ダンス練習中トイレを言い出せなかったアイドル

こじらせた処女

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(今日は学校午前中まで行って、インタビューと、ダンスレッスンとラジオ…)
 就寝時間が2:30で、起床は6:30。のところを家を出る10分前まで寝てしまって現在時刻は7:20。朝ごはんがわりのゼリーを飲んで、家を出る。
 無事デビュー1周年を迎えた。ドラマにツアー、バラエティ…。ありがたい事に沢山の仕事をいただけて、忙しすぎるくらいだ。慢性的な頭痛や睡眠不足にも慣れ、どうにかこうにかやっている。

 でも今日は、なんかおかしい。薬を飲んだのに頭は痛いし、胃も痛い。昼を抜いたらまずいって分かっているのに、この後車酔いしそうって思ってしまって食べられない。
「…まねーじゃー、」
 いいかけて辞めた。言ったところでどうするんだ、と。俺だけじゃない、他の色んな忙しい人との兼ね合いで日程が決まっている。体調が悪いって言ったら全部の予定が狂う。明日も、明後日も予定は入っている。幸い今日を抜けたらゆっくり眠れる。
(よし…)
 カバンの中に常備しているゼリーを半分ほど吸う。少しでも糖分を取っておこうと飴も口に入れた。


「あれお前、食わねーの?」
インタビューを終え、ライブに向けてのダンスレッスンでクタクタになり、今日の最後のミッションである生放送にむけての休憩中。マネージャーが買ってくれたおにぎりと、俺がよく飲む緑茶は手付かずのままテーブルの上に転がっている。玖宮さんは相変わらず大きい口で2つ目のおにぎりに取り掛かっている。
「あー…終わってから食べます、」
「遅くなるけど…体持つか?」
 もう今は空腹より眠気が勝っている。
「喋ってる時に寝ちゃったらマズイんで、ちょっとねます、」
ソファに横になったらすぐに瞼が閉じる。動いたからか、体が熱い。眠くて眠くて仕方がない。




「アユー!時間ーー」
 肩をゆすられて目が覚める。ゆっくりと体を起こすけど、中々目が開かない。無理やり立ち上がって、喉を潤すべく緑茶を一気に飲んだ。
「目ぇ覚めた?」
「…はい、」
「ブース行くか」
「…はい、」
「大丈夫?」
「…眠い…です」
「これ終わったら寝れる!!頑張ろー!!」



って言ったのが1時間前。
(トイレ…したい、)
あと30分。やっぱりさっき休憩入れてもらったらよかった。時間が押しているから、と休憩か否かが任意で決まってしまった。玖宮さんも、パーソナリティの人も大丈夫って言ったから、言いにくくて合わせてしまった。
(始まる前に一度済ませたのにな…)
 下腹がジンジンしてたまらなくなって、思わず腹を撫でた。肌寒いからだろうか。疲れていて沢山飲んでしまったからだろうか。座っているのが苦しくて、太ももを閉じたり開いたり。
「かやさんからのお便りです、」
 読んでいる文章とは裏腹に、頭の中はトイレで埋め尽くされている。体がおかしい。薬は効かないし、いつもは我慢できる感じだったのにもうしたくてしたくてたまらない。

 あと、2通。これが終わったらエンディング。息が引き攣りそうで、何でか泣きたくなって。手汗で台本は湿っていて、端っこがクシャってなって。

「では、また来週~」
待ち望んだ言葉。早く。おしっこしたい。
「「お疲れ様でした!」」
早く。本当に出したい。前を押さえたい。
「ありがとうございました!中学の頃から聞いていたラジオだったんで嬉しいです!」
玖宮さんの言葉が入ってこない。でも、俺も同じ気持ちってことを何とか頷きで被せる。
「嬉しいなぁ…!まって…中学ってことは…え、もう5年!?子供の成長って早いわぁ…え、じゃあもうお酒は飲めるの?」
「はいっ!あ、アユはあと3年後なんですけど…なっ」
「あ、はい、」
「じゃあ今度飲みに行こう。アユくんはジュースで」
「あ、ぜひっ、よろしくお願いします、」
あ、やっと帰れる。トイレ行ける。パーソナリティの人がブースから出る。先輩も立ったから、一緒に立とうとした。
「ぁ、れ、」
机に手をついたつもりだったのに、足が追いつかない。というか、頭がさぁーって冷たくなって、耐えきれずに膝の力が抜ける。
「アユ!?」
玖宮さんが支えてくれて、しゃがむ体制にしてくれたからどこも打っていない。
「あ、れ、」
耳、キーンってする。頭ふらふらする。目をギュッて閉じて、地べたに座り込んで。気づいたら玖宮さんの胸に頭を押し付けられていた。
「ごめ、なさい、」
「気持ち悪いとかないか?」
「それは…ないです、」
「車椅子持ってきてくれるって。びっくりしたぁー」

 あ。

「熱…もちょっとありそうよな。…アユ?」

 気づいた時にはズボンが少し濡れていて。慌ててソコを握りしめるけど、ジュワジュワと染み出すのを止められない。

(ど、しよ、あ、玖宮さんもぬれる、あ、ここブース、あ、ぁ、)

 頭の中はパニックで、どうしようってことしか考えられなくて。息が引き攣りそうで、泣きそうで。

「しんどい?吐きそ?」

止まれ。止まれ止まれ止まれ止まれ。ぎゅうぎゅうにソコを握りしめるけど、限界だった体は聞いてくれない。途中休憩入れて貰えばよかった。そもそも緑茶、収録前に飲むんじゃなかった。ギリギリまで寝るんじゃなかった。

「ごめ、なさ、っ、」

 気づかれた。玖宮さんの靴も膝も濡れている。顔合わせられない。
 またやっちゃった。しかも今回はみんなが見てる場所で。誰かがタオル持ってこいって叫んでいる。みんなに見られている。
「っひ、っ、」
「大丈夫大丈夫。収録中頑張ったもんな。ずっと今日しんどかったもんな」
離れることなく背中を撫でてくれている。顔、隠してくれている。
「しゃーないって。休憩入れてやればよかったな。言いにくかったろ」
 押さえていた手を退けられて、膀胱あたりをトントンと叩かれて。
「我慢すんのやめな?全部しーしー。出来る?」
「っ~、ぁ、」
体がブルリと震えた。トイレじゃないところで、全部力抜いちゃった。
「すっきりした?」
「っ、う゛、」
「あ、車椅子きたって。乗れそう?」
「きたない、からぁ゛、」
立たせてもらって、より一層大きくなった水たまりに心が折れた。周りの人たち何人かと目が合う。いっぱいの人に見られている。その事実を目で見た事が引き金になって、目から涙がぼろぼろ零れる。
「タオル敷いてもらってるから。ほらここ。座ろ?」
「かたづける、から、おれ、もぉ歩ける、」
「アユくん君病人だからね。あ、マネージャー。あ、ほんとですか?すみませんお願いしますー」
「でも、っ、」
「マネージャーが片付けてくれるって。俺たちは着替え行こっか」
座らされて、後ろから押されて。玖宮さんがみんなに謝っている声が聞こえる。なのに俺は顔を上げることができなくて。下をずっと向いたままで楽屋に連れて行かれた。


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