(自称)我儘令嬢の奮闘、後、それは誤算です!

みん

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最後の晩餐①

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『もう一度言う。俺はエヴィが好きだ。“解毒役”じゃなくて、恋人として側に居て欲しいと思っている。他の誰にも……取られたくはないし、くれてやるつもりも無い』


ーそんな事を言われて、これからどう殿下と接すれば良いんだろうー


なんて、悩みに悩んだあの時間を返して欲しい。
あの日の翌日、学校で会った時には、殿下は普段通りの殿下だった。
生徒会室で作業をしていても、特に声を掛けられる事もない。外交のお手伝いに登城しても、王太子としての執務が忙しいそうで、以前のように庭園でお茶をするどころか、お出迎えや見送りもされなくなった。

ーいやいや!別に送迎して欲しいとかはないんだけどね!ー

「…………」

ーただ……ただ、何となく……寂しい……ような?ー

パンパンッ─

「っ!?エヴィさん!?どっ…どうしたの?急に、自分の頬を叩いたりして…大丈夫?」

私の急な行動に驚いたのは、外交官のコーディさん。

「あ、すみません。少し気合いを入れようと思って…」

「ははっ。エヴィさんなら大丈夫だよ。いつも、私達はエヴィさんに助けてもらってるからね。今日もいつも通りにしてくれたら良いから」

「はい…ありがとうございます」

ーうん。殿下の事は今は置いといて、仕事に集中しようー

気を緩めると殿下の事を考えてしまいそうで、その日はいつもより、外交のお手伝いに集中した。








姉達の卒業迄、後3ヶ月と言う頃に、私と姉の元にブルーム家から手紙が届いた。
内容は──

“移住する前に、食事をしよう”

だった。




******


「エヴィ、大丈夫?」

心配そうに声を掛けて来たのは、姉のジェマ。
今は、最後の晩餐に向かう馬車の中。この馬車は、ローアン侯爵である父が手配してくれた。今着ている服は、ローアン侯爵夫人である母がオーダーメイドで作ってくれた服だ。

『エヴィ、ピアスはコレを着けましょうね!』

と、何故か母に迫力のある笑顔で、あのブラックパールのピアスを着けられた。何故、母がこのピアスの存在を知っていたのか……ある意味恐ろしくて訊けなかった。そのピアスにソッと触れる。

アシェルハイド殿下の色──

ー何で……落ち着くのかなぁ…………いや、今は考えるのは止めようー

「お姉様、私は大丈夫ですよ。ただ、最後に出て来るのが、ベリーたっっっぷりのベリーパイかと思うと、今から憂鬱なだけです」

むうっ─と、口を尖らせて愚痴ると、姉はキョトンとした後、クスクスと笑った。因みに、今日の姉の着ている服はブレイン=アンカーソン様から贈られた物で、勿論青色だ。本当に、アンカーソン様は姉が好き過ぎる。
兎に角、姉が幸せそうで何よりだ。

姉と2人で話をしているうちに、懐かしい、元我が家であるブルーム邸に到着した。





出迎えてくれたのは、ケンジーとエメリーとアリスだった。

「ジェマお嬢様とエヴィお嬢様が、お元気そうで何よりです」

お互い、抱き合って再会を喜んだ。
そこに、家族であった4人の姿は無い。別に、期待などしてはいなかったけど、“食事を─”と誘って来たのはブルーム伯爵だ。最後になるなら。の対応をするかも?と少しだけ思ったりもしたけど、安定のクズだった。

ー一応、姉はアンカーソン公爵の籍に、私はローアン侯爵の籍に入ってるんだけどねー


兎に角、最後の晩餐は、やっぱりな感じで始まったのである。





客室に案内させる事もなく、姉と私はそのまま食堂へと案内された。

「本当に、色々とご無礼を………すみません」

と、ケンジーにはひたすら謝られた。ケンジーは全く悪くない。主人であるブルーム伯爵の指示に従っているだけなのだから。姉と2人で「ケンジーが謝る必要は全くないわ」と言い続けた。





「遅かったな……」

「「…………」」

食堂に入るなり、元父─ブルーム伯爵に掛けられた言葉がソレだった。姉も私も、唖然として言葉が出て来なかった。

手紙に書かれていた時間よりも、早い時間に到着しているのにも関わらず、『遅かった』とは、どう言う意味なのか訊きたいぐらいだ。

兎に角、案内された懐かしい食堂には、既に元父と元母と、リンディとサイラスが椅子に座っていた。本当に、お出迎えである。
困った顔をしたケンジーに促され、姉と私も椅子に座った。


「ジェマ、エヴィ、久し振りね。元気だったかしら?」

少し気不味い雰囲気の中、話し出したのは元母─ポーリーンだった。

「「はい」」

ー『お陰様で』─何て、絶対に言いませんからね?ー

と、心の中で悪態を吐きながら、ニッコリと微笑むと、母だった人は笑顔のままではあるが、少し口元を引き攣らせた。

「久し振りに会ったと言うのに……そっけないのね?は寂しいわ……」

そう言って悲しそうに微笑む母だった人。傍から見れば、“非情な娘と可哀想な母”だ。そんな母だった人を見ると、ただただ、更に心が冷えていくだけだった。

「──本当に、エヴィは意地が悪いのね!お母様が気に掛けてくれているのに…。魔力無しのエヴィにもよくしてくれていたのに、何のお礼も無く、ブルームから籍を抜くなんて…エヴィは本当に親不孝者よね!?」

リンディは……相変わらずだった。


リンディは、“反省”と言う言葉と意味を、知らないんだろうか?




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