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❋竜王国編❋
17 竜王国へ
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『エヴェリーナ=ハウンゼント、貴女の竜王国学園への留学を認めるものとする。』
「「エヴェリーナ、おめでとう!」」
「フルール、ジョナス様、ありがとう。」
五度目が始まってから3年。
あれから、私は薬学についての勉強を始めた。両親に、将来薬師になりたい。竜王国に留学したい。その為に薬学の家庭教師をつけて欲しいとお願いした。
薬学の先生は直ぐに付けてはくれたけど、留学に関しては渋られた。
それでも、私は薬学を勉強しながら両親の説得を続けた。もう、こっちは必死だった。
ハロルド様との婚約
ハロルド様の裏切り
竜の贄となる最期
この際贅沢な願いはしない。普通に長生きがしたい。そりゃあ……できれば、恋愛して結婚して──最期はベッドの上で死にたい。
竜に食べられる最期じゃなくて…。
「エヴェリーナ様はとても優秀です。私も竜王国で学びましたが、エヴェリーナ様でしたら、竜王国でも十分やっていける程です。いえ、このままトルトニアの学園に入園するのは……勿体無いかと…。」
と、薬学の先生が両親に進言してくれたお陰で、ようやく両親から留学の許可がおり、半年前に竜王国に留学の申請書を送り、与えられた課題を提出。それから1ヶ月後の今日、竜王国から“留学許可証”が届いたのだ。入学3ヶ月前だ。
制服などは、竜王国に行かなければ作れない為、入学の1ヶ月前には来国して欲しい─との事もあり、留学に向けてバタバタと忙しい日々を過ごした。その忙しさは嫌ではなく、とても楽しいものだった。
その忙しさの合間に、フルールともお茶をしたりしてたくさん話をした。フルールやジョナス様はトルトニアの学園に通う為、今世で一緒に学園に通う事はできず、会いたい時に会えないと言う事は寂しいけど、それは仕方無い。それでも、今世でもやっぱりフルールとジョナス様の仲が良いと言う事は、素直に嬉しい事だ。
ー今世では、2人の結婚式に参列する事ができるかな?ー
それが、私の密かな楽しみの一つだ。
******
「リーナ、体には気を付けるように。」
「月に一度は手紙を書いてちょうだいね?」
「長期の休みは帰って来るように。」
「はい。夏休みには帰って来ますね。それじゃあ、お父様、お母様、お兄様、行って来ます。」
竜王国へと出立する為、両親と兄に挨拶をした後、国から手配された馬車に乗り込む。
留学とは、国と国との交流になる為、私用ではない国の行き来には、国が馬車や交通費を賄ってくれるのだ。
「今回、竜王国までの護衛をさせていただきます。オーウェンと言います。宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
ニコリ─と微笑むオーウェンは、今世でも爽やかな騎士様だ。ある意味、よく見知った人が護衛で良かった。オーウェンにとっての私は、初対面の令嬢でしかないけど。
今年、トルトニアから竜王国に留学するのは私だけ。馬車の中には私だけ。私が馬車に乗り込み座席に座って暫くすると、その馬車はゆっくりと動き出した。
窓越しに、両親と兄、見送りに出て来てくれている使用人達に笑顔で手を振る。
「………」
寂しくない─とは言い切れないけど、ワクワクする気持ちの方が勝っている。
ー五度目こそ……自分の力で未来を切り開く!ー
トルトニアの王都にある邸から竜王国へは、のんびりと行っても2日で行ける。トルトニア国内は魔獣などの突発的な出現によるトラブル以外では、比較的平和な国な為、道中も特に問題なく穏やかに過ぎて行った。
「それでは、我々は竜王国へは渡れませんので、ここ迄となりますが、竜王国へと入りましたら、迎えの者が居ますので、こちらの入国許可書をお渡し下さい。」
「分かりました。ここまでありがとうございました。」
「勉学、頑張って下さいね。」
ニコリと笑ったオーウェンは、私に頭を軽く下げた後、もと来た道を戻って行った。
過去、婚約者となったハロルド様とはまだ会ってもいないのに、オーウェンとは繋がりができたとは……縁とは不思議なものだなぁ─と思う。
ハロルド様の誕生会は半年後にある。でも、五度目の今回は、その誕生会に参加する事はないだろう。
「行って来ます」
小さく呟いてから、私は竜王国の検問所へと歩みを進めた。
「ようこそいらっしゃいました。」
「お迎え、ありがとうございます。」
オーウェンの言っていた通り、検問所で、学園から派遣された迎えの人─ニノンさん─が待って居てくれた。どうやら、このまま学園へと向かい、これから私が過ごす事となる学園寮に行くそうだ。学園は王都にあり、馬車で3日掛かるそうだけど、竜王国には移動用の転移魔法陣が要所要所にあり、許可さえあれば使用できるらしく、今回もその転移魔法陣で首都の近く迄移動するとの事だった。因みに、許可無く無断で使用した場合、転移先が不明になるらしい……。
「初めての転移魔法を体験すると、気分が悪くなるかもしれませんから、気分が悪くなった場合は遠慮なく言って下さいね。」
「分かりました。」
では─と、ニノンさんは魔法陣を展開させた。
❋“置き場”に、本編17話迄の他視点のお話を投稿しました。お時間ある時にでも覗いてみていただければ幸いです❋
(,,ᴗ ̫ᴗ,,)ꕤ*.゚
❋エールを頂き、ありがとうございます❋
✧ 。*٩(* ˊᗜˋ)(ˊᗜˋ*)و✧
「「エヴェリーナ、おめでとう!」」
「フルール、ジョナス様、ありがとう。」
五度目が始まってから3年。
あれから、私は薬学についての勉強を始めた。両親に、将来薬師になりたい。竜王国に留学したい。その為に薬学の家庭教師をつけて欲しいとお願いした。
薬学の先生は直ぐに付けてはくれたけど、留学に関しては渋られた。
それでも、私は薬学を勉強しながら両親の説得を続けた。もう、こっちは必死だった。
ハロルド様との婚約
ハロルド様の裏切り
竜の贄となる最期
この際贅沢な願いはしない。普通に長生きがしたい。そりゃあ……できれば、恋愛して結婚して──最期はベッドの上で死にたい。
竜に食べられる最期じゃなくて…。
「エヴェリーナ様はとても優秀です。私も竜王国で学びましたが、エヴェリーナ様でしたら、竜王国でも十分やっていける程です。いえ、このままトルトニアの学園に入園するのは……勿体無いかと…。」
と、薬学の先生が両親に進言してくれたお陰で、ようやく両親から留学の許可がおり、半年前に竜王国に留学の申請書を送り、与えられた課題を提出。それから1ヶ月後の今日、竜王国から“留学許可証”が届いたのだ。入学3ヶ月前だ。
制服などは、竜王国に行かなければ作れない為、入学の1ヶ月前には来国して欲しい─との事もあり、留学に向けてバタバタと忙しい日々を過ごした。その忙しさは嫌ではなく、とても楽しいものだった。
その忙しさの合間に、フルールともお茶をしたりしてたくさん話をした。フルールやジョナス様はトルトニアの学園に通う為、今世で一緒に学園に通う事はできず、会いたい時に会えないと言う事は寂しいけど、それは仕方無い。それでも、今世でもやっぱりフルールとジョナス様の仲が良いと言う事は、素直に嬉しい事だ。
ー今世では、2人の結婚式に参列する事ができるかな?ー
それが、私の密かな楽しみの一つだ。
******
「リーナ、体には気を付けるように。」
「月に一度は手紙を書いてちょうだいね?」
「長期の休みは帰って来るように。」
「はい。夏休みには帰って来ますね。それじゃあ、お父様、お母様、お兄様、行って来ます。」
竜王国へと出立する為、両親と兄に挨拶をした後、国から手配された馬車に乗り込む。
留学とは、国と国との交流になる為、私用ではない国の行き来には、国が馬車や交通費を賄ってくれるのだ。
「今回、竜王国までの護衛をさせていただきます。オーウェンと言います。宜しくお願いします。」
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
ニコリ─と微笑むオーウェンは、今世でも爽やかな騎士様だ。ある意味、よく見知った人が護衛で良かった。オーウェンにとっての私は、初対面の令嬢でしかないけど。
今年、トルトニアから竜王国に留学するのは私だけ。馬車の中には私だけ。私が馬車に乗り込み座席に座って暫くすると、その馬車はゆっくりと動き出した。
窓越しに、両親と兄、見送りに出て来てくれている使用人達に笑顔で手を振る。
「………」
寂しくない─とは言い切れないけど、ワクワクする気持ちの方が勝っている。
ー五度目こそ……自分の力で未来を切り開く!ー
トルトニアの王都にある邸から竜王国へは、のんびりと行っても2日で行ける。トルトニア国内は魔獣などの突発的な出現によるトラブル以外では、比較的平和な国な為、道中も特に問題なく穏やかに過ぎて行った。
「それでは、我々は竜王国へは渡れませんので、ここ迄となりますが、竜王国へと入りましたら、迎えの者が居ますので、こちらの入国許可書をお渡し下さい。」
「分かりました。ここまでありがとうございました。」
「勉学、頑張って下さいね。」
ニコリと笑ったオーウェンは、私に頭を軽く下げた後、もと来た道を戻って行った。
過去、婚約者となったハロルド様とはまだ会ってもいないのに、オーウェンとは繋がりができたとは……縁とは不思議なものだなぁ─と思う。
ハロルド様の誕生会は半年後にある。でも、五度目の今回は、その誕生会に参加する事はないだろう。
「行って来ます」
小さく呟いてから、私は竜王国の検問所へと歩みを進めた。
「ようこそいらっしゃいました。」
「お迎え、ありがとうございます。」
オーウェンの言っていた通り、検問所で、学園から派遣された迎えの人─ニノンさん─が待って居てくれた。どうやら、このまま学園へと向かい、これから私が過ごす事となる学園寮に行くそうだ。学園は王都にあり、馬車で3日掛かるそうだけど、竜王国には移動用の転移魔法陣が要所要所にあり、許可さえあれば使用できるらしく、今回もその転移魔法陣で首都の近く迄移動するとの事だった。因みに、許可無く無断で使用した場合、転移先が不明になるらしい……。
「初めての転移魔法を体験すると、気分が悪くなるかもしれませんから、気分が悪くなった場合は遠慮なく言って下さいね。」
「分かりました。」
では─と、ニノンさんは魔法陣を展開させた。
❋“置き場”に、本編17話迄の他視点のお話を投稿しました。お時間ある時にでも覗いてみていただければ幸いです❋
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