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貰った優しさ
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「ルチア様、ヴァレリア様、王城でお茶しませんか?」
「「はい?」」
「…リル嬢…落ち着いて?」
王太子と約束している週末迄後2日─と言う日の朝、登園するなり、リルが少しおかしいお誘いをして来た。
ー“ちょっと王城でお茶しない?”的なお誘い、おかしくないですか?ー
そんなリルを第二王子は咎める事もなく、寧ろ眩しいものを見るような目で笑って見ている。その目が…全てを語っているように思う。
「私から説明するよ。」
と言って、第二王子が説明してくれたのは─先日のオコーエル様と私のやり取りに関しての事だった。
大騒ぎにはならず済んでいたが、どうやら、王太子の耳に入ってしまったらしく、丸々放っておく─と言う事はできない。ただ、相手が公爵令嬢で、ルチア本人も特に謝罪を求めている訳ではない。ならば、せめて、非公式ではあるが、留学生を管理する者として謝罪したい─との事だった。
ーコレが、私が登城する為の理由になるのねー
「私もその日は王城で魔法の訓練があって、その間に、王太子殿下がルチア様に会って謝罪したいと言ってました。それで!私の訓練と、ルチア様の謝罪が終わっら、お茶会をしたらどうか?って、言ってくれたんです!しませんか!?」
ー王城でお茶なんて、出来る限り遠慮したいけど…ー
目の前のリルの目は、キラキラと輝いている。これがまたすごく可愛らしくて、第二王子の顔が心なしか赤くなっている。
ー断れないよねー
「まず、殿下、“承知しましました”と王太子殿下にお伝え下さい。お茶は……私でよければ…。」
「ルチア様、約束ですよ!」
「良かったね、リル嬢。」
「はい!」
喜ぶリルを、更に嬉しそうに見ている第二王子。そんな2人を見ると、微笑ましい気持ちになる。ヴァレリアは何とも言いようのない顔をしているけど…いつも私を優先してくれるヴァレリア。そんなヴァレリアが居て良かったとも思う。リルと第二王子に気付かれないように、私がヴァレリアの背中をポンポンと叩くと、ヴァレリアは少しだけ、笑ってくれた。
第二王子が、フォレクシスの王宮で迷子になって、ジゼルと偶然会ったのは12年位前の事。それ以降、一度も対面した事はない。予想外の婚約が決まった時でさえ、対面する事はなかった。
それでも、第二王子は誠実で、私の誕生日には花やぬいぐるみなどが贈られてきた。12歳を超えると、アクセサリーも貰ったりもした。それは、去年迄続けられて来た。
ーだから、私の誕生日迄には何とかしないとねー
優しさも貰った。後は、その貰った分の優しさを私が返す番だ。
******
リルが王城で訓練をする日は、王城からの迎えの馬車が来るようで、私とヴァレリアも同乗させてもらう事になった。
王城に着くと、リルは訓練場へ、私とヴァレリアは王太子の待つ場所へと行く為、直ぐに別れての行動となった。
そうして、私達が案内されてやって来たのは、王城の応接室だった。
「来てくれてありがとう」
応接室には、既に王太子が座って待っていた。その後ろには、以前と同じ近衛騎士だろうと思われる騎士が控えていた。
「先ずは……約束を守っていただき、ありがとうございます。そして、本当にすみませんでした。」
ヴァレリアと共に頭を下げて謝罪する。
「謝罪はもう受け取ってあるから。2人とも、頭を上げて、そこに座ってくれ。」
「ありがとうございます。それでは、失礼致します。」
一瞬だけ、ヴァレリアが座る事を躊躇った様子だったけど、ここは素直に2人で椅子に座る事にした。
私達が座ると、そのタイミングで女官が数人入って来て飲み物の準備をした後、全員が退室していき、この応接室には4人だけとなった。
「申し訳無いが、コレだけは同席させてもらう。勿論、今から聞く話は、この者にも口外させないようにする。」
「私はヴィンス=サクソニアです。王太子殿下の近衛騎士を務めています。」
「態々のご挨拶、ありがとうございます。私は……フォレクシス第二王女ジゼルでごさいます。ヴァレリアは、私の侍女であり、護衛も務めております。」
そう。ヴァレリアは侍女であり、私の護衛でもある。
「あぁ、だから……私がジゼル様の話をした時に、メルサンデス嬢が過敏に反応したのか。」
確かに、先日のお茶会の時に、王太子がジゼルの事を訊いて来た時、僅かにヴァレリアが反応した。その反応した空気に、サクソニア様が反応して、一瞬だけ空気がピリッとしたのを覚えてる。
「その際は、失礼致しました。話の内容がジゼル様の事で…思わず…。サクソニア様にも、失礼致しました。以後気を付けます。」
ヴァレリアが王太子とサクソニア様に謝罪すると、「それだけ主の事を慕っていると言う事だろう?主思いで良い事だ」と、笑って許してくれた。
「それでは……ジゼル様から、話してもらえるか?」
「分かりました。」
何故、私が身分を偽ってまでレイノックスに来て、婚約解消を目指しているのか──全てを話す前に心を落ち着かせる為に、紅茶を一口だけ飲んだ。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
*゚✲ฺ٩(ˊᗜˋ*)و ✲゚ฺ*
「「はい?」」
「…リル嬢…落ち着いて?」
王太子と約束している週末迄後2日─と言う日の朝、登園するなり、リルが少しおかしいお誘いをして来た。
ー“ちょっと王城でお茶しない?”的なお誘い、おかしくないですか?ー
そんなリルを第二王子は咎める事もなく、寧ろ眩しいものを見るような目で笑って見ている。その目が…全てを語っているように思う。
「私から説明するよ。」
と言って、第二王子が説明してくれたのは─先日のオコーエル様と私のやり取りに関しての事だった。
大騒ぎにはならず済んでいたが、どうやら、王太子の耳に入ってしまったらしく、丸々放っておく─と言う事はできない。ただ、相手が公爵令嬢で、ルチア本人も特に謝罪を求めている訳ではない。ならば、せめて、非公式ではあるが、留学生を管理する者として謝罪したい─との事だった。
ーコレが、私が登城する為の理由になるのねー
「私もその日は王城で魔法の訓練があって、その間に、王太子殿下がルチア様に会って謝罪したいと言ってました。それで!私の訓練と、ルチア様の謝罪が終わっら、お茶会をしたらどうか?って、言ってくれたんです!しませんか!?」
ー王城でお茶なんて、出来る限り遠慮したいけど…ー
目の前のリルの目は、キラキラと輝いている。これがまたすごく可愛らしくて、第二王子の顔が心なしか赤くなっている。
ー断れないよねー
「まず、殿下、“承知しましました”と王太子殿下にお伝え下さい。お茶は……私でよければ…。」
「ルチア様、約束ですよ!」
「良かったね、リル嬢。」
「はい!」
喜ぶリルを、更に嬉しそうに見ている第二王子。そんな2人を見ると、微笑ましい気持ちになる。ヴァレリアは何とも言いようのない顔をしているけど…いつも私を優先してくれるヴァレリア。そんなヴァレリアが居て良かったとも思う。リルと第二王子に気付かれないように、私がヴァレリアの背中をポンポンと叩くと、ヴァレリアは少しだけ、笑ってくれた。
第二王子が、フォレクシスの王宮で迷子になって、ジゼルと偶然会ったのは12年位前の事。それ以降、一度も対面した事はない。予想外の婚約が決まった時でさえ、対面する事はなかった。
それでも、第二王子は誠実で、私の誕生日には花やぬいぐるみなどが贈られてきた。12歳を超えると、アクセサリーも貰ったりもした。それは、去年迄続けられて来た。
ーだから、私の誕生日迄には何とかしないとねー
優しさも貰った。後は、その貰った分の優しさを私が返す番だ。
******
リルが王城で訓練をする日は、王城からの迎えの馬車が来るようで、私とヴァレリアも同乗させてもらう事になった。
王城に着くと、リルは訓練場へ、私とヴァレリアは王太子の待つ場所へと行く為、直ぐに別れての行動となった。
そうして、私達が案内されてやって来たのは、王城の応接室だった。
「来てくれてありがとう」
応接室には、既に王太子が座って待っていた。その後ろには、以前と同じ近衛騎士だろうと思われる騎士が控えていた。
「先ずは……約束を守っていただき、ありがとうございます。そして、本当にすみませんでした。」
ヴァレリアと共に頭を下げて謝罪する。
「謝罪はもう受け取ってあるから。2人とも、頭を上げて、そこに座ってくれ。」
「ありがとうございます。それでは、失礼致します。」
一瞬だけ、ヴァレリアが座る事を躊躇った様子だったけど、ここは素直に2人で椅子に座る事にした。
私達が座ると、そのタイミングで女官が数人入って来て飲み物の準備をした後、全員が退室していき、この応接室には4人だけとなった。
「申し訳無いが、コレだけは同席させてもらう。勿論、今から聞く話は、この者にも口外させないようにする。」
「私はヴィンス=サクソニアです。王太子殿下の近衛騎士を務めています。」
「態々のご挨拶、ありがとうございます。私は……フォレクシス第二王女ジゼルでごさいます。ヴァレリアは、私の侍女であり、護衛も務めております。」
そう。ヴァレリアは侍女であり、私の護衛でもある。
「あぁ、だから……私がジゼル様の話をした時に、メルサンデス嬢が過敏に反応したのか。」
確かに、先日のお茶会の時に、王太子がジゼルの事を訊いて来た時、僅かにヴァレリアが反応した。その反応した空気に、サクソニア様が反応して、一瞬だけ空気がピリッとしたのを覚えてる。
「その際は、失礼致しました。話の内容がジゼル様の事で…思わず…。サクソニア様にも、失礼致しました。以後気を付けます。」
ヴァレリアが王太子とサクソニア様に謝罪すると、「それだけ主の事を慕っていると言う事だろう?主思いで良い事だ」と、笑って許してくれた。
「それでは……ジゼル様から、話してもらえるか?」
「分かりました。」
何故、私が身分を偽ってまでレイノックスに来て、婚約解消を目指しているのか──全てを話す前に心を落ち着かせる為に、紅茶を一口だけ飲んだ。
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
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