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第一章 最強の娘? いえいえ、娘が最強です
聖女と同衾したら
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「頭、痛ぇぇ……」
ズキズキとこめかみの痛みに耐えながら体を起こす。どうやら昨夜少し飲み過ぎたようで、いつの間にか自分に用意されたベッドで寝ていたようだ。
「眩しっ……」
窓から差し込む日の光が俺の瞼を刺激するので、窓を閉めようと腕を伸ばした時、ベッドの上に掌に吸い付くような柔らかい感触が。
「う~ん……」
アリステリアが俺の背中越しで寝返りをうつ。感触を感じた手の下には薄手の掛け布団に包まれた大きな膨らみ。
俺は恐る恐る声を殺し掛け布団をゆっくりと捲った。
「!!」
俺は思わず布団を捲り上げた手をそのままに固まってしまう。
日差しが反射してキラキラと輝く美しい金髪。
閉じられた瞼から伸びる長い睫毛。
小さな寝息が漏れる艶のある唇。
何故か俺の隣でサラが心地よさげに眠っていた。
これだけなら、俺が固まることはない。
白く透明な肌が丸見えで一糸纏わぬ姿でなければ。横向きに眠っていた彼女の腕の隙間からは豊かな胸がはみ出すくらいに主張しており、非常に目のやり場に困ってしまう。
ーー嘘だろ。隣にはアリステリアも寝ているんだぞ。最悪だ……。
良からぬ事態を想定して、俺は自己嫌悪に陥る。どうやら先ほどの柔らかい感触は、彼女のはみ出した胸のようであった。
暫く呆然とサラの姿を眺めていた俺は、妙な事に気付く。
「あれ? 俺は服を着ている」
俺が着ていたのは昨夜と同じ麻色の服。事があったならば、一々同じ服に着替えたりするだろうか。
こうしていても埒が明かないと判断した俺はサラを起こす事に。向こうも驚くだろうが騒がないように警戒しながら揺すり起こした。
「ん~? なぁ~に~?」
何度か揺すったところでサラは瞼を擦りがら目を覚まして体を起こした。
揺れる豊かな胸をなるべく見ないようにしながら、掛け布団でサラの前を隠す。
サラも寝惚けた頭が冴えてきたのか状況を把握しつつある時だった。
「う~……ん、パパ……? サラおねえちゃん?」
一番最悪のタイミングでアリステリアが目を覚ましたのだ。
「サラおねえちゃん、なんで裸なのです?」
「おはよう、アリスちゃん。取り敢えずお顔洗っておいで」
「……はい、です」
俺が戸惑う中、サラは至って冷静でアリステリアを熊五郎と共に部屋から出ていくのを見送っていた。
長い沈黙。
二人きりになった途端、俺とサラは互いの顔を見合せ苦笑いを浮かべる。どうして、こうなったのかわからない。
ただ、男としてはケジメを取らなければならないだろうが、問題はもう一つある。
アラキの事だ。
彼女とアラキは昔馴染みと言っていた。二人は互いに悪態をつきながらも互いを信用している事はすぐに気付いた。
もしアラキと恋人同士ならば、殴られるだけならまだいい。昨日、彼は知り合ったばかりの俺に対して一万ピールもの大金を支払うとまで言ってくれた。
その想いを反古にするようで後ろめたさに申し訳なくなる。
「あの……」
「ごめんなさい!!」
俺が口を開いたその時であった。彼女はいきなりベッドの上で土下座しながら謝ってきたのだ。
「私、酔って眠くなると何処でも寝てしまうのよ。昨日、同じように酔って眠ったタツロウを、ついでに私も先に寝るつもりで部屋まで運んだのだけれども、どうやらそのまま此処で寝ちゃったみたいなの」
彼女の説明では、俺が考えていたことは起こらず、ただ同衾しただけだったようだ。
「それじゃ裸なのは?」
「あははははは……私、寝る時服着ないんだよねぇ」
気まずく笑って誤魔化すサラに俺はホッと胸を撫で下ろす。少なくとも娘の前で邪な行為は無かったと。
「ところで、さ。その……見た? 裸……」
「見たというか、今も丸見えなんだけど」
ホッとして気が抜けたのか、そんなことをポロリと溢してしまう。彼女は顔を赤くしながら傍にあった掛け布団で体を隠す。
コンコンコン
完全に気が抜けていた為、不意のノックに俺とサラは二人して驚く。
「タツロウ! サラの奴、そこに居んのかぁ?」
部屋の外からする声はアラキだった。
俺が慌てて思考をフル回転させて説明を考えていると、サラが平然と「うん、いるわよー」と返事するのだから、俺の頭の中は弾けて真っ白になってしまった。
ガチャリと扉を開けてアラキが俺達を見ると項垂れながら長い溜め息を吐いた。
「お前ももういい大人じゃねえか。本当にいい加減にしねぇと痛い目見っぞ!」
「あははは、ごめーん」
アラキは怒るどころか呆れている様子だった。俺が必死に取り繕うとするのをアラキは制する。
「言わなくてもわかってんよ。どうせ、こいつが勝手に脱いで勝手に寝たんだろうが! もう慣れてるよ。それより早く降りて来いよ! ガキが腹空かしてんぞ!」
相変わらず口調は悪く怒っているようにも見えるが、いつもと変わらない様子に、アラキが出ていったあと、サラへ聞いてみた。
「え? 私とアラキが恋人? あははは、ナイナイ! 確かに子供の頃は好きだった時もあるけど、私、一回フラれてるから」
ケタケタと笑うサラは昨日とは随分と印象が違う。それを彼女に伝えると彼女は含みのある笑みを見せながら、
「えー。私はこっちが素だよ。一応、聖女って役割だから普段は慎ましくしているけど。それにタツロウには既に裸見られたしねぇ?」
と宣う。ニタニタと笑いながら。
最初は眼福と思っていたのだが、話をしている最中、手を止めているものだから、早く服着ろと少し苛立った。
朝食をいただいている時、会話の話題でアラキとサラの子供の頃の話になった。
サラは、詳しくは教えてくれなかったが何処ぞの令嬢。アラキは一般的な家庭で生まれ育ったものの生まれつきの目付きの悪さから両親にさえ少し敬遠されていたらしい。
偶然サラを地面に押さえつけて誘拐しようとした現場にいたアラキは誘拐犯の背後から声をかけたのが最初の出会いという。
「私だけの王子様が現れた! そう思ったのよね」
サラは懐かしそうに話を続けた。
ところが現れたのは目付きの非常に恐ろしい男の子。声をかけられ振り返った誘拐犯をただ、何も言わずにジーっと見下ろしていたらしい。
相手はまだ小さな子供。犯人は「どっか行け!」と恫喝したのだがアラキはただただ見下ろしてくるのみ。
俺は聞いていて、内心「なにそれ、怖っ」と思ったが犯人も同じだったらしく逃げ出したのだと。
「アラキを見て、人は見た目じゃないって初めて知ったのよ」
アラキはただただ肘をテーブルにつきながら何度も小さな溜め息を漏らし話を聞いていた。
サラの両親は結構常識人だったようで娘を助けてくれたアラキに感謝し、二人はよく遊ぶようになったみたいだ。
サラから見てもアラキは周りの大人から敬遠され、冷めた目付きで見てきてあらぬ噂なども立てられたのだという。
「十二歳になるギリギリだったかな。アラキが開能の儀を受けて役割が勇者と判明したのよ。そうしたら周囲の大人は一変。掌を返してちやほやしてきたのよ」
サラの表情も当時を思い出したのか、隠してはいるが怒っている事が伺える。
「だから私、アラキに言ったのよ『恨み言の一つも言いなさい』ってね! そうしたらさ、アラキの奴、きょとんとして一言『えっ……?』って絶句するのよ。わかる? こいつ、自分が疎外されているの気付いて無かったのよ! バカよ、バカ!」
当時、アラキの中では、同年代の友達が居ない為、親はあまり子供に干渉しないものだと思っており、だからだろうか、アラキの中の小さなコミュニティでは不干渉が当然だったようで、むしろ急に干渉してきて戸惑ったとアラキは言う。
「そしたら急に私の中のアラキへの熱が冷えて……決別も込めて告白したら『俺、胸の大きな女は、ちょっと……』って言うんだよ! 酷くない!? まぁ、でも見た目は怖いけど悪い奴じゃないから、私の聖女としての役割もあるし、こうして一緒にいるんだけどね」
サラの言葉にアラキは肘をついたまま、プイッと横を向き小声で「うっせぇ」と呟いた。
今朝のことも今の話も幼いアリステリアが理解するには難しいのだろう。
一つ大きな欠伸をすると、連れて熊五郎も大きな口を開いて欠伸をした。
俺はアリステリアが学校でうまく友達付き合いが出きるのか不安だったが、二人の話を聞いて、友達は数ではないのだなと知り、心を許せる友達が一人だけでも出来たらいいかと考え方を変えた。
「アリスちゃんは、おじちゃん怖くないよ」
アラキに向かって弾ける笑顔をアリステリアが見せると、既に真横に顔を向けていたアラキは、それ以上顔を背ける事が出来ずに「おじちゃんじゃねぇ」と呟きながら顔を赤くしていた。
ズキズキとこめかみの痛みに耐えながら体を起こす。どうやら昨夜少し飲み過ぎたようで、いつの間にか自分に用意されたベッドで寝ていたようだ。
「眩しっ……」
窓から差し込む日の光が俺の瞼を刺激するので、窓を閉めようと腕を伸ばした時、ベッドの上に掌に吸い付くような柔らかい感触が。
「う~ん……」
アリステリアが俺の背中越しで寝返りをうつ。感触を感じた手の下には薄手の掛け布団に包まれた大きな膨らみ。
俺は恐る恐る声を殺し掛け布団をゆっくりと捲った。
「!!」
俺は思わず布団を捲り上げた手をそのままに固まってしまう。
日差しが反射してキラキラと輝く美しい金髪。
閉じられた瞼から伸びる長い睫毛。
小さな寝息が漏れる艶のある唇。
何故か俺の隣でサラが心地よさげに眠っていた。
これだけなら、俺が固まることはない。
白く透明な肌が丸見えで一糸纏わぬ姿でなければ。横向きに眠っていた彼女の腕の隙間からは豊かな胸がはみ出すくらいに主張しており、非常に目のやり場に困ってしまう。
ーー嘘だろ。隣にはアリステリアも寝ているんだぞ。最悪だ……。
良からぬ事態を想定して、俺は自己嫌悪に陥る。どうやら先ほどの柔らかい感触は、彼女のはみ出した胸のようであった。
暫く呆然とサラの姿を眺めていた俺は、妙な事に気付く。
「あれ? 俺は服を着ている」
俺が着ていたのは昨夜と同じ麻色の服。事があったならば、一々同じ服に着替えたりするだろうか。
こうしていても埒が明かないと判断した俺はサラを起こす事に。向こうも驚くだろうが騒がないように警戒しながら揺すり起こした。
「ん~? なぁ~に~?」
何度か揺すったところでサラは瞼を擦りがら目を覚まして体を起こした。
揺れる豊かな胸をなるべく見ないようにしながら、掛け布団でサラの前を隠す。
サラも寝惚けた頭が冴えてきたのか状況を把握しつつある時だった。
「う~……ん、パパ……? サラおねえちゃん?」
一番最悪のタイミングでアリステリアが目を覚ましたのだ。
「サラおねえちゃん、なんで裸なのです?」
「おはよう、アリスちゃん。取り敢えずお顔洗っておいで」
「……はい、です」
俺が戸惑う中、サラは至って冷静でアリステリアを熊五郎と共に部屋から出ていくのを見送っていた。
長い沈黙。
二人きりになった途端、俺とサラは互いの顔を見合せ苦笑いを浮かべる。どうして、こうなったのかわからない。
ただ、男としてはケジメを取らなければならないだろうが、問題はもう一つある。
アラキの事だ。
彼女とアラキは昔馴染みと言っていた。二人は互いに悪態をつきながらも互いを信用している事はすぐに気付いた。
もしアラキと恋人同士ならば、殴られるだけならまだいい。昨日、彼は知り合ったばかりの俺に対して一万ピールもの大金を支払うとまで言ってくれた。
その想いを反古にするようで後ろめたさに申し訳なくなる。
「あの……」
「ごめんなさい!!」
俺が口を開いたその時であった。彼女はいきなりベッドの上で土下座しながら謝ってきたのだ。
「私、酔って眠くなると何処でも寝てしまうのよ。昨日、同じように酔って眠ったタツロウを、ついでに私も先に寝るつもりで部屋まで運んだのだけれども、どうやらそのまま此処で寝ちゃったみたいなの」
彼女の説明では、俺が考えていたことは起こらず、ただ同衾しただけだったようだ。
「それじゃ裸なのは?」
「あははははは……私、寝る時服着ないんだよねぇ」
気まずく笑って誤魔化すサラに俺はホッと胸を撫で下ろす。少なくとも娘の前で邪な行為は無かったと。
「ところで、さ。その……見た? 裸……」
「見たというか、今も丸見えなんだけど」
ホッとして気が抜けたのか、そんなことをポロリと溢してしまう。彼女は顔を赤くしながら傍にあった掛け布団で体を隠す。
コンコンコン
完全に気が抜けていた為、不意のノックに俺とサラは二人して驚く。
「タツロウ! サラの奴、そこに居んのかぁ?」
部屋の外からする声はアラキだった。
俺が慌てて思考をフル回転させて説明を考えていると、サラが平然と「うん、いるわよー」と返事するのだから、俺の頭の中は弾けて真っ白になってしまった。
ガチャリと扉を開けてアラキが俺達を見ると項垂れながら長い溜め息を吐いた。
「お前ももういい大人じゃねえか。本当にいい加減にしねぇと痛い目見っぞ!」
「あははは、ごめーん」
アラキは怒るどころか呆れている様子だった。俺が必死に取り繕うとするのをアラキは制する。
「言わなくてもわかってんよ。どうせ、こいつが勝手に脱いで勝手に寝たんだろうが! もう慣れてるよ。それより早く降りて来いよ! ガキが腹空かしてんぞ!」
相変わらず口調は悪く怒っているようにも見えるが、いつもと変わらない様子に、アラキが出ていったあと、サラへ聞いてみた。
「え? 私とアラキが恋人? あははは、ナイナイ! 確かに子供の頃は好きだった時もあるけど、私、一回フラれてるから」
ケタケタと笑うサラは昨日とは随分と印象が違う。それを彼女に伝えると彼女は含みのある笑みを見せながら、
「えー。私はこっちが素だよ。一応、聖女って役割だから普段は慎ましくしているけど。それにタツロウには既に裸見られたしねぇ?」
と宣う。ニタニタと笑いながら。
最初は眼福と思っていたのだが、話をしている最中、手を止めているものだから、早く服着ろと少し苛立った。
朝食をいただいている時、会話の話題でアラキとサラの子供の頃の話になった。
サラは、詳しくは教えてくれなかったが何処ぞの令嬢。アラキは一般的な家庭で生まれ育ったものの生まれつきの目付きの悪さから両親にさえ少し敬遠されていたらしい。
偶然サラを地面に押さえつけて誘拐しようとした現場にいたアラキは誘拐犯の背後から声をかけたのが最初の出会いという。
「私だけの王子様が現れた! そう思ったのよね」
サラは懐かしそうに話を続けた。
ところが現れたのは目付きの非常に恐ろしい男の子。声をかけられ振り返った誘拐犯をただ、何も言わずにジーっと見下ろしていたらしい。
相手はまだ小さな子供。犯人は「どっか行け!」と恫喝したのだがアラキはただただ見下ろしてくるのみ。
俺は聞いていて、内心「なにそれ、怖っ」と思ったが犯人も同じだったらしく逃げ出したのだと。
「アラキを見て、人は見た目じゃないって初めて知ったのよ」
アラキはただただ肘をテーブルにつきながら何度も小さな溜め息を漏らし話を聞いていた。
サラの両親は結構常識人だったようで娘を助けてくれたアラキに感謝し、二人はよく遊ぶようになったみたいだ。
サラから見てもアラキは周りの大人から敬遠され、冷めた目付きで見てきてあらぬ噂なども立てられたのだという。
「十二歳になるギリギリだったかな。アラキが開能の儀を受けて役割が勇者と判明したのよ。そうしたら周囲の大人は一変。掌を返してちやほやしてきたのよ」
サラの表情も当時を思い出したのか、隠してはいるが怒っている事が伺える。
「だから私、アラキに言ったのよ『恨み言の一つも言いなさい』ってね! そうしたらさ、アラキの奴、きょとんとして一言『えっ……?』って絶句するのよ。わかる? こいつ、自分が疎外されているの気付いて無かったのよ! バカよ、バカ!」
当時、アラキの中では、同年代の友達が居ない為、親はあまり子供に干渉しないものだと思っており、だからだろうか、アラキの中の小さなコミュニティでは不干渉が当然だったようで、むしろ急に干渉してきて戸惑ったとアラキは言う。
「そしたら急に私の中のアラキへの熱が冷えて……決別も込めて告白したら『俺、胸の大きな女は、ちょっと……』って言うんだよ! 酷くない!? まぁ、でも見た目は怖いけど悪い奴じゃないから、私の聖女としての役割もあるし、こうして一緒にいるんだけどね」
サラの言葉にアラキは肘をついたまま、プイッと横を向き小声で「うっせぇ」と呟いた。
今朝のことも今の話も幼いアリステリアが理解するには難しいのだろう。
一つ大きな欠伸をすると、連れて熊五郎も大きな口を開いて欠伸をした。
俺はアリステリアが学校でうまく友達付き合いが出きるのか不安だったが、二人の話を聞いて、友達は数ではないのだなと知り、心を許せる友達が一人だけでも出来たらいいかと考え方を変えた。
「アリスちゃんは、おじちゃん怖くないよ」
アラキに向かって弾ける笑顔をアリステリアが見せると、既に真横に顔を向けていたアラキは、それ以上顔を背ける事が出来ずに「おじちゃんじゃねぇ」と呟きながら顔を赤くしていた。
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表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
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