前世の記憶さん。こんにちは。

満月

文字の大きさ
27 / 142

騒がしい朝と人間観察

しおりを挟む
朝起きてからもう既に日が昇り、宿屋の周囲は早朝の比ではないくらい騒がしい。
各々背中に武器を背負い皆門に向かって歩いている。
主にドワーフの集団のようだが、その中に混じって獣人やエルフ、魔族などの他種族も混じっている。
種族によって持つ武器が違うようで、エルフは弓矢を持っている者が多い様子だった。
外を観察しているとあっという間に時間が過ぎていった。

元々シンジュは1人で隔離されていたため、1人で過ごすことが苦ではない。学院入学前は塔の窓からぼーっと外を眺めて何十時間も動物観察をし暇をつぶしていた。

学院入学後は図書室で過ごすことが多かったが混雑している時は人間観察をし、家では学べない上位貴族の所作を盗み見て取得したのである。
今日もかれこれ起きてから6時間は経過していた。
ただ早起きだったため、まだ10時を回ったあたりだ。

シンジュはひたすら人間観察をしていた。

『あの獣人さん顔はライオンだけど身体はトラ?ミックス的な感じかな?あまり違和感な異組み合わせだけど、他にもいるのかな?』

『あれ?あっちは魔族?角がトルネードのように渦が巻いてる。ピンクの渦がおっしゃれ。』

『こっちはへ?亀?亀獣人??そんなものがいるの?』
と楽しく観察していたのだった。



それから正午前に突然コンコンコンッと扉がなった。慌てて立ち上がり、扉をそーっと開けると宿屋の受付で対応をしてくれたドワーフがいた。

「貴方達朝食を食べに来てなかったけれど大丈夫かしら?今日はほとんどのドワーフが祭りに参加しているから外の店はやってないわよ。夕食はいつでも来ていいからね。」

「ありがとうございます。夕食には伺わせていただきます。」

「分かったわ。あと貴方達パンダの知り合いはいないかしら?パンダの友達が子供を探しているみたいでね、貴方達と思ったのだけれど?」

「私達にパンダの知り合いはいないです。それと私は成人してますよ。」

「あら?そうだったの。分かったわ。じゃあ夜に待ってるわね。」

バタンッ

扉が閉まったところを見つめながら、先程のは何だったのだろうか?パンダの知り合いなんて1人もいないけれど、、、もしかして祖国の関係者?嫌だな。と思わず俯いていると「シンジュ様?」と声が聞こえ振り向くと、上体を起こしたエメが泣きそうな顔でこちらを見つめていた。

「どうしたの?」と思わず駆け寄ると、
「ぉ、きたら、いなぐで、ずでられたとおもっだッグスン」とポロポロ涙を流した。

うわぁぁまた軽率な行動をして不安にさせてしまった····「ごめんね。今宿屋の方に呼ばれて扉の前で話していただけだよ。絶対に置いていかないから安心してね。」

ゔんと頷きようやく涙が止まった。

エメは破れた服の袖でゴシゴシ涙を拭き、目元が真っ赤になった。すかさずシンジュが目元を冷やし赤みが引くのを待った。

その間エメの様子を観察していると、昨日と容姿が変わった?ような気がしたがこの時は特に気にせず、何も言わなかった。後日大変身をすることになる。

「目元が落ち着いたからお昼ご飯を食べようか?」

うんと頷いた。

「お昼は昨日の串焼きでいいかな?フルーツもたくさんあるからね。」

それから2人は1日ぶりのご飯を食べた。

串焼きは香草の風味のお陰で肉の臭みが抑えられていた。そのため食べることが出来たが、1個でお腹がいっぱいとなり残り2つをエメにあげた。エメはそれでも足りなさそうだったのでフルーツを山盛りあげた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

追放された聖女は旅をする

織人文
ファンタジー
聖女によって国の豊かさが守られる西方世界。 その中の一国、エーリカの聖女が「役立たず」として追放された。 国を出た聖女は、出身地である東方世界の国イーリスに向けて旅を始める――。

出来損ないと呼ばれた伯爵令嬢は出来損ないを望む

家具屋ふふみに
ファンタジー
 この世界には魔法が存在する。  そして生まれ持つ適性がある属性しか使えない。  その属性は主に6つ。  火・水・風・土・雷・そして……無。    クーリアは伯爵令嬢として生まれた。  貴族は生まれながらに魔力、そして属性の適性が多いとされている。  そんな中で、クーリアは無属性の適性しかなかった。    無属性しか扱えない者は『白』と呼ばれる。  その呼び名は貴族にとって屈辱でしかない。      だからクーリアは出来損ないと呼ばれた。    そして彼女はその通りの出来損ない……ではなかった。    これは彼女の本気を引き出したい彼女の周りの人達と、絶対に本気を出したくない彼女との攻防を描いた、そんな物語。  そしてクーリアは、自身に隠された秘密を知る……そんなお話。 設定揺らぎまくりで安定しないかもしれませんが、そういうものだと納得してくださいm(_ _)m ※←このマークがある話は大体一人称。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

転生したので好きに生きよう!

ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。 不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。 奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。 ※見切り発車感が凄い。 ※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...