(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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入学してから半年。


今住んでいる所もクラスも違うリンディとは、学校でもあまり会う事はなかった。たまに廊下ですれ違う事もあるけど、リンディが困ったような顔をして私を見て挨拶をするぐらいだった。何故、困ったような顔をするのか─気にはなっていたけど、それも特に問題は無かったから、そのまま放っておいた─のだけど。


「どうやら、リンディ嬢は双子の姉であるエヴィに、学校内で無視をされているらしいよ」

「はい?」

“無視”とは、一体どう言う意味だろう?いや、リンディは“無視”の意味を分かっているんだろうか?

「あ、私も聞いたわ。本当は、姉のエヴィと話をしたいのに、全く相手にしてくれないって。どの口が言ってるの?って感じだけど」

私には、学校で友達ができた。
先ず、私にリンディの情報を教えてくれたのは─

ルイーズ=ファルストリア
第二騎士団の団長を務めるファルストリア公爵の令嬢で、この学校でも騎士コースを選択している。長い金髪を頭の上の方でひと括りにしている。

そしてもう一人は

メリッサ=ハザルバート
ハザルバート伯爵家の嫡子だ。
ハニーブロンドのゆるふわな髪に緑色のクリッとした大きい目は、とても可愛らしくて庇護欲を唆られるけど、性格はサバサバのバッサリ系である。

この2人とは、席が近い為、入学早々自然とよく話をするようになった。私が貴族令嬢でありながら魔力が無いと知ってもその態度が変わる事はなく、寧ろ「それがどうしたの?」と、問われた位だった。今ではよく3人で一緒に居る。リンディの事もあり、この2人も信頼、信用できると思い、ブルーム家での私のの事を(闇の魔力持ちと言う事は秘密で)2人にも話してあったのだ。

「リンディは、私をどうしたいんだろう?」

私を貶めなくても、自分が光の魔力持ちで両親からはたっぷりと愛情を注がれていて、周りの人達からは憧れを抱かれていて、王族とも婚約できるかもしれないと言う立場にあるのに。どうして、なんの取り柄も無い私を───

「エヴィが王太子殿下と仲が良いのが気に喰わないんじゃない?」

「仲が良い!?だっ…誰と誰が!?」
「「エヴィと王太子殿下が」」

「何で!?」

「何で─って……」

確かに、あの入学式の後に4人でランチをして以来、何故か週に3日程4人で食堂のあの奥の部屋でランチをするようになってしまった。あまり、王太子殿下やアンカーソン様とはお近付きにはなりたくはないけど、姉とは学校でしか会えない為に、私も断わる事ができずにいる。それに、時々だけど、食事が運ばれて来る事もある為、それも気になると言う事もある。

「だって、2人で会ったりランチをしてるわけじゃないのよ?私はお姉様と一緒に居たくてランチをしてるだけだし。それに、私……よくアンカーソン様に『我儘だな』ってお小言迄もらうような令嬢だよ?」

食事があれば、『私、ソレが食べたいです!』と我儘を言って交換してもらう為、その度にアンカーソン様には注意され、姉は困った様にオロオロして、王太子殿下に至っては、何やら愉快そうに笑っているのだ。

「エヴィ、ハッキリ言うけど、エヴィが“我儘令嬢”だなんて思ってるの、そのアンカーソン様とBクラスの子達位だと思うわ。それと、王太子殿下については……王太子殿下よ?爽やかな笑顔で色んな令嬢を虜にしつつも、今迄一切誰も自分の懐に令嬢を入れなかった殿下が、エヴィだけは受け入れてるの。あ、ジェマ様は別よ?ジェマ様は殿下の側近のアンカーソン様の婚約者だからね」

「王太子でありながら、未だに婚約者も決まってない。そんな状況で現れたのがエヴィなんだ。だから、一部の令嬢の間では、エヴィが王太子の婚約者候補に上がってるんじゃないか?って噂もある」

「婚約者候補っ!?」

ルイーズから恐ろしい噂話が飛び出した。

「あくまでも、一部の令嬢だけどね。それで、その噂話を知ったリンディ様が、自分を差し置いて!って思ったりしてるんじゃない?」

そんな理由で!?とは驚く事はない。あのリンディと母の事だ。世間体を気にする上、上昇志向が強い。今の私の状況が気に入らないと思っていてもおかしくはない。

「婚約者候補になんて上がっては無いし、なる気もないし、なれないとも思うわ。私は魔力無しだからね」

王族に魔力無しなんて、過去にも前列はない。例え王太子殿下が私を望んだとしても、周りが認める事は無いだろう。王太子殿下に、私が闇の魔力持ちだと気付かれていなければ。

ー……………気付かれて…ないよね?ー

ルイーズやメリッサが言うところの、王太子殿下の“爽やかな笑顔”は、私にとっては全く爽やかには見えない。色んなものを隠している笑顔にしか見えない。まぁ、王太子であるが故に、隠さなければいけないのだろうけど。


ーそれに、王太子殿下は………腹黒………だよね?ー


と、心の中で呟いた。


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