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六話

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「それで、動物とか昆虫と言うのは何だ?」

「知らない?あー、こっちの世界とあっちの世界で言い方が違うのかな」


奏音は立ち上がり椅子に座り机の機械にある電源ボタンを押す。画面が光り、ガゼルはそれに興味を持つ。


「何だこれは?」

「パソコン。この世界の便利ツールかな。色んなことを調べたりできるの」


奏音はキーボードを叩き、動物で検索する。


「これが動物」


パソコンに出した画像をガゼルに見せる。


「魔獣!」

「あら。魔獣って動物なのね」


次に昆虫、虫で検索し画像を見せる。


「魔甲虫!」

「うん。何か少しわかってた」


ガゼルの世界では動物を魔獣。昆虫、虫を魔甲虫と呼ぶ。魔という文字が入るからには恐らく魔法的な何がを使ったりできるものなのだろう。危険とで言えば天と地の差がある。


「今日はもういいや。私今からお風呂に入って来るからここで大人しくしててよ」

「わかった」


奏音は着替えを持ち浴室へ。
ガゼルは床に座り奏音か出て来るのを待つ。静かな部屋にガゼル一人、カチ、カチッと時計の音だけが部屋に響く。
少ししてその部屋で時計以外のグーッという音がなった。


「腹が減った」


それはガゼルのお腹の音だった。
ガゼルは食べ物を探し、部屋の中を漁る。だが、殆どが初めて見るもの、何が食べ物かさっぱりわからない。
ガゼルは奏音に聞きに行った。


「おい!」


ガゼルが浴室のドアを開けると、奏音が全裸で立っていた。


「え?」


頭にタオルを乗せタオルに手を添える。タオルで頭を吹いている最中だった。奏音はその状態で時が止まったかの様に固まる。
ガゼル流石にヤバイと思い「あっ」と声が出る。だが、ここで謝れば負けた様な気になる。
そう思ったガゼルは


「うん。出るところはそこそこ出てるし、引っ込むところはちゃんと引っ込んでいる。安心するといい。特別豊かではないが、お前は貧相ではない。身体に恵まれたな」


ようやく状況を把握する奏音。リンゴの様に赤面し、恥ずかしさと、怒りがこみ上げる。


「早く出て言って!!!」


ビンタをかまし、外へ追い出す。
そして、すぐに着替えて浴室から出て来る。


「明日になったら出て言ってもらうからね」


首にタオルをかけ、怒った様子でいう奏音。


「あん?俺は出て行かないぞ」

「はぁ?何言ってるの?今日止めてくれって話でしょ」

「お前こそ何を言っている。お前は俺が魔法を証明する時に行ったぞ。もし証明出来たらずっと止めてくれると」

「そんな事言って……」


奏音はその時の事を思い出す。


「あっ」


言った。確か言った。勢いで言ってしまった。奏音の中に後悔が渦巻く。


「いやでも…」

「いやでもじゃない。これは決定事項だ」


何も言い返せない。


ガゼルは宿を通り越し、住まいを獲得した。
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