士が青年に斬りかかろうとすると、雷鳴が鳴り響き、兵士に向かって雷が落ちた。
先程から二回。
近くに雷が落ちた為、耳鳴りが凄い。
雷に打たれた兵士は、剣を落とすと、そのまま地面に崩れ落ちた。
「ラモット!」
私がロロとラモットの元に向かおうとすると、青年が不機嫌そうな表情を浮かべ近付いてくる。
「お前らいい加減にしろよ? この俺様が二回も質問してるのに無視しやがって。お前ら頭は大丈夫か? 脳に蛆でも湧いてるんじゃねーか? あ? 簡単な質問だろうがよ! ここはチャネル王国か? どうなんだよ。ああ?」
コイツに逆らってはいけない。
ロロとラモットの死をもって思い知らされた。
「ああ、その通りだ」
「そうか。それじゃあ、次の質問。この国の王城はどこにある?」
「王城? ああ、あそこに見える一際大きい建物。あれが王城だ……」
一体なんだ。そもそも、コイツは何をしにここに来た?
王城に用があるのか?
「そうか、そうか……あの建物が王城か。勿論、この国の王はあの建物の中にいるんだよな?」
「ああ、その通りだ。しかし、それがどうした……」
「ふーん。ああそう。ありがとな……これで俺も使命を果たせそうだ」
「お前……一体何をする気だ」
「うん? ああ、折角、俺の質問に答えてくれたしな。まあ、いいか。お前の名前は?」
「私の? 私はチャネル王国第一兵団。兵士長のレックだ。お前の名前はなんだ」
「レックね。その名前、覚えたぜ。それじゃあ、レック。雷鳴と共に俺の名を刻みなっ!」
そういうと、青年は黒い山羊の引く戦車に乗り込むと、宙に浮かび上がる。
そして、手に槌の様な物を持つと、王城に向けそれを振り上げた。
「俺の名はトール。雷神トールだ! オーランド王国の女王フィンの命を受け、チャネル王国を貰い受けに来た!」
「なっ! オーランド王国だと!?」
オーランド王国。それは突然、チャネル王国に宣戦布告してきた国の名前。
このトールと名乗る青年は、単騎でこのチャネル王国を落としにきたらしい。
私は咄嗟に大声を上げ、トールと名乗る青年に攻撃を命じようとする。
しかし、それより速く。トールは槌を振り下ろす。
「な、何かやる気だぞ! あいつを止めろぉぉぉぉ!」
私が声を上げた時には、もう遅く特大の雷が王城に向かって落とされた後だった。
あまりの眩さに目を閉じる。
何秒経っただろうか。
目を開け王城に視線を向けると、そこには、雷に打たれ燃え盛る王城の姿があった。
「オーランド王国に動きはあるか?」
「いえ、まだありません。しかし、気になる点が……」
「気になる点?」
「はい。オーランド王国側から、な、なんと言いますか……天候がおかしく……突如として積乱雲が……」
「まったく、何を言っている……んだ?」
空を見上げると、雷鳴を轟かせながら積乱雲がチャネル王国を覆っていく。
「一体何が……この時期に積乱雲など……」
風は常にオーランド王国側に流れている。
地形的にオーランド王国側から積乱雲が迫ってくる事はまずあり得ない。
言葉を詰まらせ、呆然とした表情を浮かべていると、兵士の一人が積乱雲を指さした。
「あ、あれはなんでしょうか……?」
視線を向けると、そこには雷鳴を轟かせながら飛行する物体が視界に入る。
それを捉えた瞬間、ドォーン! と音を立て、雷鳴と共に二匹の黒山羊と戦車に乗った一人の青年が現れた。
青年の姿を見ると蒼く帯電しており、その姿は到底普通の人間とは思えない。
その青年は乗り物から降りると、黒山羊の頭に手を乗せながら、こちらに視線を向けてきた。
「なあ? ここはチャネル王国で合ってるか?」
「…………」
突然の事に声を出す事もできず後退ると、隣にいた兵士に雷が落ちる。
「なっ、なにっ!?」
「なあ、もう一度だけ聞くぜ。ここはチャネル王国で合ってるか?」
訳がわからず、後退ると、兵士の一人が声を上げた。
「な、ななななっ、なんなんだよお前っ! どこから現れた! 今の雷はなんだっ!? もしかして、お前がロロを……ロロを殺ったのか!?」
「だったらどうした? 質問しているのは俺だ。何度も言わせるな。ここはチャネル王国で合ってるか?」
青年はうんざりといった風にそう呟く。
それを聞いた兵士は、剣を抜くと青年に向かって走り出した。
私は慌てて声を上げる。
「ま、待て! 早まるなっ!」
この青年は、ロロという兵士を雷で殺した。
その事については間違いない。
青年が目の前に現れる時も雷鳴と共に現れたし、身体を蒼く発光させるその姿。同じ人間とは思えない。
この青年はあまりに危険。
もしかしたら、冒険者ギルドでいう所のSランク冒険者並の力を……いや、それ以上の力を持っているのかもしれない。
「剣を下ろすんだ! お前では……」
「ロロはいい奴だった。それを殺したコイツを許す事はできません!」
私が懸命に声を掛けるも、仲間を殺され怒りに囚われた兵士には届かない。
「死ねっ!」
そういいながら兵士が青年に斬りかかろうとすると、雷鳴が鳴り響き、兵士に向かって雷が落ちた。
先程から二回。
近くに雷が落ちた為、耳鳴りが凄い。
雷に打たれた兵士は、剣を落とすと、そのまま地面に崩れ落ちた。
「ラモット!」
私がロロとラモットの元に向かおうとすると、青年が不機嫌そうな表情を浮かべ近付いてくる。
「お前らいい加減にしろよ? この俺様が二回も質問してるのに無視しやがって。お前ら頭は大丈夫か? 脳に蛆でも湧いてるんじゃねーか? あ? 簡単な質問だろうがよ! ここはチャネル王国か? どうなんだよ。ああ?」
コイツに逆らってはいけない。
ロロとラモットの死をもって思い知らされた。
「ああ、その通りだ」
「そうか。それじゃあ、次の質問。この国の王城はどこにある?」
「王城? ああ、あそこに見える一際大きい建物。あれが王城だ……」
一体なんだ。そもそも、コイツは何をしにここに来た?
王城に用があるのか?
「そうか、そうか……あの建物が王城か。勿論、この国の王はあの建物の中にいるんだよな?」
「ああ、その通りだ。しかし、それがどうした……」
「ふーん。ああそう。ありがとな……これで俺も使命を果たせそうだ」
「お前……一体何をする気だ」
「うん? ああ、折角、俺の質問に答えてくれたしな。まあ、いいか。お前の名前は?」
「私の? 私はチャネル王国第一兵団。兵士長のレックだ。お前の名前はなんだ」
「レックね。その名前、覚えたぜ。それじゃあ、レック。雷鳴と共に俺の名を刻みなっ!」
そういうと、青年は黒い山羊の引く戦車に乗り込むと、宙に浮かび上がる。
そして、手に槌の様な物を持つと、王城に向けそれを振り上げた。
「俺の名はトール。雷神トールだ! オーランド王国の女王フィンの命を受け、チャネル王国を貰い受けに来た!」
「なっ! オーランド王国だと!?」
オーランド王国。それは突然、チャネル王国に宣戦布告してきた国の名前。
このトールと名乗る青年は、単騎でこのチャネル王国を落としにきたらしい。
私は咄嗟に大声を上げ、トールと名乗る青年に攻撃を命じようとする。
しかし、それより速く。トールは槌を振り下ろす。
「な、何かやる気だぞ! あいつを止めろぉぉぉぉ!」
私が声を上げた時には、もう遅く特大の雷が王城に向かって落とされた後だった。
あまりの眩さに目を閉じる。
何秒経っただろうか。
目を開け王城に視線を向けると、そこには、雷に打たれ燃え盛る王城の姿があった。
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