脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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遺跡に突入

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リディアは薄暗い遺跡の中、慎重に歩を進めていた。あちこちに設置された罠の痕跡を見つけるたび、ふっと微笑む。
灰色の神殿での生活は、決して快適なものではなかったが、そこで学んだことが今こうして役に立っているのだと思うと、少しだけ誇らしい気持ちになった。

「こんな罠、神殿の嫌がらせに比べたら簡単簡単!」
独り言を言いながら、リディアは床の微かな不自然な継ぎ目を確認し、しゃがみ込んで罠を解除する。
目を輝かせながら鼻歌を歌い、ふと森で摘んできた小さな花束を取り出して軽く振る。「トラップ解除のお祝いに!」と言って、無造作に床の隅に花を置く。

遺跡の空気は湿っていてひんやりしていたが、リディアの軽やかな足取りと楽しげな態度は、そんな薄暗い空間をほんの少しだけ明るくしているようだった。

時折立ち止まり、壁や天井の模様に見入る。古い魔法の気配がする不思議な装飾や、ところどころに刻まれた謎の文字。

「これ、解読できたらもっと楽しいだろうなあ」
指先で古びた石壁をなぞりながら、目を輝かせる。その瞬間、天井の石が小さくカタカタと音を立てた。

「おっと、これも罠ね」
慌てる様子もなく、リディアは軽やかに後ずさりしながら床の罠の起動部分を探す。

視線を落とすと、床の一部がほんの僅かに沈んでいるのを見つけた。「はいはい、こういう仕組みね」と手際よく細い棒を取り出し、巧みにその罠を解除する。

罠の音が消えると、彼女は再び鼻歌を歌いながら歩き出した。
遺跡の奥から微かに漂う甘い香りが、リディアをさらに引き寄せる。「きっとこの先に何かあるに違いない!」と、心の中で確信を抱いた。

そんな調子で鼻歌を奏でながら、リディアはお花を振り、楽しそうに罠を解除しながら遺跡の奥へ奥へと進んでいくのだった。


遺跡の奥に進むリディアは、角を曲がった瞬間、立ち止まった。

そこには大きな魔物が、まるで門番のように道を塞いでいた。筋骨隆々の体に鋭い牙、肌は鱗のように硬そうだ。その鋭い目が周囲を警戒するように光り、リディアの心臓は一瞬で跳ね上がる。

「えっ、何あれ…ちょっと強そうすぎない?」
小さく呟きながら、リディアは慌てて近くの壁の陰に身を隠した。息を潜め、そっと魔物の様子を伺う。
見つかればひとたまりもないと感じたが、ここで立ち止まっているわけにもいかない。

リディアはポーチを開き、静かに指先でポーションを探る。手に触れた瓶を引き抜いて見ると、それは「透明ポーション」だった。

「これしかないか…うまくいくといいけど!」
リディアは小声で自分を鼓舞すると、瓶のコルクを静かに外し、中身を一気に飲み干した。ポーションが喉を通り、ひんやりとした感覚が体中に広がる。
瞬く間に、自分の手や足が透き通っていくのがわかる。

「これで、見つからないはず…」
透明になった体を確認しながら、リディアはそっと壁の陰から一歩踏み出した。音を立てないように細心の注意を払いながら、魔物の目をかいくぐって進む。
透明ポーションのおかげで魔物の視線は彼女を捉えられないが、その鋭い嗅覚や聴覚が油断できない。

途中、小さな瓦礫に足をぶつけてしまい、カランと音が遺跡の中に響いた。
魔物がギロリと顔を向け、リディアの心臓が凍るようだった。

「やばいやばい!」
息を止め、身を小さくして隠れるリディア。魔物は音のした方をしばらく警戒していたが、何も見つけられないと悟ったのか、再び元の位置に戻った。

透明ポーションの効果が持続している間にと、リディアは慎重に足を進める。
そして、ついに魔物のすぐ横を抜け、さらに遺跡の奥へと進むことができた。

「ふぅ…危なかった…」
遠ざかる魔物の気配を背後に感じながら、リディアは透明な体のまま一息つく。
ポーチを叩いて「やっぱりポーションって最高!」と微笑みつつ、さらに気を引き締めて奥へ進むのだった。
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