この世界の幼女は最強ですか?~いいえ、それはあなたの娘だけです~

怪ジーン

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第二章 最強娘の学園生活

第三の刺客はスタンピート

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「よし、それじゃ今日からアリスに魔法アーツで水を汲んでくれるかな」
「あいあいさー、です」

 昨日、学園から帰りが遅かった為、迎えに行けば魔法アーツの力の制御を教えてもらっていたとアリステリアが話をしていたので、新しいお手伝いをお願いしてみた。

「キュルト」

 しばらく集中して時間はかかったものの、上手く制御を出来たようで水の球体から落ちる水で桶が満杯になり、アリステリアが水で満たされた桶を熊五郎のいる馬小屋に運ぶのを見守った。

「ほら、早くしないと学校遅れるぞ」
「ハーイ、です!」

 今日は気分がいいのか自ら馬車の荷台に乗る熊五郎に、アリステリアは布を被せて御者台に座った。

 二人を学校に送り届けたあと、俺は今日も日雇いの仕事を探すべく、職の斡旋所に向かった。
暑苦しいほど混雑した斡旋所内で、俺は一枚の紙を掲示板から引きちぎり剥がした。

「なになに? 土木関係の荷物運び。一日十ピールか」

 高い賃金のものはさっさと取られており、残ったのは力仕事ばかり。それでも木こりをしていた俺にとっては苦にはならず、むしろ仕事現場が近い事がありがたかった。

 俺は仕事の書かれた紙を懐にしまいこみ、早速仕事場に向かおうとしていた。

「タツロウ」

 呼び止められ振り返ったそこにはいつものように極悪面……もとい、目尻をつり上げしかめっ面をしたアラキと、その後ろにはサラがいた。

「ちょっと話いいか?」
「構わないけど、仕事場に向かいながらでも?」

 アラキは真剣な眼差しで此方を見ながら頷いた。その雰囲気からただ事ではない事は察する。

「実はよう、魔王の事だが。公表してもいいか?」

 アラキは青の魔王の事を知ってからも黙ったままでいてくれた。それは“勇者”という役割からするととんでもない話ではあるが、俺が狙われている事を鑑みての事だった。

「勿論、お前が狙われている事は言わねぇ。ただよぉ、匿名の情報となると偉いさんは重い腰を上げねぇ。だから、あのガキの役割“最強娘”を借りてぇんだ」

 アラキはやはり“勇者”として居場所が判明している青の魔王を放ってはおけないようで、魔王を討伐してもらえるなら俺も狙われずにすむのでありがたい話ではあった。

 しかし、アラキには国から出れないという縛りがある。

「そこで“最強娘”という役割名とサラの家にいる“賢者”の役割名で言いくるめてぇ。魔王を差し置いて最強を名乗る“最強娘”という役割。そしてよっぽどの事がないと現れない“賢者”という役割。緊急事態として十分な説得材料になるしな」

 いつになく真剣なのは“勇者”としての役割がそうさせるのか。世の中に必要とされているようで、俺は少しアラキが羨ましかった。

「いいよ。アラキ達には世話になっているし」

 俺は快く了承した。

「ありがてぇ、それじゃ今からでも向かう……」
「アラキ、ちょっと待ってくれ!」

 俺は異変に気付き、アラキを制止する。

 視線の先の上空に姿形がハッキリ分かるほどにカルヴァンの姿があり、なにかを必死に訴えていた。
咄嗟にカルヴァンに去るように合図を出して、俺はアラキとサラの手を引いて来た道を戻っていった。

「お、おい! どうした!?」
「カルヴァンが来ていた。住民にも見られたかもしれない」

 魔物がテレーヌ市の上空に現れたと分かれば混乱を起こすかもしれない。

 自宅に到着すると庭に出て辺りを伺う。人目を避けて、空に浮かぶ点にしか見えないカルヴァンに合図を送った。

 羽の音と風の切り裂く音がして俺達の前に姿を現したカルヴァンをすぐに家の中へと連れ込んだ。

「どういうつもりだ!? 誰かに見られたらどうするんだ!?」
「緊急事態なんだよ! スタンとピートがスタンピートを引き連れて、この街に向かって来ている!!」

 俺達三人は思わず目が点になりそうなほど呆気に取られてしまう。

「待て、待て、待て。意味がわからない。スタンピートってあれだろう? 集団暴走。魔物が群れをなしてやって来るってことか?」
「そうだ! そして、それを率いているのがスタンとピートという人類種の魔物の兄妹なんだよ! あいつらは、俺様達みたいに立派な体格は無いが、知恵と残忍さは折り紙つきだ! だから、早く手を打たないとヤバイぞ!」

 カルヴァンが言うには兄スタンと妹ピートの人に似通った魔物が大群の魔物を引き連れて迫っているということだった。

「それをわざわざ知らせてくれたのか? ヤバイなら何で逃げない?」
「ああ? そんなこと、お前達と手を組んだだからだろ!」

 カナリア色の嘴を大きく広げ、言い返してくるカルヴァンに、内心「律儀か!」と言いたくなる。

「だけど、感謝はしないとな。アラキ、サラ。どうする?」
「勿論、俺が迎え撃つ。ただ数が多そうだしよぉ、サラは、実家に急いで戻って父親に伝えた方がいい。そのための領主だろ?」
「了解! アラキも無理はしないで!」

 善は急げとサラは一足先に家を出ていった。

 残った俺達は、手分けして手を打つことに。

 カルヴァンはあとどれくらいまでに迫ってきているかの確認に、大空を飛び上がる。
アラキは知り合いでもあるテレーヌ市の市長に、住民の避難を頼みに向かった。

 俺はというと、アラキが人手が必要だと、傭兵なども斡旋している斡旋所へと駆け込んだ。





 初めは相手にされなかった。

 俺自身には何の権限もなく、その上情報の出所が言えないのが致命的。
しかし、それは幸いにも、とある騒ぎが解決してくれる。

 やはりと言うか当然というか、カルヴァンの奴が姿を住民に見られていたのだ。目撃者が複数現れ斡旋所に魔物討伐の依頼をしに駆け込んできたのたが、先に俺がスタンピートの事を話している最中だった。

 街の様子を伺いに来たのでは? と、結論付けられ俺の話に信憑性が増す。

「早くしてくれ! もし来なかったら来なかったで万々歳だが。もし本当に来たらどうする!」

 俺の催促も功を奏して、斡旋所は緊急に傭兵の応募を掲示板に貼り出した。
そのうちの一枚を俺も剥ぎ取る。
傭兵といってもその手を生業にしているばかりだけでなく有志も募らなければ数が揃わないのだ。

 意外にも掲示板の紙は次々と剥がされていく。

 一旦斡旋所から出ると、人々は騒ぎながら家の中へと次々と引っ込んで行く。空を見上げるとカルヴァンが仕切りに身振りでなにかを訴えていた。

「北側からか!」

 必死に指を指し示す方角はサーシャ村から来た方角と真反対の方角。俺は一人北門目指して走り出していた。

「タツロウ!」

 市長と話をつけてきたアラキと合流する。アラキもカルヴァンの身振りを見ていてやって来る方角に気づいたようであった。

「しかし、北には途中街がいくつかあるはずだ。王都もだ。もしかして、スタンピートに飲み込まれたのか?」

 俺とアラキは許可を得て北門を駆け上がり、広がる平野部を見渡す。しかし、魔物の姿らしきものが見えない。

「ちっ! そういうことかよ!」

 普段以上にしかめた面をするアラキが指を指した先は平野部ではなく、北の空。

 黒い雨雲かと思っていたのは、カルヴァンによく似た大量の魔物が空を飛んで此方に向かってきていた。
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