ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女

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「カバンあさっていい?」
 しゃがんで下を向いたままのアユを覗き込むと、目が溶けそうなくらいに涙をこぼしている。
「悔しかったなー。あとちょっとだったもんな」
 ほっぺを手で挟むとやっぱり熱い。顔の白さも多分、メイクのせいだけではないし、目の裏も真っ白。
「なー、もしかして今日昼も食えてない?」
カバンの中だけで分かる体調不良。開封済みのゼリーはまだ中身が残っているし、頭痛薬も胃薬も常備されてるって相当だろ。
「…車酔いそうって、おもって、」
 学業のない俺でさえキツいって思うのに、高校行きながらだから、めちゃくちゃキツいだろう。高校生は22:00までしか働けないとは言っても、そこから家まで車で2時間とかはザラにある。無理するなって言いたいけれど、それが出来ないのがアイドルで、芸能界の辛いところなのである。



「マネージャーが下着買ってきてくれたって。あー制服かー…肩こりそうー」
とは言っても、着替えはこれしかない。目眩は一時的なものだったらしく、普通に立てている。とはいえ、いきなり倒れたら危ないので、恥ずかしいだろうけどしゃがんだ俺の肩を掴んでもらった。
びしょびしょに濡れた足を拭いていると、出会いたての頃を思い出す。あの頃に比べてグッと身長も伸びて、大人の顔つきになった。でも、ぐずぐずに泣いたアユはまるでちっちゃい子みたいで。
「もうおしっこない?」
「…ないです、」
まだ泣いてる。でも疲れて眠そう。現に今も、足をペチペチしないとズボンに足を通してくれない。早く車に乗せて寝かせてやらないと。




「アユー、用意できたから帰ろっか」
着替え終わったアユは、車椅子に座ったまま船を漕いでいる。
「お疲れ様です~今日はありがとうございました~…」
すれ違うスタッフの方々に小さく挨拶をすると、みんな察してくれて黙ってお辞儀をしてくれる。
「はいこれ。気にしないようにって伝えておいてね」
飴やらお菓子やらを渡して下さる方も居て、むしろ心配してくれている。皆さん、優しくて良かったと安心した。






「マジで起きないっすね」
最初こそ起こしちゃったらどうしようとヒヤヒヤしていたものだが、あまりにも起きないのでもう普通の声でマネージャーと話している。
「てかもうちょっと休ませてやってください。いつかぶっ倒れますよ」
「そうなんだけどねー…今が頑張り時ってどんどん仕事が来るんだよ…」
「あー…まあそうですけど…」
 ふと、隣が身じろぎをした。
(やべっ、)
起こしてしまったかと心配だったが、再び寝息が聞こえてきて胸を下ろす。でも、何かがおかしい。ふるりと体が震えて、足をモゾモゾとし始めて。股の間が、濡れている。
「マネージャー、アユおしっこ出てる!!」
「え!?うそ!?」
「アユ?アユ?」
 肩を揺すって起こすけど、全く起きる気配がない。爆睡してる。
 気休めにスポーツタオルを股の間に当てるが、あまり意味がない。
「もう寝かしといてあげなさい。今起きてもどうしようもないし」
「まあそうですね。相当疲れているんだろなー」
起きたらまた泣いてしまうんだろうな。あの顔は心が痛くなる。
「てかアユって一人暮らしでしたよね」
「そーだよー。実家山形だからね」
「じゃあ今日俺の家にいっしょに連れて帰ります」
「良いの?」
「明日って昼から打ち合わせと撮影でしたよね。打ち合わせ、ずらせませんか?」
「打ち合わせはできるけど…撮影はちょっと聞いてみる」
お願いしますと言ったくらいで、俺の家が見えてきた。本当はこのまま寝かせたまま運んでやりたいけど、高校生を抱えるだけの力はない。
「アユー、着いたよー」
よだれを垂らし、気持ちよさそうに眠っているアユの肩を叩いた。




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