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ひとつのギルドができるまで

本当にちょっとだけな初日

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 「わぁ、このゲームわんこも居るんだー」

 噴水の縁に腰掛けて足をぷらぷらと揺らしながら、ゆきみ──この世界では“スノウ”と名乗ることにした仲良し兄妹の小さい方は、遠くから駆けてくるコーギー犬を見てそう呟いた。

「あれ? こっちくる……」
「そこの初心者マーク付きのかたー!」
「しゃべった!?」

 そして、そのコーギーが言葉を発したことに大層驚いた。



「──えぇぇ!? お兄ちゃん、もうお友達できたの!? ほんとに!? やった……! やったね、お兄ちゃん!」
「はーいー、ティーラテ狂と申しますー。気軽にラテと呼んでねーくださいねー」
「ティーラテ、狂……?」
「わー、リアクションがヒューガくんそっくりだねー、ですねー」
「ふふ、僕たちけっこう、似てるんです」

 コーギー犬の凄まじい速度の捜索により無事合流した仲良し兄妹は、改めてお互いを見詰める。
 片や龍人の女の子、片や獣人の男の子。種族は違えど二人の容姿はどこか似通っており、傍で二人をにこにこと見詰めるラテはそんな様子を微笑ましく見守っている。

「ゆ……じゃなくてスノウ、強そうだね」
「うん! わたしがお兄ちゃんを守るんだよ!」
「ふふ、ありがとう」
「お兄ちゃんはふかふかだね! 狐なの? さわりたーい!」
「しっぽがフワフワなんだよ」
「ふわふわー!」
「あ、ボクも触りたいでーすー」

 獣人のしっぽに群がる龍人とコーギー犬という奇妙な光景に、道行くプレイヤーは疑問符を浮かべていた。


「そういえば、さっき言ってた初心者マークってなんですか?」
「あー、ボクらプレイヤーってNPCと区別できるように頭上にマークがあるんだよー、ですよー」
「マーク……?」
「普段はうっすら? 見えないようになってるんですけどねー、じーっと見てるとなんかこう、見えるようになるのでー」
「あ、本当だ。お兄ちゃんの頭の上にわかばマークが見える」
「スノウの上にもあるね」

 ベテランプレイヤーのラテによる、豆知識が披露された。初心者兄妹はふむふむとそれを聞き、ラテはますますニコニコと微笑む。

「ボクはこれから約束があるので行かなきゃなのでーすがー、よければフレンド登録いかがでしょー」
「あ、ぜひぜひ! お兄ちゃんも、ね?」
「はい、よろしく……お願いします」
「うんうんー、仲良くしようねえー」


『フレンドをつくる』

『→近くのプレイヤーに申請する』

『・スノウ
    ・ティーラテ狂』

『ティーラテ狂 にフレンド申請しますか?』



『ティーラテ狂 とフレンドになりました!』


 ぴろり、と気の抜けるような効果音と共に、兄妹のフレンドリストに初めてのフレンドが登録された。

「じゃあ、またログイン時間合ったらお話しよー、しましょー」
「はーい、またこんどー! ほら、お兄ちゃんも!」
「ま、またこんどー……!」


「……あ、もうこんな時間? 続きは明日にしよっか」
「うん、そうだね」
「楽しかったね!」
「……うん、!」


 こうして、ほぼ何もせず“ヒュウガ”と“スノウ”のMonster Legends初プレイ日は幕を閉じた。
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