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最後の晩餐②

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ーあれ?リンディは……最後通牒をされたのではなかったのだろうか?ー

「まぁ、別にエヴィが籍を抜いたところで、私達は問題無いけどね。私は、ゲルダン王国の王弟と婚姻して、お父様達は侯爵になるの!後で、籍を戻したいと言って来ても無理だからね?エヴィは……魔力無しらしく、一人で必死になって働けば良いわ。」

「………」

ブルームに戻る─なんて、本当に魔力無しであっても御免被りたい。それに、必死で働く事の何が悪いと言うのか。自分の力を発揮して必死に働いてお金を貰う。とても充実している。勉強をしながらの両立は、本当に大変だけど、やり甲斐があってとても楽しい。でも、この気持ちは…リンディには一生理解できないだろう。今更、理解してもらおうとも思わない。もう、リンディは私の妹でも家族でもないのだから。

「───兎に角、食事を始めよう。」

と、父だった人の一言で、最後の晩餐が始まった。




食事は、相変わらずリンディが好きな物だらけだった。
殆ど接点を持たなかった弟だったサイラスが、私とジェマに話し掛けて来る事は無く、ひたすらリンディとお喋りしている。その2人の会話に、時折にこやかにポーリーン(呼び方が面倒だから、名前で良いよね?)が入り、それをフロイドがうんうんと頷く。

「「………」」

ーこれ、姉と私が居る意味ある?無いよね?ー

そもそも、ブルーム邸には来たくもなかったけど、招待されたし、姉に『最後になるかもしれないし、私も一緒に行くから』と言われたら、断る事ができなかった。姉はお人好しだ…。

ーちょっと……かなり、アンカーソン様には今よりもっと、しっかりしてもらわないといけないよね?ー

んんっ。兎に角、食事を終わらせたら、直ぐに帰ろう。もう、この人達に期待する事は───何も無いのだから。






そして予想通り、最後に出て来たデザートは……………加えられた、ベリーたっっっぷりのベリーパイだった。

「ジェマもエヴィも、好きだったでしょう?最後になるかと思って、いつもよりベリー多目で作らせたの。」

と、嬉しそうに微笑むポーリーン。勿論、リンディもサイラスも姉も喜んでいる──が、私はもう、溜め息すら出て来ない。



姉と私のベリーパイから、ピンク色のモノが溢れているのだ。

「さぁ、ベリーパイを食べましょう。」

ポーリーンの言葉に、皆がフォークを手にする。
私は、姉の手を押さえる。

「エヴィ?」

姉が不思議そうな顔で私を見て来るけど、私はポーリーンから視線を外さない。

「……本当に…ここまでクズだとは思わなかった。」

「……クズ…だと?」

私の言葉に反応したのはフロイドだ。

「先ずは……私はベリーが大嫌いなんです。好きだなんて、一度も言った事はありません。でも、ケンジーとエメリーとアリスは知っています。ついでに言わせてもらいますけど、私はピンク色も好きではありません。寧ろ、嫌いな色です。いつも、そんなピンク色の服を買っていただき、ありがとうございました。でも、気付いてましたか?それらのピンク色の服を…私が一度も着ていなかった事を。」

「なっ……!」

ポーリーンは、何とか笑顔を保ってはいるが、プルプルと怒りで体が震えている。

「それで……姉と私は、このベリーパイは。」

ヒュッ─と息を呑んだのは誰?

「嫌いだから食べないのか?これで最後なんだ。今更そんな我儘を言ってどうする?最後ぐらい、おとなしく食べれば良いだろう。」

「我儘……ですか。それで結構です。を食べるより、よっぽどマシですから。」

「エヴィ!何て事を───」
「なら、お姉様と私のベリーパイと、リンディとポーリーン様のパイを交換してもらえれば……素直に食べますよ。」

そう言うと……ポーリーンの顔色が一瞬にして悪くなった。



ーやっぱり…ポーリーンこの人だったのかー


「エヴィは何を言っているんだ?交換したところで、同じベリーパイだろう?」

「そうですね。同じベリーパイなら、交換しても問題無いですよね?」

「───っ」


媚薬を盛って、どうする気だった?
姉は既にブレイン=アンカーソン様の妻で、王太子殿下の色を身に着けた令嬢が、私だと知っているんだろう。そんな2人に媚薬──。

「そこまでして、私達を蹴落としたかったんですか?そんなにも……リンディが大切ですか?リンディだけが、あなたの子ですか?あぁ、失礼しました。ジェマお姉様と私は…既にポーリーン様の娘ではありませんでしたね。」

「エヴィ!いい加減にしないか!一体何を言っているんだ!?」

フロイドは、本当に知らないのだろう。ベリーパイに媚薬が盛られている事を。

「私から、フロイド様に言う事は何もありません。ただ、お姉様と私は、このベリーパイを食べる事ができない─と言う事です。お姉様…帰りましょう。ここに居たら……何をされるか分からないから。」

「え?えっと…分かったわ。エヴィが、それで良いのなら。」

と、姉は困惑しつつも私と一緒に席を立ち上がった。






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