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第2章

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「ノア」
 優しく名前を呼んで頬を撫でると、ノアは嬉しそうに目を細めて擦り寄る。連続で絶頂を繰り返したせいで、理知的な瞳はとろけ、目の前の男に全てを預け媚びるように甘い声を上げる。その様子にカーティスは満足そうに微笑みながらゆるゆると下半身を揺らす。ぬちゅぬちゅと卑猥な水音と共に、緩い快楽がノアを襲う。
「君は、私の何だい?」
 ぷつ、と頭の中に男が入ってくる感覚。放心状態のノアは逆らうことが出来ない。いつになく興奮しきったカーティスの目は血走り、荒い息を押し殺すように、ノアに囁いた。
(あ、だめぇ…このタイミングでこんなことされたら…僕…僕ぅ…♡)
 部屋に充満する襲いかかるような闇の魔法が、昏く重く、ノアの精神を犯していく。
「さあ?答えなさい、自分の口で」
「あ、あぅうう…♡」
「私のものだと、言うんだ、ノア?」
 抱き寄せられ耳元で囁かれ、ノアは堪らず身を捩る。だが、逃すまいとカーティスの魔法が濃度を増して小さな少年の身体へと絡みつこうとする。
(あ、だめ…だめぇ…♡やだぁ…♡ちがう、ちがうのにぃ…♡)
 身体が、心が、全身全霊で目の前の残酷で美しい男に従いたいと疼き出す。会議の緊張から解かれ、散々快楽堕ちさせられたノアは、堪らず陥落した。
「ぼ、僕は、カーティス様の忠実なしもべです…たくさん、愛して下さいませぇ……♡」
(だめぇ…こんなこと…言いたくなんかないのに……体が勝手に動くよぉ……)
 絶望に染まりながらも目には仄かにハートマークを浮かべるノアの顔を見て、カーティスは満足げに微笑んだ。
「ああ……やっと手に入れた!ノア、ノア!私のものだ!誰にも渡さないぞ!」
 歓喜の声を上げると、カーティスは一度だけ激しく突き上げた後、ゆるゆると揺する。本当は肉体的にも精神的にも、ノアを快楽漬けにしようとするのを、堪えるようだった。
「ひゃうっ!?」
 突然の強い衝撃に驚いている間に、ノアの体はどんどん熱を帯びていった。やがて全身が火照るような感覚に襲われ、思考能力が低下し始める。
(なにこれ……からだあつい……おなかの奥キュンとする……お尻の中を掻き回されてるだけなのに……なんでこんなに…気持ちイイの…?)
 ノアは無意識のうちに腰を動かして更なる快感を得ようとする。
「どうしたのかい?そんなに動いて……何かして欲しいのかな?」
 意地悪く問いかけられ、ノアは泣きそうな声で答えた。逞しい胸に身体を預け、耐えられないと言うように頭を振る。
「お願いします……どうか僕のことをめちゃくちゃにしてください……カーティス様ぁ…」
 普段の強気なノアの面影などどこにもない。そこには、カーティスに与えられる快感に酔い痴れる一匹のメス猫がいた。
「いい子だ。望み通りにしてやろう」
 カーティスはノアの両足を抱え上げると、上から叩きつけるように腰を打ち付けた。肌と肌がぶつかり合う音と、喘ぎ声、荒い息が、響く。いつの間にか降り出した雨が激しく窓を叩くが、ノアの視界は自分を支配する男しか入らない。
「あぁん!!すごぉい……気持ちいいよぉ……あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ♡」
(服従するのって…きもちいい…カーティスに絶対勝てないこと思い知らされて……頭、真っ白になっていく……)
「あっ…あっ…あぅ♡んあっ…ああっ♡」
 シーツと男の間に押しつぶされそうになりながら、ノアは懸命に男の背に手を回し、カリカリと背中を引っ掻く。
「そろそろ出すよ?」
「はい……中に出して……カーティス様のせーえき…ノアのナカにいっぱい注いで下さい……」
「ぐっ……出るっ……!!」
「あぁああああああ♡」
 ノアは絶叫しながら、何度目かの射精をした。それと同時に、体内に熱いものが流し込まれるのを感じる。
「はうう……」
 脱力し、ベッドの上に倒れ込んだノアの耳元で、悪魔が甘く囁きかける。
「可愛らしかったよ?ノア。君に敬称で呼ばれるだけで、私がどれだけ興奮するか分かるかい?」
「あ…あ…あぁ…♡」
 ノアは焦点の合わない目でぼんやりと宙を見つめている。
「ふふ、疲れてしまったかな?では、一度浴室に連れて行ってあげよう」
 カーティスはノアを横抱きにしたまま立ち上がると、そのまま歩き始めた。
「あぅ……」
 ノアは小さく声を上げたが、抵抗することなくカーティスに身を預けている。腕を背に回し、バランスを取りながら、ノアはカーティスの首筋をぺろりと舐めた。
「おやおや、随分と積極的だね。そんなに私が好きかね?」
「はい……大好きです……カーティスさま……」
 ノアは陶酔しきった表情を浮かべながら答える。洗脳効果のお蔭か、目に浮かんだハートマークはより鮮明に浮かんで見えた。カーティスは満足そうに微笑みながら身体を抱き寄せた。
「嬉しいよ、ノア。さあ、着いたよ。ここで君の体を隅々まで洗ってあげるからね」
「はい……」
 先程、1人シャワーを浴びた時に目に入った姿見が映る。兵士の名残が消え、別の何かへと変わっていく自分の姿がはっきりと映し出されていた。
(ああ…僕…ぼく…こんな…)
 ノアの脳内を埋め尽くすのは、快楽と悦楽と、そして倒錯的な幸福感。
「君は闇に堕ちたのではない、私に、私の愛に、堕ちたのだよ」
「あ…♡」
(だめ…これ、だめぇ…何もかんがえられないよぉ…)
 頭の中で警鐘が鳴る。カーティスの胸板に顔を押し付けて、必死で理性にしがみつく。しかし、それも長くは続かなかった。
「私を見たまえ、ノア。そう、私から目を逸らしてはいけないよ?君を支配する者の姿をしっかりと焼き付けるんだ」
 カーティスの赤い目が妖しく光り、ノアの視界を奪う。
「あぁ……」
 ノアはゆっくりと瞼を閉じると、意識を手放してしまった。
「お休み、ノア。目覚めた時が楽しみだ」
 それがノアの意識が途切れる最後の言葉だった。
***
 灯りの消えた部屋には、時折落雷の光だけが差し込む。寝室の真ん中にある巨大なベッドでは、二人の人影が睦み合っていた。
「んふぅ…♡」
 ノアはカーティスの膝の上に乗せられ、後ろから抱き締められていた。乳首とペニスを同時に弄ばれ、甘い吐息を漏らす。
「気持ち良いだろう?ノア」
「はい……きもちいいれしゅ……♡」
 ノアは舌足らずな口調になりながら、カーティスの言葉に素直に従っていた。
「良い子だ。ご褒美をくれてあげよう?」
 カーティスはノアの顎を掴むと、無理やり振り向かせ、唇を重ねた。
「んむぅ……♡」
 ノアは夢中で舌を出し、カーティスのそれと絡め合う。厚い舌が上顎を攻められるとノアは堪らず甘イキしてしまった。
「ん……ん……ん……んんんんんん♡♡♡」
 ノアはカーティスの腕の中でビクビクッと痙攣すると、絶頂を迎えた。
「はあ……はあ……はあ……♡」
 ノアは肩を大きく上下させ、荒くなった呼吸を整えようとする。
「まだ終わりじゃないよ」
 カーティスはノアの身体を反転させると、正面から抱きしめた。
「あぁ……」
 ノアはカーティスの背中に手を回すと、自ら足を絡ませた。外では落雷の轟音が響くが、愛し合っている二人には気にすらならない。
「もっと……もっとください……カーティス様の精液を……♡」
「ああ、いくらでもくれてやる」
 カーティスはノアの後孔に指を入れると、くちゅくちゅとかき混ぜるように動かした。
「あん……♡」
「もう十分解れているね。さあ、そのまま挿れるよ?」
「はい……♡」
 ノアは期待に満ちた眼差しでカーティスを見つめる。腰を浮かせ、ゆっくりと固く熱い男のソレを受け入れた。
「あぁ……入って来るぅ……♡カーティス様のおちんちんで僕のお腹の中満たされてくぅ……♡」
 自ら卑猥な言葉を口走り、男の烈情を煽り続ける。あまりの愛らしさにカーティスは満足そうにノアの尻を撫でながら囁く。
「ほら、動くよ」
「はいぃ……♡」
 ノアはカーティスの動きに合わせて自ら腰を振り始めた。
「あん……♡あぁん……♡」
 愛らしい黒猫は、主人に媚びるように甘えた声で鳴いている。
「可愛いよ、ノア」
 カーティスはノアの頭を撫でると、激しく突き上げ始めた。奥の奥まで届くように突き上げながら、乳首や小さいペニスを弄る。
「あひっ!あひぃ!!んぁああ!」
 ノアは絶叫しながら、本日何度目かとなる射精をした。
「はうう…また、イっちゃったよぉ……」
「まだまだこれからだよ」
 カーティスはノアをベッドに押し倒し、両足を抱えるようにして持ち上げると、上から落とすように何度も打ち付けた。
「ひぎぃ!?イグゥウウッ!!!!」
「ほら、出すぞ」
「はい…あはっ…♡中に出して下さい……ノアのナカにいっぱい注いで下さい……♡」
 甘えたノアのおねだりを聞いて、カーティスは満足げに微笑んだ。
「もちろんだとも。しっかり受け止めるんだよ?」
「はい……ありがとうございますぅ……♡」
 カーティスがノアの中に射精すると同時に、ノアもまた絶頂を迎える。
「あぁ……あったかい……しあわせぇ……」
 ノアは蕩けた笑みを浮かべながら呟いた。
「君は私のものだ。ずっと一緒だからね」
「はい……カーティス様……♡」
 館の外では落雷が続く。稲妻が光ると、蕩けた顔のノアがうっとりと闇の魔王に服従する姿が照らされる。
「ふふ…最高の眺めだよ、ノア」
「あぁん…♡」
「ああ…見せつけてやりたい…この子が帰ってくると信じている、浅はかな連中に…!ふふ…はは!あははは…!」
「はぅう…また…動いて…あぁん♡イイよぉ…♡」
 興奮した闇の王は、目を血走らせながら小さな獲物を甚振るように刺激し続ける。
「帰る?返す?ふざけたことを。渡さない…渡すものか。絶対にな…?この子は、ノアは、私のモノだ…この子だけが、私の孤独を理解してくれる…私の隙間を埋めてくれる…」
 深緑色の魔法が、薄く輝くノアの魔法にと絡み始める。蛇の交尾のように、纏わり付き、絡みつく。
「クク…あはは…あははは…!」
 雷雨が降り注ぐ館に、魔王の狂気じみた笑い声が響き続ける。勢いを増し硬くなる剛直を感じながら、ノアは甘い声を上げ続けることしか出来なかった。
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