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一度目の召喚

第一王女アリシア

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彼を見た瞬間

が欲しい」

と思った。

彼の名前は─ルーファス=シーヴァー

シーヴァー伯爵家の嫡子だった。
王女であるアリシアわたしの結婚相手は、侯爵以上とされている。せめて、伯爵でも上流であれば可能だったかもしれないが、彼は、中流の伯爵でしかなかったから結婚は無理だろう。

それでも、彼が欲しいと思った。
優しく微笑むあの瞳を、私だけのモノにしたいと思った。

そして、運命だったのか、彼は私の専属近衛騎士になった。ひょっとしたら、ルーも私の事を想い、近衛騎士になったのかもしれないわね?
結婚できなくとも、私と一緒に居られる為に。






それなのに、邪魔をする者が現れた。

聖女エメラルドと、魔導士ウィステリア。

エメラルドは私と同じ聖女だから、ルーとの接点が多かった。召喚されて間もないうちから、エメラルドのルーを見る目は恋するだった。

ただ、エメラルドを見るルーのは、他の者達を見ると同じだった。

誰にでも優しい目
誰にでも優しい声

ーそれらを、独り占めするにはどうすれば良い?ー

「あぁ、そうか。エメラルドを使良いのね。」

エメラルドは、よく言えば素直。悪く言えば従順のだ。とても……扱い易い子だった。








魔導士─その名の通り、魔法を扱うに長けたものであり、実は、騎士よりも色んな意味で長けている者が殆どだ。そのせいか、騎士と魔導士の仲はあまり良くはない。それは、騎士が魔導士に嫉妬しているから─だろうけど。

そんな魔導士になったのは、召喚されてやって来た


─ウィステリア─


聖女のエメラルドは、誰もが目を惹く美少女だけど、ウィステリアは大して可愛くもない女の子だった。その上魔導士とくれば───必然的に騎士達からの妬みの対象となっていた。ただ、魔導士達からは、可愛がられているようだった。
大して可愛くもないのに、自我もハッキリしていて性格も可愛らしくなかった。この世界では、まともな結婚はできないだろう。




「王女殿下とエメラルド様には、騎士が交代で護衛に当たります。」

浄化の旅に出る前から言われていたけど、それは建前で、基本はルーが付くのだと思っていたし、実際、旅が始まってからの暫くの間はルーが付いていた。

その間に、ルーとエメラルドの仲を取り持つ。




しかし、気が付けばルー以外の騎士が付く事が増え……ルーが魔導士達と一緒に居る事が増えていった。
そして、いつもルーの居る所に2人の女の子が居る事に気が付いた。
1人は魔導士団長の娘でもあるエラ=アーデンライト。もう1人は─ウィステリアだった。

あんな……魔導士になるような女の子にも、ルーは優しくしている。ルーは、本当に優しい。

そうして、ふと気付く。

ルーが………ウィステリアあの子を目で追っている事を─

ルーは誰にでも優しいけど、誰も事はない。追われて事はあっても、事も、誰かを追う事も…なかったのに。




『私も、“リア”と呼んでも良い?』


『それじゃあ、せめて、私の事を“シーヴァー”ではなく“ルーファス”と呼んでくれないか?私だけ…家名呼びでは…少し寂しいから。』


ルーの希う声を初めて聞いた。ルーの後ろに居るから、どんな顔をしているかは分からない。分からないが、その甘い声は……私ではなく、ウィステリアに掛けられたものだった。


ー赦さない。ルーは、私のモノなのにー



「まぁ、ったら、我儘を言っては駄目よ?」

「王女殿下!」

私の事は“王女殿下”と呼ぶルー。

「ルー、ウィステリア様も困っているようだから、無理を言っては駄目よ?」

ー名前呼びなんて、私が許さないー

私の目に映るのは、いつもの優しい顔のルー。そのルーにお願いして、エメラルドのエスコートをお願いした。


2人が去った後、私がルーの代わりに謝罪する。他にも迷惑を掛けていないかと訊くと『いつも優しくしてくれます』と言う。

「そうね…ルーは…優しいものね。」

と言うと、ウィステリアは顔を硬くした。

ー馬鹿な子。身の程知らずな子だー


それ以降も、私は何かにつけて、ルーにエメラルドの相手をさせて、魔導士達の所には行かせないようにした。
時折、メイナード=フォーガンが私に呆れたような視線を向けて来たが、悉く無視をした。
メイナードは、兄─アレサンドルの側近の1人だ。その兄の側近の彼が、何故兄の元を離れてこの旅に同行しているのか…正直分からない。ただ、あの兄のする事だ。必ず何かしらの意図がある筈。
だから、この旅の間に私がウィステリアに手を出す事は絶対にしない。この旅の間は、だけ。

「せいぜい、今のうちに……夢でもみておけば良いわ」
「シア、何か言った?」

首を傾げて私の目をジッと見ているエメラルド。

「いえ、何も言ってないわ。さ、エメは早くルーとお茶でもしてきなさい」

「わ…分かった。行って来るね!」

そう言えば、素直に喜びルーと2人で岩場に腰を掛けお茶をするエメラルド。

「本当に……従順過ぎて笑えるわね。」

全ては、私とルーの為だ。

ルーは、私のモノだから────



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