脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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メリーちゃんの活躍

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夕暮れの空がオレンジ色から群青色へと移り変わるころ、騎士団は野営の準備に入っていた。
馬を下ろしてテントを組み立て、手早く焚き火を起こすなど、一連の作業を彼らは慣れた手つきで進める。
リディアは魔法の絨毯から降りて周囲を見回し、騎士たちが地面に敷物を広げているのを見て声をかけた。

「ねえ、みんなお腹空いてるかな? うちのメリーちゃんが、いいものを持ってるんだよ!」
興味を示す騎士たちが集まってくると、メリーちゃんは得意げに「メェ!」とひと鳴きして、ふわふわの綿菓子毛をばさりと揺らした。
すると次々と温かい湯気を上げる鍋や容器が現れ、一同は目を丸くする。

「えっ、これ全部……お前んとこで作ったのか?」「ちょ、オムライス!? しかも湯気が立ってる!?」
騎士たちが騒めく中、リディアはにこにこ笑顔で説明を始める。

「メリーちゃんの毛には、こういうご飯や道具を収納しておけるの。今日のメニューはオムライスとスープ、温野菜、そしてデザートには冷たいプリン! せっかくだからみんなで食べよ?」

野営といえば簡素なパンや干し肉で済ませるのが普通だが、熱々のオムライスや温かいスープ、食べやすい温野菜、それになんとひんやりとしたプリンまで揃っているとなると、騎士たちは一様に感激の声をあげた。

「こりゃすげえな……!」「こんな豪華なメシ、遠征で食べられるのか」
大きなテーブル代わりの布を広げ、そこにズラリと並べられた美味しそうな料理を前に、皆が自然と和気あいあいとした雰囲気になる。ハーゲンはまん丸のオムライスを見て「中身はケチャップライスか?」と興味津々で一口食べてみると、「……うめえ!」と目を丸くして感嘆の声を上げた。セリルもスプーンですくったプリンを口に含み、「ひゃあ……ひんやり甘い」と微笑んでいる。

「まさかこんな形でご馳走にありつけるとは思わなかったよ。ありがとう、リディア」
「みんなで食べれば美味しいもんね!」
リディアの言葉に騎士たちも納得の笑みを浮かべ、野営地にはおいしい香りと笑い声が広がった。

食事を終えると、騎士たちは再び装備の点検を始めたり、交代の見張りの準備をしたり、それぞれの役目に戻る。
リディアも最初は彼らと一緒に夜を過ごすつもりだったが、ハーゲンが「お前は好きなときに秘密基地へ戻っていいぞ。そっちのほうが休めるだろう」と言うので、遠慮なくそうさせてもらうことにした。

「じゃあ、わたしたち先に戻るね。何かあったら呼んで!」
リディアが声をかけ、メリーちゃんに合図を送ると、タフィーちゃんを含めた三人はふわりと視界が霞むような感覚に包まれた。次の瞬間には、秘密基地の静かな空気が体を包みこむ。

「ふう、ただいま!」リディアは思わず頰をほころばせる。秘密基地の柔らかなランプの明かりがほっとする安心感をもたらしてくれる。メリーちゃんも「メェ!」と尻尾を振り、タフィーちゃんはチョコ色の体を小さく揺らしながら「ぷるるん」と嬉しそうに動いている。

「騎士団のみんな、がんばってるし、わたしも明日はまた後方支援だね。けどこの基地でぐっすり休めると思うと助かるなあ…」
リディアはそう呟きながら、荷物を軽く整頓すると、メリーちゃんとタフィーちゃんと一緒にふかふかのベッドへ向かう。
夜はまだ更けきっていないが、早めに眠って体力を回復しておこう、そんな考えが頭をよぎった。

「オムライスもプリンも、みんな喜んでくれてよかったね。明日も騎士さんたちにごはん届けたりするかな?」
メリーちゃんは「メェ!」、タフィーちゃんは「ぷるるん!」とそれぞれ賛成の仕草を見せる。
こうして、野営地で笑顔を振りまいたあと、秘密基地に帰還したリディアたちは、ふたりとともに穏やかな夜を過ごすのだった。
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