脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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栄養満点

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「よし、みんなで力を合わせて倒木をどけよう!」
リディアは意気込んで倒木の前に立ったが、実際に押してみるとその重さに驚かされた。

「これ……めちゃくちゃ重い!」
リディアが倒木に両手をついて必死に力を込めるが、びくともしない。隣でメリーちゃんもふわふわ毛を広げて頑張ろうとするが、ただ毛がもこもこと動くだけだった。

「メリーちゃん、君のふわふわじゃさすがに動かないか……」
リディアが苦笑いすると、タフィーちゃんが「ぷるぷるん!」と弾んで倒木にぶつかってみせた。だが、もちもちの体では逆に跳ね返されてしまい、ふらふらと戻ってきた。

「これじゃ、私たちだけじゃ無理だね……」
リディアはため息をつきながら倒木を見上げた。

すると、傍らで様子を見ていた錬金術師が小さな声で提案した。
「倒木をどけるのが難しいなら、小屋の中に入る方法を探してみるのはどうでしょう?」

リディアはその言葉にハッとして、小屋の上を見上げた。倒木が入り口を完全にふさいでいるが、換気口のような小さな窓がぽっかりと開いている。

「これだ! あそこからなら入れそう!」
しかし、その窓はあまりにも小さい。普通の大きさのリディアでは到底通ることができない。

「でもどうやって……あ!」
リディアはポーチからミニミニポーションを取り出し、笑顔で掲げた。

「これだよ! みんなで小さくなれば入れるはず!」

メリーちゃんは「メェ?」と少し不安そうな声を上げたが、リディアが優しく言った。
「大丈夫、すぐ元に戻れるから!」

リディアとメリーちゃんはポーションを飲み、一瞬で小さな手乗りサイズに縮んだ。リディアは自分の手を見ながら感嘆の声を上げた。
「わぁ、本当に小さくなっちゃった!」

タフィーちゃんは元々小さいためポーションは不要。
「ぷるぷるん!」と元気よく弾んでリディアたちの横に来ると、「早く行こう!」と言いたげに窓の方を指し示した。

リディアたちは小さくなった状態で錬金術師に見送られながら、換気口から中に潜り込んだ。中は暗くひんやりとしていたが、リディアは勇気を振り絞って進んだ。

「中にいる人、大丈夫ですか?」
小さな声で呼びかけると、奥からかすかに声が返ってきた。
「……助けに来てくれたのかい?」

リディアはにっこり笑って、仲間たちと共に小屋の奥へ進む。小さくなったことで見える世界は広大に感じられ、家具や雑貨がまるで巨大なオブジェのようにそびえ立っていた。冒険の始まりを感じながら、リディアたちは足を進めた。

「さて、この中で困っている住人さんを見つけないとね!」

暗がりの中、リディアたちは声を頼りに進んでいった。小さくなったことで家具や雑貨が巨大な迷路のように立ちはだかり、ひとつひとつを慎重に回り込む。

「こっちかな……声が少し近づいてきた気がする!」
リディアは前を見据えながら、急がず丁寧に進んでいく。メリーちゃんは「メェ!」と短く鳴いて賛成し、タフィーちゃんは「ぷるぷるん!」と元気よく弾んで進行方向を示してくれる。

やがて、部屋の奥の棚の下から、小さな声が聞こえてきた。
「……助けてくれるのかい? 誰か、そこにいるのか?」

リディアは声を掛けながらしゃがみ込み、棚の下を覗き込んだ。そこにはひとりのおじいさんが座り込んでいた。白い髭をたくわえ、疲れた表情をしているものの、どこか優しそうな雰囲気のあるおじいさんだった。

「大丈夫ですか? 私たちが助けに来ました!」
リディアの明るい声に、おじいさんは驚いたように目を細めた。

「おやまあ、小さな子たちがこんなところに……ありがとう。実は、倒木で出られなくなってね。ずっとここで助けを待っていたんだが、もうお腹が空いて空いて……」

おじいさんは困ったように笑い、やせ細った手でお腹をさすった。リディアはすぐに背負ったポーチを開け、中から取り出した小さな瓶を掲げた。

「それならこれ、どうぞ! 蜂蜜です!」

メリーちゃんがふわふわの毛から蜂蜜の瓶を取り出し、タフィーちゃんが器用にその蓋をぽんっと弾き飛ばす。リディアは笑顔で瓶をおじいさんに差し出した。

「これならすぐに元気が出ますよ! 蜂蜜って栄養がたっぷりなんです!」

おじいさんは驚いた様子で蜂蜜を受け取り、指ですくって口に運んだ。とろりとした甘さが口いっぱいに広がり、彼は一瞬目を見開いた後、穏やかな笑顔を浮かべた。

「こんなに美味しい蜂蜜は初めてだ……ありがとう、本当にありがとう!」

「えへへ、よかった!」
リディアも嬉しそうに笑った。おじいさんが元気を取り戻していく様子に、メリーちゃんも「メェ!」と満足げに鳴き、タフィーちゃんも「ぷるぷるん!」と跳ねて喜びを表現する。

おじいさんは蜂蜜を舐めながら、少しずつ力を取り戻していった。
「君たちのおかげで助かったよ。でも、倒木をどうにかしないと外に出られないなぁ……」

リディアは少し考え込んだ後、にっこりと笑った。
「それなら任せてください! 私たち、ここまで来られたんですもの。絶対におじいさんを助け出します!」

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