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エヴィの誤算
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『─少し、俺に付き合ってくれないか?』
と言われてやって来たのは、王都で有名なカフェだった。予約をしていたのか、店に入るとそのまま個室へと案内された。
それから、このお店のお勧めのケーキを注文し、お互い、最近はどうだったかを話しながらケーキを食べた。特に、これと言って何を言われる事もなく──
ーこのお店のケーキが食べたかったのかな?ー
何て思いながら殿下を見ていると、視線を上げた殿下と目が合った。ドキッ──としてしまった気持ちを悟られないように、自分を落ち着かせながら声を掛けた。
「ここのケーキが食べたかったんですか?」
「あぁ。ここのケーキは俺のお気に入りでね。ずっと、エヴィと一緒に食べたいと思っていたんだ」
「──っ!??」
思いがけない告白をされてから、思っていたよりもサラッとした対応をされていたから、急にそんな風に言われると、ドキッとしてしまう。
「そっ…そうですか……。美味しいですね。ありがとうございます」
「と言っても、ここはついでであって、本題は別にあるんだけどね?」
「本題?別?」
意味が分からず、コテン─と首を傾げた私に殿下が言ったのは─
1ヶ月後の卒業式に、イズライン殿下と私は在校生代表として出席する事になっている。その卒業式は全員制服で参加するのだが、華美過ぎないモノであば、アクセサリーを着けても良い事になっている為、婚約者や恋人が居る場合、その相手の色のアクセサリーを身に着けたりするそうだ。勿論、自分の色のアクセサリーを着けるのもアリだ。
「そこで、俺は、エヴィに、あのピアスを着けてもらいたいと思っている」
“あのピアス”とは─殿下の色をしたブラックパールのピアスの事だろう。あの夕食会の時は、否応どころか騙し討の様に私の身に着けさせたのに。
「勿論……嫌なら…無理強いはしない」
「それを信じろと?」
「……信じてもらうしか…ないな?」
胡乱げな目を殿下に向けると、バツの悪そうな顔をして笑った。
『卒業迄、後1ヶ月。少しでも可能性があるなら、考えておいて欲しい』
あれから寮迄送ってもらい、別れ際に殿下はそれだけ言うと、王城へと帰って行った。
「ちょっと1人で考えたい─」
とライラにお願いして、いつもより早めに夕食をとり、入浴も早目に済ませて、いつもよりも早い時間にベッドに潜り込んだ。
“アシェルハイド=アラバスティア”
第一印象は、本当に怖い人だった。可能であれば、関わりたくなかった人だった。私は、成人したら独り立ちして─外交のお手伝いをしながら働いて、静かに暮らしたいと思っていた。
いつもは腹黒な殿下。でも、何故か、私が迷っている時や落ちてしまっている時には、手を差し伸べてくれる。救ってくれるのだ。
たまに見せてくれる、あの優しい笑顔には、いつもドキリとさせられる。会えなかったこの2ヶ月の間、特に何も思わなかったけと……今日、久し振りに遭遇した時、素直に“嬉しい”と思ってしまったのだ。
「ゔ───っ………」
両手で顔を覆って唸る。
ーどうして……こうなった!?ー
ただただ、姉の幸せの為に少し頑張っただけ。姉が幸せになった後は、私は独り立ちする予定だっただけなのに。まさか、王太子殿下に絡まれるとは……誰が予想できただろうか?
「──誤算だ!」
どうする?と悩んでいる自分にも、正直、驚いている。
そう。私は、殿下が嫌いではないのだ。「好きなのか?」と問われると、それもよく分からない。姉が好きの好きとは違う好き。
「後…1ヶ月か………」
一応、侯爵家の令嬢ではあるが、そこで、殿下との直接的な繋がりは切れてしまうだろう。
外交のお手伝いをしているとは言え、外交はある意味裏方であり、王族は表だ。今迄みたいに、気安く話す事はできないだろう──そう思うと、少し寂しい……かな?
「───誤算だ!」
ー寂しいって、何!?──って、落ち着こう!私!ー
取り敢えず、後1ヶ月ある。それ迄、もう少し考えてから答えを出そう─と、何とか気持ちを落ち着かせて、なかなか寝付けない夜を過ごした。
その1週間後。
『王妃陛下の母国であるミュズエル王国から外交官がやって来るから、これからの事を考えて、エヴィを紹介しておきたい』
と、外交官の長官に言われてしまえば、一お手伝いでしかない私は断る事はできず、生徒会は忙しさのピーク真っ只中ではあったが
『長官に言われたら仕方無いからね。こちらの事は気にせず、エヴィ嬢はそちらを優先してくれて構わないよ。この事は、学校側にも私から伝えておこう』
と、イズライン殿下から許可をもらい、その日は学校を休んで登城する事になった。
『兄上の……いや、兄上と母上の総仕上げ……だろうな……』
と、イズライン殿下が呟いた言葉は、エヴィの耳には届かなかった。
と言われてやって来たのは、王都で有名なカフェだった。予約をしていたのか、店に入るとそのまま個室へと案内された。
それから、このお店のお勧めのケーキを注文し、お互い、最近はどうだったかを話しながらケーキを食べた。特に、これと言って何を言われる事もなく──
ーこのお店のケーキが食べたかったのかな?ー
何て思いながら殿下を見ていると、視線を上げた殿下と目が合った。ドキッ──としてしまった気持ちを悟られないように、自分を落ち着かせながら声を掛けた。
「ここのケーキが食べたかったんですか?」
「あぁ。ここのケーキは俺のお気に入りでね。ずっと、エヴィと一緒に食べたいと思っていたんだ」
「──っ!??」
思いがけない告白をされてから、思っていたよりもサラッとした対応をされていたから、急にそんな風に言われると、ドキッとしてしまう。
「そっ…そうですか……。美味しいですね。ありがとうございます」
「と言っても、ここはついでであって、本題は別にあるんだけどね?」
「本題?別?」
意味が分からず、コテン─と首を傾げた私に殿下が言ったのは─
1ヶ月後の卒業式に、イズライン殿下と私は在校生代表として出席する事になっている。その卒業式は全員制服で参加するのだが、華美過ぎないモノであば、アクセサリーを着けても良い事になっている為、婚約者や恋人が居る場合、その相手の色のアクセサリーを身に着けたりするそうだ。勿論、自分の色のアクセサリーを着けるのもアリだ。
「そこで、俺は、エヴィに、あのピアスを着けてもらいたいと思っている」
“あのピアス”とは─殿下の色をしたブラックパールのピアスの事だろう。あの夕食会の時は、否応どころか騙し討の様に私の身に着けさせたのに。
「勿論……嫌なら…無理強いはしない」
「それを信じろと?」
「……信じてもらうしか…ないな?」
胡乱げな目を殿下に向けると、バツの悪そうな顔をして笑った。
『卒業迄、後1ヶ月。少しでも可能性があるなら、考えておいて欲しい』
あれから寮迄送ってもらい、別れ際に殿下はそれだけ言うと、王城へと帰って行った。
「ちょっと1人で考えたい─」
とライラにお願いして、いつもより早めに夕食をとり、入浴も早目に済ませて、いつもよりも早い時間にベッドに潜り込んだ。
“アシェルハイド=アラバスティア”
第一印象は、本当に怖い人だった。可能であれば、関わりたくなかった人だった。私は、成人したら独り立ちして─外交のお手伝いをしながら働いて、静かに暮らしたいと思っていた。
いつもは腹黒な殿下。でも、何故か、私が迷っている時や落ちてしまっている時には、手を差し伸べてくれる。救ってくれるのだ。
たまに見せてくれる、あの優しい笑顔には、いつもドキリとさせられる。会えなかったこの2ヶ月の間、特に何も思わなかったけと……今日、久し振りに遭遇した時、素直に“嬉しい”と思ってしまったのだ。
「ゔ───っ………」
両手で顔を覆って唸る。
ーどうして……こうなった!?ー
ただただ、姉の幸せの為に少し頑張っただけ。姉が幸せになった後は、私は独り立ちする予定だっただけなのに。まさか、王太子殿下に絡まれるとは……誰が予想できただろうか?
「──誤算だ!」
どうする?と悩んでいる自分にも、正直、驚いている。
そう。私は、殿下が嫌いではないのだ。「好きなのか?」と問われると、それもよく分からない。姉が好きの好きとは違う好き。
「後…1ヶ月か………」
一応、侯爵家の令嬢ではあるが、そこで、殿下との直接的な繋がりは切れてしまうだろう。
外交のお手伝いをしているとは言え、外交はある意味裏方であり、王族は表だ。今迄みたいに、気安く話す事はできないだろう──そう思うと、少し寂しい……かな?
「───誤算だ!」
ー寂しいって、何!?──って、落ち着こう!私!ー
取り敢えず、後1ヶ月ある。それ迄、もう少し考えてから答えを出そう─と、何とか気持ちを落ち着かせて、なかなか寝付けない夜を過ごした。
その1週間後。
『王妃陛下の母国であるミュズエル王国から外交官がやって来るから、これからの事を考えて、エヴィを紹介しておきたい』
と、外交官の長官に言われてしまえば、一お手伝いでしかない私は断る事はできず、生徒会は忙しさのピーク真っ只中ではあったが
『長官に言われたら仕方無いからね。こちらの事は気にせず、エヴィ嬢はそちらを優先してくれて構わないよ。この事は、学校側にも私から伝えておこう』
と、イズライン殿下から許可をもらい、その日は学校を休んで登城する事になった。
『兄上の……いや、兄上と母上の総仕上げ……だろうな……』
と、イズライン殿下が呟いた言葉は、エヴィの耳には届かなかった。
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