51 / 75
黒色
しおりを挟む
「ブラック…………パール…………」
授業が終わった後、生徒会の集まりもなかった為、真っ直ぐに寮の自分の部屋へと帰って来て、ライラに殿下からもらったピアスを出して来てもらった。「まさかね……」と思いながら、そのピアスが入っている箱を開けて見てみると………
そこには、小ぶりながらも、黒黒と輝くブラックパールのピアスが鎮座していた。
「………」
社交界に疎い私だって知っている。黒は、国王陛下と王太子の色とされていて、ここ数年において、夜会などでは黒色は身に纏わないと言う暗黙のルールがあると言う事を。
それなのに……私は、その黒色のピアスを身に着け、その上……殿下のエスコートであのホールに入場していたのだ。
箱の蓋を閉じ、その箱を握り締めて、私は急いで寮の部屋を出て駆け出した。
「アシェルハイド殿下!こっ……これはどう言う事ですか!?」
多分居るだろう─と思い、やって来たのは生徒会室。思った通り、殿下は生徒会室で書類の整理をしていた。
息を切らせた私を見た後、私が手にしているモノを見るとニヤリ─と笑った。
「あぁ…やっと気付いたのか?」
「ゔっ──」
確かに……あの夕食会から、すでに3ヶ月近くも経っている。でも、仕方無いよね?社交界デビューもしていない学生が、一体いつ、あのピアスを着ける時がある?無いよね?
「アシェルハイド殿下……これは……一体……」
「“何故?”と訊かなければ分からないか?」
くくっ─と、何やら楽しそうに笑う殿下。
「ゔっ───」
流石の私でも、分からないと言う程、世間知らずの馬鹿じゃない。
どう反応すれば良いのか分からなくて、視線をキョロキョロと彷徨わせていると、ふと殿下の手元に視線が止まった。
今、殿下が手にしているソレ。
あの時、真っ二つに割れてしまったモノ。
「アシェルハイド殿下…そのペンは……」
「あぁ、これは、エヴィが俺の為に買ってくれたペンだな」
「─っ!いっ……言い方!!─ではなくてっ!そのペンは、あの時真っ二つに……」
無礼男子のせいで、真っ二つに割れてしまったけど、『それでも良い』と言われて、渋々殿下に渡していたモノ。
「あまりにもキレイに割れていたから、修理ができるんじゃないかと思って、硝子細工専門の職人に見せたら、直せると言われて、直してもらったんだ」
見てみるか?─と言われ、私に差し出されたペンを手に取って見る。確かに、パッと見ただけでは気付かないけど、よーく見ると、ペンの中央付近にうっすらと線のようなモノがある。接着?した痕なんだろう。でも──
「態々修理して使わなくても、殿下ならいくらでも新しいモノを──」
「新しいモノは、いくらでも直ぐに手に入るけど、エヴィから貰ったモノはコレしかないからな」
「っ!?」
手にしていたペンに気を取られていて、すぐ目の前迄来ていた殿下には全く気付いていなかった。
ー距離が…近い!ー
スッと後ろに下がると、その分殿下もスッと前に進む─から、距離が開かない。
「あっ!」
そのまま何歩か下がった時、部屋にある椅子とぶつかり、そのままストンッと椅子に座るようにお尻をついた。それを見た殿下が、これまた楽しそうに笑った後、私の座っている真横に腰を下ろした。
「でん───」
「俺は、エヴィが好きなんだ」
「────はい???」
ー“好き”???ー
「俺が卒業した後も、2年も学校生活が残っているだろう?」
「……そう…ですね?」
殿下とは年の差が二つあるから、殿下が卒業してもまだ2年の学生生活が残っている。だから?
「エヴィは知らないと思うが、エヴィは結構人気があるんだ」
「はい??」
ー人気??魔力無しなのに???ー
「今迄、それとなく意思表示はして来たつもりだが、それでは一切通じてなかったと─痛感したからな。ハッキリ伝える事にしようと─」
殿下が私の手の上に手を重ね置く。
「もう一度言う。俺はエヴィが好きだ。“解毒役”じゃなくて、恋人として側に居て欲しいと思っている。他の誰にも取られたくはないし、くれてやるつもりも無い」
「………」
嘘や冗談では……無いんだろう。いつもの黒い笑顔でも、人を揶揄うような顔でもなく、いつもは意志の強い瞳も、今は切なそうに揺れている。
「えっと…その…」
「今すぐ答えが欲しいとは言わない。取り敢えず、俺が卒業する迄の間、少しずつで良いから、俺を見て考えて欲しい」
そう言うと、殿下は重ねていた私の手を一瞬だけギュッと強く握った後「もう時間も遅いから、寮迄送ろう」と言って、殿下も帰り支度をしてから、私を寮迄送り届けてくれた。
「それじゃあ、また明日な」
と、頭をポンポンと叩いてから、殿下は正門のある方へと去って行った。
授業が終わった後、生徒会の集まりもなかった為、真っ直ぐに寮の自分の部屋へと帰って来て、ライラに殿下からもらったピアスを出して来てもらった。「まさかね……」と思いながら、そのピアスが入っている箱を開けて見てみると………
そこには、小ぶりながらも、黒黒と輝くブラックパールのピアスが鎮座していた。
「………」
社交界に疎い私だって知っている。黒は、国王陛下と王太子の色とされていて、ここ数年において、夜会などでは黒色は身に纏わないと言う暗黙のルールがあると言う事を。
それなのに……私は、その黒色のピアスを身に着け、その上……殿下のエスコートであのホールに入場していたのだ。
箱の蓋を閉じ、その箱を握り締めて、私は急いで寮の部屋を出て駆け出した。
「アシェルハイド殿下!こっ……これはどう言う事ですか!?」
多分居るだろう─と思い、やって来たのは生徒会室。思った通り、殿下は生徒会室で書類の整理をしていた。
息を切らせた私を見た後、私が手にしているモノを見るとニヤリ─と笑った。
「あぁ…やっと気付いたのか?」
「ゔっ──」
確かに……あの夕食会から、すでに3ヶ月近くも経っている。でも、仕方無いよね?社交界デビューもしていない学生が、一体いつ、あのピアスを着ける時がある?無いよね?
「アシェルハイド殿下……これは……一体……」
「“何故?”と訊かなければ分からないか?」
くくっ─と、何やら楽しそうに笑う殿下。
「ゔっ───」
流石の私でも、分からないと言う程、世間知らずの馬鹿じゃない。
どう反応すれば良いのか分からなくて、視線をキョロキョロと彷徨わせていると、ふと殿下の手元に視線が止まった。
今、殿下が手にしているソレ。
あの時、真っ二つに割れてしまったモノ。
「アシェルハイド殿下…そのペンは……」
「あぁ、これは、エヴィが俺の為に買ってくれたペンだな」
「─っ!いっ……言い方!!─ではなくてっ!そのペンは、あの時真っ二つに……」
無礼男子のせいで、真っ二つに割れてしまったけど、『それでも良い』と言われて、渋々殿下に渡していたモノ。
「あまりにもキレイに割れていたから、修理ができるんじゃないかと思って、硝子細工専門の職人に見せたら、直せると言われて、直してもらったんだ」
見てみるか?─と言われ、私に差し出されたペンを手に取って見る。確かに、パッと見ただけでは気付かないけど、よーく見ると、ペンの中央付近にうっすらと線のようなモノがある。接着?した痕なんだろう。でも──
「態々修理して使わなくても、殿下ならいくらでも新しいモノを──」
「新しいモノは、いくらでも直ぐに手に入るけど、エヴィから貰ったモノはコレしかないからな」
「っ!?」
手にしていたペンに気を取られていて、すぐ目の前迄来ていた殿下には全く気付いていなかった。
ー距離が…近い!ー
スッと後ろに下がると、その分殿下もスッと前に進む─から、距離が開かない。
「あっ!」
そのまま何歩か下がった時、部屋にある椅子とぶつかり、そのままストンッと椅子に座るようにお尻をついた。それを見た殿下が、これまた楽しそうに笑った後、私の座っている真横に腰を下ろした。
「でん───」
「俺は、エヴィが好きなんだ」
「────はい???」
ー“好き”???ー
「俺が卒業した後も、2年も学校生活が残っているだろう?」
「……そう…ですね?」
殿下とは年の差が二つあるから、殿下が卒業してもまだ2年の学生生活が残っている。だから?
「エヴィは知らないと思うが、エヴィは結構人気があるんだ」
「はい??」
ー人気??魔力無しなのに???ー
「今迄、それとなく意思表示はして来たつもりだが、それでは一切通じてなかったと─痛感したからな。ハッキリ伝える事にしようと─」
殿下が私の手の上に手を重ね置く。
「もう一度言う。俺はエヴィが好きだ。“解毒役”じゃなくて、恋人として側に居て欲しいと思っている。他の誰にも取られたくはないし、くれてやるつもりも無い」
「………」
嘘や冗談では……無いんだろう。いつもの黒い笑顔でも、人を揶揄うような顔でもなく、いつもは意志の強い瞳も、今は切なそうに揺れている。
「えっと…その…」
「今すぐ答えが欲しいとは言わない。取り敢えず、俺が卒業する迄の間、少しずつで良いから、俺を見て考えて欲しい」
そう言うと、殿下は重ねていた私の手を一瞬だけギュッと強く握った後「もう時間も遅いから、寮迄送ろう」と言って、殿下も帰り支度をしてから、私を寮迄送り届けてくれた。
「それじゃあ、また明日な」
と、頭をポンポンと叩いてから、殿下は正門のある方へと去って行った。
150
あなたにおすすめの小説
邪魔者はどちらでしょう?
風見ゆうみ
恋愛
レモンズ侯爵家の長女である私は、幼い頃に母が私を捨てて駆け落ちしたということで、父や継母、連れ子の弟と腹違いの妹に使用人扱いされていた。
私の境遇に同情してくれる使用人が多く、メゲずに私なりに楽しい日々を過ごしていた。
ある日、そんな私に婚約者ができる。
相手は遊び人で有名な侯爵家の次男だった。
初顔合わせの日、婚約者になったボルバー・ズラン侯爵令息は、彼の恋人だという隣国の公爵夫人を連れてきた。
そこで、私は第二王子のセナ殿下と出会う。
その日から、私の生活は一変して――
※過去作の改稿版になります。
※ラブコメパートとシリアスパートが混在します。
※独特の異世界の世界観で、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。
バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。
瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。
そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。
その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。
そして……。
本編全79話
番外編全34話
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚
mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。
王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。
数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ!
自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる