ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女

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 眠い。一度寝てしまったから、朝のアラームを止める時みたいに瞼が開かない。
「アユー、着いたよー」
あーそっか。ここ車か。そう思うのに、頭も体もうまく動かなくて。
「ん゛、」
「今日俺の家泊まっていきな。1人で倒れちゃったら心配だし」
「…ふぁい、」
ぼーっとしたまま車を降りて、見慣れないエントランスに入る。
「眠いなー。あとちょっとだからなー」
早く目を閉じたい。眠たい。外でこんなに眠くて仕方がなくなるってない。玖宮さんに支えてもらっているから何とか立っている、そんな状態。
「ちょっと散らかってるけど」
通されたのは、俺の部屋より広い廊下。
「空いてる部屋も布団もあるからな」
フローリングに座った瞬間、また眠くなって頭がガクガク揺れる。
「あー待って待って。着替えしてから寝な」
 あー、玖宮さんの着替え、やっぱ大きいなー。あ、そっか。おれラジオの後漏らしちゃったから。冷たいズボンに手をかける。
 あれ?

 俺、あれ?着替えたはずだよな?何で制服濡れてんの?
 一気に目が覚める。玖宮さんは何事もない様子でタオルを濡らしている。
「おれ、どこで、」
 そんなの一つしかない。ずっとズボン冷たいなって思ってたから。
 寝ぼけた頭が覚醒していく。
「っ、まねーじゃー、」
あれ、会社の車だよな。汚したまま何も言わずに帰ったってこと?クリーニングとか掃除とか。スマホを持つ手が震える。
「大丈夫。むしろごめんねって言ってたよ。あ、ほら。明日の撮影と打ち合わせ、別日にしてくれるって」
 丁度見ていたメッセージに連絡事項が新しく入る。明日はゆっくり休んでねと絵文字付きで書いてある。
「ほらもう着替えるよ。風邪ひいちゃう」
通話をかけていたのに、スマホを取られて切られる。
「おれ、今日体おかしくって、」
「多分熱あるからね。シャワーは明日にしなさいね」
「玖宮さん、汚れてないですか、」
「うん、大丈夫だよ。ほらほら早くズボン脱いで」
 言われるがまま制服のズボンを脱ぐ。濡れたタオルが肌に当たる。本日2回目の光景。子役の子でもこんな失敗しない。俺だけ、こんな。
 シャワーは我慢してな、と上も丁寧に拭かれて、玖宮さんのパーカーを被せられる。
「スポドリ飲めそ?」
 渡されたぬるめのペットボトルに喉がなった。正直喉はカラカラで、でも。
「もう少し飲めそう?」
一口だけ飲んでキャップを閉めたらまた開けられて、目の前に差し出される。
「…いいです、」
「そっか。あ、そうだ。飯くえそう?雑炊くらいなら」
「…はい、」



 今日一日何にも食べられないって思っていたのに、鍋いっぱいの卵の入った雑炊はスイスイ口に入った。でも、お腹が満たされたからか、さっきよりずっと眠い。玖宮さんが喋っているのに何も入ってこない。
「そろそろ寝るか」
眠い。でも。ここは俺の家じゃなくて、布団も服も俺のものじゃなくて。
「俺、トイレ行く、」
 さっき雑炊が熱くて、無意識にお茶2杯も飲んじゃった。それに雑炊自体も水分じゃん。車で漏らしたのに、お腹はそこそこ張っていて、便器の前に立ったら我慢できないくらいにしたくて。
(もし…布団でもしちゃったら、)
 自分の体を信用できない。何であんなにお茶飲んじゃったんだろう。そもそも自分の家帰れば良かった。
「おやすみ。俺隣居るからいつでも呼んで」
 横になって布団をかけられたらもう、目が自然に落ちる。たまらなくなって上体を起こした。
「どうした?」
「…まだ眠くないのでもう少ししたら寝ます」
「横にはなっときな。いつの間にか寝てるよ」
「でも、……また寝ながらするかも…だから」
「いーの。布団の予備まだあるし。俺の家なぜか飲み会会場にされがちでさ。一人暮らしの癖に布団何枚あるんだってくらいあってさ」
「……もう一回トイレ、」
「大丈夫。さっき行ったでしょ」
「でも、」
「疲れてるんだよ。休んだら元に戻るよ」
布団をまた肩までかけられて、上から叩かれる。
「子守唄いる?」
「…何歳だと思ってるんですか、」
「あはは」
いつ寝たのかはわからない。でも、すでに目は閉じていて、夢に片足突っ込んでいて。玖宮さんのおやすみが、夢の中で微かに聞こえた。





 お腹が重い。というよりジクジクしてる。おしっこがしたくてたまらないのに、トイレが見当たらない。
 前かがみでソコをグニグニこねくり回して、青いピクトグラムが見えた瞬間、ハッと目を覚ました。
『ぁ…ふとん、!!』
慌てて起き上がって尻周りを撫でるけど、濡れている様子はない。ホッとしたのも束の間。
(おしっこ!!!!)
お腹がはち切れそう。座っているだけでも苦しくて、反射的に立ち上がった。
部屋を出ると、玖宮さんはもう起きていて、時間は12時を超えている。
『おはよ』
『あ、おはようございます、』
『ぐっすりだったね。体調どう?』
『あ、っ、おしっこっっ、』
漏れそう。おしっこ出そう。それしか考えられなくて、思わず我慢していた前抑えをしてしまう。
『ぁ、ああ、』
ゆさゆさとお尻を上下に動かして、体をくの字に曲げて。夢の続きみたいに出口をぎゅうぎゅうに抑える。
『歩ける?早くいこ』
腕を引かれて、ズボンもパンツも全部ずり下ろされて。
『あっ、』
大きく体が震えて、けたたましい音が鳴って。
(まにあった…)
気持ちいい。パンパンだったお腹がみるみるうちに萎んで、頭がクラクラして。






(あれ、おれ、)
気づいたらなぜか俺は布団の中にいて。それで、なんか。
「っっっ!!!」
慌てて布団をまくる。パンツが濡れている。ていうか今出てる。慌てて前を押さえて、リビングに出る。
「あ、起きた。よく寝てたねぇ」
 時計は夢と同じ12:00を指している。玖宮さんはソファに座っている。でも、夢とは違うのは。
前をみっともなく抑え、足踏みを繰り返す。出口は一度出始めたものは止められないといったふうに、手の隙間からびちゃびちゃと落ちていく。
「な、んで、」
夢の中だったら間に合ったのに。あと少し早く起きてたら、ちゃんと。

 っじゅいいいいっ!!!!

腰がふわって跳ねる。びたびたとけたたましい音が、トイレじゃないところで。
「っ、あっ、」
 12時間分の水分は、なかなか止まってくれない。お腹の気持ちいのと、頭のフラフラでおかしくなりそうで。しゃがみ込んだ途端、腹が圧迫されてお尻にぶわりと熱がともった。びちゃびちゃと恥ずかしい音がより一層大きくなる。
「あぅ、」
一瞬だったのかもしれないけど、スローモーションのような永遠を感じた。お腹が空っぽになってスッキリした頃には、自分を中心にみっともない水溜りが囲んでいた。
「あ、の、おれっ、」
「ごめんね、連れてってあげれば良かったね。しんどかったでしょ」
昨日の体調不良とは裏腹に、頭は冴えているし、お腹も空いている。胃の痛みもない。ただの失敗。だからこそ、この現状がより一層にみっともなく感じた。
「立てそう?」
「ぁ、おれ、もう元気です、ただ、我慢できなくて、」
顔が別の意味で熱い。死にたい。走って逃げたい。一応測っておけと渡された体温計は、ド平熱。しまいに空腹からのお腹も鳴って、もう。
「あはははは。元気になったようで良かった。ご飯あるけど食べる?」
「…たべたい、です、」
「じゃあお風呂入っておいで。もーそんな顔しないで?昨日めっちゃ心配したんだから。良かった良かった」

 風呂場の鏡の俺の顔は、平熱とは思えないほど赤い。ちょっと涙も出ている。
 ゲロよりは全然綺麗だからという謎理論をかました玖宮さんは、怒っていなさそう。酔っ払いのお漏らしより全然いいよとか、よく分からない励ましをされた。


「目玉焼きと卵焼きどっちがいい?」
風呂から上がった俺に、何でもないように聞いてくる玖宮さん。失敗の跡が跡形もない。
「…ごめんなさい、」
「言ったじゃん。ゲロより全然綺麗だって。で、目玉焼き?卵焼き?」
「…卵焼き…」
「甘いの?しょっぱいの?」
「…甘いの…」
「はーい。あ、でも今日一日安静だからね」

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