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「これです……」
殿下に嘘をつくのも隠すのも無駄だろうと思い、素直に話したら、「見せて」と言われた為、袋の中から取り出してみると、本当に、本当に!綺麗に真っ二つに割れていた。
「はぁ───」
やっぱり溜め息しか出なかった。
硝子細工の物は、その日、その時によって色の出方も違って来る為、同じ物は無いと言われた。同じような色の物もあったけど、色の具合がどうしても殿下とは微妙に違っていたのだ。
「これは……俺の色?」
「あ、はい。その色の具合?が、アシェルハイド殿下の色だなぁ─と思って……一目惚れに近い感じで買ったんですけど……」
「俺の色………ひとめ………ぼれ!?」
「ん?何か言いましたか?」
割れたペンを手に取り、何やらブツブツ呟く殿下。あまりにも声が小さくてよく聞こえなかったけど……ん?怒ってる?ん?笑ってる??
「あの……大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。エヴィ、これはこれで、もらっても良いか?」
「え?駄目です!そんな、割れてしまった物を差し上げるなんてできません。お礼はまた改めて──」
「いや、コレが良いんだ。エヴィが、俺の色だと選んでくれた……コレが良いんだ」
「ゔー…………」
いつもの胡散くさ………腹黒爽やか笑顔ではない、フワッとした笑顔をここでされると……断り難い………けど……
「でも、使えない物を渡しても、お礼にはならないし……」
「俺としてはコレで十分だが、エヴィが気になると言うなら、一つ、俺のお願いを聞いてくれるか?」
「お願い?私のできる事なら………」
なんて───簡単に返事をしてはいけなかった。
あれから、『じゃあ、付いて来て』と、ニッコリ笑った殿下の後を付いて行くと、街で人気のカフェへとやって来て、並んでいる列を素通りして裏口から入り、そのまま個室へと案内された。しかも『武にも長けた王太子殿下ですから、お任せしても大丈夫ですよね?』と、ライラは私を殿下に押し付けて帰ってしまい、見える範囲では、殿下と2人きりになってしまった。
ーどこかに、護衛の人は居るんだろうけどー
「ん?どうした?もう、お腹がいっぱいだったか?」
「いえ。食べれます。甘味は別腹ですからね」
ーただ、2人きりと言う事が気になるだけですー
誰かに見られるよりは、個室で良かったのかもしれない─と思うしかないよね?それに、これは、お礼としての付き合いだし。よし!
「えっと……アシェルハイド殿下は、甘い物が好きなんですか?」
「甘過ぎるのは苦手だが、嫌いではないな。この店のパンケーキが美味しいと聞いて、一度食べてみたかったんだ。ただ、男だけで来るのには、少し抵抗があったから、なかなか来れなかったんだ」
確かに、このお店のパンケーキは有名で、デートにはもってこいのお店で人気があり、客層はカップルと女性が多い。それに、店内は可愛らしい装飾がされている為、男だけで入店するのは少し恥ずかしいかもしれない。
「なら、私も少しはお役に立てたみたいですね。良かったです」
ふふっ─と笑えば、殿下が「ぐぅーっ」っと、少しくぐもった声を出した。慌てて「大丈夫ですか?」と訊けば、「大丈夫だ。気にしなくて良い」と言われた為、気にはなりつつも、取り敢えずお互い、パンケーキを注文した。
「んー!美味しいですね!」
「あぁ、俺にも丁度良い甘さで食べやすいな」
ふわふわのパンケーキが二段に積み上げられていて、生クリームがたっぷり掛かっているけど、甘さ控えめなクリームで食べやすくなっている。これに、殿下の物にはナッツがたっぷりトッピングされていて、私の物には、桃の蜂蜜のコンポートが添えられている。この桃のコンポートだけでも充分満足できる程美味しい。
「エヴィは、桃が好きなのか?」
「はい、桃は私が一番好きなフルーツですね」
「そうか」
「………」
何度目かは分からない、他意の無い自然?な笑顔を向けられると、何となく調子が狂ってしまう。
ー殿下には、あの腹黒爽やか笑顔が似合うよねー
なんて、絶対に口に出して言ったら駄目だけど。
「こんな時にするのもなんだけど、前に、通訳の話をしただろう?その話を外交担当の者に話したら、一度会って話をしたいと言われたんだが、来週、どこか都合の良い日はある?」
「ご存知の通り、私はただの学生ですから、授業が終わった後に生徒会の仕事がなければいつでも大丈夫です。学校が休みの週末でも構いません」
「ふむ。それじゃあ、バタバタするのもなんだから、週末にゆっくりと時間を取ろうか。すまないが、週末は予定を空けておいてくれ。また時間が決まったら連絡する」
「分かりました。こちらこそ、時間を作っていただいて、ありがとうございます。宜しくお願いします」
“通訳”を通して、国外に触れる事ができるかもしれない。
そう思うと、沈んでいた気持ちが少し上昇した。
殿下に嘘をつくのも隠すのも無駄だろうと思い、素直に話したら、「見せて」と言われた為、袋の中から取り出してみると、本当に、本当に!綺麗に真っ二つに割れていた。
「はぁ───」
やっぱり溜め息しか出なかった。
硝子細工の物は、その日、その時によって色の出方も違って来る為、同じ物は無いと言われた。同じような色の物もあったけど、色の具合がどうしても殿下とは微妙に違っていたのだ。
「これは……俺の色?」
「あ、はい。その色の具合?が、アシェルハイド殿下の色だなぁ─と思って……一目惚れに近い感じで買ったんですけど……」
「俺の色………ひとめ………ぼれ!?」
「ん?何か言いましたか?」
割れたペンを手に取り、何やらブツブツ呟く殿下。あまりにも声が小さくてよく聞こえなかったけど……ん?怒ってる?ん?笑ってる??
「あの……大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ。エヴィ、これはこれで、もらっても良いか?」
「え?駄目です!そんな、割れてしまった物を差し上げるなんてできません。お礼はまた改めて──」
「いや、コレが良いんだ。エヴィが、俺の色だと選んでくれた……コレが良いんだ」
「ゔー…………」
いつもの胡散くさ………腹黒爽やか笑顔ではない、フワッとした笑顔をここでされると……断り難い………けど……
「でも、使えない物を渡しても、お礼にはならないし……」
「俺としてはコレで十分だが、エヴィが気になると言うなら、一つ、俺のお願いを聞いてくれるか?」
「お願い?私のできる事なら………」
なんて───簡単に返事をしてはいけなかった。
あれから、『じゃあ、付いて来て』と、ニッコリ笑った殿下の後を付いて行くと、街で人気のカフェへとやって来て、並んでいる列を素通りして裏口から入り、そのまま個室へと案内された。しかも『武にも長けた王太子殿下ですから、お任せしても大丈夫ですよね?』と、ライラは私を殿下に押し付けて帰ってしまい、見える範囲では、殿下と2人きりになってしまった。
ーどこかに、護衛の人は居るんだろうけどー
「ん?どうした?もう、お腹がいっぱいだったか?」
「いえ。食べれます。甘味は別腹ですからね」
ーただ、2人きりと言う事が気になるだけですー
誰かに見られるよりは、個室で良かったのかもしれない─と思うしかないよね?それに、これは、お礼としての付き合いだし。よし!
「えっと……アシェルハイド殿下は、甘い物が好きなんですか?」
「甘過ぎるのは苦手だが、嫌いではないな。この店のパンケーキが美味しいと聞いて、一度食べてみたかったんだ。ただ、男だけで来るのには、少し抵抗があったから、なかなか来れなかったんだ」
確かに、このお店のパンケーキは有名で、デートにはもってこいのお店で人気があり、客層はカップルと女性が多い。それに、店内は可愛らしい装飾がされている為、男だけで入店するのは少し恥ずかしいかもしれない。
「なら、私も少しはお役に立てたみたいですね。良かったです」
ふふっ─と笑えば、殿下が「ぐぅーっ」っと、少しくぐもった声を出した。慌てて「大丈夫ですか?」と訊けば、「大丈夫だ。気にしなくて良い」と言われた為、気にはなりつつも、取り敢えずお互い、パンケーキを注文した。
「んー!美味しいですね!」
「あぁ、俺にも丁度良い甘さで食べやすいな」
ふわふわのパンケーキが二段に積み上げられていて、生クリームがたっぷり掛かっているけど、甘さ控えめなクリームで食べやすくなっている。これに、殿下の物にはナッツがたっぷりトッピングされていて、私の物には、桃の蜂蜜のコンポートが添えられている。この桃のコンポートだけでも充分満足できる程美味しい。
「エヴィは、桃が好きなのか?」
「はい、桃は私が一番好きなフルーツですね」
「そうか」
「………」
何度目かは分からない、他意の無い自然?な笑顔を向けられると、何となく調子が狂ってしまう。
ー殿下には、あの腹黒爽やか笑顔が似合うよねー
なんて、絶対に口に出して言ったら駄目だけど。
「こんな時にするのもなんだけど、前に、通訳の話をしただろう?その話を外交担当の者に話したら、一度会って話をしたいと言われたんだが、来週、どこか都合の良い日はある?」
「ご存知の通り、私はただの学生ですから、授業が終わった後に生徒会の仕事がなければいつでも大丈夫です。学校が休みの週末でも構いません」
「ふむ。それじゃあ、バタバタするのもなんだから、週末にゆっくりと時間を取ろうか。すまないが、週末は予定を空けておいてくれ。また時間が決まったら連絡する」
「分かりました。こちらこそ、時間を作っていただいて、ありがとうございます。宜しくお願いします」
“通訳”を通して、国外に触れる事ができるかもしれない。
そう思うと、沈んでいた気持ちが少し上昇した。
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