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第二章 ノーカウントパンチ
第三十三話 白い手紙
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昨晩の出来事が夢だったかのように、午前中の時間は過ぎて行った。誰かに昨晩のことを言及されるのではないかと、精神だけがすり減っていく。
黒ドレスさんと直接会う坊ちゃんの勉強時間に入るとき、わたしの緊張はピークに達した。けれど黒ドレスさんはわたしに封筒を渡しただけで、いつも通り坊ちゃんに勉強を教え始めた。
(まさか、辞令書……?)
封筒に書かれた文字を読めないわたしには、判断できない。それは中を見ても同じだろう。
(後で坊ちゃんに見てもらおう)
言葉はわからないけれど、反応を見れるぶんだけマシだ。
封筒は簡素な白いもので、表面には二行の文字……というか、線が引かれている。裏面には上の方に三行の線があった。
蓋は封筒の中心辺りで青い蝋のようなもので封印されている。押してある印は、トカゲのような形をしていた。
(こんな閉じ方、アニメでしか見たことないよ)
なんだか割ってしまうのがもったいなくて、蓋だけを引き抜こうと軽く引っ張ってみる。三回ほど力を入れると、封印ごと剥がれてしまった。蓋の先端に封印がぶら下がる見た目は、なんだか間抜けだ。
(まぁいっか。とりあえず中を見てみよう)
中には三つ折りの紙が一枚入っているだけだった。コインなどは入っていなかったので、初めてのお給金というわけでもなさそうだ。
三つ折りの紙を開いてみると、こう書かれていた。
『拝啓 花握りの魔女さま』
違和感はなかった。文字を読んだということに気付かないくらい、自然とその言葉は頭に入ってきたのだ。
それほどまでに、わたしが慣れ親しんだ言葉は一つしかない。
(日本語だ……!)
気を失うかと思うくらい、心臓が跳ねた。巡る血が頭を熱くする。手は意味もなく震え、紙をまともに開いておくことすらできない。
(お、落ち着いて! 大事なのは何が書いてあるかだから!)
日本語がわかる人がいる。普通の人はそれだけで喜ぶのかもしれないけれど、わたしとしては複雑だった。
言葉がわかるということは、会話をすることになるかもしれないからだ。
(でも、情報は欲しい。帰る方法がわかるかもしれないし、この世界のことをちょっとでも知れれば、生活しやすくなるかもしれない)
わたしがするべきことは、なるべく会う状況にならないように返事を書き、それでも情報は引き出せるように交流を保つことだ。
(とりあえず読んでみよう。話はそれからでも遅くないから)
震えの落ち着いてきた手で、手紙を開いた。
「え……?」
その手紙は真っ白だった。
いや、よく見ると紙の中央にとても小さな字で何か書いてある。手書きのはずだけれど、まるでフォントサイズの変え方がわからない人が印刷した紙みたいだ。
(なにこれ……?)
書かれている文字を見たとき、理解することができなかった。そこに書かれているのは間違いなく日本語だし、文字も小さいとはいえスマホとかでは普通くらいの大きさだ。字が汚かったわけでもない。
そこにはとても整った字で――
「全略……?」
そう書かれていたのだ。前略の書き損じかとも思ったけれど、他に何も書かれていないので正しいようにも思える。
(え? 本当にこれだけ?)
封筒の中を見ても、他には何も入っていなかった。そして紙を何度見直しても
『拝啓 花握りの魔女さま 全略 』
としか書かれていない。
(花握りの魔女って、わたしのことでいいんだよね?)
わたしの手に残る跡からして、おそらく間違いない。だとしたら、この手紙はわたしに何か伝えるためのものだ。でもこの手紙からは、どこかにこれを書いた人がいるということしかわからない。
(あれ? もしかして、この人もコミュ障?)
手紙の文面を思いつかないタイプなのかもしれない。わたしがいうのもなんだけれど、かなりの重症に思える。
(もしかして、これはかなりマズいのでは?)
コミュニケーション能力に欠ける人間同士が交流するのはかなり難しい。間に入ってくれる人間がいない状況だと、なおさらだ。
(と、とりあえず、何か返事を書かないと)
わたしは送られてきた手紙の文面を、じっと眺め始めた。
黒ドレスさんと直接会う坊ちゃんの勉強時間に入るとき、わたしの緊張はピークに達した。けれど黒ドレスさんはわたしに封筒を渡しただけで、いつも通り坊ちゃんに勉強を教え始めた。
(まさか、辞令書……?)
封筒に書かれた文字を読めないわたしには、判断できない。それは中を見ても同じだろう。
(後で坊ちゃんに見てもらおう)
言葉はわからないけれど、反応を見れるぶんだけマシだ。
封筒は簡素な白いもので、表面には二行の文字……というか、線が引かれている。裏面には上の方に三行の線があった。
蓋は封筒の中心辺りで青い蝋のようなもので封印されている。押してある印は、トカゲのような形をしていた。
(こんな閉じ方、アニメでしか見たことないよ)
なんだか割ってしまうのがもったいなくて、蓋だけを引き抜こうと軽く引っ張ってみる。三回ほど力を入れると、封印ごと剥がれてしまった。蓋の先端に封印がぶら下がる見た目は、なんだか間抜けだ。
(まぁいっか。とりあえず中を見てみよう)
中には三つ折りの紙が一枚入っているだけだった。コインなどは入っていなかったので、初めてのお給金というわけでもなさそうだ。
三つ折りの紙を開いてみると、こう書かれていた。
『拝啓 花握りの魔女さま』
違和感はなかった。文字を読んだということに気付かないくらい、自然とその言葉は頭に入ってきたのだ。
それほどまでに、わたしが慣れ親しんだ言葉は一つしかない。
(日本語だ……!)
気を失うかと思うくらい、心臓が跳ねた。巡る血が頭を熱くする。手は意味もなく震え、紙をまともに開いておくことすらできない。
(お、落ち着いて! 大事なのは何が書いてあるかだから!)
日本語がわかる人がいる。普通の人はそれだけで喜ぶのかもしれないけれど、わたしとしては複雑だった。
言葉がわかるということは、会話をすることになるかもしれないからだ。
(でも、情報は欲しい。帰る方法がわかるかもしれないし、この世界のことをちょっとでも知れれば、生活しやすくなるかもしれない)
わたしがするべきことは、なるべく会う状況にならないように返事を書き、それでも情報は引き出せるように交流を保つことだ。
(とりあえず読んでみよう。話はそれからでも遅くないから)
震えの落ち着いてきた手で、手紙を開いた。
「え……?」
その手紙は真っ白だった。
いや、よく見ると紙の中央にとても小さな字で何か書いてある。手書きのはずだけれど、まるでフォントサイズの変え方がわからない人が印刷した紙みたいだ。
(なにこれ……?)
書かれている文字を見たとき、理解することができなかった。そこに書かれているのは間違いなく日本語だし、文字も小さいとはいえスマホとかでは普通くらいの大きさだ。字が汚かったわけでもない。
そこにはとても整った字で――
「全略……?」
そう書かれていたのだ。前略の書き損じかとも思ったけれど、他に何も書かれていないので正しいようにも思える。
(え? 本当にこれだけ?)
封筒の中を見ても、他には何も入っていなかった。そして紙を何度見直しても
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としか書かれていない。
(花握りの魔女って、わたしのことでいいんだよね?)
わたしの手に残る跡からして、おそらく間違いない。だとしたら、この手紙はわたしに何か伝えるためのものだ。でもこの手紙からは、どこかにこれを書いた人がいるということしかわからない。
(あれ? もしかして、この人もコミュ障?)
手紙の文面を思いつかないタイプなのかもしれない。わたしがいうのもなんだけれど、かなりの重症に思える。
(もしかして、これはかなりマズいのでは?)
コミュニケーション能力に欠ける人間同士が交流するのはかなり難しい。間に入ってくれる人間がいない状況だと、なおさらだ。
(と、とりあえず、何か返事を書かないと)
わたしは送られてきた手紙の文面を、じっと眺め始めた。
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