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第二章 最強娘の学園生活
再生へのカウントダウン
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死を身近に感じる。
喉を潰すと言っていたピートの握力は想像以上に強く、意識が朦朧としてきた。
ーーこれは、マズい……。
僅かな望みで抵抗を試みる。俺より細い腕にも関わらず、びくとも動かず、引っ掻いてみても皮膚が鉱物のように硬く傷つけるどころか、逆に此方の爪から血が滲む。
「うふふ……美味しそうな命の色ね。このまま食べちゃおうかしら」
ピートは俺に顔を近づけて、長い舌で頬を舐めてきた。
「ふ……ふざけ、るな。だれが醜い魔物など……ぐっ!」
「あら、いけない。つい、力を入れすぎちゃって殺しちゃった」
ピートの手が俺から離れる。
しかし、殺したとはどういうことだろうか。
俺は生きているし、意識もある。
首に痛みは走ったものの、虚ろな視界はその場で座り込んだ地面を映している。が、体がピクリとも動かせない。
ーー数字?
眼前にまるで血文字のような赤い数字が現れる。
10……9……8……減っていく数字をただ眺めているだけ。しかし、肩を誰かに掴まれると、俺の体はふわりと宙を舞い上がる。
「あー、くそっ! 手は出さないつもりだったのに、助けちまった!」
聞き覚えがある声だが、顔を動かせず姿を確認出来ずにいた。
5……4……、その間にも減っていく数字に俺は怯え始めていた。数字が0になったとき、俺は死ぬのではないかと。
俺はアリステリアの名前を叫ぶことさえ出来ずに果ててしまうのか。
3……2……1、審判の時が迫る。
0、その数字を見た瞬間体がビクッと無意識に跳ねる。
「はっ! い、生きてる!?」
俺は安堵すると同時に上を向いた。やはり、俺を助け出したのは毛を全て毟り取られた鳥肌をしたカルヴァンであった。
「カルヴァン、アリスはどうした!?」
「え、い、生きてる!? あ、いや、向こうは大丈夫だ。それより、こっちだよ、危険なのは!」
カルヴァンが指し示す方角へ顔を向けると黒い烏に乗ったピートが凄い形相で睨み、此方へ今にも衝突しそうな勢いで迫ってきていた。
「ヘキサグラム!」
俺達とピートの間に、虹色の六角形の壁が立ち塞がり、ピートの乗っていた烏は頭から激突してしまう。
「これは?」
見覚えのある魔法に俺は上空から地表を見下ろすと、そこにはサラが援軍を伴って街中を駆けていた。
「間一髪ね、タツロウ! 第一班、第二班は住民の救助に! 第三班、第四班は街を襲う魔物にあたりなさい!」
「はっ!!」
指示を飛ばして兵士達が散開すると、サラは一人だけを伴って着地しようとする俺達と合流するべく走り出していた。
着地した俺はすぐにカルヴァンにアリステリアの事を問い質した。
「向こうは大丈夫だって! あの娘の周りにいた大人で、特に紫髪の女。頭一つ飛び抜けての強さだった。ありゃ、随分、戦闘慣れしてるぜ」
紫髪と言われて、俺が思い至ったのはたった一人だけであった。
ルナ先生である。
同時に俺はマナリア学園での見落としが何か気づく。アリステリアが昨日居残ってまで魔法を教わったのがルナ先生であることに。
アリステリアの話では、彼女の役割は”魔法使い“という話だ。魔法に関して、造詣が深いのだろう。
「皆さん! 頭を下げてください! ライトニングプリズン!!」
話を切り上げ俺とカルヴァンは、声に従い頭を下げると、青白い光の放電が向かってきていたピートと巨大な烏を覆う。
「クケェエエエエエッ!」
烏は痙攣し、地面に叩きつけられるがピートは間一髪のところで飛び降りて避けたようだ。
「しかし、今の声は?」
サラとは違う声に振り返ると、そこにはフードを目深に被った少年、”賢者の卵“であるイシューであった。
「イシュー?」
「話は後です! 来ますよ!」
俺達と合流したサラとイシューは、既に動き出しておりそれぞれ両手をピートへと向けた。
「ヘキサグラム!」
「フラッシュホーミング!」
此方へ駆け出していたピートの進行を妨害するように虹色の壁が立ち塞がる。激突を避ける為に後方に飛び退いたピートをイシューの放ついくつもの光の矢が壁や俺達を避けながら、ピートを追いかける。
「無駄さ、この体に魔法は効かないよ!」
一度退いたと思われたピートは、イシューの魔法をものともせずに、助走を取り、そのまま拳を虹色の壁に叩きつけて、破壊する。
勢いを衰えさせることなく、そのまま俺の方に向かってきていた。
不思議と俺にピートへの恐怖や不安は微塵も無かった。それどころか、体の内側から力が漲る。
体は自然に動いていた。俺の顔に向けてくる拳を、自画自賛したいくらいに見事な体捌きで避けると同時に伸ばしきったピートの手首を掴み、軽く捻る。
ピートの体は半円を描きながら、宙を舞う。
予想だにしない俺からの反撃にピートは唖然としたまま地面に叩きつけられた。
一連の俺の行動は無意識下で起こっており、俺がハッキリと認識したのは、地面に叩きつけられたピートを見た時であった。
「くそ、何なのよ、貴様は!?」
ピートは、その美しい顔を歪め荒い口調へと変化する。しかし、それを一番知りたいのは俺自身であった。
体は軽く、視界は広くクリアに感じる。
再び立ち上がり襲って来たピートの動きは丸見えで、鈍い。意識するよりも先に体が動き始め、ピートの拳や蹴りは悉く、両の手で受け流せた。
苛立ち始めたピートは俺の肩を掴もうと両腕を伸ばしてくるが、俺の両手が容易に外側へと弾いた。
ーー正面ががら空き!
両腕が外に流れたピートの胴体目掛けて懐に飛び込んでいた俺は、力強く踏みしめた一歩の威力をそのまま前に投げ出した両の掌に伝えて、ピートの胸元目掛けて叩きつけた。
「え、え? どうしたのよ、タツロウ?」
サラは驚くも一番驚いているのは俺自身だ。
魔物相手に恐怖も何もなく、ベアウルフ程度に苦戦していた俺が、今はピートですら弱く感じて、負ける気がしなかった。
「うふふ……ちょっとはやるようになったようだけど、貴方の攻撃もわたしには通じないようね」
埃を払いながら立ち上がったピートは冷静さを取り戻しており、ペロリと自分の唇を舐めて見せる。
ピートの鉱物のような硬い皮膚には傷はついていないが、俺には考えが浮かんでいた。
「イシュー、サラ。二人に頼みが……」
手早く作戦を伝えると二人はすぐに動き出す。
「ライトニングプリズン」
イシューの手のひらからピートに向けて青白い放電が飛び交う。魔法が効かないと言っていた本人は、それを嫌うように避けているのを見て俺は確信した。
魔法による直接的な傷などは与えられないが、痺れなどの状態異常のようなものは効果があるのだろうと。
だから、一発目のライトニングプリズンを避けたのだ。
「そっちには逃がさないわ、ヘキサグラム!」
サラはピートの逃げ道を塞ぐように虹色の壁で妨害する。助走をつけてやっと壊せる位だ、逃げながらではあの壁を壊せないのだろうと踏んでいた。
「きゃあああああっ!」
とうとうイシューのライトニングプリズンがピートを捕らえた。体が麻痺してピートはその場から動けない。
トドメを刺すべく俺の体が自然と動く。右手を前に突きだし、半身に構え左手を頭上に。手は拳ではなく、手刀にして。
何かは分からないが、体の内側に溜まった滾る力が二本の手刀に集約されていく。
俺は構えたまま全力でピートに向かって走り出した。
俺は直感で、この技は動いた相手に決まらないと理解していた。だから、二人にピートの動きを止めて貰ったのだ。
得体の知れない力で迫る俺にピートも負けじと痺れた体のまま逃げようと試みる。
「てめぇは、そこでじっとしてろーっ!」
そこにライトニングプリズンから逃れようとしたピートに向かってカルヴァンが上空から急降下して、自分も痺れることもお構いなしに体当たりをかました。
これには俺も予想外であった。
俺は集約された力を全て解放しながら半円を描きながら左手刀をピートの胸の中心目掛けて突き刺し抜き放つと、体を入れ替え今度は右手刀を先ほどと寸分違わぬ所へ放った。
「ぎゃああああああっ!」
俺の右手刀は断末魔を上げたピートの背中を貫いたのだった。
喉を潰すと言っていたピートの握力は想像以上に強く、意識が朦朧としてきた。
ーーこれは、マズい……。
僅かな望みで抵抗を試みる。俺より細い腕にも関わらず、びくとも動かず、引っ掻いてみても皮膚が鉱物のように硬く傷つけるどころか、逆に此方の爪から血が滲む。
「うふふ……美味しそうな命の色ね。このまま食べちゃおうかしら」
ピートは俺に顔を近づけて、長い舌で頬を舐めてきた。
「ふ……ふざけ、るな。だれが醜い魔物など……ぐっ!」
「あら、いけない。つい、力を入れすぎちゃって殺しちゃった」
ピートの手が俺から離れる。
しかし、殺したとはどういうことだろうか。
俺は生きているし、意識もある。
首に痛みは走ったものの、虚ろな視界はその場で座り込んだ地面を映している。が、体がピクリとも動かせない。
ーー数字?
眼前にまるで血文字のような赤い数字が現れる。
10……9……8……減っていく数字をただ眺めているだけ。しかし、肩を誰かに掴まれると、俺の体はふわりと宙を舞い上がる。
「あー、くそっ! 手は出さないつもりだったのに、助けちまった!」
聞き覚えがある声だが、顔を動かせず姿を確認出来ずにいた。
5……4……、その間にも減っていく数字に俺は怯え始めていた。数字が0になったとき、俺は死ぬのではないかと。
俺はアリステリアの名前を叫ぶことさえ出来ずに果ててしまうのか。
3……2……1、審判の時が迫る。
0、その数字を見た瞬間体がビクッと無意識に跳ねる。
「はっ! い、生きてる!?」
俺は安堵すると同時に上を向いた。やはり、俺を助け出したのは毛を全て毟り取られた鳥肌をしたカルヴァンであった。
「カルヴァン、アリスはどうした!?」
「え、い、生きてる!? あ、いや、向こうは大丈夫だ。それより、こっちだよ、危険なのは!」
カルヴァンが指し示す方角へ顔を向けると黒い烏に乗ったピートが凄い形相で睨み、此方へ今にも衝突しそうな勢いで迫ってきていた。
「ヘキサグラム!」
俺達とピートの間に、虹色の六角形の壁が立ち塞がり、ピートの乗っていた烏は頭から激突してしまう。
「これは?」
見覚えのある魔法に俺は上空から地表を見下ろすと、そこにはサラが援軍を伴って街中を駆けていた。
「間一髪ね、タツロウ! 第一班、第二班は住民の救助に! 第三班、第四班は街を襲う魔物にあたりなさい!」
「はっ!!」
指示を飛ばして兵士達が散開すると、サラは一人だけを伴って着地しようとする俺達と合流するべく走り出していた。
着地した俺はすぐにカルヴァンにアリステリアの事を問い質した。
「向こうは大丈夫だって! あの娘の周りにいた大人で、特に紫髪の女。頭一つ飛び抜けての強さだった。ありゃ、随分、戦闘慣れしてるぜ」
紫髪と言われて、俺が思い至ったのはたった一人だけであった。
ルナ先生である。
同時に俺はマナリア学園での見落としが何か気づく。アリステリアが昨日居残ってまで魔法を教わったのがルナ先生であることに。
アリステリアの話では、彼女の役割は”魔法使い“という話だ。魔法に関して、造詣が深いのだろう。
「皆さん! 頭を下げてください! ライトニングプリズン!!」
話を切り上げ俺とカルヴァンは、声に従い頭を下げると、青白い光の放電が向かってきていたピートと巨大な烏を覆う。
「クケェエエエエエッ!」
烏は痙攣し、地面に叩きつけられるがピートは間一髪のところで飛び降りて避けたようだ。
「しかし、今の声は?」
サラとは違う声に振り返ると、そこにはフードを目深に被った少年、”賢者の卵“であるイシューであった。
「イシュー?」
「話は後です! 来ますよ!」
俺達と合流したサラとイシューは、既に動き出しておりそれぞれ両手をピートへと向けた。
「ヘキサグラム!」
「フラッシュホーミング!」
此方へ駆け出していたピートの進行を妨害するように虹色の壁が立ち塞がる。激突を避ける為に後方に飛び退いたピートをイシューの放ついくつもの光の矢が壁や俺達を避けながら、ピートを追いかける。
「無駄さ、この体に魔法は効かないよ!」
一度退いたと思われたピートは、イシューの魔法をものともせずに、助走を取り、そのまま拳を虹色の壁に叩きつけて、破壊する。
勢いを衰えさせることなく、そのまま俺の方に向かってきていた。
不思議と俺にピートへの恐怖や不安は微塵も無かった。それどころか、体の内側から力が漲る。
体は自然に動いていた。俺の顔に向けてくる拳を、自画自賛したいくらいに見事な体捌きで避けると同時に伸ばしきったピートの手首を掴み、軽く捻る。
ピートの体は半円を描きながら、宙を舞う。
予想だにしない俺からの反撃にピートは唖然としたまま地面に叩きつけられた。
一連の俺の行動は無意識下で起こっており、俺がハッキリと認識したのは、地面に叩きつけられたピートを見た時であった。
「くそ、何なのよ、貴様は!?」
ピートは、その美しい顔を歪め荒い口調へと変化する。しかし、それを一番知りたいのは俺自身であった。
体は軽く、視界は広くクリアに感じる。
再び立ち上がり襲って来たピートの動きは丸見えで、鈍い。意識するよりも先に体が動き始め、ピートの拳や蹴りは悉く、両の手で受け流せた。
苛立ち始めたピートは俺の肩を掴もうと両腕を伸ばしてくるが、俺の両手が容易に外側へと弾いた。
ーー正面ががら空き!
両腕が外に流れたピートの胴体目掛けて懐に飛び込んでいた俺は、力強く踏みしめた一歩の威力をそのまま前に投げ出した両の掌に伝えて、ピートの胸元目掛けて叩きつけた。
「え、え? どうしたのよ、タツロウ?」
サラは驚くも一番驚いているのは俺自身だ。
魔物相手に恐怖も何もなく、ベアウルフ程度に苦戦していた俺が、今はピートですら弱く感じて、負ける気がしなかった。
「うふふ……ちょっとはやるようになったようだけど、貴方の攻撃もわたしには通じないようね」
埃を払いながら立ち上がったピートは冷静さを取り戻しており、ペロリと自分の唇を舐めて見せる。
ピートの鉱物のような硬い皮膚には傷はついていないが、俺には考えが浮かんでいた。
「イシュー、サラ。二人に頼みが……」
手早く作戦を伝えると二人はすぐに動き出す。
「ライトニングプリズン」
イシューの手のひらからピートに向けて青白い放電が飛び交う。魔法が効かないと言っていた本人は、それを嫌うように避けているのを見て俺は確信した。
魔法による直接的な傷などは与えられないが、痺れなどの状態異常のようなものは効果があるのだろうと。
だから、一発目のライトニングプリズンを避けたのだ。
「そっちには逃がさないわ、ヘキサグラム!」
サラはピートの逃げ道を塞ぐように虹色の壁で妨害する。助走をつけてやっと壊せる位だ、逃げながらではあの壁を壊せないのだろうと踏んでいた。
「きゃあああああっ!」
とうとうイシューのライトニングプリズンがピートを捕らえた。体が麻痺してピートはその場から動けない。
トドメを刺すべく俺の体が自然と動く。右手を前に突きだし、半身に構え左手を頭上に。手は拳ではなく、手刀にして。
何かは分からないが、体の内側に溜まった滾る力が二本の手刀に集約されていく。
俺は構えたまま全力でピートに向かって走り出した。
俺は直感で、この技は動いた相手に決まらないと理解していた。だから、二人にピートの動きを止めて貰ったのだ。
得体の知れない力で迫る俺にピートも負けじと痺れた体のまま逃げようと試みる。
「てめぇは、そこでじっとしてろーっ!」
そこにライトニングプリズンから逃れようとしたピートに向かってカルヴァンが上空から急降下して、自分も痺れることもお構いなしに体当たりをかました。
これには俺も予想外であった。
俺は集約された力を全て解放しながら半円を描きながら左手刀をピートの胸の中心目掛けて突き刺し抜き放つと、体を入れ替え今度は右手刀を先ほどと寸分違わぬ所へ放った。
「ぎゃああああああっ!」
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