この世界の幼女は最強ですか?~いいえ、それはあなたの娘だけです~

怪ジーン

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第二章 最強娘の学園生活

スタンとピートとスタンピート襲来

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「おいおい、まじかよ」

 視認出来る距離まで詰めて来たスタンピート。地上なら対処しやすいと踏んでいた俺達を絶望に落とす空からの急襲。

 有志や傭兵達も北門に集まり始め、視認すると慌てふためく。

「急げ! 魔法アーツを! 特に上級魔法ハイアーツが使える奴を集めろ! その他は弓で対処しろ!!」
「そんな急に上級魔法ハイアーツを扱える奴がいるわけないだろ! はっ、そうだ。ウィルノス学園の生徒達はどうだ!? 上級魔法ハイアーツを教えていると聞くぞ!」
「よし、俺、聞いてくる! 市長からも要請するように伝えておいてくれ!!」

 多少、手慣れているのか主に傭兵が中心となって指示を出し、皆が忙しなく動いていた。

「アラキ、ウィルノス学園ってなんだ?」
「富裕層側の学校だよ。ちっ、あんな奴らが出てくるわけないだろうによ」

 気に食わねぇとぶつぶつ呟きながらアラキは気が立っていた。
足を何度も踏み鳴らし、指を咥えながら何かを待っているようであった。

「おい、あんた! 手が空いてるならこれを運んでくれ!」
「あ、はい!」

 投げ槍がびっしり詰まった木箱を抱えながら、アリステリアの居るマナリア学園に目を向ける。
心配はしていない。手は打ってある。カルヴァンとの約束。アリステリアを守ってくれと以前約束している。

 ただ、マナリア学園の方を見ながら俺は何かを見落としているように思えた。





 一方、マナリア学園では生徒の安全を確保する為に、昨日アリステリアが魔法アーツの訓練で使ったという建物に避難していたらしい。

「ほら、みんな騒がない! 大丈夫、先生達が皆のこと守るから!」

 ルナ先生が呼び掛けるも、恐怖からか収拾がつかないみたいだった。

「熊五郎……」

 その頃アリステリアは窓から外の様子を伺っていた。





「来たぞ! 皆、構えろ!!」

 傭兵や有志諸君は一斉に投げ槍や弓を構える。

 迫って来た先頭にはカルヴァンに似た怪鳥や人一人余裕で乗れそうな巨大な黒い四枚羽のからすがずらりと並んでいた。

「もしかして、あいつらが?」

 先頭で飛んでいる二羽の烏の上に、それぞれ人が腕を組んで立っている。遠くて顔まではわからないが、カルヴァンが言っていたスタンとピートに違いないと感じた。

「射てぇ!」

 誰かの号令が飛び、開戦の口火が切られる。しかし、素人の俺が見ても明らかにタイミングが早すぎる。そうそうこんな緊迫した事態に出くわす事がなかったのだろう。焦っていたのかもしれない。

 飛んで行く槍や矢は、殆んど当たることなく、当たったとしても、致命傷を負わせるほどの威力は無かった。

「ちっ、素人か! “ガルガンディア!!”」

 傍にいたアラキは空に手をかざし、上級魔法ハイアーツと思われるものを唱えた。
一瞬、目映いほどの白い閃光に覆われると同時に鼓膜が破れそうな轟音が辺り一帯に鳴り響く。

 たまらず目を瞑り耳を塞いだものの、まだ鼓膜が震える感覚のまま、そっと瞼を開いていった。
眼下には、平野部だったはずの門の外が一面焼け野原と化していた。
ゴロゴロといくつも転がる黒ずみの焼き鳥達。

「くそっ、やっぱり避けられたか!」

 アラキの悔しがる言葉にハッとした俺は空を見上げると、迫るスタンピートは確実に数は減らしたものの、広がりを見せており、まとめて全部とはいかなかったようだ。
 特に先頭の烏に立っている二人は健在だった。

「来るぞ!」

 先頭が目の前に差し掛かったその時、アラキは腰の剣に手をかけて、飛び上がった。
しかし、並外れた跳躍力を持ってしても、相手は高すぎて届きそうにない。

「はっ!」

 気合いを入れたアラキは、最高点からさらに見えない何かを踏み台にして、更に飛び上がった。
一気に先頭の烏に迫り剣を抜き放つと、巨大な烏の首を薙ぎ、返す剣でそのまま背に乗った一人に迫る。

 その瞬間、俺はアラキのいる方角に向けて槍を投げていた。槍は何にも当たらず、ただアラキの横を通りすぎる。しかし、それでよかった。
アラキに向かってきていたもう一人を、一瞬だけ邪魔をするのが目的だった。

「でかした、タツロウ! もらったぁ!」

 アラキの剣は確実に首を捉え、真横に薙いだ。

 首が宙を舞う。その様子を下から見ていた俺は、もう一人を乗せた烏が急いで離れることに違和感を覚えた。

「アラキいぃぃぃ!!」

 声が枯れるくらいに俺は叫んだ。早くも傭兵達が勝利を確信して沸き立ち浮かれている空気に、一筋の緊張感が走る。

 首無しで腕を組んでいた遺体に得体の知れないものが集約されていくのを感じたのだ。
それは俺に遅れたもののアラキや傭兵達も同様であった。

 アラキが烏の首を蹴り、背後に飛び退いた時であった。得体の知れない何かが解き放たれ、遺体が巨大な烏を巻き込んで爆発を起こしたのだ。

「ぐうううっ!!」

 爆風で吹き飛ばされたアラキはなす術もなく、落ちていく。

「うおおおおおっ、間に合えええええ!!」

 気づけば俺は、真っ直ぐアラキが落下しそうな場所に走り出していた。
落下地点に僅かに先に着いた俺は、そのままアラキを受け止める事に成功する。

「大丈夫か、アラキ!」
「うぅ……だ、大丈夫だ。ちょっと腕を痛めただけだ」

 剣を握ったままの両腕は、手の甲側に酷い火傷を負っていた。

「バルス」

 回復の魔法アーツをかけるが、ここまでの傷だと基礎魔法ベースアーツでは治りが遅い。

「お、おい! あれを見ろ!」

 皆が言葉に反応して一斉に見上げた先には、先ほど自爆をした箇所に肉片が集まっていき、あっという間に元の姿に、それも斬られたはずの首がついたままの状態へと戻っている。

 烏は失われた為、そいつはそのまま落ちていき北門に着地した。

「本当に人と変わらないじゃないか」

 見た目は若い人間の男性であった。なりは人間と変わらない。違うのは青白い肌に真っ黒な目に赤い瞳をしているくらい。
男は見下しながら銀と黒のツートンカラーの短髪の前髪をかきあげる。

 ニヤリと不気味に嗤う男に、少し息苦しさを感じ始めた。
先ほどと同じ、得体の知れない何かを取り込む感じだ。

 脳裏に”酸素“という言葉が浮かんだ。

「みんな、そいつから離れろーっ!」

 叫んでみたものの、一歩遅かった。その男は再び自爆を起こし、北門共々辺り一帯を爆風が吹き荒れた。

「不味いぞ、タツロウ! 奴らが!!」

 魔物のスタンピートはテレーヌ市上空へと辿り着くと、急降下していく。

「くそぉ、どうすれば!!」

 自爆後、再び肉片が集まり始め、元の姿を取り戻していく。
その背後では、避難した建物から追い出されるように逃げ出した住民が襲われていた。

「タツロウ! あいつは俺に任せろ! お前は他の奴らをまとめて住民達を助けてくれ! 頼んだぞ!」

 アラキはそう言うなり、瓦礫と化した北門に立つ男に向かって行く。
俺も動き出すべく、振り返ると、そこには浅黒い肌をした黒目、赤い瞳をした女性が立っていた。

「うふふ……あなたがタツロウね。青の魔王様の命により貴方を連れていくわ。このピートがね」
「やっぱり、狙いは俺か!」

 赤と黒のツートンカラーの長い髪を靡かせながら、真っ赤な唇を舌舐めずりしながら此方へ近づいてくる。
 俺は後ろに下がりながら木箱に入った投げ槍を取ろうと伺っていた。

「よし!」

 俺は投げ槍を手に取ると、通常の槍のように不恰好ながらピートに向かって突く。

「うふふ……」

 しかし、槍先からポッキリと折れてしまう。ピートには突き刺すどころか傷一つついていない。

「わたくしの体は斬れない、通さないわよ」

 ピートの言うように逆に俺の手がビリビリと痺れている。
自分の手に気を取られ、俺は首に手がかかるまで気づけずにいた。

「ぐっ……」
「生きてさえいればいいようですから、このまま喉を潰してあげますわ」

 俺を持ち上げたピートの手の力が増していくのであった。
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