脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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死屍累々

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騎士団の賑やかな宴に招かれたリディアたちは、テーブルの片隅に案内され、ハーゲンが注文した濃厚モモジュースとおつまみのミックスナッツ、さらに焼きたてのお魚のムニエルを受け取った。

「わあ、すごく美味しそう！」
リディアはふわりと香る桃の甘い香りに嬉しそうな表情を浮かべながら、ジュースを一口飲む。濃厚な果汁が口いっぱいに広がり、彼女の顔には自然と笑みが浮かんだ。

「騎士団の宴会って、もっとお堅いイメージだったけど、こんなに賑やかなんだね！」
目の前では、杯を掲げて陽気に笑う騎士たちがあちこちで話に花を咲かせている。セリルがリディアたちのそばに寄り、彼女の言葉に苦笑いを浮かべた。

「そうでしょう？真面目な場面ではお堅いけれど、こういう時は全力で楽しむのが騎士団の流儀なんです。」

リディアがムニエルを口に運びながら場の雰囲気を楽しんでいると、一人の騎士が立ち上がり、手を広げた。

「みんな聞いてくれ！今夜の宴をさらに盛り上げるため、俺が一曲披露する！」

その言葉に酒場中の騎士たちが拍手と歓声を上げる。即席の舞台に立った騎士は、自信満々に声を張り上げ、酒場中に響く朗々たる歌声を披露し始めた。

その歌声に合わせて、他の騎士たちは酒樽を叩きリズムを取り、手拍子をしながら歌を盛り上げる。テーブルを叩く音、歓声、笑い声が重なり、酒場全体が熱気に包まれた。

「すごい……こんなに盛り上がるなんて！」
リディアはジュースを手にしながら、歌に合わせて手拍子を始めた。メリーちゃんもその場の雰囲気にノリノリで「メェ！」と鳴きながら揺れ、タフィーちゃんはぷるぷると跳ねながらリズムを取っている。

歌が終わると、酒場中が拍手と歓声に包まれた。歌い終えた騎士が深々とお辞儀をすると、仲間たちが肩を叩き、杯を差し出してねぎらっていた。

「いやー、いい歌だったな！次は誰が歌うんだ？」
ハーゲンが豪快に笑いながら声を上げると、また別の騎士が名乗り出て、酒場の盛り上がりはさらに加速していく。

リディアたちはそれを眺めながら、ふかふかクッションで過ごすような安心感の中で楽しんでいた。彼女はふと思った。

「こういう雰囲気、秘密基地の浮島でもやってみたらどうかな？小さな音楽会とか……絶対素敵だよね！」

リディアの新たなアイデアが胸に芽生えた瞬間、彼女の顔には満足げな笑みが浮かんでいた。その夜、酒場はいつまでも賑やかで、リディアたちの心にもほのかな温もりが残ったのだった。

夜も更け、酒場は賑やかさから一転、静寂と疲れが広がっていた。騎士たちは飲み疲れたのか、椅子にぐったりともたれかかったり、床にそのまま転がっていたりと、見事なまでに酔い潰れている。

「みんな……完全にやられてるね。」
リディアは苦笑しながら、治癒魔法の光を手に灯した。いつもは怪我や病気の人を癒すために使う魔法だが、まさか酔い潰れた騎士たちの介抱に使うことになるとは思ってもみなかった。

「治癒魔法の使い方、これで合ってるのかな……？」
そう言いながらも、リディアは倒れている騎士たちに順番に魔法をかけていく。魔法がかけられるたび、騎士たちは顔色を取り戻し、次第に意識をはっきりさせていった。

そんなリディアの隣では、美形騎士のセリルが介抱をサポートしていた。セリルは一人一人の肩を支えながら、椅子に座らせたり、水を運んだりと几帳面に世話を焼いている。

「リディア、大丈夫ですか？手は疲れてない？」
セリルが優しい声で問いかけると、リディアは軽く首を振った。

「大丈夫！こんな治癒魔法の使い方、逆に新鮮で楽しいかも。」
彼女が微笑むと、セリルも安心したように頷いた。

一方、酒樽のそばで寝ていた熊騎士ハーゲンは、眉間にしわを寄せながら「むにゃむにゃ……」と唸っていた。どうやら深酒のせいで悪夢を見ているようだ。

その様子に気づいたメリーちゃんが、「メェ！」と小さく鳴きながら彼のそばに近づく。そしてふわふわの体を押し当てるようにして、優しく頭を撫でるような動作を繰り返した。

「う、うぅ……あ、あれ……？」
ハーゲンは目を覚まし、夢の中の恐怖から解放されたことに気づくと、メリーちゃんを見て呆然とした顔をした。

「お前……不思議な羊だな。でも、ありがとうよ。」
メリーちゃんは「メェ！」と嬉しそうに鳴き返し、ふわふわの毛を揺らした。

タフィーちゃんはと言うと、まだ治癒魔法の順番が回っていない騎士たちに目を向けていた。彼らの額にぷるんと飛び乗ると、冷んやりとした身体で癒しを提供していた。

「ぷるぷるん！」
タフィーちゃんの甘い香りと冷たさに、倒れていた騎士たちは「ん……なんだこの感触……」と呟きながら、少しずつ意識を取り戻していく。

「みんな、ほんとにお世話が焼けるね。」
リディアは笑いながら、治癒魔法の光を最後の一人にかけ終えた。酔いから醒めた騎士たちは、恥ずかしそうに頭を掻きながらリディアにお礼を言う。

「助かったよ、リディア。君の治癒魔法に感謝しなくては。」
セリルも礼儀正しく頭を下げると、リディアは軽く手を振って応えた。

「気にしないで！みんなが元気になったならそれでいいんだ。」

酒場の外では、すでに夜明けの気配が漂い始めていた。リディアたちは静かに酒場を後にし、さわやかな朝の空気の中でほっと息をついた。

「意外と楽しい夜だったな。でも、次はもう少し落ち着いた宴がいいかもね。」
リディアがそう言うと、メリーちゃんとタフィーちゃんが「メェ！」「ぷるぷるん！」と揃って鳴き、彼女の言葉に同意するようだった。

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