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4. 冒険者仲間は魔術師です。
しおりを挟む昨日の戦闘から1晩あけ、俺はベリーに詳しい偵察結果について報告をしにきていた。
通されたのは酒場の奥にある個室。やはり周りには聞かせたくないのか防音のしっかりとした部屋となっている。
「にわかには信じがたいわね。まさか人の姿をして喋る魔者がいるだなんて。」
話を聞きながらベリーは率直な感想をのべるが慌てて訂正する。
「いや、違うのよ。あなたを信頼していない訳ではないの!」
ライトはわかっていますよ。と、ベリーをなだめる。
「こんな話、俺も話を聞いただけでは信じなかったと思います。影の腕を使うまでは俺も魔者だどはきずけなかった。それに。」
ライトの顔が曇り言葉を言い淀む。
「分かっているわ。人と見分けがつかないほどに擬態を覚えた魔者。厄介ね。」
「それに、今回他のエリアも調査した所、森東部にて魔者の群れを発見、討伐しました。」
このゼータの村は森に周りを囲まれその南と北は断崖絶壁となっている。それが自然の防波堤いや一本道の役割を果たし魔者との闘いも防戦できていた。
しかし、イプシロンの町は西側。人型魔者がと戦闘したのが南側、そして東側にあるのがイータの町である。
「まさか、既にこの村を超える魔者が現れているなんて。この5年の間にこの街を避ける準備を整えていたんだわ。」
想像以上の知能である。奴らにそれ程の知能があったのだろうか?
確かに5年前も、あれだけ街や村が焼かれても人の死体は1つも見当たらなかった。
何かに利用するつもりなのかそれとも。
今後の対策はそれも考慮に入れるべきだろう
「森周辺の警戒を強めましょう。それと俺たちが知らない抜け道があるかもしれない。」
「そうね。後は各街に今回の件についての手紙を出すわ。もう何処で魔者が出てもおかしくは無い。」
そして、もう1つ考慮しなければならない事がある。
「ベリーさん。」
俺はその可能性について逃げることが出来ない。
「わかっています。入り込んでいるわね。確実にこの街に。」
そう。見付けなければならない。今まで魔者を発見出来なかった訳。可能性は示されてしまった。
「裏切り者、内通者をさがします。」
それは疑心暗鬼の始まり滅びへの1歩となるだろう。
☆☆☆
酒場で食事をとっていると。
「聞きましたよライト。この村を突破した魔者が現れたとか。君が発見して討伐したとか。」
金髪のイケメン戦士と白銀の女魔術師が相席を求め声をかけてくる。
俺はジェスチャーでどうぞ、と答え質問に答える。
「さすが耳が速いなクリス。」
そんな事無いと謙遜するが、俺が討伐してまだ1晩しか経っていない。
東部での魔者は、何人かの冒険者と遭遇したため、ウワサにはなるだろうがそれにしても耳が速い。流石と言うほか無いだろう。
「そうだ。マリアに聞きたい事があったんだ。」
白い髪をボブショートに揃える女魔術師が、以外な表情をみせる。
「何?ライトが私に聞きたいこと?遂に魔術師を目指す気になったの?」
甘い声でささやきかけられる。
「いや、ずっと言ってますけど魔術師目指す気はありませんよ。」
「なーんだ、もったいないなー。才能あると思うんだけどなー。」
それは適当ではなく、本当に思っているのだろう。毎回マリアはライトを勧誘して残念がっている。
「聞きたいのは魔術の事なんですけどね。魔者が使う影の手あるじゃないですか。」
「あるわね。それがどうしたの?」
「あの影の手、魔術で再現できますか?」
マリアが一瞬考えこむ。
「それは不可能だと思うわ。今ある方法では。」
答えは否定しかし、歯切れは悪かった。
「ライトも知ってると思うけど魔力の運用方法には2種あるわ。」
それは知っている。俺も片方は日頃から使っているからだ。
「1つは純粋なエネルギーとして使う方法。体に纏わせ身体強化したり、気配を調整したりなんかがこの運用法になるわ。」
これが、俺がよく使う魔力運用方法だ。
人間魔者を仕留めた、幻舞 水面月 もこの強化の応用発展系だ。
「そして、もう1つが詠唱に魔力を乗せて放つ方法。こっちは私たち魔術師の領分ね。こちらは詠唱さえ正しければ割と幅広い魔術を行使できるわ。」
こちらは詠唱、魔力操作、イメージが合わなければ発動せず、特に詠唱が重要となる。
「つまり、私が知る魔術の中には影の手を再現出来るものはないわ。」
魔術も原則、魔力を火に変換したりなど、魔力を別の物質、もしくは現象に変換するものだという。
「なるほど。変換して放出するだけではあれ程複雑に動く手は再現不可能なわけか。」
「そうね。現在の魔術では不可能ね。可能な魔術師がいても相当に長い詠唱と集中力、イメージ力に魔力が必要になるわね。」
そんなのは割りに合わないとマリアは首をふる。
「分かりました。参考になりました。」
「そう。力になれたようでなによりだわ。また気になることがあれば何でも聞いてね!」
ありがとうございますとお礼をすると2人は依頼があると先に酒場をでていった。
俺も用事を済ませるべく席を立つのだった。
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