10 / 43
第十話 いざ本殿へ
しおりを挟む
本殿の扉から漏れ出す臭いを浴びても、翠羽は表情を一つも変えなかった。
「なるほど。これはなかなかすごいことになってるわね」
左奥に積まれたゴミ袋の山の近くを歩いて回り、右側の家具類を見て入口で待つハシルヒメと珠のもとへと戻ってきた。
「ゴミの量は多いけれど、ある程度分別されているみたいだから、今日中に片付きそうよ」
「お、やった! じゃあすぐに始めよう! はいよろしく!」
ハシルヒメは珠のお尻を叩いた。
「や、やめてよ! やるけど、あんたは手伝わないつもり?」
「うーん。さすがにちょっとはやろうかな。翠羽がいるのは今日だけだしね」
ハシルヒメは翠羽に向かってサムズアップしてウインクした。翠羽は微笑んで返す。
「わたしは仕事で来ているのだから、見ていてるだけでも大丈夫よ」
「だってよ珠ちん」
ハシルヒメが腰に手を当てて胸を張った。
「わたしは現場監督ってことだね」
「知識のない人が現場監督やってどうするの。翠羽さんに指示を出してもらおう。絶対にそっちの方が早いし確実だから」
珠が「おねがいします」と頭を下げると、翠羽は珠の肩に手を置いて頭を上げさせた。
「そんな、お客様に指示を出すなんて、そんなことはできないわ。けれど何をしているのかわからないと不安だと思うので、説明だけするわね」
翠羽はゴミ袋の山を指さした。
「まずここに必要なのは分別ね。特にアルミ缶は買い取ってくれる場所があるから、缶はアルミとスチールはしっかりと分けたほうがいいわ」
「え? お金になるの? じゃあわたしやる!」
ハシルヒメが手を上げた。
「お金になるといってもキロ当たり百円前後だから、コスパがいいとは言えないわね。金額だけなら家具類を綺麗にしてリサイクルショップに持って行った方が高くなると思うわ」
「おぉ! それもやろう! 意外とプラスになっちゃったりして」
ハシルヒメが目を輝かせて家具の積み上げてあるところへと移動した。翠羽は急いでその後を追い、両肩に手を置いてハシルヒメを止める。
「期待させてしまって申し訳ないのだけれど、ほとんどのものは粗大ごみとして処分しないといけないし、家電類は買い取ってもらうのは絶望的なの。それを処分するのにもお金がかかるから、マイナスにならなければ御の字といった感じよ。よほど高い物があれば別だけれど」
「大丈夫! こんだけ積まれてるんだし、一個くらい高いのあるでしょ!」
ハシルヒメは積み上がった家具と向き合った。その前に珠が立つ。
「あんた物の値段とかわかるの?」
「そこはフィーリングで」
「絶対に任せちゃいけないやつじゃん。そこは翠羽さんにお願いして、わたしたちはゴミの分別とかの簡単な作業をしたほうがいいよ」
珠が翠羽に目を向けると、翠羽はスマホを取り出した。
「わたしも家具の値段とかには詳しいわけではないから、知り合いのお店の人を呼ぶわね。全部を綺麗にすると時間がかかるから、値段のつくものだけ掃除をしましょう」
「なるほど。確かにそうしたほうが効率がいいかも」
スマホをいじる指をじっと見ていた珠の肩を、ハシルヒメが指先でつついた。
「ねぇ珠ちん。わたし気づいちゃったんだけど」
「なに? どうしたの?」
「一番高いのって付喪神のついた箒なのでは? 赤字だったらワンチャン――」
珠がハシルヒメの肩を左手でがっちりと掴んで固定し、右に握った拳をハシルヒメの柔らかい頬に押し当てた。
「思いっきり殴ってもいいかな?」
「じょ、冗談だって! 別に売ろうとか言ってないじゃん! やめてぇ!」
その様子を見て翠羽は笑った。
「仲良しでいいわね」
珠は苦笑いを返すことしかできなかった。
「なるほど。これはなかなかすごいことになってるわね」
左奥に積まれたゴミ袋の山の近くを歩いて回り、右側の家具類を見て入口で待つハシルヒメと珠のもとへと戻ってきた。
「ゴミの量は多いけれど、ある程度分別されているみたいだから、今日中に片付きそうよ」
「お、やった! じゃあすぐに始めよう! はいよろしく!」
ハシルヒメは珠のお尻を叩いた。
「や、やめてよ! やるけど、あんたは手伝わないつもり?」
「うーん。さすがにちょっとはやろうかな。翠羽がいるのは今日だけだしね」
ハシルヒメは翠羽に向かってサムズアップしてウインクした。翠羽は微笑んで返す。
「わたしは仕事で来ているのだから、見ていてるだけでも大丈夫よ」
「だってよ珠ちん」
ハシルヒメが腰に手を当てて胸を張った。
「わたしは現場監督ってことだね」
「知識のない人が現場監督やってどうするの。翠羽さんに指示を出してもらおう。絶対にそっちの方が早いし確実だから」
珠が「おねがいします」と頭を下げると、翠羽は珠の肩に手を置いて頭を上げさせた。
「そんな、お客様に指示を出すなんて、そんなことはできないわ。けれど何をしているのかわからないと不安だと思うので、説明だけするわね」
翠羽はゴミ袋の山を指さした。
「まずここに必要なのは分別ね。特にアルミ缶は買い取ってくれる場所があるから、缶はアルミとスチールはしっかりと分けたほうがいいわ」
「え? お金になるの? じゃあわたしやる!」
ハシルヒメが手を上げた。
「お金になるといってもキロ当たり百円前後だから、コスパがいいとは言えないわね。金額だけなら家具類を綺麗にしてリサイクルショップに持って行った方が高くなると思うわ」
「おぉ! それもやろう! 意外とプラスになっちゃったりして」
ハシルヒメが目を輝かせて家具の積み上げてあるところへと移動した。翠羽は急いでその後を追い、両肩に手を置いてハシルヒメを止める。
「期待させてしまって申し訳ないのだけれど、ほとんどのものは粗大ごみとして処分しないといけないし、家電類は買い取ってもらうのは絶望的なの。それを処分するのにもお金がかかるから、マイナスにならなければ御の字といった感じよ。よほど高い物があれば別だけれど」
「大丈夫! こんだけ積まれてるんだし、一個くらい高いのあるでしょ!」
ハシルヒメは積み上がった家具と向き合った。その前に珠が立つ。
「あんた物の値段とかわかるの?」
「そこはフィーリングで」
「絶対に任せちゃいけないやつじゃん。そこは翠羽さんにお願いして、わたしたちはゴミの分別とかの簡単な作業をしたほうがいいよ」
珠が翠羽に目を向けると、翠羽はスマホを取り出した。
「わたしも家具の値段とかには詳しいわけではないから、知り合いのお店の人を呼ぶわね。全部を綺麗にすると時間がかかるから、値段のつくものだけ掃除をしましょう」
「なるほど。確かにそうしたほうが効率がいいかも」
スマホをいじる指をじっと見ていた珠の肩を、ハシルヒメが指先でつついた。
「ねぇ珠ちん。わたし気づいちゃったんだけど」
「なに? どうしたの?」
「一番高いのって付喪神のついた箒なのでは? 赤字だったらワンチャン――」
珠がハシルヒメの肩を左手でがっちりと掴んで固定し、右に握った拳をハシルヒメの柔らかい頬に押し当てた。
「思いっきり殴ってもいいかな?」
「じょ、冗談だって! 別に売ろうとか言ってないじゃん! やめてぇ!」
その様子を見て翠羽は笑った。
「仲良しでいいわね」
珠は苦笑いを返すことしかできなかった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる