脱走聖女は異世界で羽をのばす

役目を果たして

森を抜けた騎士団は、広がる平地へと出た。緊張感の連続だった森の中とは異なり、風が心地よく吹き抜け、騎士たちはほっと息をついた。
指揮官の指示で近くの川辺に野営地を設営することになり、全員が疲れた体を引きずりながら準備を始める。

リディアは絨毯から降り、メリーちゃんとタフィーちゃんを連れて騎士たちの様子を見回した。
傷の手当てや装備の調整をする彼らの姿を見て、リディアは何か特別なことをしてあげたいと考えた。

「みんなすごく疲れてるね。よし、ここはわたしたちの出番だ！」
リディアがメリーちゃんに声をかけると、メリーちゃんは「メェ！」と元気よく鳴き、ふわふわの毛をばさりと揺らした。次々と現れるのは、見た目にも癒される料理の数々。

メリーちゃんが取り出した料理は、あつあつのクリームシチュー、ほかほかのバターライス、彩り豊かなサラダ、そしてデザートには冷たいフルーツゼリーだ。
それらはふんわり湯気を立てるものから、涼しげに光るものまで揃っており、疲れた体を癒すにはぴったりだった。

「すごいな、この料理……」
ハーゲンは鍋いっぱいのシチューを見て目を丸くし、セリルは「こんな食事がここで食べられるなんて……リディアさん、本当にすごいですね」と感心していた。

「えへへ、メリーちゃんが全部用意してくれたんだよ。みんなで食べよ！」
リディアはシチューを大きなスプーンですくい、それぞれの器にたっぷりと注いでいく。タフィーちゃんもチョコレートブロックをお皿のようにして差し出し、全員が笑顔で受け取った。

夕陽が沈む頃、野営地には騎士たちの笑い声と料理の香りが漂っていた。クリームシチューの温かさに「ほっとするな」と声を漏らす者、バターライスを何杯もおかわりする者、ゼリーを嬉しそうに頬張る者……みんなの顔には疲れがありながらも、満足感が浮かんでいた。

「リディア、お前の夕飯はいつも癒されるな」
ハーゲンが大きな器を抱えながら言うと、リディアはにこりと笑った。

「そうでしょ？ でも、これもメリーちゃんのおかげだよね。メリーちゃん、ありがとう！」
メリーちゃんは「メェ！」と誇らしげに鳴いて尻尾を振り、タフィーちゃんも「ぷるぷるん！」と弾みながらリディアを見上げた。

食事を終え、騎士たちは焚き火を囲んで明日への準備を整えていた。リディアは少し離れたところで、メリーちゃんとタフィーちゃんと一緒に話し合っていた。

「ねえ、明日は街に戻るだけみたいだし、わたしたちはひと足先に帰っちゃおうか？」
メリーちゃんは「メェ！」と賛成し、タフィーちゃんも嬉しそうに体を揺らしている。リディアは決意を固め、そっと騎士団の方へ歩み寄った。

「みんな、今日はお疲れさまでした！ 明日も気をつけてね。わたしは先に街へ戻って、次に備えておくよ」
そう伝えると、騎士たちは「気をつけて帰れよ」「またよろしく頼む」と笑顔で見送った。

「それじゃあ、またね！」
リディアはメリーちゃんに合図を送り、タフィーちゃんをしっかり抱きしめた。メリーちゃんが「メェ！」と鳴くと、柔らかな光がリディアたちを包み込み、秘密基地への転移が始まった。

秘密基地に戻ったリディアは、帰り着いた安心感から大きく伸びをした。すぐにお風呂を沸かし、リラックスする準備を始める。

「騎士団のみんなも、明日は無事に帰れるといいな」
そう呟きながら、リディアはゆっくりと温かいお湯に浸かり、今日の冒険の疲れを癒すのだった。