初恋の還る路

みん

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後日談

新たな

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❋“置き場”から移動してきた話になります❋















「何故お前が居る……いや、何故かは分かるが…」

「あ、ハルシオンおかえり。」

と、彼はニッコリと微笑んだ。

「「………」」



ここは、ハルシオンとミューが、結婚してから住んでいる王城近くにある邸。その邸のサロンにミューが居ると聞き、王城から帰って来たハルシオンが、そのサロンに向かうとジルベルトが居たのだ。しかも、この数ヶ月と言うもの、このジルベルトは週に3日程来ている。ハルシオンが居る居ないに関わらず。

その理由は至って簡単─勿論、こうなるだろうと言う事は、ハルシオンもミューも想定内の事だった。

何故なら──


「予定よりは少し早いけど、もういつ生まれてもおかしくないんたぞ?ミューに何かあったらと思うと…それに、ハルシオンだって、自分が居ない時に何かあったらって心配だろう?そんな時に私が居れば少しは安心だろう!?」

「…逆に心配になるがな……。」

ハルシオンは、少し呆れ顔で溜息を吐いた。







そう。2人が結婚してから2年後にミューが妊娠。
そして、今は出産予定日間近となっているのだ。

ミューの妊娠が判ると、アシュトレア一族の騒ぎようは凄かった(これもまた、想定内)。
ミューは、少し匂いに敏感になった位で、殆ど悪阻つわりらしい症状は無かったのだが

「妊娠初期は色々と大変なのよ!」

と、ミューの義母であるフェリシア伯爵夫人がミューを迎えにやって来て、そのままアシュトレア邸へと連れて帰ったのだ。勿論、こうなるだろうと想定内だった為、里帰り?の準備を完璧にしていたミューの侍女や使用人達のお陰で、特に問題も無くミューはアシュトレア邸へと向かったのだ。

そして、それから2ヶ月程して、アシュトレア家の面々が渋々と言った感じで、ミューが安定期に入った頃にハルシオンの元へと送り出したのだが─













「ジルお兄様は、心配し過ぎですよ。邸には、常に侍女も居ますし、使用人だって居ますから、何かあっても大丈夫です。」

と、ニッコリ笑顔付きでジルお兄様に言うと

「私の心配は…迷惑か?」

ー「はい」とは言えないよね?言っちゃ駄目だよね?え?言っても良い?ー

とは思うものの、大の大人が捨てられた子犬の様にシュンとしている姿を見ると、いくらコレがジルベルトであろうが、迷惑だ─とは言えない…よね…。

「───迷惑では…ありません。」

そう言うと、ジルお兄様はパアッと明るい笑顔になり

「良かった。」

と微笑んだ。





本当に、つくづく思うけど…“ジルベルト第二騎士団長”との出会いは、本当に最悪だった。仕事上、関わらないようにする事は不可能だったけど、仲良くするつもりなんてなかったのに…

「今では…本当の兄以上のお兄様だよね…。ふふっ。」

「ん?ジルベルトの事か?」

「あー、はい。」

今、私達はの部屋で2人で寛いでいる。

「出会った頃のジルお兄様は、本当に嫌なヤツだったなぁ…と思って。今の姿からは、想像できないけど…。そう思ったら、何だか可笑しくて。」

「確かに、ミューに対しては180度変わったな─と言うか、アシュトレアの、娘や妹と言うモノへの愛着…執着が凄すぎるんだ。これで、が女の子だったら───」

「「………」」

シオンも私も遠い目になる。

きっと、争奪戦になる。

アシュトレア家に気を取られて忘れていたが、王家(シオン)側も、男系だったのだ。しかも、国王両陛下は弟夫婦を殊更可愛がっている。そこで姪が生まれたら──想像するのは簡単な事だった。

「───あー…愛されて生まれて来るって……幸せ…ですね?」

「──だな……。」

ーうん。生まれてから考えようー

















「ほぎゃーほぎゃー」


予定日よりも2日早く、無事に元気な赤ちゃんを出産した。

予定日が近付くにつれ、ジルお兄様が毎日のようにやって来ていたけど、その日はどうしても外せない仕事がある─と言う日に陣痛が始まり、初産にも関わらず、3時間程であっと言う間に生まれて来た。

レイナイト侯爵

「前世の時も、今世でも、お前の母さんもあっと言う間に産んでたから、母さんに似たんだな。」

と、私の出産後、落ち着いた頃にこっそり孫を見に来た時に教えてくれた。















「ミュー、お疲れ様。それと、こんなに可愛い子を生んでくれてありがとう。」

シオンが、ソッと私のオデコにキスを落とす。

「あっと言う間に生まれたから…自分でもビックリだけどね。」

お互い、クスクスと笑い合う。そして─

「さて、どうしたものかなぁ…」

と、今度は2人で苦笑する。

そう。生まれて来た我が子は……

女の子だった。

髪はシオンの様なアッシュグレー。瞳は私と同じ淡いラベンダー色。2人の色を持ち合わせている。

実は、まだ王家にもアシュトレア家にも、無事出産をして女の子が生まれた─と、報告を出していない。いや、ちょっと怖くて出せていないのだ。

「身分的に言えば、国王陛下兄上が“暫くは城で面倒をみる”と言えば、アシュトレア家はそれに従うしかない。」

「で、その後…両陛下が落ち着いたら…私とこの子は、アシュトレア家に…連れて行かれると…。」

ーそれ、1年位は我が邸に帰って来れないパターンでは?ー

「「………」」





結局、執事や侍女長達とも相談したが、良い解決方法?も見付からず…このまま放って置く事もできないので、取り敢えず出産報告の手紙を飛ばした。



















「「「「女の子が生まれたんだな(のね)!」」」」




私が出産した知らせを出した翌日、ジルお兄様とお義母様と…国王両陛下が我が邸へとやって来た。

ー国王両陛下!?何故!?ー

と、ベッドの上で寛いでいた私はギョッとして、シオンに視線を向けると─少しやつれた?シオンが首をフルフルと振っていた。

ーあぁ…全力で止めたけど、止められなかったのかー

「あぁ!ミュー!私達の事は気にするな!今は国王ではなく、ただ単に兄として来ているだけだから。そのままで居てくれ!それで?我が姪っ子は何処に居る?」

と、国王陛下が目を輝かせながら部屋をぐるりと見渡していると、流石はできた我が邸の使用人。隣の部屋で寝ていた我が子を抱いてやって来た。そして、その子を見た4人は

「「「「「可愛い!!!」」」」」

と、更にテンションが上がった。

はい、勿論想定内です。

そこから、やっぱり何処で私と我が子の面倒を見るか─と言う話になった。親であるシオンと私を無視して─。

愛されている…いや、愛され過ぎている。それは、とっても嬉しいし幸せな事だ。でも──

シオンと2人で悟りの境地?を開いていると

「では、最初の半年は両陛下にお願いしますが、それからの半年はアシュトレアで見ますわ。」

と、どうやら予想通りになったようだ─だけど




「……嫌…です。」

「「「「「え?」」」」」

ついつい、私の口から言葉が溢れてしまった。そんな私を、国王両陛下とジルお兄様とお義母様は勿論の事、横に居るシオンも驚いて私を見ている。

「私…この子を生んで幸せなんです。それなのに…この子の父親であり、私の最愛の人と1年も離れて過ごすなんて…嫌です!」

そう言葉にしたのが最後。涙がボロボロと溢れ出した。産後で少し、情緒不安定にでもなっているのだろうか?しかも、国王陛下に対して…不敬な事を言っている自覚もある。あるけど、どうしても、1年も離れるなんて…嫌だった。

「……すみせん…」

ポツリと呟くと、シオンにギュウッと抱き締められた。

「兄上…それに…義母上…我が娘の誕生を喜んでくれるのは感謝するが…ミューの事も我が子の事も、この我が邸で、私達で見ます。良いですね?」

「…あぁ、勿論良いとも!」
「勿論よ!」

と、国王陛下もお義母様も焦ったように返事をした。ジルお兄様に至っては、何故か半泣き状態で私に謝って来たけど。

兎に角、これで、家族3人が離れ離れになる事がなくなって、ホッとした。


「結局のところ、皆、ミューには弱い─と言う事だな。」

と、シオンはコッソリと呟いた。


















それでも、アシュトレア家からは、毎日誰かが我が子を見にやって来たり、お忍びで国王陛下や王妃様がやって来たりと、暫くの間は、我が邸は忙しい日々を送ったのでした。













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