脱走聖女は異世界で羽をのばす

てまねきくまさん

リディアは手作り庭園の浮島に立ち、収穫したばかりのナッツを手にして満足そうに微笑んでいた。

「こんなにたくさん！ これならいろいろなものが作れそうだね！」

浮島に植えた苗木が実をつけ始め、ナッツもいくつかの種類が取れるようになった。クルミ、アーモンド、ヘーゼルナッツ──それぞれの殻を割ると、中からツヤのある実が顔を出す。

「これは……蜂蜜と組み合わせたら絶対おいしいよね！」
リディアが思いつきを口にすると、メリーちゃんが「メェ！」と賛成の声を上げ、タフィーちゃんも「ぷるぷるん！」と跳ねて楽しそうだった。

秘密基地に戻ると、リディアはすぐに蜂蜜を準備し始めた。黄色い浮島で集めた濃厚な蜂蜜を壺から取り出し、カウンターに並べたナッツを眺める。

「さてと、どれを漬け込もうかな？」
リディアは少し考え、クルミとアーモンドを選んだ。

ナッツの殻を丁寧に割り、中身を綺麗に整えたあと、蜂蜜の壺の中にそっと入れていく。黄金色の蜂蜜がナッツに絡みつき、甘い香りが辺りに漂った。

「見て見て！ これ、絶対美味しいよね！」
リディアが振り返ると、メリーちゃんは興味津々な様子で壺を覗き込み、タフィーちゃんもぷるんと体を揺らして賛成しているようだった。

漬け込んだナッツをしばらく置いてから、一粒を取り出して味見してみると──。

「うん！ 香ばしいナッツと甘い蜂蜜が最高に合う！」
リディアは感激しながら頷いた。蜂蜜に漬け込むことでナッツの味わいが引き立ち、少し柔らかくなった食感も心地よい。

「これ、くまさんにもプレゼントしよう！ きっと気に入るはず！」

リディアは早速、小さな瓶に詰めた蜂蜜漬けのナッツを用意し、浮島の贈り物として持っていくことを決めた。メリーちゃんとタフィーちゃんも、そんなリディアの姿を見て嬉しそうにしていた。

「浮島で育ったナッツと蜂蜜のコラボレーション……最高のお土産だね！」
リディアの秘密基地は甘い香りに包まれ、次の訪問への期待で胸が膨らんでいくのだった。



リディアたちは黄色い浮島に到着すると、甘い蜂蜜の香りに包まれて嬉しそうに深呼吸をした。
「今日はくまさんにお土産を持ってきたよ！」
リディアは手作り庭園の浮島で作った蜂蜜ナッツをバッグから取り出し、メリーちゃんとタフィーちゃんも嬉しそうに「メェ！」「ぷるぷるん！」と応じた。

蜂蜜が垂れる蜂の巣の下には、リディアが持参した壺をそっと置く。
「これでまた美味しい蜂蜜がたくさん採れるね！」
リディアは満足そうに頷くと、木陰でくまさんを見つけた。彼はいつものようにのんびりと横になっていたが、リディアたちに気づいて「うー」と優しい声を上げた。

蜂蜜ナッツと蜂蜜レモンを並べたティーセットを持ち、リディアたちはくまさんと一緒にティータイムを楽しむことにした。
「どうかな、くまさん？ これ、私たちの浮島で作ったナッツなの！」
リディアが差し出すと、くまさんは小さな手でそっとナッツを掴み、ゆっくりと口に運んだ。

その丸い目がぱっと大きく開き、満足げに頷きながら蜂蜜ナッツをもう一粒食べる。リディアたちも同じようにナッツをつまみ、甘さと香ばしさのハーモニーを楽しんだ。蜂蜜レモンも爽やかで、ぴったりの組み合わせだった。

メリーちゃんは夢中で蜂蜜レモンを舐め、タフィーちゃんは蜂蜜ナッツを体に取り込むようにして味わう。その結果、二匹とも口元がべたべたに輝いている。

「ふふ、二人とも蜂蜜まみれだよ！」
リディアが笑うと、くまさんも満足げに「うー」と鳴いて、小さく微笑んでいるように見えた。

ティータイムが終わり、リディアたちがのんびりくつろいでいると、くまさんが「うー」と声を上げ、木のうろを指差した。

「なになに？ 入ってみていいの？」
リディアが尋ねると、くまさんは頷き、ゆっくりと木のうろに体を入れていった。リディアたちも後に続いて中を覗き込む。

木の中は、なんとも可愛らしいくまさんの「はちみつルーム」だった。壁際にはたくさんの蜂蜜壺が並べられ、小さな布が敷かれたスペースがくつろぎの場になっている。蜂蜜の甘い香りが満ちていて、リディアは思わず感嘆の声を上げた。

「すごい！ くまさん、こんなに素敵な部屋があるんだね！」
リディアはその可愛さに心を奪われながら部屋を見渡した。

さらに、部屋の奥には小さな穴があり、そこにはハシゴがかかっていた。くまさんが「うー」と軽く鳴いて、下を指差す。

「え、下にも続いてるの？ なんだかワクワクしてきた！」
リディアは慎重にハシゴを覗き込み、次に何が待っているのか期待に胸を膨らませた。

冒険の匂いを感じながら、リディアたちはそろそろとハシゴを降り始めた。