20 / 209
遺跡に突入
しおりを挟む
リディアは薄暗い遺跡の中、慎重に歩を進めていた。あちこちに設置された罠の痕跡を見つけるたび、ふっと微笑む。
灰色の神殿での生活は、決して快適なものではなかったが、そこで学んだことが今こうして役に立っているのだと思うと、少しだけ誇らしい気持ちになった。
「こんな罠、神殿の嫌がらせに比べたら簡単簡単!」
独り言を言いながら、リディアは床の微かな不自然な継ぎ目を確認し、しゃがみ込んで罠を解除する。
目を輝かせながら鼻歌を歌い、ふと森で摘んできた小さな花束を取り出して軽く振る。「トラップ解除のお祝いに!」と言って、無造作に床の隅に花を置く。
遺跡の空気は湿っていてひんやりしていたが、リディアの軽やかな足取りと楽しげな態度は、そんな薄暗い空間をほんの少しだけ明るくしているようだった。
時折立ち止まり、壁や天井の模様に見入る。古い魔法の気配がする不思議な装飾や、ところどころに刻まれた謎の文字。
「これ、解読できたらもっと楽しいだろうなあ」
指先で古びた石壁をなぞりながら、目を輝かせる。その瞬間、天井の石が小さくカタカタと音を立てた。
「おっと、これも罠ね」
慌てる様子もなく、リディアは軽やかに後ずさりしながら床の罠の起動部分を探す。
視線を落とすと、床の一部がほんの僅かに沈んでいるのを見つけた。「はいはい、こういう仕組みね」と手際よく細い棒を取り出し、巧みにその罠を解除する。
罠の音が消えると、彼女は再び鼻歌を歌いながら歩き出した。
遺跡の奥から微かに漂う甘い香りが、リディアをさらに引き寄せる。「きっとこの先に何かあるに違いない!」と、心の中で確信を抱いた。
そんな調子で鼻歌を奏でながら、リディアはお花を振り、楽しそうに罠を解除しながら遺跡の奥へ奥へと進んでいくのだった。
遺跡の奥に進むリディアは、角を曲がった瞬間、立ち止まった。
そこには大きな魔物が、まるで門番のように道を塞いでいた。筋骨隆々の体に鋭い牙、肌は鱗のように硬そうだ。その鋭い目が周囲を警戒するように光り、リディアの心臓は一瞬で跳ね上がる。
「えっ、何あれ…ちょっと強そうすぎない?」
小さく呟きながら、リディアは慌てて近くの壁の陰に身を隠した。息を潜め、そっと魔物の様子を伺う。
見つかればひとたまりもないと感じたが、ここで立ち止まっているわけにもいかない。
リディアはポーチを開き、静かに指先でポーションを探る。手に触れた瓶を引き抜いて見ると、それは「透明ポーション」だった。
「これしかないか…うまくいくといいけど!」
リディアは小声で自分を鼓舞すると、瓶のコルクを静かに外し、中身を一気に飲み干した。ポーションが喉を通り、ひんやりとした感覚が体中に広がる。
瞬く間に、自分の手や足が透き通っていくのがわかる。
「これで、見つからないはず…」
透明になった体を確認しながら、リディアはそっと壁の陰から一歩踏み出した。音を立てないように細心の注意を払いながら、魔物の目をかいくぐって進む。
透明ポーションのおかげで魔物の視線は彼女を捉えられないが、その鋭い嗅覚や聴覚が油断できない。
途中、小さな瓦礫に足をぶつけてしまい、カランと音が遺跡の中に響いた。
魔物がギロリと顔を向け、リディアの心臓が凍るようだった。
「やばいやばい!」
息を止め、身を小さくして隠れるリディア。魔物は音のした方をしばらく警戒していたが、何も見つけられないと悟ったのか、再び元の位置に戻った。
透明ポーションの効果が持続している間にと、リディアは慎重に足を進める。
そして、ついに魔物のすぐ横を抜け、さらに遺跡の奥へと進むことができた。
「ふぅ…危なかった…」
遠ざかる魔物の気配を背後に感じながら、リディアは透明な体のまま一息つく。
ポーチを叩いて「やっぱりポーションって最高!」と微笑みつつ、さらに気を引き締めて奥へ進むのだった。
灰色の神殿での生活は、決して快適なものではなかったが、そこで学んだことが今こうして役に立っているのだと思うと、少しだけ誇らしい気持ちになった。
「こんな罠、神殿の嫌がらせに比べたら簡単簡単!」
独り言を言いながら、リディアは床の微かな不自然な継ぎ目を確認し、しゃがみ込んで罠を解除する。
目を輝かせながら鼻歌を歌い、ふと森で摘んできた小さな花束を取り出して軽く振る。「トラップ解除のお祝いに!」と言って、無造作に床の隅に花を置く。
遺跡の空気は湿っていてひんやりしていたが、リディアの軽やかな足取りと楽しげな態度は、そんな薄暗い空間をほんの少しだけ明るくしているようだった。
時折立ち止まり、壁や天井の模様に見入る。古い魔法の気配がする不思議な装飾や、ところどころに刻まれた謎の文字。
「これ、解読できたらもっと楽しいだろうなあ」
指先で古びた石壁をなぞりながら、目を輝かせる。その瞬間、天井の石が小さくカタカタと音を立てた。
「おっと、これも罠ね」
慌てる様子もなく、リディアは軽やかに後ずさりしながら床の罠の起動部分を探す。
視線を落とすと、床の一部がほんの僅かに沈んでいるのを見つけた。「はいはい、こういう仕組みね」と手際よく細い棒を取り出し、巧みにその罠を解除する。
罠の音が消えると、彼女は再び鼻歌を歌いながら歩き出した。
遺跡の奥から微かに漂う甘い香りが、リディアをさらに引き寄せる。「きっとこの先に何かあるに違いない!」と、心の中で確信を抱いた。
そんな調子で鼻歌を奏でながら、リディアはお花を振り、楽しそうに罠を解除しながら遺跡の奥へ奥へと進んでいくのだった。
遺跡の奥に進むリディアは、角を曲がった瞬間、立ち止まった。
そこには大きな魔物が、まるで門番のように道を塞いでいた。筋骨隆々の体に鋭い牙、肌は鱗のように硬そうだ。その鋭い目が周囲を警戒するように光り、リディアの心臓は一瞬で跳ね上がる。
「えっ、何あれ…ちょっと強そうすぎない?」
小さく呟きながら、リディアは慌てて近くの壁の陰に身を隠した。息を潜め、そっと魔物の様子を伺う。
見つかればひとたまりもないと感じたが、ここで立ち止まっているわけにもいかない。
リディアはポーチを開き、静かに指先でポーションを探る。手に触れた瓶を引き抜いて見ると、それは「透明ポーション」だった。
「これしかないか…うまくいくといいけど!」
リディアは小声で自分を鼓舞すると、瓶のコルクを静かに外し、中身を一気に飲み干した。ポーションが喉を通り、ひんやりとした感覚が体中に広がる。
瞬く間に、自分の手や足が透き通っていくのがわかる。
「これで、見つからないはず…」
透明になった体を確認しながら、リディアはそっと壁の陰から一歩踏み出した。音を立てないように細心の注意を払いながら、魔物の目をかいくぐって進む。
透明ポーションのおかげで魔物の視線は彼女を捉えられないが、その鋭い嗅覚や聴覚が油断できない。
途中、小さな瓦礫に足をぶつけてしまい、カランと音が遺跡の中に響いた。
魔物がギロリと顔を向け、リディアの心臓が凍るようだった。
「やばいやばい!」
息を止め、身を小さくして隠れるリディア。魔物は音のした方をしばらく警戒していたが、何も見つけられないと悟ったのか、再び元の位置に戻った。
透明ポーションの効果が持続している間にと、リディアは慎重に足を進める。
そして、ついに魔物のすぐ横を抜け、さらに遺跡の奥へと進むことができた。
「ふぅ…危なかった…」
遠ざかる魔物の気配を背後に感じながら、リディアは透明な体のまま一息つく。
ポーチを叩いて「やっぱりポーションって最高!」と微笑みつつ、さらに気を引き締めて奥へ進むのだった。
35
あなたにおすすめの小説
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流
犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。
しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。
遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。
彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。
転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。
そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。
人は、娯楽で癒されます。
動物や従魔たちには、何もありません。
私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!
召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。
SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない?
その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。
ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。
せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。
こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
私は、聖女っていう柄じゃない
波間柏
恋愛
夜勤明け、お風呂上がりに愚痴れば床が抜けた。
いや、マンションでそれはない。聖女様とか寒気がはしる呼ばれ方も気になるけど、とりあえず一番の鳥肌の元を消したい。私は、弦も矢もない弓を掴んだ。
20〜番外編としてその後が続きます。気に入って頂けましたら幸いです。
読んで下さり、ありがとうございました(*^^*)
若返ったオバさんは異世界でもうどん職人になりました
mabu
ファンタジー
聖女召喚に巻き込まれた普通のオバさんが無能なスキルと判断され追放されるが国から貰ったお金と隠されたスキルでお店を開き気ままにのんびりお気楽生活をしていくお話。
なるべく1日1話進めていたのですが仕事で不規則な時間になったり投稿も不規則になり週1や月1になるかもしれません。
不定期投稿になりますが宜しくお願いします🙇
感想、ご指摘もありがとうございます。
なるべく修正など対応していきたいと思っていますが皆様の広い心でスルーして頂きたくお願い致します。
読み進めて不快になる場合は履歴削除をして頂けると有り難いです。
お返事は何方様に対しても控えさせて頂きますのでご了承下さいます様、お願い致します。
目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜
楠ノ木雫
恋愛
病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。
病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。
元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!
でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?
※他の投稿サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる