脱走聖女は異世界で羽をのばす

ねむたん

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絵本の中で雪合戦

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一行は雪が積もる道を歩きながら、白い静寂の中に溶け込むような美しい風景を楽しんでいた。雪をかぶった木々がきらきらと輝き、遠くには山脈が堂々と連なっている。その風景にリディアは何度も足を止めては「すごく綺麗……!」と感嘆の声を上げた。

「これ、本当に本の中なの? 外の世界よりずっとリアルで綺麗だよね!」
リディアは振り返ってみんなに話しかけたが、メリーちゃんはふわふわの体に雪をつけながら「メェ!」と楽しそうに駆け回り、タフィーちゃんは小さな体で雪の上を跳ねて小さな雪玉を作って遊んでいる。

一方、エリュディオンは雪の中でも変わらぬ余裕を見せながら、ちらりとリディアに目を向けて口角を上げた。
「本だろうが何だろうが、こうして楽しめているならそれでいいんじゃないか。お前たちの反応を見ているだけで退屈しない。」
そう言いながら、手のひらに雪をすくい上げ、ひと振りで雪の結晶を宙に舞わせた。

「うわ、ずるい! エリュディオンだけそんなお洒落なことして!」
リディアは雪玉を両手で作りながら、不意にエリュディオンを狙って投げつけた。雪玉は鮮やかに宙を切ってエリュディオンの胸に直撃する。

「ふっ……やるじゃないか。」
エリュディオンが楽しげにそう呟いたかと思うと、雪の地面を軽く蹴り、彼の周囲からふわっと雪が舞い上がる。瞬く間にそれが小さな雪玉となり、空中で踊るようにリディアのほうへ向かってきた。

「きゃー! 本気出しすぎでしょ!」
リディアは笑いながら後ろに飛び退り、メリーちゃんのふわふわ毛の後ろに隠れる。メリーちゃんは「メェ!」と抗議の声を上げながら雪玉に突進し、次々と受け止めた。タフィーちゃんも雪玉をキャッチしては跳ね返す。

「なんだこれは……雪合戦という遊びか?」
エリュディオンは面白そうに首をかしげながら、手のひらでまた新たな雪玉を作り始める。

その様子に、リディアは負けじと雪をかき集め、せっせと雪玉を作り始めた。
「そうだよ! 雪の中ではこれが一番楽しいんだから! メリーちゃん、タフィーちゃん、いっけー!」
雪玉を投げるリディアと、全力でサポートする仲間たち。エリュディオンはその攻撃を軽々とかわしながらも、本気になったのか次第に雪玉の精度が増していく。

こうして、雪の中で繰り広げられた大規模な雪合戦は、どちらも引かない激しい戦いとなったが、最終的にはリディアたちが三人がかりで雪玉を大量にぶつけることで勝利を収めた。

「やったー! 私たちの勝ち!」
リディアは雪だらけになりながらも大声で叫び、メリーちゃんとタフィーちゃんと手を取り合って喜んだ。一方、エリュディオンは肩をすくめながら雪を払って立ち上がり、肩越しにリディアを見て微笑んだ。

「いいだろう、今日はお前たちの勝ちだ。この勝負、楽しませてもらった。」
リディアたちの姿を見て、エリュディオンの笑顔はどこか穏やかだった。

その後、一行は雪道をさらに進み、ようやく大きな館のような建物を発見する。どうやらこの絵本の中の物語は、まだまだ奥深い秘密が隠されているようだ。リディアたちは笑い合いながら、その建物に足を踏み入れていった。

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