裏切られた聖女は、捨てられた悪役令嬢を拾いました。それが、何か?

みん

文字の大きさ
57 / 58

57 ケジメ?

しおりを挟む
ルドヴィクさんとリンが婚約してから2年後の雲一つない晴れた日、それはそれは盛大な結婚式が執り行われた。国中がお祝いをし、国中がお祭り騒ぎとなった。
勿論、その晴れた青空にはオールデン神の祝福である7色のオーロラが輝いていた。


「チカさんとはできる限りギリギリまで一緒に居たいんです!」

と言って、リンは結婚式の3日前までアルスティアの私の家で過ごしていた。本当は、結婚式はもう少し先の予定だったのだけど……リンの妊娠が判明し、予定より早く式を挙げる事になったのだ。イシュメルさんと私と、ルドヴィクさんの側近の数名しか知らせてはいなかったけど、実は、その数ヶ月前には2人は既に書類上では婚姻状態にはなっていた。だから、妊娠したと分かった時もあまり驚きはなかった。
ルドヴィクさんのリンに対する溺愛ぶりが、王城内でも有名だったと言う事もある。

ルドヴィクさんのプライベートルームは勿論の事、執務室にもリンの肖像画が飾られている。
リンが登城した日は必ずお茶をする(自分の膝上にリンを乗せて)。
リンが登城する日の護衛は、ブラントさんかネッドさんになる。
リンが身に着けるアクセサリーは銀色か紫色のみ。
少しでもリンの顔色がいつもと違って見えると、お姫様抱っこで移動。

などなど…………



「ルドヴィクの遅すぎる春満開お花畑状態と言う感じだな」

と、ブラントさんが笑っていた。ルドヴィクさんには今迄、浮いた話どころか好きになった女性の話を一切耳にした事がなかったそうだ。

「何て初々しい…誰かさんとは大違いですね?」
「それでも、俺の側に居てくれるチカには感謝しているし、これからはチカだけしか要らない」
「ゔ─────」

チクリと口撃しても、サラッと爆弾を投下するブラントさんは相変わらず健在だ。そんなやり取りを繰り返していると、2人で居る事が当たり前になって、居心地が良い存在になっていた。
お互いの色のアクセサリーを身に着ける事にも抵抗が無くなり、リンの妊娠が判明したのと同じぐらいの時に、私はブラントさんとの婚約を受入れた。




それからのブラントさんは甘くなり、リンがルドヴィクさんと結婚してからは更に甘くなった。

リンが居なくなって、私が1人(+妖精3人)になると、毎日届けられる花が無くなった代わりに、夜勤の日以外はこの家にやって来るようになった。特に何をする訳でもなく、時間が合えば一緒に夕食を食べて、寝る前に話をして別々の部屋で寝る。朝起きると、もう既に居ない時もある。
正直、遊び慣れているから、かも?と構えていたりもしていた自分が恥ずかしい限りだ。

「と言うか、私って色気が無いのかな?」

もともと育って来た環境のせいか、私は痩せ型で胸もかわいらしいサイズ。顔に至っては平々凡々。乙女要素もほぼ無し。
以前突撃して来た…エグ何とかさんは胸が大きい美人で、私とは正反対の容姿だった。

「私のどこが良いんだろう?良いところ無くない?」
「浅葱色の瞳が綺麗で、小ぶりな鼻が可愛い。普段凛としているのに、顔を赤らめて焦ったり変な声を出したりするのも可愛いな。何も着飾らないチカだから好きになった」
「ブラントさん!?」
「ん?まだ続けようか?」
「結構です!!」

そう叫びながら私の手でブラントさんの口を押さえようと手を伸ばせば、その手を掴まれて手の平にキスをされた。

「ふぎゃっ!?」
「───ぷっ…………相変わらず色んな変な声が出るな………くくっ………」
「誰のせいだと!!??」

相変わらず変な声しか出ない私を、嬉しそうな顔をして見つめるブラントさん。そんなやり取りが当たり前になっている。

「お疲れ様です。えっと…ご飯は食べました?」

普段なら、掴んでいる私の手を離して返事をするだろうに、その手をグイッと引かれてバランスを崩してブラントさんの胸に飛び込んでしまい、そのままブラントさんに抱きしめられた。驚いてその腕の中からブラントさんを見上げる。

「何もしないのは、色々とケジメをつけているだけで、本当は…理性を保つだけで大変なんだ……と言ったらどうする?」
「え………………」
「だから、チカと同じ部屋で寝ないんだ。だから、チカも、俺に対して隙を見せないで欲しい」
「な………」

ボフッと言う音が聞こえそうな程一気に顔が熱くなり、恥ずかしくて視線を逸らそうとする前に、顔を両手で挟み込まれた。
視線がぶつかって、そこには葵色の綺麗な瞳がある。

「本当は、ずっとこうしたいと思っていた」

と言って、ブラントさんの顔が近付いて来て─

私もそっと目を閉じた。







「“ケジメ”って…何?教えてもらえますか!?」
「すまない………止まらなかった………」


軽いキスで終わると思っていた。
それが、啄むようなキスが繰り返され、少し苦しくなって口を開けてしまったが最後──
酸欠状態になるまで追い立てられた。

ー勿論、キスだけですけどね!!ー

「必死になってるチカが可愛過ぎて……」
「ゔっ………」

私にもかつては婚約者が居たのだから、初めてではない。でも……酸欠になるようなキスなんて知らない。何も考えられなくなるようなキスなんて知らない。

「チカ、本当にすまない。でも……キスだけは…許して?」

そう言うと、今度は軽く触れるだけのキスをした。



しおりを挟む
感想 53

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜

嘉神かろ
恋愛
 魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。  妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。  これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。

そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげますよ。私は疲れたので、やめさせてもらいます。

木山楽斗
恋愛
聖女であるシャルリナ・ラーファンは、その激務に嫌気が差していた。 朝早く起きて、日中必死に働いして、夜遅くに眠る。そんな大変な生活に、彼女は耐えられくなっていたのだ。 そんな彼女の元に、フェルムーナ・エルキアードという令嬢が訪ねて来た。彼女は、聖女になりたくて仕方ないらしい。 「そんなに聖女になりたいなら、譲ってあげると言っているんです」 「なっ……正気ですか?」 「正気ですよ」 最初は懐疑的だったフェルムーナを何とか説得して、シャルリナは無事に聖女をやめることができた。 こうして、自由の身になったシャルリナは、穏やかな生活を謳歌するのだった。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※下記の関連作品を読むと、より楽しめると思います。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...