(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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光の魔力とは、人を癒す力だ。
その他人ひとの為に使う力を、他人ひとの為に使わず、身体を鍛える事もせず訓練も怠り他人ひとを陥れる──

そんな者には、光の魔力は必要ない。

故に、訓練は強制ではないが、光の魔力を維持したいのであれば、自ら積極的にしなければならないのだ。これらは全て、過去からの文献に記されており、光の魔力持ちが生まれると、必ず、本人とその両親には伝えられる。勿論、リンディ嬢にも、ブルーム伯爵夫妻にもきちんと伝えられている筈だ。それなのに──である。

ーきっと、都合の良いところしか、耳に入ってはいなかったのだろうー

本来であれば、指導している魔導士や王族側が注意して更生を促すのだが、それは敢えてしなかった。あまりにも目に余るモノがあったから。幸い、俺が光の魔力持ちであり、王族としても、どうしてもリンディ嬢が必要だと言う事もなかったからだ。その上、闇の魔力持ちのエヴィが居るから。
否。例え、エヴィが闇の魔力持ちではなくても、俺はエヴィが良いと思っていただろう。

兎に角、おそらく、光の魔力を失うかもしれないリンディ嬢の扱いは、本当に難しい。
伯爵令嬢であり、見目に関しては問題なく“可愛い”と思う。ただ、それだけだ。貴族令嬢としてのマナーは最低限できているかどうかのレベル。性格はハッキリ言って良くはない。成績は中の上だが、ある意味お花畑な頭。光の魔力持ちを除けば、メリットが顔しかない令嬢を、誰が欲しがると言うのか。

ー一つだけ使はあるが───それしか無いかー

「リンディ嬢、君がこのまま訓練を怠るのであれば、光の魔力は失われる─と言う事は、理解しているのか?」

「──失われる!?」

『初めて知りました』と言うような顔で驚いている。やはり、理解していなかったのか。

「そうだ。光の魔力は他の魔力とは違うからね。維持する為には、訓練をしなければいけないんだ。光の魔力は癒しの力だ。他人ひとを貶めしたりするような行いをすれば、その癒しの力も弱まると思っておいた方が良い。どうしても訓練が嫌で、光の魔力も必要無いと言うなら、私は止める事もしないが……。リンディ嬢は、これからどうするつもりだ?」

「そんな……私……だって……私は稀な光の魔力持ちだから、王太子妃に選ばれるって……駄目でもブレイン様が居るって……」

「…………」

どこまで馬鹿なのか──

例え、俺が光の魔力持ちでなかったとしても、こんな馬鹿な令嬢を王太子妃婚約者に迎える事は絶対に無い。

「リンディ=ブルームが光の魔力持ちと言う事は周知の事実だ。それなのに、もし、光の魔力を失ってしまうと、どうなるか分かるか?」

「どうなるか……???」

「持っていたモノを失ったとなれば、は無い」

「そんな!!だって……わたしは王太子妃か高位貴族の夫人に………」

ここまできて気にするのは、光の魔力を失うかもしれない事実より、婚姻相手とは……本当に呆れたものだが、これで上手くいくだろう──と、緩みそうになる口にグッと力を入れて耐える。

「光の魔力を失い、“魔力無し”にはなりたくはないだろう?微々たるモノであっても、その稀なる光の魔力が欲しいと願う貴族や、他国ではあるが、王族も居るが……」

「あのっ……私、訓練を頑張ります!光の魔力を失って、エヴィみたいな魔力無しになんてなりたくないわ!」
 
『エヴィみたいな』と言うのは必要無いよな?あぁ……そうか。俺に喧嘩を売っているんだな?買ってやらなくも無い。

ー小蝿を払うのは、簡単な事だからなぁー

「なら、今後は他者を貶めるような事はしない事。訓練は怠らず真面目に取り組む事。この二つは最低条件だと思う事だ。そうすれば、光の魔力を全て失う─と言う事は避けられる。微々たる力でも残っているようなら、学校を卒業する迄に、他国の王族との縁談を調えよう」

「あ……ありがとうございます!」

先程迄の悲壮感たっぷりの顔はどこへやら。今度はパアッと明るい笑顔だ。本当に、頭お花畑な馬鹿は簡単で良い。甘い顔で甘い言葉を囁やけば、コロッと転がるのだ。

ーコレ、本当の本当にエヴィと双子なのか?ー

エヴィは、ある意味、放ったらかしにされて良かったのか?いやいや。良くは……無い……よな?
んんっ─。兎に角、頭お花畑は、光の魔力を失わないようにする事が、最低条件だ。

「では、リンディ嬢。訓練頑張ってくれ」

そう言って、俺は令嬢が好むと分かっている笑顔で微笑んだ。


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