【R18】新米女王と性奴隷騎士〜お見合いしたら相手が女王志望でした。頑張って夫婦になります〜

dpen

文字の大きさ
12 / 22

#アイリーンの恋

しおりを挟む


 見合いに教えてもないのに母が乱入して来たことは驚いたが、「この人ならやりかねない」という諦めもあった。アイリーンが良い思いをしないように、ぶち壊すことにストーカーじみた執念を持っている人なのだ。勲章の授与式のときも教えてないのにやってきて、猫なで声で「体の弱いあなたが式典の途中で倒れたらどうするの。辞退しなさい」と強要され、国王陛下からの授与は叶わなかった。

(私は一生、この人に人生をぶち壊され続ける……)

 気分が悪くなって、アイリーンは逃げ出した。この人の前で魔力暴走を起こしても、また「仮病」と言われるだけだ。具合が悪い時は誰にも見つからない場所に行って、一人で耐えるのが染み付いていた。

(あの人達から逃げるには、もう死ぬしかないのかな……)

 卒業後、どこかで働いたとしても彼女は「セラフィータ家の娘が労働なんてみっともない!」と職場に嫌がらせを続けるだろう。居づらくなって辞めたら勝ち誇って彼女は「ほら、あなたに労働なんてやっぱり無理なのよ」と蔑むに違いない。
 そうやって、壊されていくだけの人生になんの意味があるんだろう。頑張っても報われないなら、もう楽になりたい。

「アイリーン!」

 一人で苦しみに耐えていたら、お見合い相手がわざわざ探しに来てくれた。迷惑をかけてしまって申し訳なくて、最初から渡すつもりで準備していたお金を差し出すと拒絶された。自分にはお金を払うしか能がないのに、相手はお金に頼らなくてもきちんと人間関係を築ける立派な人なんだ――。そう思ったらますます自分がふがいなくて、みっともなく思えた。

 なのに「君さえよければお見合いを進めないか」と言われて、アイリーンは混乱した。カリオンはきちんとした家の人で、騎士団で立派に働いていて、出世頭で騎士団の重鎮にも目をかけられている。どうして自分なんかにそんなことを言うのかわからなかった。
 子供が産めない欠陥品なのは伝えてもらったはずなのに、うまく伝達されていなかったんだろうか――。

「釣書を見ただけでも、どんなに努力家で優秀な人かわかるよ。あの母親や、もっとひどい兄に長年痛めつけられながら勉強するのは、どんなに大変で難しかったか。一人で戦って、必死に自立しようとしてる、立派な女性だ」

 誰かにそんな風に言われたのは生まれて初めてだった。涙がこぼれて、本当に自分が嫌になる。泣きたくないのに、勝手に出てくるのだ。普通の反応ひとつ出来ない自分がアイリーンは本当に嫌だった。
 優しくされるほどアイリーンには、この人から離れることしか浮かばなかった。
 カリオンの落ち着いた優しい空気が、自分を弱くするように思えた。泣くばかりのアイリーンにきっと彼もうんざりするだろう。

 でもウソをついたり傷つけたくなかった。そんな風に男性に対して思ったのは初めてだった。

 大学で付き合おうと言ってくる男性がアイリーンは嫌いだった。賭けの対象にされたこともあるし、「からかっただけなのに調子に乗るなよ、ブス」と暴言を吐かれたこともある。
 好意を持たれたら誠意を持って接するべき――親しくもない上級生に説教されたことあるが、好意を持ってほしいと望んだわけでも頼んだわけでもない相手に、どうしてこっちが誠意を尽くさなければならないのか、意味がわからなかった。
 長年、実の兄に性的虐待をされてきたから男性が嫌いだし怖い――。そう答えるのが誠意? でもアイリーンはそれを誰にも言いたくなかった。勝手に好意を持って近寄ってくるだけの相手に、なんでそんなことを言わなければならないのか。

 でもカリオンには迷惑をかけてしまったし、あなたが悪いんじゃなくアイリーン自身の問題だと理解してほしかったから店の名刺を渡した。
 SMバーだと知ったら来ないか、「とんでもない女だった」と噂を広められるかもしれない。教授に密告されて退学になるかも――不安は尽きなかったが、自分で選んだことだしと言い聞かせた。
 断るためだったのに、本当の自分を知ってほしかったみたいだと気づいた時が一番ショックで恥ずかしかった。お店はずっと、誰にも教えないアイリーンだけの秘密の居場所だったのに。

「俺にしておきなよ、女王様」

 甘く笑ってささやかれて、背筋がゾクゾクした。カリオンはアイリーンの趣味を嘲ったり侮蔑したりしなかった。それどころか理解を示して、君がしたいなら協力する、奴隷になってあげるとまで言ってくれた。
 こんなに美味しい話があるわけない。きっと甘いことを言うのは今だけで、結婚したら兄みたいになる――そう思うのに周りに背中を押されて、「暴力を振るわれたら仲人が助けてくれる」というオプションに惹かれてしまった。

 カリオンの声が、アイリーンに無理に触れようとしない手が、柔らかで優しい雰囲気が好きだった。
 きっと他の誰と結婚しても、ふとした瞬間にカリオンと結婚していたらどうだったろうと考えてしまう。そう思ったら奇跡のような申し出を逃がしたくなくて、カリオンの手を取っていた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中

桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。 やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。 「助けなんていらないわよ?」 は? しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。 「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。 彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...