【R18】新米女王と性奴隷騎士〜お見合いしたら相手が女王志望でした。頑張って夫婦になります〜

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#アイリーンのお留守番

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 引っ越しの翌日、朝早くからカリオンは遠征へ行った。

「行ってきます。ごはんだけはちゃんと食べてね。戸締まりに気をつけて。何かあったら連絡して。即レスは出来ないと思うけど、時間が出来たときに返信するから」

「うん……」

 寝ぼけ眼で寝間着のアイリーンは頷いた。新居の環境があまりによくて、ぐっすり眠れすぎた。全然頭が働かない。

「大丈夫? まだ数日、大学あるんでしょ? 二度寝しても起きれる?」

「大丈夫。今期の単位は取り終わってるから、最悪行かなくても……」

 言ってるそばからあくびがもれた。単位は取り終わっていて、長期休みが近い気の緩みだろうか。眠気に歯止めをかけるものがない。
 それでも自分のミスを思い出してアイリーンはカリオンを見上げた。

「大学のこと、言ってなくてごめんなさい。せっかく乗り物を契約してくれたのに……」

「それはいいよ。どのみち、俺がいない間の足が必要だろう? せっかく休みに入るのに、一人にしてごめんね。帰ったらどこかに遊びに行こう」

 そうして彼は笑って、大きな鞄を持って出かけていった。後ろ姿を見送ると、ずきんと胸が痛んだ。彼は騎士だ。任務で大きな怪我をして、元気に帰って来れないこともあるかもしれない。こうしたやり取りが最後になるかもしれないのだ。
 急いでサンダルをつっかけて、アイリーンは道に飛び出した。

「カリオン! 気を付けて帰ってきてね!」

 彼は振り返り、満面の笑顔で手を振った。

「行ってくるよ、奥さん!」

 心臓がきゅうっとするのはどうしてだろう。
 カリオンを見えなくなるまで見送って家に戻ると、あんなに素敵に見えた新居はガランとして、なんだか暗く見えた。
 心細さをごまかすように、急いで自室に戻ってベッドに飛び込んだ。目をつぶって(私は強い女王様だから大丈夫)と言い聞かせる。辛い時はずっとそうやって乗り越えてきた。
 でも今は知ってしまった。
 奴隷になってくれる人がいないと、女王様ではいられない。カリオンがいなければアイリーンは何の価値もないのだ。





 目を覚ますと昼前で、頭痛と吐き気がひどかった。精神不調からくる魔力暴走だとすぐにわかった。

(薬飲まなきゃ……)

 しんどい体に鞭打って、階下へ降りる。携帯通信端末《ルーンリンク》にカリオンからメッセージが来ていて、置き配で荷物が届くから開封してほしいと書かれていた。
 宅配ボックスに届いていた箱を開封すると、レトルトのおかゆとおかず類だった。

『君のごはん。温めたり、お湯を入れればいいだけだから、外に出たくないときは食べて。お湯の沸かし方はわかる?』

 魔導ポットで沸かせばいいのは知ってる。だがこの家には魔導ポットがなかった。

(コンロ……コンロはバイト先で使ってるのを見たからわかる。でも調理器具がないわ)

 アイリーンもカリオンも寮暮らしだったので、鍋もヤカンもなかった。魔導ポットを買いに行かないとお湯は沸かせない。

『マグカップに水を入れて、魔導窯で2分温めて』

 アイリーンが困るのを見越していたように、メッセージは続いていた。
 魔導窯はキッチンの一角に作られた耐火レンガの石窯だ。火の魔石で温める仕様になっており、つまみをひねれば簡単に加熱できる。
 言われたとおりに2分加熱すると、本当にお湯ができてアイリーンは感動した。

(寒かったからうれしい……)

 お湯をすすって一息ついてから気づいた。お湯でおかゆを作って薬を飲まないといけないんだった。

(一人暮らしって、大変……)

 おかゆを食べて薬を飲むと、少し気分はマシになった。カリオンにお礼のメッセージを送って、アイリーンは午後の予定を決めた。

(大学に行こう)

 単位は取り終わっているが、休みの間も研究室は開いている。『勉学はいつでも開かれている』というのが教授の口癖だ。することがないなら勉強しに行こう。大学なら図書館もあるし、無限に時間を潰せる。
 顔を洗って軽くお化粧し、研究用携帯端末アークスとノートを鞄に入れると、アイリーンは玄関を出た。

 携帯通信端末《ルーンリンク》から卵型自動走行車《スフィアライド》を起動すると、鍵付きのガレージが開いて一人乗りの車両が出てきた。
 免許のないアイリーンのために、カリオンが契約してくれたものだった。白い卵型の球体に乗り込むと、自動で目的地まで運んでくれる。
 駐屯特別保全区は出入りが厳重な一方で、交通が不便だった。最寄りの公共交通はバス停まで歩いて25分、駅までバスで5分。駅から大学までは魔導列車で30分。

 卵型自動走行車《スフィアライド》なら乗り込めば30分で行ける。高性能な分、リース料も高額なのに手配してくれたカリオンには感謝しかない。しかも彼は恩着せがましくすることもなかった。
 中に乗り込むと、柔らかな座席シートが優しく体を包んでくれた。シートベルトをすると滑るように車両は走り出し、音もほとんどしない。

(すごい。快適……)

 これなら新学期に本格的に講義が始まっても、ストレスなく通えそうだ。
 アイリーンは鞄から鍵付きのノートを取り出した。
 1ページ目を見返して、「ふふっ」と笑う。書かれているのはカリオンの調教記録だ。

(可愛かったな……)

 アイリーンに縛られていいようにイかせられて、「二度とやらない」と怒るかと怖かったが、翌朝もカリオンは一人になるアイリーンを心配してくれた。びっくりするくらい優しくて困惑する。自分にあんなに優しくしてくれる人がいるなんて信じられなくて、本当は暴力的な本性を隠しているんじゃないかと不安になることもある。
 でも少しずつ、疑うのはカリオンに失礼だとも思い始めていた。彼が本当に良い人であることを、期待し始めてしまっている自分がいる。
 不安を振り払うように、ぎゅっとアイリーンはノートを抱きしめた。

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