超能力者の異世界生活!

ヒデト

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魔法!

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クロたちは森の広い一角を見つけ、そこで迎え撃つ。王子ら王女たちは詠唱の準備に入る。クロは王子たちの周り、そしてジンの周りのバラスパイダーを近づけないように倒していく。そしてジンは待ち構えていた。足音が聞こえ、影が見え始めると、全員息を飲んだ。姿を現したジャイアンキングバラスパイダー。血に染まった牙をカチカチ鳴らし吠える。

「行くぞ!」

人生で一番長い一分が始まる。王子たち詠唱を始める。クロはバラスパイダーを近づけさせないように倒していく。ジンは無理をせず、攻撃かわしそして受け流しゆっくり王子たちの方へ誘導する。だが、徐々にクロがバラスパイダーを処理しきれなくなる。

くそっ!!

クロは一発「サンダーボルト」を打ち敵を一掃する。そんなクロを心配そうに見るニーナに第二王女が「集中して!」と言う。ジンはだんだん攻撃を変わりきれなくなり敵の攻撃をくらい動けなくなる。

「しまった!」

そんなジンにジャイアンキングバラスパイダーは足から食らいついた。ジンは悲鳴をあげ、何とか離れようと暴れる。それでも離れることが出来ず、足から肉を割く音、骨を砕く音を鳴らし食べる。クロはその光景を目にした途端動きが止まり、目が離せなくなった。映画ではグロテクスな物それも今、目の前で起こっているようなのも見た事があった。だが、それが現実で起こっている。画面ではない光景、リアルな音、匂いがクロの身体を動けなくし嘔吐させる。
ジャイアンキングバラスパイダーがジン完全に食べ切り、王子たちの方へ向かっていく。あと十五秒、あと十四秒と魔法発動までもう少しと言う中、あと五秒と言う所で追いつかれ前脚を振り上げ、攻撃の構えを見せる。

だめか?!

すると、ドカンッ!!!と言う音と同時に青い光が敵を覆う。嘔吐しながら横目で見ていたクロが敵の攻撃を止める。ジャイアンキングバラスパイダーは数秒動きを止める。

「よし、よくやった!これで終わりだ!!」

魔法の詠唱を終え、魔法が発動する。

「森よ大地よ大いなる力で敵を撃て!」

周りが緑色の光に包まれ、キラキラと光が降り注ぐ。そして辺りを照らし光の柱がジャイアンキングバラスパイダーを打ち抜く。ジャイアンキングバラスパイダーは奇声あげた。光の柱は奇声が止むまで打ち続けた。奇声が止み、光の柱は消える。そしてジャイアンキングバラスパイダーはばたりと倒れた。その目は完全に光を失っていた。それを見たバラスパイダーは逃げるように去って行く。王子たちは大きくため息をつく。クロは完全に気が抜け、気を失った。


目を覚ますとそこはベッドの上だった。横でアリスもクロの手を握り寝ていた。
「帰って来たのか。」
すると、ノックの音が聞こえニーナが入ってくる。
「あっ起きたの、よかった。早速だけど父が起きたら連れて来いって言われてるの、少ししたら来てくれる。」

そう言うニーナの顔は何故か真顔で少し怪しまれているように感じた。そして、少しして王室へ行く。そこには王子たちもいた。

「今回の一件、よくやってくれた。感謝する。だいたいの話は聞いている。報酬二百金貨は君のものだ。受け取りたまえ。」
「はい。ありがとうございます。」

クロはまだ金貨がどのくらいなのかわからなかったからピンときていなかった。
王様に一緒に晩御飯をと誘われる。クロは半日ほど眠ってしまっていたのだ。そして王様、王妃様そして王子たちと一緒に食事をする。テーブルマナーをあまり知らないクロとアリスは慣れない手つきでナイフとフォークを使う。食事中、王様たちは今日の話で盛り上がっていた。その話の中にウッド、ラード、ジン、セントこの四人の名前は出なかった。クロはもう少し葬いの言葉とか言ってやったらいいのにと思ったが、同時にこれが冒険者というものなのだと納得してしまった。
食事を終え、部屋に戻ろうとするクロをニーナが引き止める。
「クロ。」
振り向きニーナの顔を見ると真剣な目でしていた。ニーナは「話がある」とクロをニーナの部屋へ連れて行く。
「で、話って何?」
「単刀直入に聞くわ。あなたは一体、何者?」
「何者?よく意味がわからないが、人間?」
「質問を変えるわ。あなたのあの力は一体何?」
クロはあの力が自分の能力の事だとすぐに分かった。
「何って魔法だよ。」
「違う!あれは魔法じゃない。」
「何でそんな事分かるんだ?」
「魔法は魔法詠唱をしなけてば絶対に発動しないの。あなたあの時、詠唱してなかった。」
ジャイアントキングバラスパイダーとの戦いで最後、攻撃されそうになった時、他の王子たちが振り上げた脚に視線が向いている中、ニーナだけはクロの事を見ていたのだ。クロは、その時なのも叫ばずに能力を使っていた。叫ぶ余裕など無かった。
「よく使う魔法とか熟練の魔法使いなら魔法名の詠唱のみで魔法を発動させることが出来る。けど、どれだけ簡単な魔法だったとしても、この世に詠唱無しで発動する魔法は存在しない。理論的に不可能なの。」

そっそうなのかー。

「もう一度聞くわ、あなたは一体何者?」

クロはニーナから目を逸らし黙り込んだ。「ここは言うしかないのか…」という事だけが頭の中をグルグル回る。一分ほど沈黙し、クロより先にニーナが口を開く。

「言う気がないならそれでもいいわ。」
その言葉にクロはホッとする。
「だけど、もう二度とあの力は使わないで。」
「え?」
「約束して。」
「でも俺、これしか使えないんですけど…。」
「それじゃ私が魔法を教えたら使わないって約束する?」
「……。」
「約束して!」
「…はい。」

話は終わり、明日の朝から魔法を教えてもらうことになった。クロは部屋へ戻った。

焦った。マジでどうしようかと思った。でもこれは結果オーライだ。魔法教えてもらえるなんてついてるぜ。魔法と超能力の組み合わせなんて最強じゃね。

そんな事を考えにやけるクロをアリスは心配そうに見つめる。
翌朝、迎えに来たニーナと一緒クロとアリスは王城の外へ出る。

「クロは魔法の事どこまで知ってる?」
「正直、全く知りません。」

そう言うとニーナは魔法の事を一から説明してくれた。
魔法とは魔力をエネルギー源としてこの世の理に干渉すると力。火を起こすにしても本来行わなければならない手順を無視して火を起こす事が出来る、そう言う力だ。魔法発動する為に必要なエネルギー源、魔力はどこにでと存在する。生物の体内、そして自然界どこにでも存在する。自分の体内の魔力を使って発動する魔法、これを個人魔法という。他の人と話しする時は大体個人魔法の個人という言葉は省略されるらしい。自然界に存在魔力に干渉して発動する魔法、それを自然魔法という。そして、この世界に存在する精霊。この精霊の力を借りて発動する魔法、これは精霊魔法という。この三つの魔法全て呪文の詠唱でのみ発動する。だが、この世界には詠唱せずにこの世に理に干渉できる力が二つ存在する。それは神術と魔術である。神術は天使族、魔術は魔人族の人型をしたタイプ魔人と呼ばれる魔族の中の上位の者が使う力だ。この二つの種族と人間を含む他の種族はこの世界において上下関係にある。その理由の一つがこれなのだ。だから、クロが詠唱無しで力を使った事に敏感に反応したのだ。神術と魔術以外に人間が詠唱無しこの世の理に干渉する力を使っている事が知れたら殺されるか、身体を隅々まで弄られるだろう。

「魔法で一番大事なのはイメージする事。そして次にイメージした物を連想される様な呪文。この二つがしっかりしてないと魔法発動しない。わかった?」
「ああ、つまり中二病であればあるほどいいという事だな。」
「え?チュウニ…何?」
「任せろ、妄想は得意中の得意だ。」
クロは少し考えるとぐっと腰を落とし、右手を左手で抑えて叫んだ。
「○旋丸!」
だが、何も起こらなかった。
「おかしいなあ?」
「何してるの?」
「え?嫌、できるかなって。」
「どんな魔法をイメージしたから知らないけど、出来るわけないでしょ。」
「だってさっきイメージと呪文言えばいけるって…。」
「誰もそれだけで魔法が使えるなんて言ってないわよ。さっきも言ったでしょ。魔力をエネルギー源とするって。頭で思い描いたイメージに魔力を組み込まないと…。」
「何だよそれ?!じゃあ早く教えてくれよ。」
「その前にやる事があるわ。」
そう言う、ニーナは飴玉の様なものを持ってきた。
「何これ?」
「ポルの実。これ食べて。」
「何で?」
「これを食べると体が活性化して、体内の魔力が循環さはようになるの。クロの体内、本来循環しているはずの魔力が循環してないのよ。だからこれで少し強引に循環させるのよ。」
「はあ…。」
クロは生返事をする。
「とにかく食べてみて。」
ニーナはクロの口にポルの実を超えた押し込んだ。ポルの実を噛むと中から渋くて苦い汁が溢れてきて吐きそうになる。クロは吐くのをぐっと堪え、水で流し込む。ポルの実が完全に胃に収まると体の中から熱くなってくる。そして身体の中で何かが巡り出した。体内の血液が凄い勢いで回っているような感覚だ。
「で、次はこれを持って。」
透明の水晶を渡される。
「何これ?」
「これは魔法の水晶よ。自分の得意なの属性が分かる魔具。」
「得意属性?」
「魔法には属性があるの。火、水、木、土、風、雷、光、闇、この八つの他に無属性魔法もあるわ。強化魔法とか治癒魔法が無属性魔法に当たるの。それでこの水晶は無属性以外の八つの属性の中で何が得意を教えてくれるの。さあ、あなたの魔力を水晶に流し込んで。」
「そんなのどうすればいいんだよ。」
「言ったでしょ、大切なのはイメージする事。目をつぶって今循環している魔力を水晶に送り込まれる様子をイメージするの。」
クロは深呼吸し呼吸を整え目を閉じた。言われた通りに頭の中でイメージする。少しするとクロの中循環している魔力が動きを変える。体内を回っていただけの魔力がクロの手を通じ、水晶に流れ込むのがわかった。すると、水晶が輝き始める。クロはゆっくり目を開け水晶を見た。水晶の中に何かが映っていた。映っていたのは水だ。次に水が消え、水晶は光をはなった。次に光が消え、水晶が暗くなる。
「これは?」
「あなたの属性は水と光と闇ね。珍しいわね。」
「何が?」
「普通、光が得意なときは闇が苦手がほとんどなのに」
「そうなのか。……何で全属性得意じゃないんだ。」
「何言ってるの。」
「だって俺は選ばれしものだから…。」
「ごめん、本当に何言ってるの。」
「まあいいか。水、光、闇……光か…。」
クロは水晶を置き、両手の人差し指と中指を立て、おでこに当て叫ぶ。
「○陽拳!!」
「……。」
ニーナは冷たい視線を送った。
「いや、もう出来るかなって…。」
「出来ません!まずは体内を魔力をコントロールすると練習、それからイメージに魔力を組み込む練習。魔法はそれから。」
「はい。」
「あの。僕もそれ、やっていいですか。」
アリスは水晶を指差しながら言った。
「いいけど、どうして?」
「僕も、おにーちゃんの役に立ちたい。」
拳を握り、真剣な顔でアリスは言う。
気持ちが伝わったのか、ニーナは黙ってポルの実と水晶を渡した。
「やり方は言わなくても大丈夫?」
「うん。」
アリスはクロがやった通りの事をする。その結果、アリスは木と風の属性が得意だとわかった。それから三日間、魔法を使えるようになる為の特訓をした。
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