贄の令嬢はループする

みん

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❋新しい未来へ❋

64 トルトニア王太子

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「私、エヴェリーナ=ハウンゼントと申します。あの……助けていただき、ありがとうございます。あの…どうして王太子殿下がここに?」

イロハ達と別れてからも、数名の護衛が密かに付いている事も、このホテルのティールームに何人かの護衛が居たのも知っていたけど、まさか、トルトニアの王太子が居るとは思わなかった。人生五度目にして初めて会った。

「あのア─愚弟とトワイアル王女の話を聞き、私が愚弟を見張ろうと……竜王陛下に願い出たところ、見張りと共にこれから起こる事をしっかり見ておくように─とお許しをいただいたので、今日、他の竜人達と一緒に行動していました。まさか………愚弟が、あそこまで…気持ち悪いとは………キッチリ浄化しましたけど、他に気持ち悪い所はありませんか?何なら全身に浄化魔法を掛けた方が──」
「だっ…大丈夫です!王太子殿下のお陰で、スッキリしましたから。」

確かに気持ち悪かったけど、実の弟に容赦が全く無い。王太子殿下の中では、ハロルド様はもう“弟”ではないのかもしれない。


「王太子殿下、お久し振りです」
「ん?あぁ、お前は……オーウェンか?」
「はい。憶えていただいて嬉しいです」
「憶えているとも。オーウェンの腕前はトルトニアの騎士の中では1番だったからな。お前が竜騎士でなかったら、俺の右腕にしたかったところだったしな」
「トルトニアの王太子殿下にそう言っていただけて、光栄な限りです。ありがとうございます」

オーウェンは数年、トルトニアの騎士団に居て、その腕を買われてハロルド様の護衛をしていた。その時、何度か王太子殿下と手合わせをした事があるそうだ。

「王太子殿下、エヴェリーナ様、は終わりましたから、このまま王城へ戻りましょう。おそらく、もそれ程時間も経たないうちに終わるかと思います」

「分かりました」
「分かった」

オーウェンさんの言葉に、王太子殿下と私は素直に返事をして、王城へ戻る事にした。







「エヴェリーナ様、王太子殿下、お疲れ様でした」

王城で私達を出迎えてくれたのは、ニノンさんだった。そのまま2人とも応接室へと通された。

「あー…ニノンさんの顔を見たらホッとしました」
「ふふっ。そう思っていただけると嬉しいです」

ニノンさんとは、竜王国に来てからずっと一緒に居るからか、ニノンさんの顔を見ると変な緊張もなくなり、ホッとする。“お姉様”の様な存在だろうか?過去、お姫様抱っこもされた、頼りがいのある逞しいお姉様だ。見た目若いけど、それなりの年齢なんだと思う─けど、私から年齢を訊く事は……これからもないだろう。

「改めて…ハウンゼント嬢、この度は、本当に愚弟が申し訳ありませんでした」

一息ついたところで、目の前に座っている王太子殿下に深く頭を下げられた。

「いや、あの、王太子殿下、顔を上げて下さい。謝罪は先程されましたし、受け入れましたから。それに、気持ちわ─じゃなくて、悪いのはハロルド様ですから」
「ありがとうございます」


“メレディス=トルトニア”

現国王に次ぐ武人であり、早い段階で立太子もしている。確か…ハロルド様より5つ程年上だった筈。過去四度の人生では会った事はなく、まだハロルド様と私の仲が良かった頃には、兄弟仲は良いと聞いた事があった。「将来、国王となった兄上を支えたい」と言い、勉学に励んでいたハロルド様。どこでどう路を踏み外してしまったのか──結局のところ、そこにはいつもジュリエンヌ様が居る。全てジュリエンヌ様が悪いとは言わない。そのジュリエンヌ様を無条件で信じたハロルド様も悪いのだけと……ジュリエンヌ様には、他にも何かあるのかもしれない。

「あれ?あの…王太子殿下は、私がか…ご存知なんですか?」

黒龍の正体を知っているのは、トルトニアとトワイアルの国王両陛下だけで、わたしに関してはトルトニアの国王両陛下だけではなかっただろうか?

「それなら、私も今回初めて知らされたんです。愚弟の事もありますし、トワイアル側が……色々とあるかもしれないと言う事もあって、私が補佐する可能性もあるから─と言う事で、まだ王太子の身分ではありますが、特別教えていただいたんです」

なるほど。確かに、この王太子になら言っても問題はないだろう。フィルも、トルトニアの国王両陛下と王太子の事は信頼しているんだろう。そして、トワイアルは──

「そうなんですね。あの…できれば敬語はやめてもらえませんか?」
「いや…ハウンゼント嬢は竜王陛下の番で──」
「番だとしても、今はまだ公にはされてませんし、私が、王太子殿下から敬語を使われると緊張し過ぎてしまうんです……」

番になったからと言って、私がハウンゼント侯爵の令嬢である事に変わりはない。性格だって変わってない。そんな私が王太子殿下から敬語を使われたり頭を下げられたり…心臓がいくつあっても足りなくなってしまう。

「分かっ……た。ただ…竜王陛下が居る時は無理だから、その時だけは許してもらいたい」
「はい。それは勿論です」

ふふっ─と笑えば、王太子殿下は肩を竦めながら笑った。









❋エールを頂き、ありがとうございます❋
₍₍ ٩( *ˊᗜˋ*)و ⁾⁾


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